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episode18 石の国と白い戦士

---from yamabuki side---


「LEVEL UP!」

脳内に機械音が響き自動的に空間タッチパネルが開かれます。


―ステータス―――

名前:山吹智

年齢:19

職業:大学生・研究者(専門魔石)

LV:49⇒52

スキル:直観LV5⇒LV6 強運LV5⇒LV6 演算LV2⇒3 統率LV1(NEW)

錬金 パラライズ    

装備:ドラウプニル(黄) レーヴァティン 

眷属:スキーズ

称号:守護者を倒したもの 


Congratulations:レベル50を超えたため一度だけタイプの選び直しが可能です。

――――――――



えっと、どういうことでしょうか?

いままで、上がらなかったレベルが急にあがりました。

それも3つです。


聞くとアオイちゃんは一つ上がってLV62に赤石くんは僕と同じく3つあがってLV47になりました。


「どういうことなのでしょう? 僕たちは何も戦闘してないですよ。」

「んー。もしかして前回の戦いでの呪い返しで術者が倒れたとか? それが今だったんじゃない?」

アオイちゃんが指を顎にあてて思案しつつ予測を伝えてくれました。


だとしたら、その術者はかなりの高レベルだったようです。

何しろ一気にレベルが3つも上がったのですから。


それにしても気になるのが、「レベル50を超えたため一度だけタイプの選び直しが可能です。」というアナウンス。


タイプの選び直しとは何でしょう?


そう思っているとステータス画面が切り替わりタイプ一覧が出てきました。


■Fighter

■Magician

■Healer

■Tank

■Sniper

■Ranger

■Commander

■Summoner

■Alchemist

■knight

■Sage

■Assassin

■Load

■Monk

■berserk


多いです!

迷わせる気まんまんのようです!

僕はそっと一覧画面を閉じました。


え? 選ばないのかって?

こんなのすぐに選べません。

僕はじっくり検証するタイプなんです。


---from akaishi side---


「ぬう。」

我はメンドーサの傷ついた顔を見て思う。

何と理不尽な事か。


彼女はゴセイという知り合いであった。


あとで知ったことだがあのゴセイという男。

メンドーサの上官であったヘドリアの弟であるらしい。


ヘドリアは帝国内において、唯一武力ではなく、話し合いで地上との交渉を図ろうとした四天王である。


その矢先に不意の出来事で命を散らした。

その彼女の最後の言葉が蘇る。


--------------------------------------------------------

「私にはね弟がいたの。」

「・・・。」

「私の国が亡ぶときに離れ離れになったの。」

「・・・。」

「アタシね・・・今でも思うの。あの時、諦めずに探していたら・・・ってね。」

「・・・。」

「アタシね・・・諦めないあなたがうらやましいわ。」

「・・・。」

「だからね。何があっても諦めないでね。アタシが言うのもおかしな話だけれど。」


----------------------------------------------------------------


その時の話にでておった「弟」があのゴセイという男か。

もっともあの「ゴセイ」はモンスターが化けた偽物であったようだ。


それでも慕うヘドリアの弟と再会したとたん樹木にされた。

助け出されたものの顔や体には樹木にされたときに体から生えた枝葉の跡が痘痕の様に痛々しく残った。


彼女は知り合いと再会を喜び合いたかっただけであるのに

何と理不尽な事か!


