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22/24

episode22 活かす

---from yamabuki side---

「えっ。 ど、ど どうしたんですか!」

僕はアオイちゃんを見て驚きます。


戦闘でもないのにアオイちゃんが変身した姿でいたからです。


アオイちゃんは僕をちらりと見た後、

「活かしてないなぁと思ってね。」

と自嘲気味に言いました。


何をでしょう。


「山吹は他人のステータス見れるんだろ?」

「はい!」


僕はそう言われてあらためてアオイちゃんのステータスを見ます

―ステータス―――

名前:アオイ・ミナーモ

年齢:15

職業:元青の国 第一王女

   元青の国 魔法兵隊長 

元地底帝国四天王


LV:62⇒63

スキル:統率LV4 魔法(無属性)LV8⇒LV9 胡蝶の夢

    魔法(土)LV2⇒LV3 

装備:ドラウプニル(青) ゲンドゥル 

眷属:フギ ムニ ゲー フレキ スレイプ 

――――――――


おや、レベルがあがっているようです。

レベルが62から63に魔法のレベルもそれぞれ一つ上がってます。


赤石クンも前回の戦いでレベルがあがってました。

前回の戦いであがっていなかったのは僕だけなようです。

残念。


それはともかく、相変わらず元四天王の名の通り高レベルです。

スキルも無属性魔法1点集中という尖った構成です。

このステータスに何か不満があるのでしょうか?


「装備にゲンドゥルというのがあるだろ?」

アオイちゃんが手に持つ杖を弄びながら話を続けます。

「はい。その手に持ってる杖のことですよね。」

「そう。使ってないなぁと。活かしてないなぁと思ってね。」


言われて気づきましたがそうかもしれません。

アオイちゃんは素の魔法力が高いので通常の魔法で帝国兵や洞窟内のモンスターは片付きます。その杖の出番はありません。


「山吹はレーヴァティンを上手に使いこなしているんだよねー。」

上手にかどうかは分りませんが、僕は剣にも体力にも自信がないのであまり剣として使ってません。どちらかと言えばレーヴァティンの「炎の生み出す」という特性を方を活かす方向で使ってます。・・・剣としての使用は、はっきり言って無いです。


「赤石もミョルニルハンマーを上手に使いこなしている。」

ミョルニルハンマーは赤石くん右腕に装備された二回りも大きな円筒形の腕あてのことです。

彼がフィニッシュに使う技の一つに捻転からの片手突きがあります。

その時にミョルニルハンマーが放電し片手付きの威力を底上げしてます。


「私はゲンドゥルを使いこなしていないんだよねー。」

アオイちゃんはそう言いました。


うーん。そういうことであれば赤石クンも左腕の円盾「ヤールングレイプス」も腰ベルト「メギンギョルズ」も使ってません。そう気にするものでもないとおもいますが・・・

急にどうしたのでしょう?

探りを入れてみましょう。

「僕は戦闘技術未経験者でした。だから装備の力にお願いするしかありませんでした。     アオイちゃんは既に自分の戦闘方法をもってます。無理に装備にあわせなくても良いのではないでしょうか?」

「今まではね。これからは違う。ドラゴンと戦える戦闘力が必要になってくる。タイタン達もドラゴンを駆っているし、宰相ユミルもそう。石の国はアースドラゴンが配置されていた。ということは地の国にも配置されている可能性がある。少なくとも私が帝国側なら、そうして石の国の攻撃準備をする。」

