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第六十一話 レイミアのしもべは辛そう

 石段に座っるレイミアは地面に脚を付けて立ち上がり、俺たちに薄笑いした。

 口に指を入れて舐めると、赤くなった指を取り出し、紫色のゴスロリ生地に充て血を付着させる。


「何をした?」

「何って、血が足りなかったから、少し分けてもらっただけよ」

「嘘つけ」


 噛まれた首筋に手をやり、俺は後ずさる。

 ナティフアが額に手を置き、ソフィは首元に手を置いて言ってきた。


「テオは知っていると思っていたが?」

「何のことだよ」


 二人の少女、一人の女性の前で、俺は首をひねる。


「私をまた失神させた、そのお礼をしたまでね」


 指に付いた血を練りだして、口元で何か唱えたと思ったら、俺の体に激痛が起きた。


「うぐあっ」


 首を中心に、皮膚が膨張するような痛みが起きだす。


「ふむ。これでテオは、私のしもべだ」

「はっ?」

「ついでに、あのヴァル女の契約も切れたぞ。それが一番愉快だな。むふふ」

「何……だと」


 ――上書き契約か。


 マジかよ。

 しまった……レイミアのしもべなど、辛そうなだけだ。


 エルフ神族ナティフアが、レイミアに疑問を口にした。


「彼……テオって、赤月狩人(ハンター)なのかしら?」

「うむ。そうだ。もう魔族二人が赤化を無効化された」

「まあ、怖い」

「もう私の手の内になったから、人畜無害だぞ」

「それを聞いて安心」

「逆に俺は不安だ」


 俺はレイミアの横暴にいきり立つ。


「ふざけるな。ヒルドが来たら再契約だ」

「そんなことしたらどうなるか?」


 レイミアが口を小さく動かすと、また皮膚膨張の痛みが、今度は身体のいたるところで起きた。


「うわっ、やっ、止めろ」


 立っていられずに、石段に座り込む。

 ソフィが俺の苦痛を読み取ってか、身体を震わせた。


 ――先ほども首に手を当てていたが、もしや。


「ソフィも、しもべにされたことがあるのか?」


 俺に聞かれたソフィは、岩肌に首をそらして黙る。


「ああっ、ソフィな。前に絡んできたから、しもべにしてやったことがあるぞ。よく反抗したから、ヒイヒイ言わせてやった。残念ながら、そこのエルフに上書き契約されたけどな。ふははっ」

「貴様、また卑猥な世迷言を」


 レイミアに一歩前に出るソフィを、ナティフアが手で止める。


「近づくと、またそこの狂犬に噛まれますよ」

「くっ」

「ふん。言ってろ。……それでテオ。私のしもべになれば、便利な特典が目白押しよ」


 この流れからだと、うさん臭さマックスなのだが。


「まずは赤月力増強。長生きの分、あのヴァル女よりは多いわ。それだけでも、乗り換えてよかったでしょ?」

「むむっ」


 エインヘリャル以上な契約か……いやいや、お仕置きタイムがあると、なしじゃ全然違うぞ。


「もっとあるぞ。たとえば、私やそこのダークエルフだ。よく見ると何か見えないか、テオ?」


 そういえば、空気がちらちらするのを感じてたが……。

 言われたとおり集中すると、吸血姫の周りに、濃い赤に深紅が混じるオーラが見えだす。

 ナティフアも同じく、圧倒的な濃い赤にピンクが混じるオーラが見えていた。

 剣客ソフィは、白に赤がたまに混じってくる。


「赤月眼?」


 フィーの能力じゃないか。

 血で言うことを聞かせるとか、レイミア契約と似ている。


「うむ、赤は赤月族、白は人族で現れてくる。交じってくる色は強さの数値みたいなものだ」

「ほほっ」


 ――ステータス数値の色版か。面白いじゃないか、赤月眼。


 レンがの家を見ると薄く色がいくつか見えだして、透視能力にも長けているのを知る。

 色々見て試していると、すぐに目がチカチカとまばゆくなってきた。


 慣れてないからか目が疲れたので、目を閉じたりしたあと、砦の背に当たる遠くの岩山に目を向ける。

 偶然にも、そこへ赤と黄色のオーラの者が、小さく動いて降りてきているのを目にした。


「あれっ……あれも、ひょっとして魔族?」

 俺が指さすと、レイミアも見上げる。

「ああっ、魔族だな。だが、なんであんなところに? まさかヴァル女か……にしては強さの色合いが低い」

 そんなやり取りをしているうちに消えてしまった。

「門から堂々と来ないとは、卑屈な魔族だ」


 いやいや、いくら魔族でも、あの魔獣や巨大獣の前を素通りできんだろ。


 ――ああっ、あの貴族の娘を狙っているストーカー魔族と見ていいかもしれない。


 フィーのいない今、この能力は魅力的ではある。





 レイミアは、ナティフアたちに昼飯をおごって、戦闘の手打ちとした。

 赤月族ってわからない連中だと、この時思った。

 ちなみに赤目のレイミアは、人前に出ると赤目を白目に変えている。


 今日の教訓、レイミアからは今回も赤月結晶を奪えなかったわけで、彼女の身体には結晶が二つ以上あると確信した。



 ***



 三人と別れて宿舎へ戻るが、途中にマルセルと言う武器防具屋を見かけたので、のぞきに入ってみた。

 十畳ほどのスペースに、武器や防具が所狭しと並んで展示されている。

 店主は見かけず、不用心だと思っていると、奥から怒鳴り声。


「なんだと? ふざけるな!」

「どうせ貴族からの盗品だろ?」

「うるせーっ。こんな貧乏防具屋、二度と来るか!」

「そんな危ないブツ、仕入れられるか。お前たちが持ち込むような代物でないからな」


 奥からぞろぞろと、足元の防具を蹴り倒しながら出てきたのは、ジャコとその仲間たちである。

 俺と目が合うと、全員目を見開いて固まった。


 ――えっ? なぜ。


「貴様ら、商品に何てことする!」


 続いて店長らしい、背の小さいドッシリとした体形の男が飛び出てきた。


 ――ドワーフ?


「おっ、客人か。失礼した」


 俺はジャコが持っていた中型剣に、目が釘付けになる。        

 半分生地で隠れていたが、忘れるはずがない。

 前に使って命拾いし、そして赤月粉砕を継承した剣だ。

 アナネア開拓村にあった、風化紫月石剣(ふうかしげつせきけん)その物。


「村から紫月石だけじゃなく、風化紫月石剣も盗んでいたのか?」

「うるせーんだよ」

「ここへは売り飛ばしか? シモン隊長が取り戻しにくるぞ」

「貴様には、関係ねえことだ」


 俺が驚きながら、風化紫月石剣を見ようと前に出ると、ジャコたちは同じ距離を保ちながら横、後ろ、出口と移動する。


「村からの返還要求などきてねーよ。証明だってできねーだろ」

「時間も経っているしな」

「手にした俺たちのもんだ。お前には関係ない話だ」


 連中はうそぶくが、俺に顔を向けながら後ろ歩きで、器用に店の外へ出て行った。

 ドワーフ店長が、連中を見送ると俺に振り返った。


「あいつらの、知り合いらしいな? 縁を切った方がいいぞ」


 ――はい、そうしてます。


 ため息をしてからドワーフの店長マルセルに、腰のくたびれた剣のことを相談する。

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