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短編

あいつの言葉

作者: RK

「俺たちってどうして生まれてきたんだろうな」


 それは死んだあいつが口癖のように言っていた言葉だった。

 俺は毎回「父親と母親がセックスしたからに決まってんだろ!」と言って笑っていた。

 あいつもその度に「そうだな」と言って笑っていた。

 そんな日常を壊したのは交通事故だった。

 車の確認を全くしなかった老人が道路に飛び出して、それを避けようとした車が突っ込んだ先には子供がいて、それを助けようとしたあいつが轢かれて死んだ。

 老人は腰を抜かしていて、子供は泣きじゃくっていて、運転手は混乱していて、俺は呆然としていた。

 それで我に返った時に、あいつが何か言ってたから俺はあいつの口のところに耳を持っていったんだ。


「俺たちどうして生まれてきたんだろう?」


 その言葉を最後にあいつは死んだ。

 救急車が来てあいつは運ばれていった。でも助からないってわかってた。だって、あいつの身体はとっくに冷たくなっていて、夥しい量の血液はあいつの体から出てきたものだったから。


 それから4年が経った。

 俺はこれから就職活動が始まる。

 そんな俺の心にあいつが言っていた言葉が耳に蘇る。


「俺たちどうして生まれてきたんだろう?」


 学校行って働いて金を稼ぐために生まれたのだろうか?

 だったら俺という人間じゃなくてもいいのではないだろうか?

 誰かの為に、社会のために、貢献するために生まれてきた?

 違うと思う。人間は利己的な生き物だから。

 人間はやりたいことをやるために生まれてきた。

 それも違うかもしれない。

 

「俺たちどうして生まれてきたんだろう?」


 耳にあいつの言葉が蘇る。

 俺は4年遅れで俺なりの答えをあいつに返してやった。


「それを探すために生まれてきたんだ」


 

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