episode4 レッド
戦隊モノ恒例の巨大ロボ合体の巻です。
7体の巨大ロボ合体。小説という媒体で上手に表現できているでしょうか?
---from professor risa side---
「なるほど、いや、その可能性は十分にある。」
いま私は地上の黒滝のおじいさんとオンラインでディスカッションしている。
通信は電力を思いのほか消費するので、遭難して資源が貴重な今、できる限り連絡はSNSで済ませたいところではあるが・・・悲しいかな研究対象があれば討論したくなるのは研究者の業だ。
今の私たちが議論を交わしている内容は「洞窟内の魔物の動き」だ。
私たちは以下の異変を観測している
①魔物がいなくなった
②帝国兵という敵兵も出没しなくなった
③上層から喧騒が聞こえる
魔石の洞窟にはゴブリンなどのいままでの常識では考えにくい魔物としか言いようのないモノが生息し、隙あらば襲ってくる。
また地底にも複数の国家があり、その中でも帝国という侵略国家が存在しているというのも確認がとれた。
実際にこの研究所は帝国とやらに攻め込まれていたしな。
黒滝のおじいちゃんも地上が帝国兵が連れてきた巨大なウサギ型モンスターの襲撃を受けたと言っている。
そして帝国に所属していた地底国家の一つ青の国出身だというアオイという女性の証言。
これらの情報を検討した結果、少なくとも地底には地底帝国という国があるのは間違いないと言えるだろう。
厄介なのはその地底国家が侵略国家であるということだ。
その地底帝国は侵略国家らしく執拗に私の研究所にちょっかいを仕掛けていたが、あるときを境に消えた。
代わりに上層がなにやら騒がしい・・・音と振動が観測されている。
アパートであれば近隣トラブルがおきるレベルだ。
この原因は何か。ということを黒滝教授ら地上の研究者とオンラインでディスカッションしていた。
①~③を組み合わせて考えると「魔物と帝国兵が上層で争っている。」という仮説がもっともらしい。しかしながら疑問が残る。「なぜ、魔物と帝国兵が上層で戦っているか?」という疑問だ。
帝国の動きから私たち「地上」を狙っていると想定される。
魔物狩りが目的ではない。
魔物と帝国が戦う必要はないのだ。
黒滝のおじいちゃんと意見交換をしていく中で一つの可能性にあたりました。
黒滝教授が実行されています私たちの救出作戦です。
洞窟を大型重機で掘り進もうというダイナミックな作戦です。
帝国兵が2度も洞窟の天井を破壊し5階層分消滅したことから着想を得た作戦との事です
このおじいちゃん。相変わらずやることがダイナミックですな。
まあ、そうせざるを得ない事情もあるようだ。
帝国兵が洞窟の天井を破壊したことによって崩落現場の正確な位置の補足が困難になったらしい。
もっとも、このダイナミックな作戦は上手くいっていないようだ。
シンプルに硬いらしい。
話しを戻そう。
現在行われている洞窟を大型重機で掘り進もうというダイナミックな作戦。
この作業中に些細な変化があったようだ。
洞窟の入り口から一切の魔物が出なくなったらしい。
私が地上にいたときは極まれに迷い込んだ魔物が地上にでてくることもありニュース紙面を賑わせていた。それが文字通り一切の魔物が出現しなくなったんだ。
では、どこにいったのか?
黒滝のおじいちゃんの作戦は大型重機を使用する。
工事現場のように当然、騒音は発生する。
魔物も動物と同じく野生の生物であるなら危険に敏感ではないだろうか?
騒音に驚いて地下へ地下へ移動したということは可能性として十分あると考えられる。
そして帝国は地下にある。
帝国は地上の騒音を恐れ地下に地下に移動している魔物に大挙して襲い掛かられると困るのではないか?
そこでその魔物の大軍を食い止めるべく軍を魔物退治の方にあてた。
その戦いが騒音の原因ではないか?
このような仮説が成り立つのではないか?
「大型重機をいれての作業がただ、ただ魔物を驚かし追い払うだけとはのう。」
黒滝のおじいちゃんは嘆いていた。
それはそうか。掘削作業は洞窟の固さに遅々と進んでいない。
おっと、私たちを救出しようとしている黒滝のおじいちゃんにこのような考えは失礼にあたるだろう。
なんでも評論の議題にするのは私の悪い癖だ。
「帝国とやらは5層の天井を破壊し、横道まで作っているのに我々は大量の重機を使用して1層の天井すら破れずにいる。まったく。力の差を感じるのう。」
「黒滝教授。条件が違うのかもしれませんよ。」
「条件?」
「私たちが魔石の洞窟を呼んでいるこの洞窟は文字通り魔石が採れます。」
「それがどうしたのじゃ?」
「つまり洞窟の壁も天井も床も通常ではない。魔法の力を持っている可能性があります。」
「なにがいいたいのだね。はっきり言ってほしいのう。」
「魔法の力を借りないと壊せない可能性があります。」
「なるほど、なるほど。確かに1階の天井が無くなったのは、魔法の力で天井を材料にして巨大な泥人形を作ったのが原因であったな。2階~5階の天井が破壊されたのはアオイが言うには魔法で人間サイズになっていた巨大モンスターを元に戻した時・・・いずれも魔法が絡んでいるな。可能性としては十分にあるの。」
「ええ、あと教授のお話では、脇道をつかって地上に出た帝国部隊も土魔法の使い手がいたとか・・・可能性ありませんか?」
「ある。大いにある。・・・リサ教授よ。」
「なんでしょう?」
「正直、魔法を使う帝国とやらが羨ましいのう。我々も魔石の研究を始めたが、それほど多くの事が出来るようになったわけではない。」
「それはこれからの研究如何ではないでしょうか?」
「そう、それはそうなのだが、帝国は魔法でなければ壊せない洞窟の壁を掘り進む技術をもっている。我々はもっていない。もっていないのだよ。正直・・・うらやましいね。」
「共同研究できたらよいのですが・・・いきなり襲ってくる連中ですからねぇ。」
「アオイの報告によれば、侵略国家を自認しているそうだ。欲しいものは奪うのが国是らしい。」
「発想が戦国大名ですね。」
「違いない・・・いた・・・栓なき議論はここまでにしよう・・・それよりもリサ教授。あなたの救出作戦だ。今の仮説が正しければ、救助に向かうのがより困難になったということになる。」
「私たちがいる地点と地上との間で魔物と帝国兵が戦闘している可能性があるからですね。」
「そうだ。救出には戦闘地帯を通ることになる。現実的ではない。」
