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episode20 灰色に染まった石の国の勇者

---from The Land of Stone side---

地底国家群には大小の国々が存在する。

その国の間はダンジョンと呼ばれる通路での移動となる。

ダンジョンはモンスターに代表される危険が多く、そのため国家間交流もすくなく貿易といった商業活動も活発ではない代わり、紛争もなかった。

軍隊が移動するにはダンジョンは狭すぎたからである。


ただし、物事にはなんでも例外が存在する。

例えば帝国。ダンジョン移動は軍隊移動に不向きという常識を「だったら一騎当千だけいけばいいじゃん。」という発想で打破した。

具体的にはドラゴンなど一騎当千ができる大型モンスターをダンジョン移動時だけ人間に姿をかえて移動させる方法を確立させた。


そして、地底国家群を攻めて掌握した。


そして、この石の国も例外の国である。

この石の国の産業はゴーレムという石人形のモンスターである。

このモンスターは職人の手で作ることができ、使用者登録をすると使用者の指示で動いてくれるのが特徴である。人型の産業用ロボットのようなものだ。


このゴーレムをつくれるのが地底国家群の中でも石の国だけなのである。

そのため需要があり、石の国は地底国家群の中では珍しく他国にゴーレムを売るという貿易をしている。

魔法を得意とする「地の国」や「青の国」が近いというのも貿易ができる理由になっている。

転移のスクロールは高価ではあるが、この二国に行けば手に入るので、その転移のスクロールを使用して他国に輸出するのである。


つまり石の国は作業用ロボット産業ならぬゴーレム産業が盛んな国で、それに伴い工房も多い国である。


その工房の一つで働くゴーレム職人見習い少年シンは親方にくってかかっていた。


「なぜ? 帝国にゴーレムを渡したんです。」

「そうじゃ。しかも無料で!」

同じくゴーレム職人見習い少女のキュウもシンに同調する。


二人の親方ファイブはじろりの二人を見る。

「うん。お前ら殺されたいのか?」

出てきたのは物騒な言葉だ。

と言ってもファイブ親方は脅しているわけではない二人を心配してるのだ。


「おい、窓の外を見ろ。」

親方は顎をしゃくる。


この石の国の城があった場所に城はなく、別なものが鎮座していた。

小山のような巨大モンスター アースドラゴンである。


石の国は帝国がつれてきたアースドラゴン1体に敗れたのである。

得意のゴーレム達もアースドラゴンの前では何の意味もなさなかった

抵抗した王族や兵士は破れ、城はアースドラゴンの住処となった。


「あいつに喰われたくなけりゃ。大人しくしてろ。」

ファイブ親方は二人の頭をくしゃくしゃ乱暴に撫でると、ゴーレムの材料をとりに倉庫へ向かった。



---from yamabuki side---

「おお! すまん。面倒をかけた。」

ライオンマンさんが僕達を見つけて頭を下げました。


場所は地上の病院です。


あのプロミネンスとの戦闘のあとライオンマンさんはダメージが大きかったのか倒れてしまいました。

そこで、このまま地の国へ進むよりもライオンマンさんの健康を優先し、一時、地上に戻ることにしました。


魔法国家、青の国を開放したことで転移のスクロールを調達しやすくなったということも一旦、地上で静養しようという理由の一つです。

転移のスクロールがあればいつでも青の国にいけます。

連絡もメンドーサさんの雷獣を活用した電波で連絡も取りやすくなっています。

開放した、青の国や川の国に何かあれば青の国のカイさんから連絡がくるでしょう。

緊急の連絡がきたら転移のスクロールで瞬間移動でいつでも救援にむかえるわけです。


「うむ。大丈夫なのだな。」

「おお! 洞窟を離れ地上にきたのがよかったのだろう。ほれ、この通り復活したわ。」

ライオンマンさんが赤石クンの心配にポージングで答えました。

病院内で裸はやめてほしいです。


そういえばこのライオンマンさん、最近、シリアスな場面が多かったので忘れていましたが基本裸族の変態さんでした。


「おい。変態。服を着ろ。」

アオイちゃんがジト目でライオンマンさんを注意します。

「おお。地上は素晴らしいのだが、この服という文化には慣れんな。」

ライオンマンさんは仕方なしといった感じで患者衣を着・・・なかった。上着のサイズがライオンマンさんの隆々とした肩幅に合わず、裸にチョッキみたいな感じになっています。

