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再び(O)

 俺らは昼を食べ終え、屋上へ行った。


「まあ、見てもあんま分かんないと思うけど、どうだ?」


「いや……」


 ワイナードは意味ありげな反応を見せた。


「なんか変わってるか?」


「ああ。確信した。」


「な、何がだ? これを見ただけでわかるのか?」


「頭のいい人達はもうわかってることだがな。」


「それバカにしてるよな! ワイナードは頭いいもんな~! 俺はなーんもわかりゃせんよ」


「…………」


 ワイナードはただ魔法陣を見つめていた。


 しばらく見つめてからワイナードは口を開いた。


「見て分かる通り、三重魔法だ。複雑だが」


 ワイナードは興味ありげにそう言った。


「え~と、三重魔法?」


 そのまま文字を解釈していいん……だよな?


「ああ。物凄く複雑な魔法回路の魔法陣が三重。しかも(ここ)を覆うほどの大きさ。これほどのモノを誰が作ったのか」


「お、おお~そうだな」


 今日はよく喋るな。


「一つの大きな魔法陣なら中の円が動くことはない。だから今日確信した」


「一つと三重だと何か違うのか?」


「魔力量は莫大に増えているだろうな」


「そうなんか、簡単に作れんのか?」


「まず聞こう。ハドアは魔法陣を作れるよな?」


「うん、作れる」


「一個を作りながらその中にまた魔法陣を作れるか?」


「え、どうやるの」


「それほど難しく複雑なんだ」


 やばい、考えただけで頭がパンクしそうだ。


「今まで魔法陣(こいつ)は動かなかったから一つの魔法陣のただの模様としか思ってなかった。今日で興味を持った」


「お前の探求心には感激するぜ。ただ、思ったことがあるんだけど。魔法陣(あいつ)は一切魔力を持たないのか? 圧を感じないけど」


「あれほどの魔法陣を作る者が魔力を制御できないわけがない」


「そっか、アギラが制御できてないだけか」


 バカな質問をしてしまった。


「戻って過去に出た魔法陣(あいつ)に関する本を読んでくる。著者の意見が強いと思うがそれも参考にしたいからな」


「わかった! 俺は……寝る!!」


「おう」


 ワイナードはいつも見せないテンションで戻っていった。


「あんなワイナード久しぶりに見たな」


 俺も後を追うように部屋に戻る。



 部屋の前が見えるとこまで来た。頼む。誰もいないでくれ。俺を寝させてくれ。

 お!!だーれもいない!なんて幸運!!

 あれ? さっき何でエレナここにいたんだ? ここ男子寮なのに。やべえ、寒気してきた。

 俺はこのまま部屋に入って寝るはずだった。


「お」


……また来た。この感じ。全身を強く打ちつけたような一瞬の重々しい空気。


「なんなんだよ!!! 寝させろよ!!」


 寮の中が一気に騒がしくなる。


「今日やっぱおかしいよ!」


「何か起こるかも……」


「魔法陣関係してるんかな?」


 みんなが窓の外を見ながら騒いでいる。確かにこの不気味な現象は怖い。けど、寝させてほしいんだよな。



 それから緊急全校集会が行われた。

 そこで聞いた話はワイナードから聞いたことと同じだった。三重魔法がどうだこうだ。それほど重要なことは話さなかった。


 二回目の凄まじい圧から一時間。ムルフッフと御者のジョセフが帰ってきた。

 二人の顔は表情を無くし、無を極めていた。


「大丈夫か?」


「…………」


「さっきの圧にやられたか?」


「…………」


「おいどうしたんだよ!」


「……た。」


「は? もっとハッキリ話せ!」


「み、見えた。ボク、見ちゃった。」


「え? 見た? 何をだ?」


「遠くに、いたんだ。そいつが、やったんだ。」


「え、やったって、あの圧を出した……ってこと?」


「……多分」


「まじかよ。ジョセフさんも見た?」


「私も見ましたよ! 凄かったんですから!! ビョーって現れてバシュバシュしてそんで……」


「あーわかんないっす。もっと解りやすく」


 ジョセフさんが説明しようと口を開いた時、教授たちが来た。


「お二人! 大丈夫でしたか!! 少しお話を聞かせてください」


「はい!! 私でよければ!」


 ジョセフさんは明るく答えた。その教授は、問いに答えなかったムルフッフまでも連れて行こうとした。


「ねえ教授。その姿見ても無理やり聞き出そうとするんすか?」


「そういうわけではないが」


「少し休ませてあげなよ」


「……治ったら私のとこに来なさい」


 ムルフッフは静かに俺を見た。


「お前は自分の部屋で静かにしてろ」


「キミには感謝するよ」


「あ、戻る前に一つだけ聞いていいか?」


「……なんだい?」


「その……見たってやつ、人か? 動物か?」


「……多分、人かな。ほんの少ししか見れなかったけど、目が合った気がする。紅く…… 光ってた」


「そうか、人か! わかった! 話してくれてありがたいぜ! ゆっくり休めよ!!」


 ムルフッフは笑顔を見せ、部屋に戻っていった。


 このことワイナードに言ったらまた喜ぶんじゃねーか?

 俺は急いで部屋に戻ることにした。

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