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第六十五話 フェンリル集団と対決せよ

 法術で破壊された門付近で、魔獣を食い止めていた門番兵士たちが、次々にやられて食われていく。


 ――まずいな。


 倒れた門の立ち上げをあきらめた兵士たちは、魔獣たちと剣で対峙しながら広場へ後退しだす。

 俺はすぐに、第三、第四の腕を飛ばして救済を試みた。

 兵を押し倒して食おうとする赤化呪獣(フェンリル)を、赤月眼で結晶を見定めて、粉砕する。

 それを繰り返すと、次々に魔獣が倒れていく。

 助かった兵士たちが、一応に驚き、何が起きているのか理解できないまま後退してきた。


「今の内だ。下がれ」


 小隊隊長レアンドルの号令の上で、残った門番兵や、警備兵たちを門から広場へ後退させる。

 その中、俺も後退しながら次々に前面に現れるアリ型フェンリルを、片っ端から赤月粉砕して倒し収縮させ、赤月石と死骸にさせる。


 そこへ、耳に悪意を感じる拍手が、これ見よがしに入ってきて戸惑う。

 後ろを振り返り、赤月眼で眺めてみる。

 建物の屋根から、数人の見物人に交じって赤色を発している人物を見つける。

 そいつは紫のゴスロリ服を着て、拍手を送っているのがわかった。


 ――レイミアかよ。それも高みの見物。


「フェンリル集団が到達するぞ!」


 見張り台の声が広場に響くと、緊張が走る。

 外に見えてたアリの魔獣集団が、壊れた門に群がってきた。


 呼ばれた第二小隊の兵士と術士隊が駆け付けてきて、小隊隊長レアンドルの周りに集まりだす。


「すぐ弓兵前に。入って来るものに打ち込め」


 二十人ほどの弓兵が前に出て、矢をつがえる。

 続いて杖を携えた術士隊が後ろについて、詠唱の準備に移る。

 壊れた半門から、魔獣が次々に威嚇しながら入ってくる。


 ――本体だ。


 誰もが口をつぐむと、広場は魔獣の動く音だけが響いた。


「撃てっ」


 号令の下、矢が一斉に飛びだして魔獣に刺さっていく。

 フェンリルは動ずることなく、決壊が破れたように広場へあふれ出てきた。


 術士隊の杖の紫石が光り、火炎弾が一斉にフェンリルに飛んで破裂。

 先頭の数体が動きを止めるが、それを乗り越えてフェンリルは進んでくる。

 俺も透明な赤月粉砕の腕で加勢するが、それ以上に入って来るのが多く対処しきれない。


 レアンドルの号令で、剣と盾、槍を持った兵士が広場に広がり、次々に砦内に侵入する魔獣と対峙し混戦状態となっていく。 

 勢いのあるフェンリルが俺や小隊長レアンドルのところまで接近して来るが、兵士たちに押し返される。

 次々に魔獣が増えてきて、兵が押されだしかんばしくない。


 兵士が後方から魔獣に食われ、フェンリルの上からもう一体の魔獣が乗り越えてきて、対峙していた兵士を押し潰していく。

 兵が一気に広場から後退を余儀なくされ、俺も赤月粉砕を止め、目の前の魔獣に風化紫月石剣を振るう羽目になる。

 戦線が切れて、フェンリルが何体も広場からあふれ砦内へ入っていく。


 ――これ、やばくね。


 俺は風化紫月石剣で、的確にフェンリルの結晶体を貫き沈黙させるも、数に押されて後退が続く。

 破壊された門を塞がないと、砦内はフェンリルだらけになる。


 