「おい。地底でも服はきるだろ。地底の人が誤解される発言はやめろ。」

アオイちゃんの言葉がトゲトゲしいです。怒ってる? 怒ってますね、これは。


急いで話題を変えましょう。


「それにしてもプロミネンスってあんな強かったでしたっけ?ライオンマンさんの方が圧倒的に強いイメージがありましたが。」

「おお! 山吹殿。過分な評価ありがたい。正直、オレもタイタンの部下には遅れは取らぬと過信していたようだ。あのような魔法を用意しているとは思わなんだ。」

「あの魔法はなんなのでしょう? 赤と黒の強いデザインの魔法だなというくらいで、それほど威力のある魔法だとは思えませんでした。」

「あ! アタシもそう思った。魔法に破壊力も熱も、何も感じなかったんだけど。」

アオイちゃんが僕の言葉に同調します。

レンジャーワンのメンバーの中で一番、魔法に精通しているのはアオイちゃんです。そのアオイちゃんもわからない魔法のようです。

「ふうむ。」

ライオンマンさんが顎に手を当てて考えているようです。

「メンドーサ殿はあの魔法。どう思われた?」

「えっ え! えーっと。わ、わ私はライオンマンさんが倒れたので大変なことが起きたとしか・・・。」

「ふうむ。赤石殿は?」

「うむ。触れてはならぬと思われる嫌な邪気のようなものを感じられた。だからこそ心配したのだ。」

「え? ちょっと待って。格闘バカ二人がそろってヤバい魔法だって言ってるの? あんな何の威力も無さそうな魔法に? 格闘バカ特攻魔法ってこと?」

アオイちゃん。目の前で「格闘バカ」はやめましょうよ。

赤石クンとライオンマンさんが何とも言えない表情をしてます。


それはともかく・・・

表現に問題あるかもしれませんが、アオイちゃんの指摘は的を得ています。

僕にもあのプロミネンスの魔法がライオンマンさんを苦しめる威力のある魔法に感じられなかったのです。もっと言えば攻撃魔法にすら見えませんでした。

しかしライオンマンさんは実際にあの魔法を受けて戦闘不能になりました。赤石クンも邪気を感じられたといってます。

二人に共通するのは格闘戦が得意ということでしょうか?

本当に格闘家特攻という魔法があるのでしょうか?


「あ、 あ、す、す、すいませんっ 石の国にうごきがありました。」

メンドーサさんが突如、大声をあげました。

「「「「!」」」」


石の国の前の戦闘の後、メンドーサさんの雷獣に石の国に行ってもらってたのです。

偵察です。

その石の国の偵察をしていた雷獣から連絡があったようです。


「あっ あっ あれはドラゴンっ! アースドラゴンがでてきました。」


ドラゴンですか!

ドラゴンは嫌な思いでしかありません。

僕やアオイちゃんはレッドドラゴン戦で戦闘不能になりました。

帝都脱出時にも三つ首ドラゴンやレッドドラゴンが現れ、僕達は逃げる事しかできませんでした。

アオイちゃんの青の国を襲ったのもドラゴンだったと聞いてます。


「とりあえず、いくよ!」

アオイちゃんの言葉に従って療養中のライオンマンさんやメンドーサさんをおいて僕達三人は転移のスクロールで移動を開始しようとしました。

「まて。」

ライオンマンさんが僕達に待ったをかけます。

「なに? 療養中のアンタは連れていけないよ。」

アオイちゃんが鋭い目をライオンマンさんにむけます。」

「メンドーサ殿を連れて行ってやってくれ。石の国の次は地の国なのだから。」


アオイちゃんは考えているようでした。

相手はドラゴンのようです。

危険な相手です。

メンドーサさんを守り切れるか心配なのでしょう。


「うむ。メンドーサ殿。来るが良い。」

赤石クンがメンドーサの手をとります。

「赤石っ。」

アオイちゃんが咎めます。

「メンドーサ殿の索敵能力は先制攻撃において重要ではないか?」

赤石クンはアオイちゃんの言葉に動じることなくもっともらしい理由を述べました。

もちろん、それはメンドーサさんを連れていくための表向きの理由だという事は分っています。


アオイちゃんは大きく息を吐いた後、「メンドーサ行くよ!」といいメンドーサの手をひっ引っ張り一緒に転移しました。


---from Shin side---

-石の国のゴーレムは世界一-

そういう価値観で育ったシン少年は、そのことを疑っていない。

だからこそ、石の国のゴーレム兵が帝国が連れてきたドラゴン1匹に敗れたというのは認めたくない事実であり、帝国が石の国を占拠後、そのゴーレムを我が物のように扱うのが気に入らない。


