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油断した瞬間にテキストが抜き取られた。


あろうことか最後に指名を受けた君は、それを手にして立ち上がる。


一瞬、合った目がどこか動物的で、僕は怯んでしまう。


テキストを読んでいる君の姿に特段の変化は見て取れなかった。


その手の内で弱々しく折り目が揺れている。


「ありがとう」


君は席に着くとそれだけ言った。


そっけなく。


僕にはそれが何に対しての謝意なのか把握できない。


テキストを貸したことに対して?


それとも――――。


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