 俺の横で魔獣に剣を振るっているレアンドルへ、伝令兵がかけてきた。


「小隊副長から伝令。宿舎が魔族の侵入を受けました」

「何っ?」

「魔獣を多く召喚され、宿舎の兵では手に負えない。至急応援をこう。とのこと」


 ――門の爆破は、魔族の陽動作戦だったか。


「ふうっ、人がいない……怪我人から、動ける奴を招集して、貴族宿舎に当たらせろ。こちらからも何人か行かせる」

「はっ」


 貴族宿舎にはフィーが寝ている。

 ソフィがフィーを護衛してくれているが、非常に心配だ。


 しかし、ここを抜け出れる状況でもない。

 貴族宿舎にはエルフ神族もいる、彼女たちを信じて任せ、俺はこちらの魔獣を止めることを考えよう。

 その思惑とは裏腹に、広場を抜けた魔獣が砦内へ我が物顔で歩きだし、危険度が上がっていく。


「まったく、こんな時に魔族が!」


 レアンドルは、その怒りを剣でフェンリルに叩き付ける。

 俺も壊れた門を見て、減らない黒のフェンリルに苛立ちを覚えた。


「くっ。押し返す努力を!」


 剣を振りながら、第三の腕二本も使用して、何とか手の数を上げようと試みる。


 ――まったく、二本でなく、もっと赤月粉砕の腕を増やすことはできないのか?


 苦戦して状況打破を夢見たら、見えない腕に変化を感じだす。


 ――おおっ?


 第三、第四の腕が二本づつ増えだして、嬉しい驚きが起きた。

 すぐに意志を持たせてみると、独自に四本の腕が動きだし、魔獣の赤月結晶を握って粉砕を始めた。


 粉砕。

 粉砕。

 また粉砕と、倍の働きをしだすと、前面に出てくるフェンリルに勢いが落ちた。

 手持ちの中型剣と赤月眼で、魔獣の結晶を貫き屠っていく。


 ――んっ。やれる。


 レイミアのしもべ化で、能力数値が上がって増えたってことのようだ。

 これでなんとか後退せず、留まって戦闘ができるようになったか。





 そこで門の外で、小さい閃光が走ったことに気が付く。

 黒い魔獣軍団内を、何度か光が走っていくのをしっかり確認できた。


 ――なんだ? 外に新たな魔獣か?


「やっかいな」


 だが、半門外のフェンリル集団が左右に切れていくのを知る。

 そして壊れた門から砦内へ、黒馬に乗る、長い黒髪とマントを風になびかせた少女が飛び込んできた。


 ――ヒルド!


 馬を走らせながら外の黒フェンリルを、通り越しにかなり削ってくれたらしい。

 門付近から、広場の魔獣たちへも、光の剣を切りつけ倒していく。

 アリ型フェンリルへの相性が良いらしく、次々に赤月結晶を粉砕し収縮させる。

 

「ヴァルキューレだ。ヴァルキューレが外からやって来た」

「うおおおっ」


 疾風のヴァルキューレが来たことで、広場の兵士は歓喜し盛り上がった。


「ヴァルキューレ、バンザーイ」


 俺も剣から、赤月粉砕に変えて魔獣たちの結晶を粉砕し沈黙させていく。

 そして、勢いがなくなったフェンリルどもを、兵士たちが盛り返して倒していく。

 

 フェンリルを倒しながら、俺の前まで来たヒルドは声を上げる。


「なぜ、門が開けっ放しに?」

「破壊されて、修復が困難になっているんだ」


 俺が答えると、馬を引き返したヒルドが答える。


「では僕が、もう少しフェンリルを引き留める。それまでに応急防壁を」


 そう言って広場の混戦に戻っていくと、兵士たちからまた歓喜が上がる。

 近くでレアンドルも聞いていたので、ヒルドの話を続けた。


「隊長。今のうちに応急防壁を作りましょう」

「そうですが、防壁にしろ、門を立ち上げるにしろ、人手と時間がいります。傭兵たちが来てくれれば持ち直しますので、今しばらく猶予を」


 小隊長レアンドルは、近くの兵士にもう一度、傭兵所に応援の伝令を出した。

 傭兵の人数集めに時間が取られているのだろうが、待っていられない。


「いえ、門の外側に全線を作り、そこで物を積み上げて応急防壁をつくりましょう。その隙に門の修理を」

「押し返すのは至難の業だし、防壁の材料をすぐには調達できない」

「ヴァルキューレがいればなんとか。それと応急防壁は、倉庫の前に並んでいる幌馬車が数台ある。あれを使いましょう」

「あれは先ほどの奴隷商人の持ち物だ」

「そんなこと言っている暇はありません。何なら、刑罰との引き換えでいいんじゃないですか?」

「ああっ、なるほど。それなら、我々の荷馬車数台も送り出そう。それで何とかなるかも……」


 レアンドルは兵に幌馬車を門の外へ押し出す命令をし、俺はヒルドへ応援に行く前に、もう一つの戦力に目を向けた。

誤字脱字修正しました。

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