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謎めいた青年(O)

 俺らは大きな木に近づいた。やっと休憩できる。そう思っていた。

 (こいつ)案外重くて腕が疲れるんだよ。

 先に大きな木に着いた学長が、その木の裏に回って少し驚いたようにしてその木から少し離れた。

 学長は「こっちに来るな」と思える動作をして俺の動きを止めた。

 学長はこちらを向き、言葉を発さずに口を動かしてるだけで何かを伝えようとしていた。


 なんて言ってるんだ?

 あの口の形……。そしてこの大きな木。この条件から辿り着く答えは一つ。


「きのこが生えている」


 学長は口パクでこう伝えようとしていたんだな? なんだよ学長じれったい。そんなことなら声に出せばいい。しかし、学長はどこで俺がきのこ好きって勘違いしたんだ?


「学長! 本当ですか!」


 俺は勘違いを伝えるかのように大きな声で言った。

 学長は焦ったように人差し指を口の前に持っていった。

 一本だけ生えているのか。本数まで細かく伝えなくてもいいのに。

 すると学長はまた口だけを動かした。


「大きいのだよ」


 学長。今度は大きさまで。何故俺の動きを止めてまでしてそのきのこの存在を口パクで伝えようとしているんだ? そのきのこを見て学長が退いたくらいの大きさなんだろ? 俺にも見せてほしい。確認したい。俺はこの目で確認するべく、一歩前に出た。

 すると学長は顔の前で、腕でバッテンを作った。

 そんなに見せたくないのか? それとも毒きのこ!? いや関係ない! 見たい!!

 俺は歩みを止めなかった。

 学長は必死に俺を止めようとする動作を繰り返すが、俺があまりにも歩みを止めないからなのか、諦めたように手を下ろした。

 俺は木の裏に回り込んだ。


 …………


 今までの俺がバカバカしくなった。自分の思い込みで物事を考えすぎてしまった。他の可能性を何も考えないで。

 そこにはキャペリンハットを被った人が、幹に寄っ掛かりながら寝ていた。

 きのこじゃない。人が寝ている。ってことは、今までの学長の行動やら口の動きは。ああ、なんてことだ。合致するじゃないか。


 「きのこが生えている」これは「人が寝ている」だったのか。くそ! とんだ勘違いだ! そして俺が大きい声を出して、学長が自分の口の前に人差し指をもっていったのも、静かにしてって意味だったのか。

 「大きいのだよ」も俺の「本当ですか!」の問いに対する「本当だよ」って返答だったのか!? いや、口の形が違うな。なんて言っていたんだ。

 しかし、こんな大草原のど真ん中の大きな木で人が寝ているなんて誰が想像できる?

 だが、これは俺の責任。学長は俺に戦いの基本を教えてくれていたのかもしれない。いや、教えてくれたんだ。その場その場で考えられないような出来事がこれから起こりうるかもしれない。だから決めつけることは良くないと教えてくれたんだ。学長、やっぱ凄えや。


 学長は俺を見てキョトンとしている。


「おっ。びっくりした。やあこんにちは! 散歩日和だね」


 俺らのほうがびっくりしたよ。寝てた人を起こしてしまった。


「起こしてしまったか。申し訳ない」


「いいのさ。こんな天気のいい日に昼寝なんて勿体無いことさ」


 声は男の人だ。キャペリンハットの広々としたツバから目が見えるくらいまで顔をあげた。

 おおふ。あまりにも整った顔。眩しすぎる。何の罪に侵されていない輝かしさのある顔だ。

 推測するに、俺と近い年齢くらいかな。


「ワシも一度、こんな爽快感のある場所で昼寝してみたいと思っとったんじゃ。さぞ気持ちよかろう」


「うん、気持ちいいよ!」


「すまんな、大切な昼寝の時間を」


「いいのさ! 時間なんて有り余ってるんだから」


「まだ寝たかったらワシらは去るが。」


「ん~、気にしなくていいよ! 君みたいな人に会うのは久しぶりだからね!」


 ま~た意味ありげなこと言うな。こっちに転送されてから意味ありげなこと言う人にしか会わないってある意味強運?


「ほう、ワシみたいな人か」


「だって、そんな綺麗な翠色した目の人なんて限られてるじゃん?」


「まあそうじゃな。君もその歳で色々経験してきたみたいだな。誰かここらへんにいるのか?」


「ううん。誰もいないよ! ずっと一人さ!」


「ほほう。ここら辺の人じゃないのか」


 気がついたら学長はその青年の隣に腰掛けていた。

 それを見守るように兎を抱いたまま突っ立っている俺。外から見たらシュールだろうな~。


「あ、立ってる君が抱っこしてるのってオラクルだね? 珍しいな~。そして幼いね」


 青年は眩しすぎる笑顔を俺に向け、そう言った。


「は、林の中で倒れていたので」


「そっか!」


 青年はこの兎だけを見てすぐにオラクルってことが解った。しかも、さほど驚かない。何者なんだ?

 さっきから驚いてしかいない気がするんだけど、俺が場違いなだけだよね? 俺は正常だよね? みんながおかしいんだよね!?


「君たちとはまたお話がしたいよ! どこから来たんだい?」


「ここら辺の人じゃないってことがわかったのか。優秀だ。ワシらはこの国の首都の隣街にある学園の者じゃ。訳あってここまで来てるんじゃよ」


 学長? その青年にそんな詳しいこと教えちゃっていいの!? この一瞬で信用できるの?


「そうなんだ! じゃあ今度遊びに行くよ!」


「君なら辿り着けるはずじゃ」


「うん! それじゃ僕はそろそろ行くね!」


 謎が多すぎる! 俺は信用ならんぞ! 俺と同い年くらいの青年が何故俺より物事を知っている! 理解ならん!! まあ、嫉妬なんだけどね。


「あ、あの! 名前と年齢を……」


 何を聞いてるんだ俺ええええ。


「歳? いくつだったかな~。覚えてないやっ!」


 なんだそりゃ。


「そして、僕は旅人さ!」


 それが名前なのか!? それをなんて爽やかさで答えてやがる。


「学長、あの青年行っちゃいましたよ。いいんすか学園の場所まで教えちゃって」


「いいんじゃ。ささ! ティータイムといこうじゃないか!」


 モヤモヤが残りまくりだが、俺らはウィガロさんから貰ったハーブティーを飲んだ。


 う、うまい。

 心身共に清らかになるような味だ。

 広すぎる大草原の中にポツリとある大木の下で、風に揺れ動く葉の音を感じながら一時(ひととき)の休息を得た。

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