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アーカブ教授の魔法講座①(K)

「魔封石の『主』?」


「知らないか。では一から話そう」


 一から話すとどの程度の長話になるんだろうか。いささか疑問ではあるが、この現状を知るためだ。我慢しよう。

 俺が小さく頷くと、アーカブ教授は話し始めた。


「魔封石は、自然に魔力が寄せ集まったものと、人の手によって意図的に魔力が込められたものとで、少し違いがある」


 魔封石の、そんな細かいところは別にどうでもいい。ただ、巨人とか空の魔法陣とかについて知れれば、それで良いんだ。

 まあ恐らくは、この話が魔封石の『主』とやらを説明するにあたって重要なことなのであろうが。

 俺は適当に相槌を打って、聞いてる風を装うことにした。


「同じじゃないんですか?」


「そう、実は同じじゃない。魔封石が、鉱石や宝石なんかに魔力が宿ったものというのは知っておるな? 人工の場合、製法によって魔力の宿り方が違うんじゃ」


 ここは少しオーバーにリアクションしておこう。


「そうだったんですか!」


「うむ。少し難しい話になるが、自然の魔封石には、天然魔力という、空気中に漂うものと同じ魔力が宿っておる。この天然魔力は、人間を含めてほとんどの動物には利用できん」


「ふむふむ」あーなるほどねー。


「植物や一部の細菌は天然魔力を、我々動物でも利用できるように変化させることができる。こうして変化したものを、生体魔力と呼ぶ。ここまでは良いかな?」


「はい。授業で触れたことがあるので、まあ」


「よし。動物は、他の動植物を摂食することで生体魔力を確保しておる。人間も同様。そして、ワシたちが生体魔力を体内に取り込むとき、自己の肉体に最も馴染む形に作り変えるプロセスがある。これを同化という。これも良いかな?」


「はい」


 聞いたことの半分くらいは耳を突き抜けて行ったが、それもまあ良しとしよう。


「よろしい。では、魔法の簡単な原理についてだが……。まず、体内の生体魔力の一部を、熱の魔力、光の魔力、音の魔力などの、様々な体系魔力に変換する。そして、変換しなかった生体魔力のエネルギーを解放して、体系魔力を誘起してやることで、魔法が発現する。そういう原理だ」


 魔法って意外と複雑なんだな。


「さて、人工魔封石の製法についてだ。製法には3つのプロセスがある。まず、生体魔力の一部を輸送魔力という体系魔力に変換する。次に、輸送魔力によって体内の生体魔力を任意の石に送る。最後に、石の表面から魔力が漏れ出さないように、薄い魔力の膜でコーティングする。これで完成じゃ」


 ああ、部屋に戻りたくなってきた。ここは少し急かそう。


「で、魔封石の『主』というのは……?」


「うむ、やっと本題に移れるな。ここまで話に着いて来れたのなら、全く難しい話ではない」


 やや着いて行けてないんだけどな。


「人工魔封石の中には、誰かと同化した生体魔力が入っている。この“誰か”を、魔封石の『主』と呼ぶんだ」


「あっ、そうなんですね。いやー知れて良かったー。じゃあもう帰りま――」


「待て!! まだ本題が残っとる」



 アーカブ先生は、これまでにない厳格な顔つきで言った。


「話を最初に戻すぞ? 巨人族(ダイダリム)の魔封石。あれは、天然のものではない。つまり、『主』が存在することになる。だが、学者たちによる調査の結果、その『主』は巨人族(ダイダリム)ではないことが判明しておる」


 は? いや、魔封石を作った本人が、魔封石の『主』になるんじゃないのか?


巨人族(ダイダリム)の中には、無数の触手を持った、未明の生物が寄生している。そいつらが巨人族(ダイダリム)の魔封石の、真の『主』というわけだな」


 あの触手が!?


「み、見ました! 巨人の体中の孔から、いっぱい触手が出てて……」


「やはりか……。普通の巨人族(ダイダリム)であれば、体表に孔など開いておらん。触手生物も、大人しく中に籠っておる。そいつが暴れていたのはきっと、目玉を失ったからだろう」


「目玉って…… まさかそれが!?」


「うむ、紅い眼だ。それがあれば、巨人族(ダイダリム)の魔封石と同じものを作ることができる。無論、時間はかかるがな」


 先生のその言葉を聞いた途端、鼓動が急激に速まるのを感じた。


 あのヴァイオレットとかいう女の子。何者なんだ? それに、宝玉の適格者っていうのは……

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