なぜなら、目の前で見てしまっているから。

親方たち、ゴーレム職人の努力を


あれだけ努力して、研鑽して出来上がった至高の作品が一切通用しないというのは認めたくない事実であった。


「ゴーレムがドラゴンに敗れたのは戦闘用じゃなかったからだ。」

シン少年はそう考えている。


あの帝国が人化魔法で本来の姿を現したドラゴンを先兵に攻めてきたとき、石の国はゴーレムで対抗した。そのゴーレムはいわゆる産業用ロボットといった立ち位置であり、戦闘特化ではない。石の巨人はそれだけでも兵士として十分だった。

しかし、それはドラゴンのような一騎当千のモンスター以外の話である。

ドラゴンのブレス。牙、爪によってゴーレム軍団は壊滅し、石の国は帝国に降った。


仮に-

シン少年は考える。

戦闘に特化した、対ドラゴンに特化したゴーレムであればそのような結果にならなかったはずだ。

そこでシン少年は戦闘用ゴーレムの作成をした。

もちろん、失敗もしたがシン少年的には満足のいく仕上がりのゴーレムができた。

挟撃できるように1体だけではなく5体同じものを作成した。


「何をしとるんじゃ。」

シンと同じくゴーレム職人見習いのキュウが聞いてきた。

疑問におもったのは当然。


シンは思いつめた顔で、特別製の戦闘用ゴーレム5体を動かそうとしているのだから

「ドラゴンを倒しに行く。石の国のゴーレムはドラゴンなんかに負けるわけはないんだ。」

「そりゃまた銭にならんことを」

キュウは眉をひそめた。

彼女は一銭にもならないことはやらない主義だ。だた、シンが作ったゴーレムがドラゴンに負けるとは露ほどにも思っていないので強いては反対しない。

前回の戦いで帝国のドラゴンに負けたのも「戦闘用ゴーレムが存在していない」「不意をつかれた」「準備期間が無かった」と彼女は分析している。

「わしも行く。」

キュウは言った。

シンは目をぱちくりして驚く。てっきり反対するかと思ったのだ。

「ドラゴンを倒せば、竜鱗などの素材が手に入る。高く売れるぞ。誰にも渡すものか。」

彼女は言った。

それに・・・

「石の国のゴーレムが負けるわけなかろう。」

彼女の言葉にシン少年は

「当然っ!」

と答えた。


---from aoi side---

「まじか。」

アタシは流れる汗を意識した。


石の国に到着したアタシ達が見たのは暴れまわる地龍 アースドラゴンの姿だった。

正直、ドラゴン系はトラウマだ。

アタシの国を襲ったのもレッドドラゴン。レンジャーワンの力を得てからの戦闘でも戦闘不能になってしまった。


それでも・・・

多少、落ち着けているのはヴァン・アースというドラゴンと対抗できる手段を持っていることだ。

ヴァン・アースはいろいろ制限はあるが、敵のドラゴンは1体。一撃で倒すことができれば、それで済む。


「あ、あ、あ、あそこに人がいます。遠距離攻撃は避けたほうが良いです。人に当たります。」

メンドーサが注意喚起をした。


「まじか。」

アタシは再び同じセリフを言う。


ドラゴンは暴れまわっている。

今は郊外とはいえ徐々に街に近づいている。


このまま放っておけば石の国の街はドラゴンに蹂躙されるだろう。

それを防げるチャンスが今来ている。

具体的にはヴァン・アースの一撃で解決できるチャンスなのに、近くに人がいるためにそれができない。

「なんと理不尽な事か!」

赤石がアタシの横で拳を握った。


---from Shin side---

「うそだっ!」

シン少年には目の前の光景が信じられなかった。

自慢の戦闘用ゴーレムの一体がアースドラゴンのブレス一撃で粉砕され沈黙したのだ。


設計上ありえないことであった。

シン少年は立場は見習いだが、「ゴーレムはドラゴンに勝てる」というのを勢いや意気込みだけで考えているわけではない。