「・・・脇道はどうですか? 一部の帝国兵がそこから地上に攻めてきた。逆にそこから洞窟内を探索できる可能性があるのではないでしょうか?」
「可能性はある。そこで意見が割れていてな。頭が痛いのじゃよ。」
「意見が割れる? どういうことですか?」
「救助に行くのはレンジャーワンだ。今のところあの3名だけが帝国に対抗できている。」
「報告を聞く限りそのようですね。ねえ、黒滝教授? そこに赤石の名前が含まれているのがものすごく不満なのですが。なぜ彼がレンジャーワンのメンバーに入っているのでしょう?赤石を外せませんか? 私のために彼が危険な目にあうのは困るのですが。」
「そう捲し立てるな。気持ちはわかるが仕方あるまい。赤石自身が望んでいる。それに、それを成しえる力も得てしまった。」
「例の山吹が魔石から発見したドラウプニルとかいう遺物ですか。」
「そう、赤石はドラウプニルに選ばれてしまったからのう。そしてドラウプニルを装備した赤石は帝国を見事撃退した実績を見せてしまったからのう。」
「・・・赤石を外すことはもう難しいといいたいわけですね。」
「希望に添えず申し訳ない。」
私の問いに神妙な顔で頷く黒滝の狸ジジイ。
ふん。どこまでが本音なのやら。
「赤石のことは申し訳ないが、話を戻すぞ。」
「しかたありません。いいでしょう。」
本音はものすごく不満で、赤石のことを思うと不安だ。
しかし、このまま赤石のことを論じても解決はしないということも理性ではわかっている。
赤石、決して無茶をしてくれるなよ。
私のために君が危くなるとしたら悔やみきれないなんてもんじゃないからな。
まったく。
「あー。話を戻すぞ。意見が割れているというところまで話をしたと思っていたが?」
「ええ、そうですね。敵が掘り進んできた脇道を利用して私たちのところまで救出に来れるのではないかという可能性を議論しようとしていたところ、意見が割れているということでしたね。その意見が割れているというのは具体的に何と何で割れているのです?」
「ああ。一つはリサ教授の言った脇道からの救出作戦だの。」
「もう一つは?」
「ふむ。帝国がこの地上に攻めてきたこと自体が問題になってな。ここでレンジャーワンがリサ教授の救出に向かうと地上を守る戦力がなくなると主張する奴らが出てきて面倒なことになっておるのよ。」
私は眉を顰める。
私の救出より、我が身の安全を優先する考えの奴らが出てきたか。
“私の命なんてどうなってもいいというの!”
なんてヒステリックな事は言うまい。
帝国が地上に攻めてきた。
それも見たこともない巨大なモンスターでだ。
モンスターが普通にいる魔石の洞窟とは違い、平和な地上なのだ。
そこに現れた侵略者と巨大モンスター。
恐怖するのは当然だろう。
さらに、その侵略者と巨大モンスターを倒した3人。
まさに救国の英雄だろう。
倒したのは巨大なウサギだけどな。
その英雄がいないときにまた侵略者や巨大モンスターに襲われたらどうしようという不安と恐怖。その感情が大衆を支配してもおかしくはない。
ふー。これは真面目に自力での脱出を考えないといけないかもしれないな。
黒滝のおじいちゃん率いるレンジャーワンが私たちの救出に向かうと世論が敵になるわけだ。
その方がいいか。
少し安堵する私がいる。
赤石が危険な目にあわないからな。
私はひそかに自力での脱出を決意する。
「万が一、帝国兵なり魔物が地上に来た時に確実に対抗できるのレンジャーワンだからのう。」
「私たちを救助にいくか? 地上防衛するか?ということですか?それで意見が割れていると。」
「そうなのだ。色々、目立ちすぎたわい。状況的にしかたないのだがメディアが目をつけた。一人二人の反対者ならリサ教授のためだ。何とかして見せようとは思うのだが、メディアを見た大衆が騒ぐとやり難くて敵わんわい。ただ・・・。」
「ただ?」
「赤石という男はシンプルだな。どんなことがあっても救助にむかうだろう。」
黒滝のクソジジイがこちらを上目遣いで見てくる。
なんだよ。
私もそんな気がするよ。
アイツは世論なんぞ頓着しないで信じた道を進むだろう。
ドラウプニルとかいうその願いを成すための手段を手に入れたのであれば猶更だ。
困ったことにな。
私は思案する。
どうしたら赤石のアホが、危険を省みずに・・・いや違うな。
あいつは来る。有難いというか、やめてくれというか。
好意は時に毒となるのだが・・
ふむ。
なら、思考を変えよう。
どうしたら赤石の危険が減る?
「そうですね・・・帝国兵もいないようですし私たちも脱出にむけて動いてみますか。」
「おいおい。今、リサ教授がいる場所は未知の領域だ。盲動は慎んでくれよ。」
「先程、黒滝教授は意見が割れているといってましたね。それなら赤石はともかく、他の2名は私たちの救助に行きにくい雰囲気なのではないでしょうか? であれば私達も帝国兵がいないチャンスを利用して脱出計画を・・・」
「待ちなされ、待ちなされ。脱出には道筋が要る。しかも、できるだけ近道じゃ。遭難したときに一番いかんのは、闇雲に歩き回ることよ。そうすれば、余計に身を滅ぼすわい。
君らの上階に戦闘地帯がいる可能性があるなら猶更だ。動くなら周辺のマッピング調査から始めてくれ。こちらもレンジャーワン全員は無理でも1、2名で脇道から入ってもらい探索作業をメインに行ってもらう。それで座標を突き合せていけば最短ルートが割り出せる可能性があるのではないか?」
「そうですねぇ。」
黒滝のおじいちゃんの提案を吟味する。
正直、場当たり的なアイデアだね。
私が自力で脱出するという妄動を止めたいという想いから来たフラッシュアイデアだろう。
気持ちはありがたいですがね。
「慎重にな。命は一つしかない。」
私は思案する。
選択肢はいくつかあると思います。
ただ、自力脱出するなら好機であることは事実なのです。
モンスターも面倒な帝国兵もいませんから。
一つ懸念があるとすれば戦力でしょう。
私たちが帝国兵なり魔物を撃退できているのはこの基地の防衛機能によるところが大きい。
その基地を捨てて脱出するとして、どこまでモンスターや帝国兵と戦えるか?
または遭遇せずに避け続けられるか?
うーん。良いアイデアが浮かびませんね。
少し冷静さを欠いているかもしれません。
世論が間接的に私の救助を断念させ、見捨てるつもりというのがやはり原因なのか?
私の願いに反して赤石が救助に来ようとしている状況対してなのか?
