男にはわからない(O)
ヒナギクが突進してきた。
マジでやる気なんだな。有言実行なとこは褒めてやる。だが、あの果実の力を手にした俺に向かってきたのは間違いだったなガキよ。
俺は心の中で念じた。「ハーブティーの時みたいにガキの動きを止めろ」とね。
「何突っ立ってんのよおおお!」
そう言ってられるのも今のうちだ。
あれ。動き止まらない。あれ!? おかしいな。なんであいつ走り続けてんだ!? 止まれって言ってんだろ!
「いい加減にしようね~!」
俺とヒナギクの間に学長が割って入る。学長はヒナギクの拳を手の平で包み込んだ。
「ヒナちゃ~ん。いくらチミのお父さんが凄いからって暴力で解決ってのは良くないね」
おお~よく言った。まあ、ベベンに対して学長も暴力振るってるんだけどね。それを除けば今はかっこいい!
「そうだそうだ!」
俺はこの流れに乗った。
「ただハドアくん。さっきから見てて思ったんだけど、大人気ないよ? 今はハドアくんの方が力は上なんだから。そこんところよく考えてね」
注意されちゃった。
「で、でも。そいつが喧嘩腰だから」
「そいつって言うな!」
「二人とも~。喧嘩して何になるんだい? この喧嘩の結末はどうなる? どっちかが勝ってイェーイで終わるか? 違うな。喧嘩に勝ったとしても負けた方はどうなる? 次こそは勝つって気持ちになるだろ? そしたらまた次の喧嘩が始まっちゃうじゃないか」
「確かにそうっすね」
「ふんっ! 知らないわそんなこと」
「まずはヒナちゃん。チミは素直になりなさい。それと、何故ハドアくんのことを既に嫌っているのか理由を教えてくれるか?」
「むかつくから」
むかっ。
「何がむかつくんじゃ?」
「態度…… とか。とにかくむかつくの!」
「ハドアくんの最初の挨拶は馴れ馴れしかったな。学園に着いてからのハドアくんは確かにガキだったが」
学長まで~。
「何も暴力で解決しなくてもよかろう。話し合いで十分解決できることなんじゃ。それに今回は両方ともに反省点がある。それで互角じゃ。これからずっとそんな感じでいられたらワシからしても堪ったもんじゃないわい」
「す、すみませんでした。」
「それでよい。ヒナちゃん。チミもハドアくんを許してやれ。」
「…………」
黙っちゃった。
俺はヒナギクの目の前に行き、目線を合わせた。
「ごめんな?」
ヒナギクは顔を逸らした。
「は、恥ずかしいから離れなさいよ!」
声が震えている。
「さっきは悪かった。仲直りしようぜ!」
俺は右手を差し出した。
「う、うるさい!」
また声が震えている。あれ? これもしかして。
優しく接したら声震えたよね。はは~ん。ヒナギク攻略。
「そっか。うるさいよね! ごめんごめん!」
「や、やけに素直じゃない。」
「『ヒナギクさん』と仲良くしたくてさ!」
「い、今……」
ちょろいぜ。
ヒナギクは目に涙を浮かべた。
ええええええ。なんで泣かれたの!? やばいことでも言ったか!?
「ハドア!? 二人で何か言ってると思ったら、何泣かせてるのよ!!」
後ろからエレナが叫んだ。
「俺、え!? 何も言ってないよ!? ただ謝って仲直りしたいって言っただけよ!?」
「それだけで泣きはしないでしょ! ハドア。あんたって人は」
「あーあーハドアくん。女の子泣かせちゃダメだよ~」
「違ああああう! 何もしてないのにいい!」
な、なんだろう。作戦失敗か? 優しくしたら泣かれたぞ。みんなから責められてる。俺が悪いみたいになってるううう!
「ヒナギクさん大丈夫? 取り敢えず学園内に入りましょ? ゆっくりしましょ? 疲れたでしょ。」
ヒナギクは手で涙を拭いながらエレナに着いて行った。
「ハドアくん。解るよ今の気持ち。」
「学長。女って難しいっすね。何が何だかさっぱりっすよ」
「ヒナちゃんのことは一先ずいいから。部屋に戻って荷物を片付けてゆっくりしてなさい。」
「わかりました。」
重い足取りで部屋に向かった。
部屋に着くまでにすれ違った生徒たちには驚かれた。そりゃそうか。目の色が変わったんだもんな。
ただここまでみんなに驚かれるとさすがに慣れてくるな。
部屋に着いた。
「お、ハドア戻ったか」
「あれ、珍しいじゃん! 珍しく図書室にいないなんて」
「ああ。もう殆どの本を読み尽くしてしまった」
「お前やべえよ」
ワイナードは俺の顔を見て言った。
「やっぱり綺麗な色だな。学長と一緒なんて羨ましい」
「お前は驚かないんだな」
「ああ。小さい時から見慣れてしまったからな」
「ワイナード家ってすげえな! いったいどんな家庭で育てばそうなるんだ」
「僕の家は厳しかった。何せ爺さんが凄い人だったから、教育にも力入れてたし。世界の常識は叩き込まれた。僕の興味をそそる話はしてくれなかったから殆ど覚えてないんだがな」
「そうか。お前も色々大変だったんだな」
「ああ」
そう言うと、ワイナードは立ち上がった。
「旅から帰ってきて早々疲れてるとは思うんだが、気晴らしに少し散歩でもしないか?」
俺は内心物凄く寝たかった。けど、こんな機会滅多にないし。まあいっか。
「おう、いいぞ! 早めに済ませちまおう」
俺とワイナードは部屋を出た。
「ハドアとこうやってのんびり過ごすのも久しぶりだな」
「お前常に図書室に引きこもってたもんな! 図書室で調べたこととか色々聞かせてくれよ」
「おう、いいぞ」
俺はこのままワイナードと散歩を楽しむはずだった。