彼も技術の世界に人間である。

アースドラゴンのブレスを分析して、魔力を帯びた黄砂の集合体であることまでは解析できている。その黄砂を高速射出して粉砕するのだ。

シン少年はその対策として強度のある素材もそうだが、形状で対抗を考えていた。高速射出された黄砂がまともに当たるからダメージを受けるのだ。

受け流す流線形にしたらよいという結論に達し、シン少年のゴーレムは他に類を見ないシャープなデザインのゴーレムを作った。ドラゴンのブレス対策である。

それが通じなかった。


他にも想定外のことがある。

ドラゴンブレスの射程だ。50Mを予測していたが、その倍以上の射程から攻撃してきたのだ。


これらの誤算は単にアースドラゴンが普段、全力を出していないだけであり、その全力を出していないデータを元にシン少年が予測計算していただけなのだが、神ならぬシン少年はそのことはわからない。


緻密な計算は一つが狂うとすべてが瓦解する。

ブレスを防げなくなった時点で戦闘手段を失った。

剣や魔法は強力な竜鱗で弾かれるというのは想定していた。そのために関節技に活路を見出していた。首や顎を捻り破壊する方法である。


それもブレスを防いで接近出来たら可能な攻撃方法であったが、ブレスを防げない時点で瓦解した。


結果どうなったか。

生き残ったゴーレム4体とキュウと一緒にシン少年は逃げ回っていた。

「ウソだ。 ウソだ。」

シン少年は半狂乱になっている。

「おい、しっかりせんか。」

キュウが叱咤する。


かろうじて半狂乱になったシン少年が逃げるという行動をおこせたのはキュウのお陰であった。


彼女がゴーレムに命じてシンを担いで逃げろと命じたからである。

彼女もまたゴーレムに担いでもらって逃げている。

とてもではないが人間の足で逃げ切れるものではない。


「あ」

立て続けに2体のゴーレムがアースドラゴンに粉砕された。

残るはシン少年とキュウが乗っているゴーレムだけである。


ここでシン少年は半狂乱をやめた。もうどうしようもない。ということが理解できたのだ。

「キュウ、ごめんよ。」

今となっては大切な仲間であるキュウを巻き込んだのが後悔しきれない。

「・・・・。」

キュウはそのシン少年の言葉に目をぱちくりさせた。その後にニカッと笑った。

「なあに、私が投資に失敗しただけだ。投資に失敗はつきものじゃ。シンのせいではない。」

と言った。


その瞬間にドラゴンブレスが目の前を通過した。


シン少年の目の前からキュウとキュウを担いでいたゴーレムが消えた。


---from aoi side---

アタシ達は今、石の国の街に来ている。

遠距離攻撃が不可能となった今、情報収集が必要だと感じたからだ。

特になぜドラゴンが暴れていて、なぜドラゴンの近くに人がいるのかを知りたい。


街が騒然となっている。

そりゃそうだ。

生きてる天災ドラゴンが迫ってきてるんだもの。


山吹が如才なく騒然となっている群衆の中から、リーダーっぽい人を見つけて事情を聴いている。

「何があったんですか?」

「ファイブ工房の見習い二人がドラゴンを倒すって言って下手に刺激したのさ。そしたらドラゴンの逆鱗に触れてしまったのさ。めっちゃ暴れまわっている。下手に眠れる竜を起こしちまった。この街にも来るぞ。」 

「なんで、そんなことを。」

「・・・気持ちはわからんでもない。石の国のゴーレムは世界一。ドラゴンにも負けないって証明したいのさ。いや、この気持ちは他所の国の人にはわかるまい。石の国の国民ならそう思ってる。だが現実はそうじゃねぇ。それが悔しいのさ。その気持ちはわかるが・・・。本当に実行するとは・・・そういや、あんならここの国のひとじゃないな。何者だアンタら。」