うん。前頭葉仕事てくれよな
それでも考えなければいけない。
選択しなければならない。
自分が、そして研究所の仲間が助かるために、そして赤石に万が一のことが無いように
「わかりました。まずは周辺の探索から開始します。危険なら即基地内へ撤退。座標を集めて突合せを行う。そして最短ルートの算出。これでいいですね。」
「まずはそれでいこう。まだ焦る時ではないわい。」
限界と想定される日まで残り58日
備蓄もあるし、通信環境もあるためそこまで精神にダメージをおっている所員も表面上はいない。確かに黒滝のおじいちゃんの言う通り焦る時期ではないのかもしれない。
---from underground empire side---
帝国最高会議 帝王と宰相。四天王が集まる会議である。
その会議はとても重苦しい雰囲気に包まれていた。
「テメェら何してんのバカなの?」
会議開口一番、怒号をあげたのはタイタン。
怒りの原因は作戦失敗。その咎がデビルフィッシュとヘドリーにあると怒っているのだ。
前回の地上侵攻作戦はこうだった。
デビルフィッシュとヘドリーがいつものように洞窟を通って地上に進行。
しかしながらこれは囮。
土魔法に長けた兵を伴って、洞窟に横道を作りそこから地上に到達。
ここで巨大モンスター アル・ミラージの人化魔法を解き放ち地上を制圧するというものであった。
ところがデビルフィッシュとヘドリーは謎のスタンビートに遭い、囮になることができず、戦力をタイタン側に集中され、アル・ミラージは撃退され侵攻作戦は失敗した。
デビルフィッシュは無言だ。
スタンビートという不可抗力があったのだから仕方ないという気持ちと、タイタンごときにエクスキューズするのは慈悲を乞うようで矜持が許さないという気持ちが混ざり、無言となっている。
「まあまあ、スタンビートは仕方ないではないか。それにさすがは四天王である。見事スタンビートを防いだのは賞賛に値する。」
宰相ユミルがとりなすように二人の間に入る。
ユミルの言う通り、デビルフィッシュとヘドリーは見事にモンスターのスタンビートを防ぎ切った。
残党は残っており、いくつか小規模戦闘がつづいているためヘドリーは現地に残り、得意の土魔法で魔物の進路をふさぐ作業をしている。
その作業が終われば完全に収束するであろう。
「ちっ。まあいい運のねぇヤローだって事で納得しておいてやる。んで、どうするよ? スタンビートを防ぐためにメインの通路は塞ぐんだろ? 通れなくなっちまうな。俺らが作った横道を使うのか?」
タイタンが矛を収める。
彼も四天王である。悪態はつくが、それが不毛だとは理解している。
「横道の作戦は悪くなかった。」
帝王が口を開いた。
タイタン・デビルフィッシュ・宰相ユミル、その場にいた幹部が居住まいをただす。
「基本戦術通り大型モンスターを敵地に送り出すことに成功したからね。ただし・・・」
帝王はここで言葉をきった。
しばらく思案する間が場を支配する。
その間、口数の少ないデビルフィッシュはともかく、傍若なタイタン、神経質な宰相ユミルも沈黙し帝王の言葉を待つ。
「地上の戦力は侮れないね。魔法を無効化する、スタンビートを発生させる、大型モンスターを倒せる力。ありえない力だ。まるで何者かの介入があったかのよう・・・」
「介入ですか?」
宰相ユミルが首をひねる
「そう、地上人にしては過ぎた力をもっているものが数名いるようだね。そして、この数名がポイントだよね。」
「なるほど、地上人の弱点は過ぎた力をもった戦士が数名しかおらぬこと。そうおっしゃりたいのですな。」
「そう。複数横道を作られたならどうするんだろうね? ねぇタイタン?」
「ちぃ わーったよ。俺様と俺様の部下で複数横道を作って多方面から攻めりゃぁいいのだろ?」
「正解。頼んだよ。」
---from aoi side---
「解せぬ」
我は憮然とする。
目の前ではゲラゲラ笑っているアオイと山吹がいる。
今は前回の戦いで手に入れたアル・ミラージから得たスキル「幻獣の角」の検証中である。
前回学習したが、本当の意味で全力を出すには自分自身を知らねばならぬ。そのため獲得したスキルの検証は大事である。
どうやら敵との戦闘で取得したスキルとやらは変身せぬと使えぬらしい。
そのため変身し、何かあっても良いように近くの山で実証してみたのだが・・・
まずは容姿が変化した。
頭に角が生えたのだ。
スキルの名前からしてある程度想像できたので、それは問題ない。
我の変身姿は赤であるので赤鬼のようであれば、まだ格好はつくのだが、そんな姿ではない。
角が長い・・・長すぎるのだ。
我の身長は2m程度である。その我に対して5mはあろうかという角はいくらなんでも長すぎであろう。
変身直後に発生した長い角が目の前の樹木を突き破る。
威力は凄まじいが困ったことにその角が樹木に突き刺さったまま抜けなくなってしまった。
そこで四苦八苦しているとその角が樹木に突き刺さったままの状態で大きく跳ねた。
軽くジャンプした感覚ではあったが、それこそ体感で3mは跳んだのではあるまいか?
この幻獣の角は跳躍力強化の効果があるようである。
それはよい。身体能力の強化は戦力になる。
問題は5mの角が幹に刺さった状態で3m跳ねるとどうなるかである。
角は折れずに弓のようにしなった。
しなった角は板バネのように弾性力を持ち、その戻る力で我を地面にたたきつけたのである。
その叩きつけられた間抜けな格好をみてアオイと山吹は笑ったのである。
理不尽である。
変身していたから良いものを通常であれば大怪我は必至であった。
我が憮然としているとアオイが肩をポンポンっと叩きながら
「まあまあ。怒るな怒るな。生真面目な赤石がコメディみたいなことやってたからさぁ。最後はベチンってハエ叩きみたいになっていたし。」
ハエとな!
いっさい、フォローになっていない! いやフォローする気はないではないか!
