家事は女のしあわせ
念願だった専業主婦
お料理、お掃除、お洗濯。
彼のお世話をするのって楽しい。
家事の分担とかで、彼が時々手伝ってくれるときがあるけど、実は却ってありがた迷惑。
お掃除やお皿荒いは雑だし、結局あたしがやり直すことになるし、ゴミ出しもスーツ姿に似合わないから止めて欲しい。
あと、お洗濯で下着なんかを触られるのもやっぱり嫌。
家事はあたしに任せて、どっしりと構えていて欲しい。
休日のお掃除のとき、彼っているだけで邪魔。
「もう、向こうでお茶でも飲んでいてください」
あたしは彼を追い出してお茶だしする。
「お茶をどうぞ、ご主人さま」
二人きりのとき、彼のことを「ご主人さま」って呼ぶのは、恋人時代からの秘密のルール。
今でもこの言葉を口にすると少しドキドキする。
お洗濯ものを取り込んでたたんでいる時って、なんだかとても幸せな気持ちになる。
こっそり彼の服にほおずりする。
あらっ、ボタンがほつれている。直しておかなくちゃ。
ふと、初めてソーイングセットを持ち歩くようになった、子供の頃を思い出す。
早く使ってみたくて、気になる男子のボタンのほつれを直してあげると、
他の男子からは、「夫婦だぁ~、ふうふっ!、ふうふっ!」て囃し立てられるし、
女子からは、「ミサのおせっかい、どうせ下手なんだから迷惑してるわよ」って嫉妬の嵐だった。
ウフフっその時の男子が今ではあたしのご主人さま。
あの時囃し立てられたのって、間違ってなかったんだわ。
彼はいづらくなったのか、いつの間にか外出したみたい。
ふうー、これで思いっきりお掃除ができる。
書斎で彼の机を布巾がけ。
ちょっと椅子に座ってみる。
学生時代にこれやってみたかった。
教室で一人きりになることがなくて結局できなかったけど。今では好きなだけ彼の椅子に座れる。
愛しています、ご主人さま。