ここで山吹は言葉に詰まった。

地上から来た自分たちの立場をどう伝えればよいのか悩んじまったらしい。

確かに説明にこまる立場だよな

しゃーない。助け舟を出すか。

「失礼。私は青の国第一王女アオイ・ミナーモ。」

アタシが自己紹介をすると相手の男は驚いた。

「もしかして、帝国四天王のアオイ様か」

なるほど、石の国の認識ではアタシはまだ帝国四天王の一角らしい。

「その情報は古い。もしかして帝都が陥落したことも知らない?」

「え、なんだそれは本当なのか?」

「そう、四天王のタイタンがレジスタンスと手を組んで帝王を帝都から追い出した。」

「なんと、それでは???」

「今の私は帝国四天王のアオイではなく青の国の王女としてここにいる。この好機に青の国を帝国から解放、独立をしたからね。」

「なんと。」

「ついでに隣の国の川の国も独立開放して石の国にきたってわけ。」

「では、我々の国も帝国から独立できるのかっ・・・独立も助けていただけるのか!」

「当然!」

アタシの回答に周囲の歓声が沸き起こる。

「申し遅れました。私は石の国青年商工会会長のデンジと申します。」

ほう、なんかリーダーっぽい人かと思ったらリーダーだった。これだと話が早い。山吹、上手く話が早い人を捕まえたなぁ。彼のスキル「幸運」の影響だろうか?

「まずは、あのドラゴンを何とかしないといけません。」

アタシの言葉に青年会会長デンジが頷く。

「遠距離攻撃の方法もとれますが・・・・しかし、あそこにいる・・・見習い二人ですか・・・彼らを巻き込むわけにはいきません。そのために近づいて彼らを救出するのが先になります。」

周囲にいるみんなが頷く。

「ここで問題があります。」

周囲のみんなが何だろうという顔をした。

「見習いの二人・・・見ず知らずの私達が行っても避難に協力してくれない可能性があります。誰か彼らを説得できる人についてきてもらうことは可能ですか?」

正直、難色を示すと思った。

私の言ってることは裏返せば暴れるドラゴンの側に一緒に来てよ。ということだ。

ところが私の予想を裏切って声を上げた人がいた。

「わしが行こう。」

立候補した人はいかにも職人といった男であった。

「ファイブの親方・・・。」

横にいた青年会会長のデンジさんがつぶやく。

ファイブ・・・そういえばさっきデンジさんが「ファイブ工房の見習い二人がドラゴンを倒すって言って下手に刺激した」と山吹に言っていたな。

とするとこの男がドラゴンの近くにいる見習い二人の親方か。

「自分の工房の不始末は自分つ付けねばなるまい。」

ファイブ親方は厳しい顔でそう言った。


---from Shin side---

半狂乱。

シン少年はこれがどういう状態かを身をもって体験した。


さっきまで一緒にいたキュウがドラゴンブレスの一撃で消えてしまった。


嘘だ と思うシン少年

現実だ と思うシン少年


助けなきゃ と思うシン少年

逃げなきゃ と思うシン少年


いないものを助けれるわけないじゃないか と自分を叱咤するシン少年

キュウはどこかに飛ばされているだけだ  と自分を慰めるシン少年


相反する心が混ざり合いぐちゃくちゃになった。


そして、こんなことしなければよかった と後悔するシン少年


おそらく傍目には狂ったようにしか見えない行動をしているだろう。

おそらく傍目には叫んでいるだけにしか見えないことだろう。


それも どうでもよくなった。


ああ。


僅かに残された冷静な部分のシン少年の瞳に大口をあけた竜の顎が見えた。


ああ、食べられる。


何の感情も抱かずに、それが客観的事実として把握はできた。

傍目には狂ったままだが。


無謀、傲慢のツケを支払う刻がきたようだ。

「・・・何が石の国ゴーレムは世界一だ・・・キュウすら救えない。」

竜の顎が迫る瞬間、自嘲気味にボソッっとシン少年はつぶやいた。








「石の国のゴーレムは世界一ィィィ。」

その時、一体のゴーレムがどこからか現れた。

そしてモーションの小さく素早いアッパーカットでドラゴンの顎をぶん殴った。


「え、えぇ??」

シン少年は再び混乱した。

このゴーレムはどこから来たのか?

シン少年が連れてきたゴーレムは5体。

そのうち、今、シン少年が肩に乗っているゴーレム以外は全滅したはずだった。

で、あればこのゴーレムはどこからきたのか?