「アオイちゃん。そこまでです! そこまでにしましょう。ところで幻獣の角の効果ですが、長い角、跳躍力強化といったところでしょうか? 他に何か感じませんでしたか?」
山吹の問いに思案する。確かに跳躍し中空にいたときに違和感と言うか、足の底に引っかかりは感じていた。
この感覚はもしかすると・・・
我は不確かな感覚を確かめるため再び跳躍する。
「あっ! 待っ・・」
山吹が何か言いかけていたが遅い。
跳躍し最高地点に到着する。
普通にジャンプするときは最高地点という意識は皆無であったが3m程度の距離を跳ねるとなると、そのような感覚となるというのは一つ勉強になった。
それはともかく、先程跳んだ時、足の底にある感覚を思い出して、中空でもう一度跳躍する。
「むう。」
出来たか。中空での2段跳躍。何もない中空で再び跳躍することが可能となった。これであれば中空での三角とび蹴りも可能ではないか。
新たなる技の可能性に密かに心を躍らせる。
次の瞬間、地面に叩きつけられた・
「だから、待ってって言おうとしたんです。角が木に刺さった状態で跳ねたらまた、そうなるに決まってるじゃないですか! まったく。」
「ニャハハー―っ! ビターーンっていったよ。ビターンって! いやあ、面白いものみたわー。」
ぬう。不覚。
試してみたいという興味が先に勝ってしまい、安全確認がおろそかになってしまった。
アオイには笑われるし、山吹には呆れられる・・・いやちょっと笑っている・・・
ぬう。我もそこまで人はできておらぬ。
今に見てろ!という感情をどうにも抑えきれぬ。
とりあえず今は話題を逸らすことを考えたい。
でなければ我が感情に負けて爆発してしまう。
かといって言葉は得意ではない。
なにか他に気が移るような出来事が発生せぬものか?
などと都合の良いことを考えてしまうのは我の心の弱さであろう。
当然地面が揺れる。
目の前の斜面に空洞が現れる。
その空洞から顕れたのは帝国のタイタンについていた確か・・・ヒートとかいう敵だ。
ありがたい。これで我の無様な姿からアオイと山吹の意識を逸らすことができる!
---from aoi side---
「やべっ!」
慌てて私は変身の操作を行う。
同時に「An armor changes Wodan」の機械音が鳴り響く。
私の体が青い全身スーツに覆われる。マントのような青藍のパーカーとフレアスカート。鍔の広いとんがり帽子に杖を装着。
「Completion! The magicians・blue」
機械音と共に青を基調とした魔法使いに変身する。
なんで、ここにタイタンの部下が来たんだ? 慌てて変身したけど、バレてないよね?
大丈夫だよね?
『バレたらいいのに。』
なんかカグヤが毒を吐いてますが気にしないことにする。
今はバレない事と臨戦態勢に集中する。
場合によってはヒート。
お前には消えてもらうしかないな。
『そういうところが姫ではなく、戦術家ですわね。即座に冷徹な戦闘思考に切り替えることができる。』
「なによ。貶してる?」
『褒めてるのですわ。常にその場の最善手を打てるその思考は素晴らしいですわ。しかしながらわからないのは問答無用で口を塞がないのですね。アンタでしたら正体が露見しないようにすぐに行動にうつすと思いましたが。』
「そうしたいんだけどね。それは私のエゴだよねー。相手の目的がわからないじゃん。交渉にきた可能性もなくもないとしたら様子見からかなー。」
『冷徹ですけどお人よしですわね。そんなことないと知っているでしょうに? あいては侵略を是とする地底帝国の戦士ですわよ。』
「地底帝国の戦士なんて個人個人の顔が見えない言い方はキライ。それぞれ考えは持っているはず。」
『まったく。』
「貶してる?」
『褒めてるのですわ。』
「An armor changes Frey」の機械音が鳴り響く。
山吹も変身したようだ。
山吹の体がド派手な黄色の全身スーツと軽鎧に覆われる。
フルマスクのようなヘルメットに頭部が全て隠され、その容姿はフル装備のモトクロス選手にも見える。腰に大剣、背にはマントを装備している。
「Completion! The Commander・yellow」
機械音と共に山吹も黄色を基調とした神の戦士に変身した。
「おっす! お久しぶりです。」
ヒートはペコリとお辞儀する。
なんだこいつは。
この前、敵として戦ったよね。
少なくとも友人じゃないよね。
私が警戒していると・・・
「あれ、知ってる人と出会ったら挨拶するって教わらなかったっすか? タイタン様に怒られるっすよ。」
とヒートが呆れた声をあげる。
は? 何言ってんだコイツ。
思わずツッコミそうになったがやめておく。
それでも私は動く気は無い。一瞬の隙で事態が180度変わるという事を体験で知っているからなー。
ヒートが何を考えているかわからないし。
それがわかるまでは警戒は解かないでおこう。
ヒートの出てきた空洞から帝国兵が遅れて到着した。
おおう。
ぞろぞろ来ちゃったよ。
これは慎重すぎて後手を踏んだかな?
『そういうところが姫ではなく、アホですわね。』
「うっさい。黙れカグヤ。」
戦闘が始まるかもわからんのに、いらないチャチャをいれるんじゃない。
これだからド素人は困るんだよ。
「ところで待ち伏せですか? すごいっすね。どうやって僕がこの場所に出てくるのがわかったんですか? こっそり地上に出て奇襲しようと思ったのに。」
ヒートがのほほんの殺伐なことをいってきた。
あー。そうだよね。
帝国だもんね。
欲しけりゃ力づくだよね。
攻める気満々かー。
ちょっと慎重になりすぎたかー。
しゃーない。
これ以上待っている意味はないね。
先に攻撃できるかどうかは大事なポイントだ。
ヒートの目的も確認できたし先制攻撃といきましょう。
「Gandir! gandir! gandir!」
私はマジックミサイルを乱射。弾幕を張り、同時に突っ込む。
「GYAAAA!」
帝国兵が数名吹き飛ぶ。
「問答無用ですかい!」
ヒートが慌てて土の壁を出現させて防ぐ。
同時に帝国兵が攻めてきた。
『あまいですわね。』
カグヤがスキル「胡蝶の舞」を発動。ヒートの作った魔法の土壁を消滅させた。
「はへ! 僕ちんの壁が消えちった。」
当たり前だ!