ピーン。

ふと我のSNSが鳴った。

リサ姉からであった。


内容は

無事を知らせること

時期が来るまで探しに来るなということ

最近、ようやくSNSを送れる環境を手に入れたこと

石碑が判明したならば教えろということ

ビールとボイルしたウィンナーを食べたいことなどがつづられていた。


基本的には前回と変わらぬ文言である。


「ぬう。」


そして、前回とは違う気になる文言が添えてあった。

「地の国の部屋を調べろ」

という文言である。


意図がわからぬ。

頼ってくれたのはうれしいのだが。


我の許容量を超える案件ばかりである。

何と理不尽な事か。


---from aoi side---


私はため息をつく。

「警戒していたけど、いきなりとはね。」

青の国から地の国に行くには2つのルートがある。

帝都を経由するルートとそれ以外のルート。


帝都はタイタンが居座っているから帝都ルートは使えない。

となると、それ以外のルートになるんだけどね。


具体的には川の国と石の国の2国を経由するルートだ。

川の国が帝国の攻撃を受けてたことから当然、石の国も同様だろうと予測していたけどさ。


これはないわー。


「まさか、石の国に入る入口に軍勢をそろえてるとはね。」


繰り返すが地底国家群はダンジョンでつながっている。

そのダンジョンの入り口で我々を迎え撃つ作戦のようである。


『青の国や川の国で派手にやりましたからね。アタシ達の動きは読まれていると思っていいでしょう。』

「でしょうね。明らかに私達を意識したシフトだもんね。」

目の前の敵の軍勢を見ながら私はカグヤの意見に同意する。


なんか懐かしい感覚だ。

四天王時代はこうやって副官であるカグヤと意見交換したものだ。

まさか、カグヤがスキルと意識だけの存在になっても、その関係が続くとは思わなかったなー。


「不幸中の幸いは敵が帝国兵ということですね。僕達の動きを察知したのが帝国なら地上を気にしなくてもいいですから。」


私は山吹の意見に同意する。


今、帝国はタイタンとレジスタンスの混成軍に帝都を落とされて奥に引っ込んでいる。

帝国の主力が地上に出るためにはタイタンを倒さなければいけない。

つまり帝国に私達の動きがバレる分には問題ない。


それにしても・・・

私は意識を目の前の敵にむける。

敵は石の国主力のゴーレム兵。

それが石の国への出口の大空洞に集結している。

天井が高い大空洞の利点を生かして20m級の大型ゴーレムも2体仁王像のように鎮座している。そのほか円盤型の飛行型ゴーレムも5体浮遊しているのが見えた。


いずれも石の国の主力

石の国は帝国に反旗を翻す気はないようだ。

中にはこういう国もあるだろう。


「アオイちゃん。ちょっとわからないので教えてほしいのですが石の国は戦う時ゴーレムだけで戦うのでしょうか? 操縦者みたいな人は不要なのでしょうか?」

「いんや、ゴーレムだけ出てくるということはないなー。 操縦する人が必要だね。」

「であれば、この展開しているゴーレム兵は石の国の意思で展開しているわけではないわけですね。」


私は山吹に指摘を受けて敵を見渡す。

ちらほらと操縦者らしい人は見るが、それはすべて帝国兵の姿をしていた。

石の国の人はいない。


「そうだね。むしろ石の国の人が出ていないところをみると。その可能性が高いだろうなー。」

「それなら思いっきりいけますね!」


そういうと山吹はドラウプニルを操作した

「An armor changes Frey」の機械音が鳴り響く。

山吹の体がド派手な黄色の全身スーツと軽鎧に覆われる。

フルマスクのようなヘルメットに頭部が全て隠される。腰に大剣、背にはマントを装備している。

「Completion! The Commander・yellow」

機械音と共に山吹は黄色を基調とした戦士に変身した。


私も山吹に続けてドラウプニルを起動し空間に出現したタッチパネルを操作する

「An armor changes Wodan」の機械音が鳴り響く。

私の体が青い全身スーツにつつまれる。そしてマントのような青藍のパーカーとフレアスカート。鍔の広いとんがり帽子を被り。杖を持った。魔法使い然とした姿と変わる。

「Completion! The magicians・blue」

変身完了の音声がなる。


赤石も変身する。

「An armor changes Tor」の機械音が鳴り響く。


赤石の体が真紅の西洋甲冑のようなものに覆われる。

腰回りは大きなスカート装甲。肩の倍はある巨大な肩当に、膝から下もフレア装甲。右腕には二回りも大きな円筒形の腕あて。左手には腕には炎をデザインしたようなシールドが装着される。

「Completion! The Fighter ・RED」

機械音と共に赤石は真紅の重装戦士に変身した。



「錬金!&レーヴァティン!」

山吹がスキル「錬金」でバイクを複数作り上げ、レーヴァティンの炎で造形した人型の炎を搭乗させる。

バイク軍団が出来上がる。

「スキーズ! 大砲の出番です!」

『イエス、マスター』

続いて空飛ぶ船スキーズを呼び出す。


スキーズの砲撃が開始されると同時にバイク軍団がゴーレムに突貫する。


展開が早い。

山吹、張り切ってるなー。


今の山吹は軍隊みたいなもんだ。

スキル構成がまた、山吹にマッチしてる。

全体を俯瞰して集団を指揮する山吹の戦闘スタイルにあってるんだ。

山吹は自身が戦うよりも全体指揮の方が強い。

「レッド・ブルー! 僕がゴーレム兵を引き受けます。お二人は空飛ぶゴーレムと巨大なゴーレムをおねがいします。」


「はいよ。」

「うむ。」

私と赤石は応諾する。


さてと私は空を飛べるフギちゃんムギちゃんがいるから、空中戦といこうか。

あの空飛ぶ円盤の相手をしよう。


「おいで!フギフギ。ムニちゃん。」


私は機械仕掛けの鳥を2体呼出す。

私はその内の1体、フギフギの上に乗り飛ぶ。ムニちゃんには自由に敵を攻撃してもらおう。


狙いは空飛ぶ円盤型ゴーレム5体。

狙いを定めて-。

「gandir! gandir! gandir!」

マジックミサイルを連射する。


うおっ! 硬いな。さすがゴーレム。

16連射でようやく撃破か。


おおっと!

なんか撃ってきた。

魔法じゃないな質量のある物体だ、

弾丸みたいなもんか?


私のフギフギは急旋回で回避する。

急加速のため体に圧がかかる。


ふぉぉぉぉお!


