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ワインレッドの記憶  作者: 雪と
一章 出会い
2/4

出会いの曽根崎殺人事件(中編)

 探偵が第一に一体何をするのかといえばもう決まっている。そう、聞き込み調査だ!と『今日から君も探偵!〜基礎入門編〜』に書いてあった。

 これは実行する以外の手はない。

 

「日頃の曽根崎くんについて?」

「はい、なんでも大丈夫です。口癖だとか、性格だとか」

 少し小太りで、シワの目立つ中年のメイド長は、井戸端会議でもしているような手振りで言った。

「そうね……元はこの屋敷で事務として働いていたの。親友だって子を連れてきてたりで友人関係も良好で、恋人に対しても一途だった。なんでも今回がお互いにとって初めての恋人だったらしいわよ?とても無理心中をするとは思えないほど幸せそうだったけれどねぇ」

「お互いに初めての恋人……という事は他殺の可能性はやはり低いか……」

 

「お2人に起こったことですか……。そういえば、以前ウィリアムズ様のご自室から曽根崎さんとの口論が聞こえましたねえ……。昔からウィリアムズ様はよく怒鳴られますが、あの時は比べ物にならないほどお怒りの様子でした」

「ウィリアムズさんとの口論?なぜそこから心中に結びついたんだ?」

「あの……」

「はい?」

 背が小さく、少し気の弱そうなメイドが話しかけてきた。

「私、その時紅茶をお運びしたので、内容をお教えできるかもしれないです……」

「本当ですか!」

今にも消えてしまいそうなその声が語った事は、僕の背筋をいとも容易く凍らせた。


 


 午後5時30分

 広間に人が集められた。

 僕が知らない一般人の方も多くいた。

「さあ、まずは君から聞かせてもらおうか」

 朱華さんをはじめ、全員が僕に注目した。

「はい、明徳(あきのり)さんと初華(いちか)さんは昔、ウィリアムズさんの会社の事務としてこの屋敷で働いていました。そこで出会った2人は交際を経て結婚へ向かおうとしていました。しかし、明徳さんの仕事ぶりに感心したウィリアムズさんが娘さんへの婿入りを勧めました。もうすでに婚約者がいる明徳さんは当然断りましたがウィリアムズさんが逆上。多額の借金を無理やり負わされた明徳さんは、憎しみを込めてこの屋敷の中で初華さんと無理心中を行った……と、考えて……います」

「うん、いい線いってるがニアミスってとこだね。いくつか惜しいところがある」

「おい!探偵!私は貴重な時間を割いてここにきているんだ!早く仕事に戻らねばならない!早くしないか!」

 パツパツのスーツを身にまとい、絢爛な装飾を施した時計を腕に巻いている男性が怒鳴った。彼こそが家主のウィリアムズさんである。

「まあ落ち着いて、これから私の推理をお伝えしますので。

 助手クンの言ったとうり、お2人はここの事務で出会い、その関係は職が変わってもずっと続いた、しかし明徳さんはウィリアムズさんから娘との婚約を勧められた。その婚約は、家同士で勝手に決められたものだった。当然明徳さんは断った、すると、相手は逆ギレしたんだ。『俺の娘と結婚できないというのか!』ってね?ひどい話だよ。

 結婚式場やら何やらのキャンセル料として多額の借金をすることになった。そんな時に明徳さんの前に親しかった旧友が現れた。そいつは言葉巧みに明徳さんを言いくるめて、結局彼は借りちゃったのさ。まぁ、確かにそのお陰で金を返すことができると思われたが……ウィリアムズさんはそれを知って金額を倍にした。まさに権力の悪徳フル活用。そして、いつでもよかったはずの借金の返済に期限がつけられた。返せなきゃ世間に詐欺団体の一員として公表するというおまけ付きで。それを受けた2人は、出会いの場所であるウィリアムズ邸で心中した……。間違い無いだろ?ウィリアムズさん」

「待て!この事件が解決できると思えば!この私が犯人だと!?とんだ茶番を見せおって!証拠も無いことを抜かすな!」

 ウィリアムズさんの怒号が静かな館に響いた。

 誰1人として、言葉を発さず、冷やかな視線を犯人に向けていた。

 場の空気に圧倒されウィリアムズさんが一歩下がった。

「ここにいるのは被害者の近くにいた人たちだ。全部知ってんだぜ?」

 この場が朱華さんのペースにどんどん飲まれていくように感じる。

 彼女が、今この場を支配している。

「見覚えのある人が多いんじゃないですか?明徳さんがこの館の前でよく喋っていたご友人方ですもんね?」

「知るものかーー」

「明徳さんは」

 責め立てるような口調で、今までのひょうきんな声とは打って変わって真剣な声で、怒りに震えながら彼女は畳みかけた。

「明徳さんは……この人達に相談してたんだ……働かせてくれた貴方の好意を無下にしたくないと!でも自分には結婚を約束した女性がいた!だから断るわけにはいかなかった!それなのに……貴方は自身のプライドのためだけに、明徳さんを死まで追いやった!」

「っ!あの子を……殺すつもりなんてなかったーー」

「じゃあ、どうして銀太郎さんを買収したんだ?」

「なっ……!」

「朱華さん、銀太郎さんって一体どなたですか?」

「この中で一番被害者との関わりが深かった旧友であり、詐欺集団の幹部だ。ウィリアムズさん。あんたが本当に式場の予約をしたかなんてすぐわかる。それに加えて銀太郎たちの詐欺集団は、警察にマークされてたんで逮捕済みだ。彼らから話を聞けば全てわかる。もうどうしようもないんだ、自首しな」

「私だって……彼を息子のように愛してーー」

「助手クン、あとは警察に任せよう」

「は、はい!」





 午後5時56分

 彼女の怒涛の推理はこうして幕を閉じた。

「では、助手クン、付いてきたまえ」

 突然そんなことを言い出した。

「は、はい……?」

 疑問を抱きながらも付いていくと、例の遺体の前まで来た。

「さぁ、答えあわせと行こうか、助手クン」

 その時、先生の目が赤黒く輝いた。

 遺体の血も、ほんのり光を帯びている。

 僕らの周囲が、淡い赤色に光だし、やがて全てが見えなくなった。

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