カグヤのスキルは対四天王特化。その部下ごときでは勝負にならない。
顔を見られたかもしれないヒートはここで倒す。
「Gandir! gandir! gandir!」
マジックミサイルをヒートに叩きつける
「はひぃ! ほぉわぁ! ま! 待ってぇ・・・あべぇ!」
ヒートはマジックミサイルの連打を浴びて倒れた。
『LEVELUP!』
脳内に機械音が響き自動的に空間タッチパネルが開く。
―ステータス―――
名前:アオイ・ミナーモ
職業:元青の国 第一王女 元青の国 魔法兵隊長 元地底帝国四天王
LV:58⇒59
スキル:統率LV4 魔法(無属性)LV8 胡蝶の夢
魔法(土)LV1(NEW)
装備:ドラウプニル(青) ゲンドゥル
眷属:フギ ムニ ゲー フレキ スレイプ
――――――――
おお、土魔法を労せずしてて手に入れたみたい。
このドラウプニルの敵のスキルを一つ奪う能力は戦力アップという観点からスバラシイ。
労せず不得意な属性の魔法も問答無料で入手できる。正に神の御業だ。
中には幻獣の角のようなオモシロスキルも入手しちゃうけどね。
え? 私は絶対にそんな面白スキルはとらないよ。
赤石みたでしょ。あんな体を張った面白芸人みたいなことはぜーったいにしないからね。
「ブルー!すごいですね。」
「・・・うむ。容赦ないな。」
帝国兵を相手していた山吹・赤石も敵を倒しきったようだ。
「当り前よ。先制攻撃で相手のペースにさせないのは基本でしょ。」
『それにしてもおかしいですわ。』
カグヤが疑問を呈す。ちなみにカグヤの声は私にしか聞こえていない。
こいつはスキルになってしまい私としかコミュ取れない可哀そうな奴になった。
私が死んだらこいつも死ぬんだろうな。正に一心同体。カグヤもそのあたりはわかっているんだろうな。本心はどうであれ今のところ協力してくれている。
「あにがよ?」
可哀そうなので仕方なく、本当に仕方なくカグヤの質問に相槌を打ってあげる。
『上司であるタイタンはどうしたのでしょうか。部下だけが横穴を掘って出没するなんてあるのでしょうか?』
!
それはあり得ない。
断言できる。
四天王は実戦部隊だ。必ず戦場に出る。
となるとタイタンは? そして帝国の必勝法は?
こう考えると自ずと回答が出る。
「GYAAAAAA!」
うるさいなー。
人が考えているときは静かにするのがマナーってもんでしょうに。
私は声のした方を振り向く
「え。」
街の方をみると巨大モンスターが4体出現していた。
牛頭の巨人、ミノタウロス
一つ目巨人、キュクロプス
騎士型巨人 ギガース
半竜の巨人 スパルトイ
やられた。
タイタンの部下による多方面攻撃だ。
---from yamabuki side---
「来てください! スキーズ あなたの出番です!」
内心の焦りを押し殺して空飛ぶ船スキーズを呼びます。
今までは相手が全力を出せないように戦ってきました。
戦略上優位に立つように先手先手を打ってきました。
ついに相手が全力を出せる機会を与えてしまいました。しかも相手は四体です。
初めての真っ向勝負。
三柱の神々から貸していただいたこの力がどこまで通用するのか? 本当の意味で試されます。
「おいで! フギフギ! ムニちゃん!」
アオイちゃんも機械仕掛けの鳥を呼び出し、フギフギに搭乗。四体の巨人に空から向かいます。
こういう時の判断がアオイちゃんは早いです。
気づいたら行動に移しています。
僕も負けてられません。
「スキーズ! 大砲の出番です!」
『イエス、マイマスター』
スキーズの主砲ならこの位置からでも届きます。
僕はアオイちゃんを援護すべく主砲による弾幕をはりながら四体の巨人にむかいます。
「来るがよい。我が眷属 シアルフ!」
赤石クンも自身の眷属を呼び出しました。
彼の足元に巨大な魔法陣が展開されます。
その魔法陣からせりあげるのは30mもある巨大な真紅のフルアーマー
その巨大なフルアーマーと赤石クンは同化しました。
背にあるスラスターを噴射し斜め上空に飛び上がりながら四体の巨人にむかいます。
『ぬうん。幻獣の角よ。力を借りるぞ!』
赤石クンは巨大化の状態で自身のスキルを発動させたようです。
さすがです! その発想はなかったです。
眷属の一体化している状態でスキルを発動するなんて
持てる力を総動員するという本当の意味での全力を理解した赤石クンの成長が感じられます。
推進器で敵上空まで飛び上がったあと、幻獣の角の2段ジャンプの応用で空を蹴り巨人のいる斜め下に向かって飛び蹴りを放ちました。
三柱の神々の力なのか、その跳び蹴り。電を纏っています。
「吐―っ!」
赤石クンの狙いは牛頭の巨人の様です。
ここは他の巨人が邪魔しないように砲撃で援護です。
ここで予想外のこと。いやよくよく考えれば予想できたことではありますが、とにかくビックリ仰天のことがおきました。
斜め下に飛び蹴りの体制で牛頭の巨人に突っ込む赤石クン。
スキル『幻獣の角』を発動させてますから額から長大な角が飛び出しています。
そのランスのような角が牛頭の巨人の頭に突き刺さりました。
あまりにも勢いよく突き刺さったためか頭が吹き飛んじゃってます。
赤石クンの気合の入ったキックは行き場をなくしてしまいました。
「なんと理不尽な事か!」
赤石クンの駆るシアルフががっくり肩を落としています。
あーっ。わかります。
せっかく格好良いキックをはなったのにそれが無駄になりました。
とことん赤石クンと幻獣の角はある意味相性が悪いようです
それでも敵を倒したので、相性が良いようです。
ほらそこ。アオイちゃん ゲラゲラ笑わない。
赤石クンも戦場で頭を抱えないでください。
---from aoi side---
いやーわらった。わらった。
跳び蹴りの態勢で角で倒すなんてありえないわ。
誰もあんな展開想像してなかったでしょ。
ある意味、最強の奇襲だわ。
『そんな油断してると。足元掬われますわよ。まあ、あれは面白かったですが』
「でしょ。でしょ。レッドはお笑いの才能あるわ。」
『はしゃぐのはいいのですけど、彼はそのお笑い技で1体倒してるのです。我が姫は何をしているのでしょうか。』
「そんな安い挑発はのる気はないなー。一瞬、巨大モンスターを四体侵攻させてしまって焦ったけどね。イエローがいい仕事してる。彼が遠距離砲で弾幕をはって、巨大モンスターが本領発揮しづらい環境を作っている限り負けはないなー。私もまだ全力じゃないしね・・・おいでゲーくん。フレキちゃん。」
私は眷属である機械仕掛けの狼を2体呼び出す。
私が変身後に呼び出せる眷属は5体。
その内、機械仕掛けの鳥の2体はお試し済み。
今もその機械仕掛けの鳥の一体、フギフギに乗って空を移動中。もう一体の機械仕掛けの鳥であるムニちゃんには魔法弾で弾幕を張ってもらっている。
これだけでも十分戦えるけどさ。
他の眷属がどんな性能でどんな仕事ができるか。変身と同時に頭の中にマニュアル情報は入ってきたけど、実際に仕事させてみないとわからないからなー。
試せるときに試してみないといけないよね。
私は慎重なのだよ。
まずはゲーくん。
ゲーくんは呼び出された直後、吠えた。
しつけの悪い犬。いや狼だな。ご近所迷惑ですよ。飼い主の顔が見てみたいものだ。
この「吠える」というアクション。
どうやら音波・振動攻撃の類らしい。
敵の巨人達が怯む。
次はフレキちゃん。
フレキちゃんは呼び出された直後、無数の鎖を召喚する。
召喚された相手が、更に召喚するってシステムどうなんよ。無駄がないかい?
