8年越しの約束
クリスマスイブといっても、シフトが入っていれば仕事だ。
目の前ではクリスマスに浮かれた民衆。
だが、20歳の俺に浮かれた感情を持つことは許されない。
俺の仕事は入国審査官と税関を兼ねている。
AIによって、人ひとりができる裁量が増えたからだ。
そんな俺は、AIアシストを使いながら不審な動きがある入国者がいないかチェックをしていた。
その時、見覚えのある風貌が目に入る。
スーツケースを片手に端末を操作している一般人。
あれは、、、
そうだ、小中が一緒だった宇都宮だ。確か今海外大学に留学しているんだっけか。
子供の時とは打って変わって今は金髪に染めていかにもギャルって感じだ。
おっと危ない危ない。
特定の人物に気を注目させてはいけない。もっと全体を見なければ。
…。
そういっても、人間見るなと言われたり意識してしまえば意識してしまうもの。
どうしても宇都宮を意識してしまう。
特段仲が良かったわけじゃない。
ただ、小学校の時から気にはなっていた。
誰にでも手を差し伸べるいいやつだし。顔も、、、かわいい。
(帰国してたんだな、そうか向こうは『クリスマス休暇』ってやつか)
お店とかほとんど閉まるって聞いたことがある。
そうやって俺はどうしても宇都宮に視線を送ってたらしい。
宇都宮はこちらに気づいた素振りを見せる。
「あなた、もしかして伊藤くん?」
「ああ、そうだ。」
「ここで何を──もしかして、働いてるの?」
「そうだな、今当直中だ。」
ふーんっと言って様子でジロジロと俺のシルエット全体を見てくる。
「似合ってないね。」
と笑いながら言ってくる。
「業務中だ。あまりからかわないでくれ。」
「それもそうだねーよくないよくない。」
と言いつつ去らない宇都宮。
「ねぇ、あなた彼女いるの?」
「はぁ!?いないけど?」
唐突な質問に大声を出しながら一瞬飛び上がってしまった。周囲の人こっち向いたぞ。
「じゃあ今日何時まで?私がデートしてあげる!」
「お前何言ってるんだ?」
「私の実家、今こっちにないの。首都のほう行っちゃってさ。」
へぇ知らなかった。ん?だったらなんでこっちに戻ってきたんだ?
「大切な人たちに会いに来た。伊藤くんもその中の一人。」
「…。」
「終わったら個チャ頂戴よ。中心街で待ってる。」
じゃあね、って言って到着ゲートを出ていく宇都宮。
大切な人って、誰のことだ。
そんな中俺は小学校の卒業式の記憶が頭に浮かぶ。
小学校の桜の木の前で。
『中学上がっても俺が守ってやるから、ぜってー離れんなよな!』
ちょっと宇都宮が気になってたから出たでまかせの言葉。
確か、あの時の宇都宮の返しは、、、
『遠くに行っても会いに行くから。』
…!
まさか大人になって伏線回収ってやつか?
そんなことを思っているとAIから通知が入り元の世界に戻ってくる。
…守るよ。お前も。この国の水際も。
そうやって俺は危機への対処へと向かった。