見るとゴーレムの腹部に人が一人乗れるスペースがあって、そこに見知った人物が乗っていた。

「親方っ!」

シン少年は叫んだ。

そのドラゴンを殴ったゴーレムに乗っていたのはファイブ親方であった。

「おっ、親方ぁっっ。」

「シン! 無茶をしおって、それより話は後だ。逃げるぞ。」

「え。」

ファイブ親方は驚くシン少年を無理やり自分のゴーレムの腹部にあるむき出しのコックピットに乗せた。

「え。」

そのコックピットがファイブ親方とシン少年を乗せたままカタパルトのようにゴーレムから分離して空中に飛び上がった。

いわゆる緊急脱出装置である。

「えええっ。」

シン少年はただただ、驚いている。


颯爽と助けに来てくれたファイブ親方が、ドラゴンに一撃を加えた親方が、次の手に選んだのはシン少年のゴーレムどころか、自分が手塩にかけて作ったはずのゴーレムを乗り捨てての緊急脱出であったことに。


ドラゴンに一撃を入れた尊敬する親方のゴーレムなら、ドラゴン相手でも戦えるのではないかと思った矢先に打った逃げの一手。これに驚き、混乱した。


ただ、それはシン少年が現実を見ていないからであった。

「見ろ。」

親方は職人風の太い指で乗り捨てた自分とシン少年のゴーレムを指さす。


先程のアッパーカットの衝撃から回復したアースドラゴンがブレスの一撃を放つ。

それだけで2体のゴーレムは破壊・粉砕され砂になった。


「あああっ。」

シン少年は絶望の声をあげる。その場に残っていたらドラゴンブレスでゴーレムもろとも死んでいた。

「それにな。」

親方はさらに別な方を指さした。

そちらにはこの石の国に駐在している帝国兵がいた。

こちらに向かっている。

ドラゴンが暴れているので様子を見に集まってきたのであろう。


「あああっ。」

確かにこれでは逃げるしかない。

でも、ドラゴンに帝国兵。逃げることができるだろうか?


ここでシン少年の心に再び後悔の波が襲った。

キュウに続いてファイル親方まで、自分のために死んでしまったら。

そう思うと心も体も硬直して動けなかった。


その心を見通したのか、ファイブ親方はごつい職人の手でシン少年の頭をゴリゴリと荒っぽく撫でて、

「見ろ。」

と指さした。


そこには3人の男女がたっていた。



---from akaishi side---

「うむ。」

ファイブ親方が見習いを無事救出した。

我らはそれを確認するとドラウプニルを起動する

ファイブ親方が単身ゴーレムで向かうと聞いたときはどうなるかと思ったが無事、救出し脱出用カタパルトで脱出したようである。


ファイブ親方は仕事をした。

次は我らの番である。



我はドラウプニルを起動する。


「An armor changes Tor」の機械音が鳴り響く。


我の体が真紅の西洋甲冑のようなものに覆われる。

腰回りは大きなスカート装甲。肩の倍はある巨大な肩当に、膝から下もフレア装甲。右腕には二回りも大きな円筒形の腕あて。左手には腕には炎をデザインしたようなシールドが装着される。