その鎖が騎士型巨人ギガースを拘束する。
「とどめ! スレイプ!」
私は機械仕掛けの騎馬を呼び出す。
こいつも試してみないとね。
騎馬は眩い光を纏い騎士型巨人ギガースに突貫。
ギガースを粉砕した後、消えた。
スレイプは他の眷属とは違い攻撃の一瞬のみの召喚になるようだなぁ。
それが私の今の実力だからなのかは不明だけどさ。
「GAAAAA!」
残っている巨人の内の一体。
一つ目巨人キュクロプスが電撃を放った。
こいつ巨大なだけでなく魔法も使うんか。厄介だな。
狙いは魔法弾による爆撃を繰り返しているムニちゃん。
上空から爆撃を繰り返されると鬱陶しいらしい。
気持ちはわかるけどね。
『私がいる以上、させませんわ。』
カグヤが魔法無効の胡蝶の舞を発動させる。
カーテンのような魔法の蝶の群れが戦場に出現する。
一つ目巨人キュクロプスがはなった電撃はムニちゃんに届くことなく、魔法の蝶の群れのカーテンに阻まれ消滅した。
一つ目巨人キュクロプスは自慢の電撃が消滅したことが理解できなかったらしい。
動きを止めてしきりに首をひねっている。
その隙は悪手だよ。いや仕草は可愛いけどさ。
一つ目巨人キュクロプスはその後、頭を吹き飛ばされて倒れた。
吹き飛ばしたのは山吹のスキーズの主砲。さすが山吹。彼がその隙を逃すわけがない。
いやあ、どうなるかと思ったけど真っ向勝負でも十分戦えたね。
ドラウプニルの力を得た私達。
思いのほか強いぞ。
帝国の得意戦術の対してでも十分、対応できてる。
残る敵は半竜の巨人 スパルトイのみ。
さあどうする? タイタン
---from titan side---
「すげぇなオイ。」
目の前の光景に目を見張る。
巨人を4体も侵攻させることに成功したんだ。
この時点で今までであったら勝利確定だぜ。
それが覆されてる。
マジかよ。
残るは1体
半竜の巨人 スパルトイのみってどういうことよ。
俺が同じ状況で巨人四体を相手にここまでやれるかといったらぜってー無理だ。
地上ってのは何か?
帝国より強ェとでもいうのか?
ヒートが来ねぇのも気になる。なんかアクシデントあったか? 途中やられたんじゃねぇだろうなぁ。
「ふむ。やはりカグヤが敵にまわったようだな。」
バーンが一つ目巨人キュクロプスが放った電撃を妨害した魔法の蝶の群れを見て歯ぎしりする。
そうだな。あの魔法の蝶はカグヤの固有スキル。これでカグヤの裏切りは確定だろうな。
あの機械でできている巨大な鳥に乗っている全身青い装束の魔法使いがカグヤに違いねぇ。
裏切った理由は知らねぇがよ。
「だが、カグヤよ。帝国の本当の恐ろしさを忘れてしまったわけじゃねぇよな。おい、プロネミンス!」
「御意! ・・・Fimbul!Jǫtunn!Fimbul!draca!Fimbul!Óscópnir!sœkja! fé!」
プロネミンスが俺様の命令に応じて呪文を唱える。
半竜の巨人 スパルトイがその呪文に応じて変化する。
この巨人だけは別格だ。
二重に人化魔法をかけていたからな。
こいつが真の力を取り戻したら誰にも勝てない。
半竜の巨人 スパルトイが真の姿を取り戻した
レッドドラゴンだ。
テメェらの実力はわかった。正に神の御業としか思えねぇ
だがドラゴン相手には勝てねぇだろ?
巨人・悪魔に並ぶ神々の敵対者だからな。
---from yamabuki side---
目の前の巨人が真紅のドラゴンに変化しました。
ドラゴンって本当に存在していたのですね。
驚きです。
真紅のドラゴンは大口を開けました。
えーっと僕の知っているファンタージーゲーム知識ではドラゴンはブレス攻撃をします。
と考えるとこの口を大きく開く動作と言うのはブレス攻撃の予備動作でしょうか(汗
まずい。まずいです。
ここまで思い至って、慌ててスキーズに指示を出します。
「スキーズ。あなたの出番です。ドラゴンの口にむけて一斉斉射!」
『イエス。マイマスター。出力レベル『対竜』最大で実行します。』
スキーズもドラゴンの脅威を知ってか特殊なモードで対応するようです。
嫌な予感は当たりました。
真紅のドラゴンは口からブレス攻撃を放ちました。
もはや吐息なんてレベルじゃありません。大口径のビーム兵器です。
スキーズの砲撃一斉斉射 対 真紅のドラゴンのブレス攻撃
押し負けたのはスキーズでした。
直撃は免れたものの余波でスキーズの空中制御が崩れ落下します。
こんなことは初めてです。
非常にまずいです。
砲撃が通じないとなると、スキーズは大きな的でしかありません。
いったん、スキーズを戻します。
同時に収束された光の奔流が視界に入りました。
「あっ・・・!」
おそらくドラゴンブレスの第二射です。
体に衝撃が走ります
何だかよくわからないまま吹き飛ばされたことだけは理解しました。
---from aoi side---
「はっー! はっー! はっー!」
過呼吸になりそうな自分を抑える。
あのレッドドラゴンは私の祖国を蹂躙したモンスターだ。
手も足も出ず降伏した屈辱の記憶が蘇る。
タイタンめ。トラウマもんのモンスターを持ってきやがって!
そう心の中で悪態をつくが、体がうまく動かない。手足もしびれて目もかすんできた。
あのレッド・ドラゴンの最強の一撃。
私のお城を過去に瓦礫に変えた一撃。
これらの映像が記憶から呼び起こされる。
まずい。体も精神も動かない。
ドラゴンブレスが発射された。その一撃をイエローのスキーズが主砲の一斉斉射で相殺しようとした。
相殺できるか?
あ、ダメだ。
相殺しきれず、その衝撃波で地面に叩きつけられる。
追撃のドラゴンブレスが発射。イエローは吹き飛んだ。
ドクン
落城の瞬間がフラッシュバックする。
生涯ただ一つの負け。その瞬間が蘇る。
カラダが動かない。声も出ない。
『何をしてるんですか!』
カグヤの声が聞こえる。
のろのろとした動作で周囲を見たとき目の前に自分の体よりも巨大な真紅の鞭が迫っているのが見えた。
(あっ・・・ドラゴンテイルの攻撃!)
