朧げな人影(K)
部屋の扉を開けて、ワイナードがいないことを確認する。
「やっぱり、図書室か」
すぐに図書室へと駆ける。図書室は、歩いて行くと遠く感じるが、走ればそんなに遠く感じない。そんな絶妙な場所に位置している。
図書室に辿り着き、扉を開ける。
いつもより人が少ないせいか、広い図書室でもすぐにワイナードを見つけることが出来た。早くさっきの話を伝えなければ。
「ワイナード、なにか分かったか!?」
「ちょっと、慌てすぎ。どうかした?」
ワイナードは、さっきの興奮状態とはうって変わって、落ち着いた喋りに戻っている。だけどそんなことは気に掛けずに、すぐに要件を話すことに決めた。
「いや、ムルフッフと言う奴から聞いたんだが、あの圧は、魔法陣から発せられたわけじゃないみたいなんだ」
「その話は確かかい!?」
「ああ、もう一人目撃者がいる。話によると、人型で、紅い瞳をした奴が発したらしい」
それを聞いてワイナードはやや狼狽えた様子で、考え込むようにして小声で喋った。
「それはどういう? いやそもそも、あの異常な圧を、人のサイズから放てるものなのかな? ……とにかく、情報はありがとう。参考になるかは分からない…… けど、すっごく興味深いよ」
「ああ、役に立てて良かった。それじゃあ」
踵を返して図書室を立ち去る。
――物凄く複雑な魔法回路の魔法陣が三重。しかも国を覆うほどの大きさ。これほどのモノを誰が作ったのか――
自室までの道を歩きながら、ワイナードが発した台詞を思い出す。
三重魔法…… 魔法陣に関しては、学生なら誰でも知っているような基礎的な部分しか知らないが、魔法陣一つだけでも十分複雑な魔法が使えるはずだ。というか今まで、三重はおろか二重さえ知らなかったんだ。そしてその複雑×3の魔法陣が、国を覆うほどの大きさもあると。だけど、気になるのはそこじゃなくて、“誰が作ったのか”という部分だ。
確かに、あれだけの複雑なものは、知性が無ければ作ることはできないだろう。でも、一体だれが? 一人の人間が保持できる魔力量には限界がある。いや、仮に魔封石か何かで補ったとしても、その莫大な量の魔力を操れるはずがない。でも、ムルフッフは人型で紅い目をしていたと……。
いや、考えても仕方ない。それに、圧を出したのはその紅い目の奴だとしても、魔法陣と関係あるかはまだ決まっていないんだから。
俺はやっと眠りに就けると確信しながら、部屋の扉を開いた。
どうもKです。ここまでお読みいただきありがとうございます。
リレー小説なので、設定や展開に関しては何も話し合わずに書いているのですが、ここまでで段々と路線が定まってきたように感じますね。
今回の話は特に後書きに記すようなことは無いので、私が前回登場させた、ワイナードとエレナについて書こうと思います。
まず名前の由来ですが、エレナは特に無いです。ワイナードの由来は、オタクみたいな奴(デュフフww的なアレではなく、何かにのめり込む人の方です)を想定していたので、「ワイ、ナード(根暗野郎)」ということで、ワイナードになりました。だいぶ適当な理由ですが。
それからエレナさんは、特徴を掴みやすいような台詞を意識して書きました。キャラクター像が固まらないままOなんかに渡してしまうと、ビッチか根暗かSAN値ゼロにされること間違いなしなので、その対策です。
では、次回もお楽しみに。