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第五十八話 フィーの件が難航してます

 砦長のエルネストに通された応接室で、今後の話し合いを行った。  

 辺境伯夫人と娘のセレスティーヌは、一番奥の長椅子に座り、その前に砦側数名、護衛のラカムと兵士数名、そして俺が並んだ。


 目の前で見るセレスティーヌは、十台後半の年齢に見え人形のように綺麗だった。

 俺は背中のベビーキャリアを下ろし、フィーを寝かせるベットはないかと近くの従者に聞く。


「奴隷娘など、廊下でよい」


 砦長が声高らかに言い放ってきた。


「彼女はもう奴隷ではありません」

「じゃあ、その首輪はなんだ? この場所にいてもらっては困るんだよ」 

「テオドール殿。メイドに任せてください」


 小隊隊長レアンドルが近くの女性に合図を送ると、二人のメイドが来てフィーを運んでいった。


「御者のベッドを借りて、寝かせてください」


 副隊長コラリーがメイドに付け足した。

 場違いなところへ来たと後悔し始めるが、そんな気持ちと裏腹にストーカー魔族の分析が話し出された。

 

 要約すると――。

 魔族はダミアン。一八歳。

 ルクレール領主の元従者の息子で、お嬢様と知り合いでもあった。


 半年ほど前に身体が赤月化し、つい最近凶暴化、領主に反旗を向けて魔族認定されたとの話。

 その魔族ダミアンの能力は、視認できる距離だけだが、影から影へ移動ができる。

 魔獣を複数召喚し、中型の破壊法術をも使える赤化術士の側面も持つ。 

 

 ――影移動スキルは、あのエキドナの能力と似てて厄介だな。


「そしてこちらが、兵が多く優位に立つと、すぐに逃げ去るもので、取り逃がしているしだい」

「確かに警備を厳重にしないと、厄介な相手ですね。ですが、こちらとしても……」


 ラカムの説明にレアンドルが答えると、砦長が隊長へ怒ったようににらんだ。

 ルクレール領主側の言い分を否定しているから、不満を顔に出しているが、もう恫喝に近いパワハラである。


「わかりました。少しこちらへ派兵しましょう」

「ありがたい」


 隊長が折れたのか、兵の増員の当てを思い付いたのか定かでないが、承認をした。


 ――しかし、俺必要なくね?





 その後、貴族用の宿舎に移動。

 十六畳ほどの部屋に、ルクレール辺境伯夫人とセレスティーヌが入り、護衛騎士ラカムが付いた。

 その廊下に護衛兵士四人が配備される。


 砦側から兵士三人が配備されると、人数の少なさに砦長だけでなく辺境伯夫人も怒り出した。

 配備の一人が小隊副長コラリーで、部屋と廊下の護衛担当になる。

 フィオレッタは奴隷首輪のせいで、隣の召使小部屋に追いやられて、そこに俺が待機の話になった。


 ちなみに一階の部屋には、砦の大隊長や副隊長たちが重症で寝ていた。

 昨日のフェンリル騒ぎで深手を負ったそうで、他に砦兵も大勢負傷者を出して、軍組織が小規模編成に代わってしまっている。

 副隊長コラリーの話では、「ベルグリシ数体が砦に迫って来たので、引き離すために兵を出動させたら、砦内にフェンリルが沸きだして、内外ともにパニックになり死傷者を沢山だした」そうだ。