バキャッ
アタシの意識はそこで消えた。
---from aoi side---
「ぬう。」
残る巨人が赤龍化したとき、戦況が変わった。
イエローが赤龍の口から放たれた力の奔流を受けて吹き飛ぶ。
ブルーが赤龍の尾の一撃を受け搭乗している機械仕掛けの鳥ごと吹き飛んだ。
正直、恐ろしい相手ではあるが、ここで怯んでも。呆けても。歩みを止めてもいかぬ。
「前進あるのみ。」
自らを鼓舞し駆ける。
あきらめるのは真に全力を出し切った時のみである!
赤龍が再び顎を開ける。力の奔流が収束する。この力の奔流の一撃を受けたなら我もシアルフと一体化し巨大化したとはいえひとたまりも無いであろう。
「幻獣の角!」
我はスキルを発動する。
とはいえ今欲しいのは跳躍力でも、空中での起動能力でもない。
我の額から長大な角が瞬時に延び、赤龍の顎を痛打する。
さすがに龍の鱗は硬く、刺さらなかったが強制的に口は閉じられ行き場のなくなった力の奔流は暴発した。
この機を逃してはならぬ。
一気に跳躍しダメージを受け閉じられたままの顎をつかみロックする。
空飛ぶ赤龍にまで届く大ジャンプを成しえたのは「幻獣の角」の成果であろう。
そのまま顎に片膝を押し付け、顎を両手と片膝でロックしたまま「幻獣の角」の力で空中を前方に跳び、赤龍の頭を地面に叩きつけた。
結果的にプロレス技のカーフ・ブランディングに近い動きとなった。
相手をロックし、制御しながらダメージを与えるにはレスリング技がやりやすい。
ブレスを放たれないようにそのまま裸締めを極める。通常の裸締めと違うのは首ではなく顎を極めているところであろうか。
赤龍が暴れるが、こちらも両足で赤龍の胴体をフックし制御することで対応する。
離れたら赤龍の口から放たれる力の奔流の一撃を受け敗北するのは我である。
この裸締め、絶対に解くわけにはいかぬ。
「吐-っ!」
この状態から再び「幻獣の角」の力で額から角を瞬間的に伸ばす。
今度は距離が近かったからか、それとも赤龍も鱗の無い腹は柔らかいのか腹を突き破った。
うむ。この「幻獣の角」
最初はどうかと思ったが我の戦い方と相性がよい。
裸締めを極めている中で両手両足が使えぬ状態でも、攻撃手段があるというのはありがたい。
ここで赤龍が必死の力を振り絞ったのか、力のみで我を振りほどき龍の尾の追撃で我を吹き飛ばす。
咄嗟に十時受けと後方へ跳んだことで衝撃を逃がす。が・・・しくじった。距離をとられてしまった。
赤龍が間髪入れず口を開き、その顎から力の奔流を放射する。
「ぬうう。見事!」
我の隙を逃さぬ一撃。見事としか言えぬ。
我の負けである!
---from ??? side---
白い空間が広がっている
三柱の神が鎮座している。
即ち右側には神々しく輝く黄金の光に包まれた紙
即ち左側には赤い髪と緋色のマントを纏った筋肉隆々の神
即ち中央には宙に浮く魔法陣に座る藍色のフードを纏った神
その三柱の神の前には丸い金色に輝く魂が一つ
「スキーズ。私は何と言われているか知ってるかい?」
黄金の光輝く神が丸い魂に問う。
『イエス。御身は勝利の神と呼ばれていまス』
「そうなんだよね。勝利の神の加護を受けているものが負けるのは好ましくないんだ。」
『イエス。』
「とはいえ、神と拮抗し得る龍族相手では厳しいよね。どうしたものかな?」
右側の光り輝く神は思案する。
「・・・条件を一部緩和しよう。」
中央の神が低い声でその解決方法を提示する。
「そう、条件だ。『三柱の力の同時行使』これを緩和する。」
「おい。人間では5分ともたんぞ。」
左側の赤髪の神が中央の神の発案に抗議する。
「3分が限界値でしょうね。・・・スキーズ、彼らを勝利に導いてもらえますか?」
『イエス。マイファザー』
---from akaishi side---
「ぬう。ここは?」
赤龍の一撃を受けたはずだが生きていた。
改めて周囲を見渡す。
我はイエローの眷属。空飛ぶ船スキーズに乗っていた。
状況から察するにスキーズに助けられたらしい。
「・・・イエローは無事か?」
スキーズが我を助けたということはイエローの指示であるはず。
イエローがいればまだ戦える。
『イイエ。マイマスターは許容ダメージを超えました。自己判断にてレッド様を救助いたしました。』
むう。イエローが倒れたという事に内心、動揺が走るが、抑える。
心を折るのは早い。まだ赤龍との戦いは終わっていない。
ふと赤龍を見ると大量の魔法の蝶の群れにまとわりつかれ、視界が遮られているのか鬱陶しそうにその巨大がかぎ爪で魔法の蝶の群れを引き裂こうとしている。
「・・・ブルーは無事か。」
あの魔法の蝶はブルーの魔法だ。あの蝶がいるということは無事の証拠であろう。
『ブルー?? ああ、正体を掴ませないために変身中は符牒で呼び合っていたのですわね。残念ながら、非常に残念ながらあの娘はダメージを受けすぎて意識を失ってますわ。』
声のした方に振り向くとブルーが機械仕掛けの鳥に乗っていた。
が、声も雰囲気もブルーのものではない。
「何者だ?」
『何者・・・そうですわね。自己紹介がまだでした。ブルーの体にスキルとして取り込まれたカグヤと申します。地上の赤き勇者様、以後、お見知りおきを。非常に不本意ですが、この娘が死んでしまうと私も消えてしまいます。ですので加勢いたしますわ。』
「むう。」
我の頭ではうまく咀嚼できぬ事態がおこっているようだ。
我は己の頬を叩く。
思考を切り替える。
ここで気にするのは赤龍をいかに倒すことかだ。と思い直し、我が意思を総動員し全てのの疑問を後回しにし対赤龍に意識を集中させる。
この場合は思考はシンプルな方がよい。
加勢がスキーズとカグヤ。これであの赤龍に挑む
それだけである。
いざ行かんとする我にスキーズが待ったをかける。
『レッド様。このまま飛び込んでも先程と同じことになる確率が97.6%となっております。お勧めできません。』
「うむ。」
それは我も感じていたところだ。
たった一撃でも許せば負ける。しかも遠距離攻撃までもっている。
慎重かつ大胆に緻密に、戦略を練り、戦術通りに攻め立て、技巧の限りを尽くし攻撃を繰り出しても、たったの一撃で勝負を決してくるのである。