「えっ、地の国にもドラゴンが配備しているんですか?」

「可能性だけどね。十中八九そうだとみている。となると今のままの私ではいけない。赤石も同じ考えだろう。だからドラゴンブレスのスキルを欲しがっている。」

「アオイちゃんは赤石くんとは違うアプローチでドラゴンと戦う力を手に入れようとしているわけですね。」

「そう、まだ使っていない。活かしていないものの中に対抗する力があるんじゃないか?と考えている。」

そう言ってアオイちゃんはゲンドゥル、魔法の杖をいじった。


---from akaishi side---

「あん? ドラゴニュートぉ?」

青の国のカイ将軍が顎を撫でた。考えてくれているのであろう。


我は今、青の国にきている。

アオイが言うには、ここのカイ将軍は物知りだという。

それでドラゴニュートの棲み処を聞きに来たのである。


カイ将軍は片目を瞑って我を睨む。

「教えてもいいが・・・。目的はドラゴンブレスの取得ってか。」

「うむ。」

「いやあ、おったまげたモンだな。そのドラウプニルってモノわ。」

「うむ。助かっている。」

「んで、倒したモンスターのスキルを取得できるんだっけか。」

「うむ。」

「ということはお前はドラゴニュートを倒しにいくんだよな。」

「うむ。」

「うむじゃねぇよ。アホかお前は。ドラゴニュートを倒しに行くような物騒な奴に。居場所を教えられるかっ!」

「なぜだ。」

よくよく理由を聞く。

なんとドラゴニュートはモンスターではなく竜人という人種だそうだ。

あの戦闘時には帝国兵として敵にまわっていたため問題なかったが、普通に国に暮らしている竜人を攻撃するとなると問題であろう。あやうく野盗の真似事をすることであった。

慌てて礼を言う。

「わかってくれりゃぁいい。しかしドラゴンブレスかぁ」

カイ将軍は思案する。

「うむ。ドラゴンブレスを防ぐためにはドラゴンブレスが良いと考えている。」

「あん。ちょっと待て。」

「うむ。」

「お前、ドラウプニルを起動して変身してみろ。」

目的は分らぬが、悪いことはおこるまい。

我は変身する。

カイ将軍は左手に装着されている丸盾を叩く。

コツコツと鈍い音が響く

「こいつは飾りかぁ。」

カイ将軍は我を睨んだ。

「このドラウプニルってのはスゲェ。その装備が普通の盾なわけはねぇだろ。使いこなせているのか? 」


---from shirai side---

オレはコーヒーの香りを楽しむ

地底の不満は食べ物が不味いということだが、コーヒーを愛するものとしてコーヒーが地底にも存在していたことは助かっている。

お陰で精神を休める時間をつくることができている。


・・・後藤は帝国との交渉を失敗した。

理由は明確。

こちらの言いたいことだけを言ったからだ。

帝国は何を欲しているのか?

この核心を聞いていない。

そう聞いていないのだ。


だから失敗し、オレの目の前で実験動物のようにカプセルに入っている。


一息つく。


帝国内部に入ってみて感じたのは、そもそも版図を広げることが目的で動いては無いようだということだ。何かのついでに版図を広げているという感じだ。


だから国が奪われようと、帝都が奪われようとあまり気にしていない節がある。

そこに目的のものがないと判明しているからであろうと推察している。


もっとも石の国のような例外もある。

帝国貴族の中には24時間働くメイド・バトラーとしてゴーレムの一定の需要がある。

つまりゴーレムの供給が途絶えると帝国貴族の不満が蓄積される。

その不満解消のために帝国としては石の国は押さえておきたい国である。


一息つく


先程、石の国奪還に失敗した俺やミスクロウの元へ帝国貴族の代表とかいう奴がきて、ぐちぐち文句を言ってきやがった。


背後に四天王デビルフィッシュのいるミスクロウには正面切って文句を言えないものだから新参のオレに強く当たってきた。


それはいい。


地上の官僚時代もそういう奴はいた。

適当に聞き流していればいい。


ただ、オレも環境の変化により心に若干余裕がなくなっていたのであろう。

「それだけ文句を言うなら自分でやればいい。」

と口に出してしまった。


失敗したと思った。

火の油を注ぐことになった。と思った。

が、その後の展開が面白かった。


「ふぉ、ふぉ、ふぉ、それはいい考えですな。」と四天王デビルフィッシュが同調し

宰相ユミルがその帝国貴族の代表に石の国奪還指示をしたのだ。

帝王までが「たのむよ。」と帝国貴族代表に頭をさげた。

こうなると帝国貴族は引き下がれない。

「お任せください!」

とひきつった顔で石の国奪還指令を受け取ったのは内心、笑った。


あとで宰相がこぼした言葉を聞くと「自分で必要なモノくらい自分で調達していただきたいものですな。」とのことだ。

その通りだ。


言葉の裏を読めば帝王にも宰相にも必要なものは石の国にはないということになるだろうか。


どうも帝国の中枢は帝国ですらその本当に必要なモノのためにはどうでもよいと考えている節がある。


それはなにか。

探ってみる必要がある。それがわからなければ後藤や今回の帝国貴族のように交渉のテーブルにたっていると錯覚しているだけで、実際にはテーブルにすら立っていないということになる。



---from aoi side---

「また、きたのっ。」

私は呆れた声をあげる。


また来たのは帝国兵である。

石の国奪還にきたらしい。


ちょうど私と山吹は石の国にいたので迎え撃つ。

赤石もメンドーサの連絡網で聞いたのか転移のスクロールを使いこちらに到着、合流。変身して戦闘に加わった。


どれだけ石の国は帝国にとって重要な場所なのだろうか?

帝国はタイタンとも干戈を交えてるはずだが、こんな2面作戦して大丈夫かと心配になる。


しかも、弱い。

なんだこれ?


石の国で戦うのは3回目だが、1回目はアースドラゴン 2回目は白井やミスクロウが率いる竜人軍団と強敵揃いだったが、今回の敵は弱い。

文字通り鎧袖一触。

まだ、うちのアホ兄ぃの方が強いんじゃないのか?


山吹もポカーンしてる。

最近パターンとしているレーヴァティンとスキル「錬金」をまじえたバイク軍団もださずに空飛ぶ船スキーズの砲撃に任せている。


その中で赤石が不思議な動きをしていた。

ん?  んん??