 借りた小部屋のベットにフィーを横たえさせ、彼女の寝顔を見て一息つく。

 向えの椅子に座り、腰の巾着袋から携帯食の干し肉を取り出して食べていたら眠りについてしまい、コラリーに起こされると朝になっていた。


「朝です。軽い食事はどうですか?」


 平らな硬パンと気のカップに入ったスープをもらう。


「ありがとう」

「熟睡してましたね。疲れてましたか」


 伯爵夫人たちの護衛は、夜、隣に待機していることを約束していたことを思い出す。


「あははっ、面目ない」

「いえ、隣にテオドール殿がいてくれるだけで、我々は安心できましたから」

「明日からしっかりやるよ」

「あっ、はい」


 食事のあと、まずは、もう砦に入っている赤目魔族レイミアの真意を確かめようと思った。

 いや、その前にフィーの眠りを覚ます術を知ってそうな、赤化法士に合うのが最優先。

 そう思ったらすぐに行動したくなり、廊下に警備していたコラリーに、フィーの護衛を頼んで俺は外に出た。



 ***



 奴隷商人のいる、広場の一角にある三番倉庫に行く。

 幌馬車の前や後ろには、見覚えのある男たちが話していたが、俺が来ると静かになる。

 剣客の女剣士に楽師のダークエルフと、問題を起こしていた傭兵所のグループだ。

 俺に投てきナイフを弓に投げられた男が前に来て、唾を吐きすてて戻ると、周りから笑いが起こる。


 ――ここは無視だ。


 そのまま洞窟倉庫へ入ると、岩をくり抜いたドアのない部屋の一つから、商人らしい小太りな中年男が俺を見つけて出てきた。 


「これはエインヘリャル殿、ようこそ。もしかして、あの奴隷首輪の少女の売買ですか? それとも新たな奴隷とか」

「いや、こちらの赤化法士に会いに来たんだ。聞きたいことがあってね」

「はて、オディロンに? いいですが、その前に奴隷少女に深紅の指輪をさせているとか」

「んっ、指輪?」


 舌なめずりする奴隷商人。


「それはもったいないことですぜ。どうです、こちらにぜひ買い取らせていただけないですか? 損はさせませんぜ」


 この広場へ来たとき、フィーの左腕が外に出ていて、深紅の指輪を見られていたようだ。

 うかつだったが、ここは無視だ。


「彼女の親の形見なんだ。売るつもりはない。その、オディロンさんに合わせていただきませんか?」

「へっ、へいそうですか……ですが、売る気になったら、ぜひうちでお願いしますよ」


 見る見るうちに不機嫌になった奴隷商人は、奥へ入っていくと、代わりに魔導服をきた壮年の背の小さい男が出てきた。


「赤化法士オディロンだ」


 男は昼から酔っているのか、顔が赤く鼻が真っ赤だ。

 酒臭い息を我慢しながら、法術での死に戻りの目覚まし方法を聞いてみた。 


「んあっ? 知らん。と言うより、そんな方法あるなら……俺が知りたいね」


 手がかりがばっさりと切り落とされて、力が抜けてしまった。 


「だいたい奴隷なら、放置でいいだろう?」


 俺はそれを聞いて我慢できずに、挨拶もそこそこに暗い洞窟を抜け外へ出た。

 そこへまた弓使いが、脚を出して俺を引っ掛けてきたが、軽く避けて数歩前に出たあと、離れた距離から振り返る。


「けっ、またやるのか? いいぞ。来な」


 弓使いの男が剣の鞘に腕を乗せてくると、周りにいた数人の男たちも談笑を止めて立ち上がった。

 先ほどの赤化法士オディロンも酒瓶片手に出てきて、赤い顔で俺ににらみを効かせている。


 ――ここは脅しに徹するか。


 俺はおもむろに赤月剣を取り上げて、剣先を弓使いの男に向け軽く投げた。


「馬鹿が」


 飛んできた剣を、男も剣を抜いて振り払うが空振りに終わる。

 すぐに男の持つ剣は、激しく金属音を鳴らして地面に落ちた。

 投げた俺の剣は、無事手元に戻っている。


「なっ、に?」


 弓使いの男は、剣が地面に落ちているのが理解できないで固まっている。

 幌馬車の前の男たちは、静まり返った。

 


「今何があったんだ?」

「剣が飛んで、剣に当たるとすーっと戻っていった……ような」

「ば、馬鹿な。あり得んだろ」

「そっ……そうだが……」


 赤鼻の赤化法士は、酒瓶を見たまま頭を抱え、男たちは見たことを理解できずにいた。


 俺は、初めから見えない第三の腕を出しておき、飛ばした赤月剣を空中で止めた。

 相手は剣を叩いたつもりが、俺の剣に上から叩き落とされる。

 浮遊剣は、引き戻して俺の手に収まったわけである。


 弓使いは、俺を見ながら口を開閉させると、いきなり地面にしゃがみこんだ。


「あっ……あり得ねえ」


 誰も動かないので、俺は赤月剣を鞘に納めてその場を立ち去った。

読んでいただきありがとうございます。


タイトルの文字数が多いので、サブタイトル外しました。

わかりづらい文章、変換ミスなどを修正しました。

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