<アナザーストリー>ミオさんとお客様
<アナザーストリー>は、ミオさんの設定が本編とは異なるパラレルワールドの世界です。
「コイツ俺の嫁」
ご主人さまはあたしの頭をコツンと軽く叩いて、お客様に紹介します。
「主人がいつもお世話になっております。妻のミサオと申します。どうぞよろしくお願いします」
あたしはスカートの両端を摘んで、片足を下げて丁寧に挨拶しました。ミオさん仕込のカーテシーの挨拶。
「ほう、上品な奥様ですなあ。ご主人が羨ましい」
大切なお客様の接待。今日一日、貞淑で従順な妻を演じて見せるわ。
「ミオ、お茶をお願い」
「はい、奥様」
二人きりのとき以外はミオさんとあたしは、奥様とメイドの本来の関係に戻ります。
流石にミオさんは分をわきまえていて、ごく自然に態度を切り替えます。
応接室にお客さまを案内し、あたしは余興でダンスをご披露します。
いつか見たミオさんのストリップのような下品な鞭踊りなんかではなく、格調高いフラメンコ。
「いやあ、君の奥さんは実に美しい、ワンピースもよくお似合いで素晴らしいですな」
社交辞令とわかっていても、嬉しくなります。
もちろん今日の服はとっておきのシルクのワンピ、ご主人さまのプレゼント。
このワンピを着ると、街行く人が誰しも振り返ってあたしを見るの。
でも、お客様の視線はお茶だししたミオさん追っているのが、あたしにも分かります。
街では無敵のこのワンピも、ミオさんの魅力の前では形無しね。
「ほお、あれはモデルガンかな、エアガンですかな?」
お客様が壁に飾ってある銃を指して尋ねました。
「エアガンです。お試しになりますか?」
「チリン」
呼び鈴を鳴らしてミオさんを呼び出します。
「庭で射的の用意を」
ミオさんは庭に出て、体に的を貼り付けました。
「ズバン、ズバン」
「うぐっ、んぐっ」
ミオさんが、必死に痛みに耐えているのが、離れているあたしにも分かります。
玩具のエアガンといっても、アルミ缶に穴があくほどの威力があるそうですから、かなりの痛さの筈です。
5発ほど撃って終了です。
「お見事です」
ご主人さまがお客様を褒め称えます。
的を回収すると、的の中心近くに弾の跡が集まっています。
次はご主人さまの番です。
「ズバン、ズバン」
弾は少し中心を逸れて、外周部にあたります。
「いやあ、イマイチだなあ」
残りは3発です。
「バババン」
一気に三連射。
「あっ、あっ、はあ~ん」
ミオさんはその場に崩れ落ちてしまいました。
試合に負けて勝負勝ったといったところでしょうか。
「勝利の記念品をどうぞ」
ご主人さまは上手にミオさんをお客様の肩に乗せました。
ハンティングの獲物のように肩に背負われ、ミオさんは別室へ連れていかれます。
『これが今日の本当の接待だったんだわ』
ミオさんがいつか言ったあの言葉が頭に浮かびました。
『あたしはメイド、いってみれば奴隷女ですもの。ご主人さまに黙って従うのは当然のことだわ』
いつも汚れ役をしてくれるミオさん。
プロ意識だけでできるわけがありません。
これはミオさんの、ご主人さまとあたしへの献身的な愛なんだわ。
ありがとう、お姉さま。