地力が違いすぎる。勝ちが薄い勝負であるということは感じていた。
『三柱の力の同時行使を提案します。』
「それでは意味がわからぬ。具体的には?」
『レッド様・ブルー様・マイマスターはそれぞれ三柱の神の力を行使しております。今まで別々で運用しておりまっしたが、その三柱の力をあわせます。レッドドラゴンを倒せる力を獲得できます。』
なるほど、力を合わせるか。
シンプルでいい。
『お待ちなさい。そんな力があるのであれば最初から使っていたのではないかしら? なぜ今まで使わなかったのか疑問が残りますわ。』
『カグヤ様。ご指摘ありがとうございます。人の手に余る力となります。3分持てばよいでしょう。』
「ふむ。シンプルでよい。3分以内に攻撃を通せば勝ち。3分を超えたら負け。ということだな。具体的にはどうしたらよい?」
『力を合わせる制御はこちらで行います。レッド様は攻撃をあてることに集中ください。』
「心得た!」
大きく股を開き、肩から背中にかけて力を入れる。腰を捻転。腕が鞭のように広げる。
『収束』
スキーズが機械音を発するとスキーズが発光。
ブルーの眷属である機械仕掛けの鳥2体。機械仕掛けの狼2体 機械仕掛けの騎馬1体も出現し、同時に発光する。
発光した6体が我の体に文字通り収束する。
シアルフの力をかりて巨大化した我の体が、更なる力に覆われる。
力が増すのを感じる。我が体を一瞬で破壊するくらいの力を
『ヴァン・アース権能収束・発射準備
セイズ解放。 ガント充填、三神解除。標的レッドドラゴン。
ガンド充填300% 対反動制御オールクリア。ヴァン・アース権能発射準備クリア』
スキーズが言葉通り制御をおこなっているのであろう。
アナウンスが流れる。
「吐ーッ!」
捻転を戻すと同時に速射の掌底をレッドドラゴンにむけてくりだす。
『Gungnir』
機械音と同時に我が掌底から繰り出される力の奔流。
赤龍もまた、危機を感じたか顎を開き、力の奔流を放ち対応する。
力の奔流同士が衝突する。
が、赤龍の抵抗もそこまでであった。
我が力の奔流に飲み込まれ断末魔の咆哮とともに消滅した。
『LEVEL UP』
『スキル:ドラゴンブレスを獲得しました。』
『アテンション:スキルドラゴンブレスは予期せぬ戦闘手段により獲得したためエラーが発生しました。スキル獲得は無効です。』
―ステータス―――
名前:赤石剛
年齢:16
職業:高校生
LV:38⇒40
スキル:筋力増強Lv2(UP) 脚力LV9 総合格闘LV7 幻獣の角
装備:ドラウプニル(赤)ミョルニルハンマー ヤールングレイプス メギンギョルズ
眷属:シアルフ
――――――――
VER、タイタン
「はーっ。はーつ。っつ。あっ 危ねぇ・・・」
俺たちは急いで撤退した。
そうだろう?
レッドドラゴンをたったの一撃で倒す化け物相手にまともに戦えるかよ。
「・・・カグヤの裏切りは確定か」
「ええ。あの青い魔法使い。カグヤと名乗ってましてね。」
ライトとファイアが気づいた点を述べる。
ああ、俺も気になっていた。あいつは確かにカグヤと言っていた。
帝王がカグヤが裏切るわけはないと言っていたが、あの青の魔法使いはカグヤと名乗っていた。
確定だろうぜ。
「・・・ヒートが行方不明ですな。」
「やられちゃった?」
プロネミンスとバーンが行方不明になったヒートの身を案じている。
状況からしてそうだろう。じゃないとヒートの連れてきた巨大モンスターが出てこない理由がわからなくなる。
ちくしょう。あいつはいい奴だったのに。
のどが渇いたといえば飲み物買ってきてくれるし、夜も昼も呼び出べば「あい。あい。」と嫌な顔一つぐらいはするが来るし
「タイタン様。ヒートの敵討ちしたい!」
「そうですね。ヒートはいいやつでした。私も敵討ちに賛成です。」
バーンとプロミネンスが進言してくるが・・・
おいおい。レッドドラゴンに勝つような奴らだぞ。
バーンもプロミネンスも有数の火と土の魔法使いだが、それだけで勝てるとは思えねえ。
かといって、ここで敵討ちは駄目だっつってもやるんだろうな。
俺が思案していると
「タイタン様。あの力は3人そろって発揮できるようです。各個撃破なら勝機あるかと。」
プロネミンスが進言してくる。
ちっ。ここで反対すれば亀裂ができちまう。
「具体的にどーやるんだよ。」
しかたねぇ。この場は可愛い部下の意見に乗るしかねぇ。
---from aoi side---
赤龍撃破後にタイタンたちを探したが見つからなかった。
撤退したか市井にまぎれたか。
アオイ、山吹のダメージ。そして我自体のダメージも大きく、タイタンたちの捜索は警察などに委ねられ我らは早々に入院することとなった。
「ぬう。」
入院先で鍛錬していると看護士に怒られた。
今回、我はドラウプニルの力をもってしても赤龍に及ばぬということを思い知らされた。
つまり我はまだまだ未熟である。
未熟を解消し、安全にするには努力と鍛錬しかないというのに怒られるとは理不尽である。
ここで我が携帯の着信がなる。
姉からSNSが届いたのだ。
便りがあるという事は無事という事。
ひとまず安堵する。
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基地を離れ上層を目指してみたがモンスターに遭遇し撤退した。
このように徐々にマッピングを行う努力を繰り返していけば周辺状況や経路も明確になり脱出できる可能性は高くなるだろう。
今日のモンスターは鳥型モンスターであった。
倒した時に入手した卵がいくつかあるのだが、だし巻き卵にできるか思案中
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うむ。
姉も努力している。
我も怠ることなく精進せねばなるまい。
とりあえず、我もだし巻き卵が食べたくなった。いかに病院を脱走するか計画をたてねばなるまい。
【次回予告】
レッドドラゴンという最強の切り札を失ったタイタン達の次の手は分断作戦だった。
敵の罠にはまり単身的と戦う赤石はどうきりぬけるのか?
次回、機動戦隊レンジャーワン episode5「当然」




