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14話 バスティアの内に潜む獣〜ケダモノ〜

 俺は今、旅のストレス発散に、ベルゼブブの羽を揉んでいる。触り心地が良く、手に馴染んでくる心地よさは、俺を幸せの世界へとトリップさせる。


「んぁ………そこっす、そこそこ、気持ちいいっす、あひっ」


 口の端から涎を垂らし、よがり狂うベルゼブブ。それを側から見物している2人の騎士は、ベルゼブブの乱れる様を物欲しそうな表情で眺めていた。


「レイナはいいわね。妖精固有の性感帯が沢山あって。ダーリンの暇つぶし兼、おかずとして、右に出るものはいないのは認めざるを得ないわ」


「いいではありませんの。レイナさんの後は、順番にわたくしたちも愛撫してもらえるのですから。それに、人間には人間の個性というものがありますの。助平なダーリンはわたくしたちも、余すことなく完璧に開拓してくれますわ」


「ふふふ、期待が高まるわ。ダーリンから子どもを授かるのは。ハイルには先を越されてしまったけど、一番愛されている個体はわたしだから、そんなの関係ないわよね」


「ダーリンに一番愛されているのはわたくしの身体なので、最初の方は少々語弊がありますが、子どもを授かるというのは楽しみですわね」


 ベルゼブブを弄んでいる合間に、サタンとアスモデウスの会話を小耳に挟む。みんな自分至上主義だな。俺が自分を一番愛していると思い込んでいる。故に全員を平等に相手にしないと、してない奴から嫉妬を買うことになってしまう。律儀に誰かを選んでいる余裕など、俺には元から用意されていないのだ。


「んひぃ♡そこはトんじゃう!やめてっす!ぁぁぁぁぁ!」


 思考に身を浸している頃、ベルゼブブの身体が快楽の頂点に達し、大きくバウンドする。彼女の姿を再認識し、意識を現実に戻すと、俺は大胆にも、ベルゼブブの始めてを奪ってしまった後であった。


「あはっ!子どもっす!これでハイルと肩を並べたっす!これでウチは本格的に愛してもらえる。ダーリンがウチを選んでくれるっす」


 ベルゼブブの赤い瞳が暗く濁り、ケタケタと不気味に笑っているのを余所に、


「次はわたしよ」


 空気を読まず、満を持して俺との交わりを強要してくる次の相手、アナスタシア・サタン。


「ちょっと休憩させろよ」


 俺の意見も少しは聞いてくれ、と嘆願するも、


「嫌よ」


 一言で一蹴される惨めな俺。


 俺が気を落とす隙を逃すことなく、瞬く間に馬乗りにされ、上から覆い被せられる。


 俺とサタンの間に広がる闇は、サタンの歪んだ愛の深さを明白に表していた。


「ダーリンから恵みを戴くのは今しかないの! いつ目的地に着くかわからず、タイミングが不明瞭なこの緊迫した状態。それに加えて、ダーリンがさっきレイナに子宝を渡したのが箍を壊す決め手になり、わたしの理性はもう、野生に回帰してしまったのよ」


「で、俺にどうしろと」


 単純な問いかけ。サタンは躊躇うことなく答える。


「ねえ、お願い。今はわたしを騎士ではなく、一人の女として見て?」


 女というワードがキーとなり、俺も再び箍が外れ、一体の獣、否、ケダモノに戻る。


「うふふ、さあ、やって!」


 暴走した俺は、理性では歯止めが利かなくなってしまい、本能の赴くまま、サタンを守る鎧を全て引っぺがす。


「ああ、ダーリンに乱暴されてる。楽しい、それに、気持ちいい」


 剥がれた鎧は、繋ぎ目を切られ、無惨に床に転がっている。身包みを剥がれたサタンは、下に着ているタイツのみが身体を守っている状態であり、当のサタンは、背徳感に苛まれながらも、ゆったりと、それでいて、冷静に俺を受け入れようと、股と胸を俺に預ける。


 ふむ、実に襲いたい身体つきだ。


「もう、ダーリン、楽しいのはわかりますが、もう少し品位というものを身につけてはいかがですの?」


「ガルルル………」


 邪魔をするな。


「ひぃぃぃ! ………怖いですの」


 俺は今は獣………品位? 品性? そんなものなど既に理解の外。俺が求めるは愛。可愛い女が命ごと捧げてくれる愛が、堪らなく愛おしいのだ。


「邪魔が少し入ったが、早速本番に入るとしよう、サタン」


「ええ」


 サタンは蕩けきった顔で俺にそのまま身体を預け、俺のしたいがままを、素直に、抵抗なく受け入れていくのだった。


「はぁはぁはぁ………いひぃ、気持ちいいわ、うっ、耳朶そんなにいじらないで!あひ!はぁはぁ…にゃぁぁぁぁぁ!」


 そしてそのまま、二発目の本番も難なくこなす俺。


「赤………ちゃん…いらっしゃ………い。ふふふふふふふふふふふふ」


 息絶え絶えに、疲れ切ってほぼ動かない身体を電気的にピクつかせて、赤い瞳で俺を捉え、離さないサタンがそこにいる。


 濁った目が二人になった。


 さて、最後は………


「やっとわたくしの番が巡って来ましたわね」


 お嬢様を味わうとするか。


 俺の第三の獣が今、解放された。


「高貴なわたくしに何を、フニャぁぁぁ! やめてくださいまし! 顎をそんなに撫でられては! いひぃ、擽ったいですわ! ぁぁぁぁ、ムグゥ………ふひはふひでひゅほ? はんほはひははい(次は口ですの?なんとはしたない)。へほ、ひほひひひ………ははふひほほふひはほふひ、はんほはひはっへふははひはひ(でも、気持ちいい………わたくしの高貴なお口、たんと味わってくださいまし)」


このままの流れで三発目も、刹那の間に貪り尽くすのだった。


「赤ちゃん………わたくしの高貴な赤ちゃん………ですわぁ」




「「「ダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリンダーリン」」」


 俺に食われ、気持ち良さそうに横になっている3人の歓喜のダーリンコールは、オセアンに着くまで止むことはなかった。


◆◇◆◇◆


 俺たちは、今細い一本道を歩いている。


 大量の水が、両脇に流れる崖から落ち、上空では、蒸発した水蒸気が色付き、綺麗で大きな虹を作っている。


「綺麗な場所だな。神秘的で荘厳な土地だ。美しい」


「ダーリンの方が1万倍美しいですよ」


「そうね」


「そうですわ」


「ダーリンは至高っす。何ものにも引けは取らないっすよ!」


「少しは黄昏させてもくれんのか」


 遂にやって来た新天地。


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