何やってんの、そんな攻撃避けれるでしょうに。わざと円盾で防いでる。

気になった私は赤石の元へむかう。

「何やってんの?」

「ふむ。この盾を今まで使ってなかった。これからの戦いを考えると装備品やスキルはできる限り使いこなせるほうがよい。であれば格好の練習相手である。」

「へー。考えているのね。」

私は素直に感心した。


私がこれからの戦いのため魔法の杖「ゲンドゥル」を活かそうとしているのと同じように赤石もまたこれからの戦いのためにその丸盾を活かそうとしているらしい。

「うむ、アオイ殿の師からのアドバイスである。」

「え? 私の師?? 誰のことさ?」

「? カイ殿である。師ではないのか?」

「げーっ やめてよ。あんな奴。」

冗談じゃない。カイが私の師なんて、勘違いでも虫唾が走る。


「む。」

「おっ。」

何の拍子か赤石の丸盾が発光。電気でできたホログラムのような巨大な盾? バリアのようなものが出現。敵の魔法弾を防ぐ。

「ほう。このような権能があったとは。」

赤石は嬉しそうだ。


「おのれぇっ! 下賤の分際でぇ。見よ帝国の力を! Fimbul!Jǫtunn!Fimbul!draca!Fimbul!Óscópnir!sœkja!  fé!」


おっ 腐っても帝国だな。

帝国の勝利の方程式 人化魔法解除を使うか。


敵が本来の姿を取り戻し巨大化した。


なんだあれ。

茨のロープと茨の髭、そして三角帽子のような花を頭にかぶっている。

茨の魔人とでもいうべきズングリむっくりした巨人が現れた。


対する赤石は赤い巨人シアルフを召喚

シアルフと同化し・・・あれ? また盾の練習してるよ。

余裕だなー。

茨の魔人が放つ魔法弾を円盾で弾いたり、たまに発動する円盾から放たれる電気でできた巨大なバリアをつかって防いだりしてる。


んー。なんか悔しい。

私も魔法の杖「ゲンドゥル」を活かすべく工夫してみることにする。

どうしたらいいかな?

とりあえず魔力を注いでみる。

おっおおおおっ。

吸う、吸うよこれ。

どんどん私の魔力を吸っている。


自慢じゃないが私の魔力量は多い。

らしい。


らしいというのは比較したことがないからだ。


普段魔力枯渇にはならない。

それほど長期戦にならないということが大きいけど、私の魔力量も多いということだと思う。


・・・。


なるほどなぁ。

こうやって考えてみて気づいたことがある。


私は全力で戦っているつもりだったけど、まだ全力ではなかったらしい。

魔法の杖「ゲンドゥル」どころか膨大な魔力を活かしていなかったようだ。


まだ、魔力を吸い上げる。え、お、ちょ、ちょっと待て。まずい、制御が聞かない。

「わああああああああああっ!」

私は慌てて魔力の供給をとめ開放した。

杖から叩きつけるような力の奔流が放射される。


その一撃で帝国兵が吹き飛んだ。

ついでに赤石と対峙していた茨の巨人も吹き飛んだ。


あーいや。うん。

赤石、シアルフの巨体でこっちを見ないでくれ。

私もびっくりだわ。


---from yamabuki side---


「すごいですね! アオイちゃん。ドラゴンブレスにも対抗できるんじゃないですか!」

戦闘後、僕がそう伝えるとアオイちゃんは微妙な顔をしました。

なぜでしょう?

「いや、まったく、ぜんぜん、一切制御できなかった。それに・・・。」

「それに?」

「あくまでもあれは魔法。どんなに威力があってもアンチマジックで打ち消される。」

「え? えーっと」

ちょっとアオイちゃんが言っていることが理解できなくなりました。

アンチマジックと言ってるのはアオイちゃん自身が使用するスキル「胡蝶の舞」や伊藤さんの「斬魔剣」を指しているのでしょう。


確かに通用しないですが、アオイちゃんは魔法使い。タイプもMagicianです。だからアオイちゃんの攻撃手段は魔法になります。魔法攻撃を否定したらどうにもならなくなるのではないでしょうか?


「うむ。アオイはこう言いたいのだな。山吹の錬金や我のレールガンのように魔力を物理に変換して、なおかつ高威力のものを目指したいと。物理攻撃であればアンチマジックも気にせず攻撃できると。」

赤石クンが珍しく長文を言いました。

僕は驚いて目を見開きます。ちらりと横を見るとアオイちゃんも僕と同じ表情をしています。

「ぬ。どうした?違ったか?」

赤石クンが眉を顰めます。

傍目には怖い顔ですが、最近になってわかりました。

これは当惑している顔ですね。

「いや、あってる。それよりもアンタが的を得たことを言ったことに驚いている。」

「ぬう。それは理不尽である。」

赤石クンはさらに眉をひそめた。




【次回予告】

戦線の膠着状態に焦る赤石

このままではリサ教授の救出が出来ないと感じた彼はあることを実行する


次週、episode23 仲間

毎週 日曜日 9時30分 更新

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