出会いの曽根崎殺人事件(後編)
「……というのが答えだ」
「先生……今のは……?」
「私の持つ能力だ。相手の血を見ることで、記憶を見ることができる」
「能力なんてものがこの世にあるんですか…?」
「なぁに、能力を持っているのは世界でただ1人、私だけだ」
「そう……なんですか……」
なかなか信じられることではない、だけど見てしまったら、この目で直視してしまったら、否定なんてできない。
「ですが、そうなると、先生の推理はバッチリ当たってたってことですよね!流石です!」
「まぁ、君がへっぽこすぎるところもあるがね」
「うぅ……」
痛いところをついてくる
「そういえば、先生、現場に来る前から疑ってたじゃないですか……それはなぜです?」
「君は私よりも日本にいた時間は長いんだろう?だったら日本の古典ぐらい触れておけよ……」
「それはどういう……」
「死に方が、曽根崎心中のそれだったのさ、だからちょいと疑ってただけだ」
「凄いですね……そこまで頭が回るなんて」
「まぁ、私は天才だからな」
否定し難いのが腹たつな。
後日
午前9時48分
「おはよう助手クン、いい朝だね」
宿泊先のあてがない僕は、先生の事務所で寝泊まりさせていただくことになった。
「おはようございます……ふあぁ……」
「おぉおぉでっかいあくびをするもんだ」
「お早いですね、まだ7時……」
「9時だよ寝坊助、さらに言うなら9時も終わりかけだ」
不覚だ、朝は弱い方なのだ。
「そんな助手クンにいいニュースだ、例の事件について、ジョン・ウィリアムズ氏は脅迫容疑で警察に捕まった後、警備員から銃を奪い、自殺。その遺産は全て娘のエマ・ウィリアムズ氏に相続された。エマさんは、父の侵した罪を少しでも償うと、2人のお葬式の代金を全て請け負い、慰謝料を払った。
銀は、詐欺容疑で逮捕され、今は詐欺集団の仲間たちと獄中で仲良くしてるさ」
「よかった……これであのお2人も少しは報われるといいんですけど……」
「だな」
「それにしても、心中の事件からさらに真相を暴いて、犯人を刑務所に送るだなんて、先生って実は凄いんですね」
「そんな凄い私の解決した事件はやはり伝記として書物にまとめられるべきだろう?どこかに推理小説家い・な・い・か・なぁ〜?」
言いながらこちらをガン見している。
実を言うと、僕は推理小説家だった。だが、全く売れず、仕事を辞め、今に至るのだ。書きたくてもかけない、書いても評価されないと言うのは、予想以上にダメージがでかいものだ。
そんな僕にとってこのお誘いは飛び跳ねるくらい嬉しいものだった。
「書かせて……頂けるんですか……?」
「書きたいなら、な?」
「ありがとうございます!……ですが、依頼が来ない時期とかにはどうしたら……」
「なぁに、そん時は、腐る程ある私の解決した過去の事件の話でもするさ、安心しなよ」
「そんなにたくさん……?」
「何度も言わせるなよ」
先生は椅子にどかっと座って言った。
「私は天才なんだ」
これが僕と先生の出会いである