「Completion! The Fighter ・RED」

機械音と共に我は真紅の重装戦士に変身する。


アオイもドラウプニルを起動する。

アオイのドラウプニルから「An armor changes Wodan」の機械音が鳴り響く。

アオイの体が青い全身スーツにつつまれる。そしてマントのような青藍のパーカーとフレアスカート。鍔の広いとんがり帽子を被り。杖を持った。魔法使い然とした姿と変わる。

「Completion! The magicians・blue」

機械音と共にアオイは青を基調とした魔法使いに変身した。


山吹もドラウプニルを起動する。

山吹のドラウプニルから「An armor changes Frey」の機械音が鳴り響く。

山吹の体がド派手な黄色の全身スーツと軽鎧に覆われる。

フルマスクのようなヘルメットに頭部が全て隠される。腰に大剣、背にはマントを装備している。

「Completion! The Commander・yellow」

機械音と共に山吹は黄色を基調とした戦士に変身した。


「ドラゴンと帝国兵を同時に相手するわけにはいきません。」

山吹がそう言いながら空飛ぶ船スキーズを呼び帝国兵に砲撃を開始

同時にレーヴァティンの炎を創り出す能力とスキル「錬金」の組み合わせで炎のライダーが乗ったバイク軍団を出現させ。帝国兵に突撃させる。


「オッケー。その間、アタシはドラゴンを封じる。」

アオイが機械仕掛けの狼2体を出現させる。

「うむ。大丈夫か。」

我はアオイに尋ねた。アオイが今までの経緯からドラゴンに苦手意識を持つことを知っている。

「あんまり大丈夫じゃないなー。だから早く帝国兵を全滅させてね。」

アオイのこういう弱気は珍しい。やはりドラゴンはトラウマなのであろう。

「うむ、承知した。」

実は我のスキルが一つ進化していた。

「射出」というスキルである。

「レールガン」という名前に変わっていた。

山吹に聞くと原理は理解できなかったが電気の力で弾丸を飛ばすことができるらしい。

我はその新スキル「レールガン」を帝国兵のど真ん中かに撃ちだす。敵兵のど真ん中に命中し、その衝撃波で地面や敵兵を吹き飛ばす。

そのまま「筋力増強Lv2」「脚力LV9」「幻獣の角」といった跳躍力を強化する「スキル」に身を任せて跳躍する。


最近、ようやくスキルを活用する戦闘法を理解してきた。

戦闘の幅が大分広がっていることを実感している。


レールガンの一撃で動揺している帝国兵と山吹のライダー軍団が衝突。

これでほぼ帝国兵が全滅。あとは司令官とその周辺の帝国兵2名か。


我は大跳躍した勢いで空中飛び蹴りを敵の司令官めがけて放つ。


「な、何者だっ 私を帝国から派遣されたし・・・あべらっ!」

敵の帝国兵が何か喚いていたが知らぬ。そのまま飛び蹴りで吹き飛ばし倒した。

こちらはこの後、ドラゴンを相手にせねばならぬのだ。

相手をしている暇はない。


一通り敵を殲滅させた後、アオイのを確認する。


アオイが呼び出した2体の機械仕掛けの狼は衝撃波と鎖でドラゴンの動きを何とか止めていた。特に鎖でドラゴンの口をぐるぐる巻きにしている。あれではブレス攻撃はできない。


