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困惑のハーブティー(O)

 ウィガロさんの後を着いて行くと、渡り廊下に出た。


「向こうの建物にあるんじゃ」


 渡り廊下から建物の中に入る為の扉には「研究中」と書かれた札が掛けられていた。


「ほほう、ルダもいたのか。懐かしいの~」


「相変わらず気持ち悪いほど研究好きじゃよ」


 学長の知り合いの人だろうか。


「おっと、入る前に君に注意しておこう」


「な、なんです?」


「ここにいるルダって奴なんじゃが、決して彼の目を見てはいけないよ。まあ、いつもサングラスしてるんじゃがな」


 ウィガロさんはニヤリと笑ってそう言った。目を見てはいけない? 何故だ。

 ウィガロさんは扉をノックして「入るぞ~」と声をかけ、扉を開けた。緊張するな。

 中は少し暗めで、廊下が続いていた。奥の方の部屋に明かりが見えた。


「相変わらず没頭しておるな」


 学長も懐かしげにそう言った。

 奥に進む。


「おい、ウィガロ。メザードの圧を感じたんだが……」


 覗き込むように現れたのは、二足歩行で白衣を着た、シュッとした犬の顔をした生き物だった。毛並みは綺麗な黒で、サングラスをかけていた。このような人間以外の知性を持った生き物と会うのは初めてだったためか、動揺を隠しきれなかった。


「お客さんだね? そして、久しぶりじゃないか、メザード」


「お久しぶりだな、ルダよ」


「感動の再会じゃな!」


 爺さん達は懐かしそうに楽しんでいた。

 俺はまだ、ルダという人?の存在に驚いているというのに。


「は、初めまして。が、学長の弟子をやってます。ハドア・ステルターニと申します」


「よろしくね坊や。ところで、そうか。メザードは学園を持ってたんだっけね。調子はどうだい?」


「ボチボチだよ。友人の孫やらが居るよ。でも不思議なのが、『人間』の生徒しかいないんだ。」


「やはり都会は怖いか。私もそうだったからの。あ、坊や。自己紹介が遅れたね。ここで色んな研究やってる、ルダ・アヌビウスだ。よろしくね」


「アヌビウス?」


「そう、彼はアヌビウス家の血を引いてるんじゃ」


 おい、待て待て。学長といいアヌビウス家といいウィガロさん元適格者といい。もしかして俺、凄い人たちの中にいる!?

 学長の古き友ってみんなヤバそうな人ばっかだぞ!? そんな人の弟子になっちゃっていいのか!?


「坊やはメザードの弟子と言ったね? 坊やからはウィガロとは少し違った匂いがするね。何かの適格者かな?」


 なんでわかるんだ。


「そう! 自慢の弟子だ!」


 学長は俺の肩を持って自慢げにそう言った。


「メザードがそう言うんなら本物だね。ここに来たってことはツールを借してほしいのかな?」


 そこまでわかるなんて、やっぱ凄い人なんだな。


「さすがルダ。話が早いわい」


「ちょっと待っててくれ。取ってくる」


 ルダさんはデスクの隣にある扉を開け、部屋から出て行った。


「立ってるのもなんだし、座ってもいいぞ?」


 ウィガロさんはソファに腰をかけながらそう言った。俺と学長もソファに座った。

 しばらくすると、先程の扉が開き、ルダさんが箱を持って戻ってきた。


「旧式なんだが許してくれ」


「使えるなら何だっていいさ」


 学長がそう言う。

 なんか、この人達の中だと声が出し辛いな。場違いというか何というか。


「これをね、その適格者を探す者に触らせるんだ。詳しいことはメザードに聞いてくれ」


ってことはヴァイオレットに会わなきゃいけないってことか。


「あ、その前に。坊やのとこに来た適格者を探す者って何て言ってた?」


「魔方陣の破壊、と言ってました」


「え~あの空の魔方陣を? 破壊しちゃうの?」


「そう言ってました!」


「ん~それは~」


 ルダさんはサングラス越しでもわかる程の困った表情をした。


「何か気になることでもあるのか?」


 ウィガロさんが問う。


「いや~あの魔方陣ね? 三重全部違う種類の魔法陣なんだよ。統一されてないんだよ」


「と、いうと?」


 学長が問う。


「一番外側と一番内側の魔方陣の魔法回路は、何が何だか全くわからないんだけど、二重目の魔方陣の魔法回路は、私達にとって何の害もない。むしろ生き物にとって望ましい魔法回路に似ているんだよ。だから、あの魔法陣は危険と決めつけるって考えは持ちたくないんだよね」


 人類にとって望ましい!? ヴァイオレットは危険だ~とか言ってたような……。


「まあ私の仮説が正しいとも言い切れないんだけど、ちょっと見てみてくれ」


 そう言うとルダさんは本棚から一冊の分厚い本を取り出した。「見比べてみよう」と言い、歩きながらパラパラとページをめくった。

 俺らもその後を追うようにして渡り廊下に出た。


「ほら見てこの自然魔法の回路」


 ルダさんはあるページの写真を俺らに見せた。


「この魔法陣と上の二重目の魔法陣。似てない?」


 確かにそっくりだ。細かいところまでは似てないが、大雑把に似ている。


「これが自然魔法だったら、どうなってしまうんだろうね」


 ルダさんは空の魔法陣を見上げ、そう言った。

 確か自然魔法って、木とか森林とか作り出す魔法だったような。そう習った記憶が。もっと勉強しとけばよかった。


「ところで、メザードと坊やはこれから何処か行くのかい?」


「ちょっくら『あいつ』のとこに行ってくる」


「誰だか大体想像ついた。気をつけてくれよ? 最近ここら辺じゃ『ザナキ』の目撃情報が多いから。あと龍も度々」


「ああ、わかってるさ」


 ザナキ!? 龍!? 龍!?


「ワシとハドアくんでちょちょいのちょーいじゃよ!」


 え!? 学長!? 俺も戦うことになってんの!? 「ワシが守る」的なこと言ってくれたじゃん!!


「あ……」


 動揺しすぎて声が詰まってしまった。


「お? ハドアくん。そんなに嬉しいかね、ワシも嬉しいぞよ!」


「仲良いね。これなら大丈夫そうだ」


 ルダさんー!


「わしも安心した! ハドアくん。このちっこい爺さんをよろしくな?」


 ウィガロさんまで。


「よし、わし特製のハーブティーでも持ってってくれ! 美味しいんじゃぞ?」


「は、はい。喜んで」


 俺と学長はツールとハーブティーを貰い、その場を後にした。

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