知りすぎたオタク(O)
「久しぶりにワイナードに話し聞きに行くか」
ワイナードとは同じ部屋だが、講義が終わったらすぐ図書室に行ってしまい、部屋で二人きりになる時間がない。夜はいつも俺が寝た後に戻ってきて就寝し、朝は俺より早く起きて講義の課題を終わらせる。そして、講義が始まるまでの間は外を散歩するから、全く会わないのだ。
俺は図書室に向かった。ここにならワイナードはいるだろうと予測したからだ。俺の頭の中でワイナード=図書室になっていた。
図書室のドアを開ける。
いつもワイナードがいる席を見た。やっぱり居た。テーブルの上には今にも崩れそうなほどの資料や小説が積み重なっていた。
「ワ、ワイナード?」
「お、なんだ?」
「ハマってるね」
「まあな」
「なんか面白いことわかったか?」
「ありまくりで何から話せばいいか混乱している」
「そっか、そんじゃ俺から質問しようか?」
「いや、僕から話すよ。まず、巨人族は知ってるよな?」
「おう、知ってるぜ」
「それじゃ、この世界に何体存在するか知ってるか?」
「昔聞いたことあるような、ないような」
「じゃあ教えよう。巨人族はこの世界に14体しか存在しないんだ」
「たったそんだけだっけ?」
「そうだ。一週間前? にここに来た奴は珍しく小さな巨人族なんだ」
「目の前で見た時は迫力あったんだけどなあ」
「偵察班の人に聞いたら、その巨人族は5メートルくらいだったそうだ」
「5メートルか…… 俺らからしたらでけえよ! あれで小さな巨人族だったのか!?」
「14体の中じゃ一番小さいと思う」
「大きさとかで魔力とか能力とか違ってくんの?」
「ああ。巨人族って言っても、体の部分が生きてないのは知ってるか?」
「あ、聞き覚えあるぞ」
「ああ。僕らが見てる巨人は外殻と言った方がいいかな。外敵から身を守るための盾とも言える」
「アーカブ教授から聞いた! 中には未明の生物が潜んでいるって」
「その通り。まだ何者かわからない研究すら進んでいない生物だ。全体像を見たものは、昔から今まで一人としていない。触手のようなモノを見た人はいるが。その生物が巨人族の本体だ。そしてその生物の眼、それが巨人族の魔封石と呼ばれるものなんだ」
「ほうほう」
「そしてここからが面白いとこなんだ」
ワイナードの顔は楽しそうだった。こんなにも楽しそうなワイナードを見るのはいつぶりだろう。
「この前、ハドアは『紅い目の少女が来た』と言ったね? その紅い目の人のことなんだが。俺は聞き飽きて話すのも億劫なくらいなんだが、聞きたいか?」
「お! 聞きたいぞ!」
「まず、昔から紅い目を持つ人間を我々は『ザナキ』と呼んでいる。そしてザナキは元々は人間なんだ。瞳の色も普通の人と同じ色だった」
「なんで紅い目になるんだ?」
「紅い目になるのは、巨人族の魔封石との契約をするからだ」
「契約!? だって、え? この前の巨人は目をかえせ~って言ってたんだぞ? なんで契約しといてそんなこと言うんだ?」
「魔封石と生物は別の意思があるらしいんだが、詳しくはわからないんだ。話に戻るが、巨人族の魔封石と契約した人間は紅い目になる。つまり、必然的に紅い目を持つ人間はこの世界に14人までしかいないことになる。良い出会いをしたな」
「お、おお~ありがとう。なんでそんな詳しいんだ? 調べたのか?」
「小さい頃から父や叔父、爺や婆から聞かされていてね。紅い目と俺らの家系はちょっと交わりがあってね」
「ほえ~ワイナードん家が。ところで、紅い目を持つと何か変わるのか?」
「変わるらしい。この資料によると、紅い目を持つと巨人の記憶と膨大な魔力が手に入るそうだ。使える魔力量の上限も格段に上がるっぽいね」
「へえ~いいな~」
「ただ、分かる通り、紅い目を手に入れる為には巨人の顔部分に接触して魔法を唱えないといけないんだ。その人間の元々のスキルが高くないと無理なことだ」
「あ、そっか」
「ああ。そして、昔から今まで、紅い目を持つ人間は、巨人の記憶の欲に駆られ悪事を働いてきたが故に、世の中から疎まれ、良くない存在とされてきた」
「紅い目は全員悪いやつなのか?」
「いや、そうとも限らないみたいだが、聞いた限りだと悪いことしてる方が多いな」
「ふーん。紅い目と翠色の目は違うのか?」
「それまた面白い質問をしてくれるじゃかいか。それは……」
ワイナードが答え終わる前に、図書室のドアが思いっきり開いた。
ガダン!!!「あ! いたいた! ハドア! 学長が帰ってきたぞ! 話あるなら今しかない!」
寮長だ。色々な人に「学長どこか知らない?」って聞いたもんな。
「お、話の途中で悪いな! また後で聞かせてくれ! 学長はすぐどっか行っちまうんだ」
ワイナードは少し悲しい表情をして「ああ」と言った。
申し訳ないと思ったが、学長に会えるのならばそっちを優先したかった。
俺は寮長の後ろをついて行った。