「アオイ。待たせた。」

我は駆けつける。

「オッケー。早いじゃん。」

アオイが安堵の声をあげる。

「ドラゴンも早めに倒しましょう。」

山吹が提案する。

我もアオイも頷いた。


我は眷属である赤き巨人シアルフを喚び、同化する。

アオイは残りの眷属を全て召喚

山吹も空飛ぶ船スキーズを近くに呼び寄せる。

「スキーズ。ヴァン・アース御願いします。」

『イエス。マイマスター。・・・・収束』

スキーズが機械音を発するとスキーズが発光。

アオイの呼び出した機械仕掛けの獣たちも呼応するように発光する。


発光した6体が我とと同化しているシアルフに収束する。


『ヴァン・アース権能収束・発射準備

セイズ解放。 ガント充填、三神解除。標的“アースドラゴン 目標位置クリア”。

ガンド充填300% 対反動制御オールクリア。ヴァン・アース権能発射準備クリア』


スキーズが制御をおこなっているのであろう。

アナウンスが流れる。


我はそのアナウンスで必要なエネルギーが充足されたことを確認し、技に移行する。

「吐ーッ!」

我の気合と同時に速射の掌底を目標にむけてくりだす。

『Gungnir』

機械音と同時に我が掌底から繰り出される力の奔流。


ドラゴンはブレスで対応。


我らが放った力の奔流とドラゴンブレスがぶつかる。

一瞬、拮抗したが我らの力の奔流が上回りアースドラゴンを直撃。

その勢いで倒した。


『LEVEL UP』

『スキル:ドラゴンブレスを獲得しました。』

『アテンション:スキルドラゴンブレスは予期せぬ戦闘手段により獲得したためエラーが発生しました。スキル獲得は無効です。』


ぬう。

我はこのアナウンスを聞き思案する。

ヴァン・アース状態での一撃はドラゴンを屠るだけの威力を持つが制限が多い。

我等三人とその眷属全員が揃う必要がある

そして、3分しか、その状態を維持できない。つまり一撃のみの時間しかないのである。

また、状態移行まで時間が必要である。など、欠点をあげるときりがない。

中でも一番のデメリットと我が感じているのがスキル獲得ができないということであろうか。


最近、ようやく「スキル」の活用方法を理解しつつある。

普通に攻撃するより、普通に技を繰り出すより「筋力増強Lv2」「脚力LV9」「総合格闘LV7」を活かした方が結果として敵を倒しやすいのだ。

それで最近は「脚力LV9」を活かすべく蹴りを意識している。


きっかけは何だったか。

そう山吹の「錬金」である。

錬金でバイクを創り集団戦に対応し、帝国脱出の際には移動にも活用した。

あれを見てスキルの活用次第では戦闘の幅が広がるのではないか?と考えた。

実際に活用してみて、その仮説は当たっていると感じている。


となると欲なもので新たなスキルが欲しくなる。

特にドラゴンブレスを防ぐことができるスキルである。

理由はシンプルでそれがあればデメリットの大きいヴァン・アース状態に頼らずともドラゴンと戦える可能性が出てくるのである。


見たところ他の巨大モンスターとの最大の違いはドラゴンブレスである。

逆に言えば、このブレスを防ぐことができればよいのだ。


一番簡単に思いつく手段はドラゴンブレスの相殺ではなかろうか?

で、あれば今回、無効となったドラゴンブレスのスキルは是非ともほしいスキルである。


ここで矛盾が発生する。

ドラゴンを倒すにはドラゴンブレスのスキルが必要

しかし

ドラゴンブレスのスキルを手に入れるにはドラゴンを倒す必要がある。


何と理不尽な事か。


しかしながら、この矛盾を解いたときに一気にパワーアップする。

その予感はある。


もしかしたらリサ姉のところに行く場合に障害になるであろう。

守護者とも対抗できるのではないかと考えている。

なぜならドラゴンブレスにアオイまたはアオイに宿るカグヤ殿は「胡蝶の舞」での無効化を図らなかった。無効にできないからであろう。


であればあらゆる力を吸収する守護者もドラゴンブレスだけは無効にできぬ可能性がある。

リサ姉の救出時にも有用であろう。


如何に取得すべきか思案せねばなるまい。



---from Shin side---

シン少年は見た。

帝国兵を10分経ずに殲滅した赤・青・黄の勇者を

そして

その勇者たちが呼び出し、融合した神のごとき巨人がたった一撃でアースドラゴンを倒す光景をみた。


それは石の国で自分たちが作っているゴーレムとは別次元のものであった。

「ふん。上には上がいるということだな。」

シン少年はファイブ親方を顔を見たが陰になってよく見えなかった。

「お、お、親方ぁ。キュウがっ・・・」

シン少年がファイル親方の服をつかむ。


キュウはドラゴンブレスがシン少年の目の前を通った後、消えてしまった。


「そんな顔するな。シンがそんな顔しても銭にならん。」

「けどよぉ。」

「投資に負けただけじゃ。命まで取られたわけじゃない。」

「命って・・・え、えっ???」

シン少年の目の前にはキュウがいた。

「なっ、なっ なんでぇ??」

「何を幽霊でも見たような顔しとるんじゃ。おっおいっ!」

シン少年はキュウに抱きついた。

慌てたキュウは戸惑ったが、そこで嗚咽するシン少年を見て優しく頭を撫でた。


あとで落ち着いたときに確認したところ

ドラゴンブレスを受ける前に緊急脱出装置のカタパルトで上空に逃れたということであった。無事だったらしい。

緊急脱出装置を取り付ける分、キュウはシン少年より抜け目がなかった。

ただし、脱出の威力が高すぎて洞窟の天井まで届き、洞窟の天井の岩に引っかかっていたところをレンジャーワンと一緒にきていたメンドーサの雷獣に察知され、救出された間抜けなところはシン少年には内緒にするらしい。


「バカモンっ!」

落ち着いた後、ファイブ親方の拳骨がシン少年とキュウに落ちた。

ドラゴンに勝手に挑み、勝手に窮地に立ち、自分たちの命どころか石の国を危うくしたのだ。

拳骨で済むような問題ではない。

シン少年は甘んじてファイブ親方の拳骨を受けた。


「修行のやりなおしじゃ。世界一の道はこれからじゃ。」

ファイブ親方はそう言って二人の愛弟子を見た。


【次回予告】

石の国を救ったレンジャーワン

石の国はゴーレム産業が盛んな国でありそこから地上との交易が始まる。

一方、赤石はある悩みを抱えていた。


次週、episode21 青く染まった石の国の希望

毎週 日曜日 9時30分 更新


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