圧がすごい、すごい。

変身してないと、この急旋回だけで自滅ダメージを受けていたなー。


お! 敵の2体が爆破された。


上を見るとムニちゃんが飛んでいる。

私とフギフギに気を取られているうちにムニちゃんの爆撃弾をまともに受けちゃったか。


お、残った2体の円盤型ゴーレムがムニちゃんに向かう。

おっと、私を無視するとはいい根性してるじゃん。

アタシは敵に照準を合わせる。


『・・・何を遊んでるんですか。』

カグヤが強制的にスキル「胡蝶の舞」を発動。

魔法を阻害する蝶の群れが残った円盤型ゴーレムを取り囲む。

2体のゴーレムは急に制御を失い・・・

「あ、落ちた。」

高高度から落ちたゴーレムはお皿の様に割れちゃったよ。


『・・・ゴーレムは魔法で動いてるのですから、わざわざ、そんな空中戦やらなくても魔法を阻害したらいいだけの話ですよね。』

「あーあ。せっかく楽しんでたのに。」

『非効率です。』

うわ、ばっさり。

これからかカグヤは嫌いだ。


---from akaishi side---


ふむ。アオイも眷属を呼び出したか。

で、あれば我も呼び出すとしよう。

「来るがよい。我が眷属 シアルフ!」

我が呼びかけに応じ、足元に巨大な魔法陣が展開される。

その魔法陣からせりあげるのは30mもある巨大な真紅のフルアーマー

その巨大なフルアーマーと我は同化する。


背にあるスラスターを噴射し斜め上空に飛び上がりながら敵に向かう。

目指す敵は2体の巨大ゴーレムである。


『ぬうん。幻獣の角よ。力を借りるぞ!』

我はスキル「幻獣の角」を発現させる。

このスキルは空中を跳ねる事ができるスキルではあるが副次的な効果として額に長槍のような長大な角が生える。


この角が生える速度と長さがすさまじい。

どんな槍の名人でも出せぬ。弾丸を超える速度と自分の全長を優に超える長さをもつ。


これが組み合わされるとどうなるか?


我がスキルの副次的効果で発生した幻獣の角が巨大ゴーレムの一体を貫く。

そして、その巨大ゴーレムは全身にクラックがはいり崩れていく。


と、こうなるのである。

誰も躱せぬ高速の槍の一突きである。


我は跳躍する。

「ぬうん。」

もちろん、このスキル本来の使い方も戦闘に有効である。

空中での2段跳躍で高高度のポジションをとり、そのまま中空で残るゴーレムをめがけて斜め下に向かって飛び蹴りを放つ。理屈は分らぬがこの動作をシアルフで行うと蹴りに紫電が走る。

前回はこの時、リーチを誤り、飛び蹴りの前に幻獣の角がヒットするという無様な結果に終わったが、2度同じ失敗はせぬ。


この時点でスキル「幻獣の角」を解除。

角が消える。

「吐―っ!」

紫電を帯びた飛び蹴りが巨大ゴーレムにクリーンヒット。

巨大ゴーレムが爆散した。


---from yamabuki side---


「赤石クンとアオイちゃんの方は終わったようですね。」

僕は戦場を改めてみる。


2体の巨大ゴーレムは赤石クンが同化したシアルフにより倒されてます。

5体の空飛ぶ円盤型ゴーレムもアオイちゃんにより撃墜されました。

のこるゴーレム兵もバイク軍団の突撃を受けて崩壊してます。


良し。勝ちました。


心の中でガッツポーズをとります。


その時です。

僕の「直観」が何かを察知しました。

慌てて地面を転がり、低い体勢でその場から移動します。


その場を何かが駆け抜けます。

目の前に白刃が通り過ぎました。

危なかったです。


「幸運」でした。

あのまま立っていたら刃の餌食になっていました。


僕のスキル「直観」「幸運」が初めて仕事をしたかもしれません。


立ち上がり何が通り過ぎたのかを見ます。


目の前には赤石クンの変身後を彷彿させるフルアーマーの騎士がいました。


赤石クンと違うのは・・・

色が赤ではなく白一色という事。

幅広で身長の倍もあるバスタードソードを得物として持ち

白い牛とも羊ともとれる乗騎にまたがっていることでしょうか?


おそらく、その乗騎を駆って一気に距離を詰め、剣で僕を叩き潰そうとしたのだろう、ということは容易に想像できます。


この白い騎士は一体何者でしょう?

石の国の将軍か?帝国から派遣された将軍か?

いきなり斬りつけてきましたから敵ではあるとは思います。


僕は慌ててレーヴァティンを構えます。

同時に炎の剣レーヴァティンの力を使い、炎の壁をいくつか設置します。

突撃対策の壁です。


「フン、くだらん。下級職のCommanderが上級職のknightに勝てると思うな。」

白い騎士はこちらにむかって突撃してきました。


僕はレーヴァティンを構えます。

「フン! 斬魔剣。」

白い騎士は突撃しながら分厚い剣を大上段に大きく構え振り下ろします。

その一撃で、複数の炎の壁が吹き飛びました。

ついでに僕も吹き飛びました。そのまま地面を転がされます。

幸運にもレーヴァティンを盾にし、ダメージを軽減することはできましたが、仮に構えてなければ真っ二つ・・・いや、叩き潰されていた。

そう思わせるに十分な一撃です。


「イエローっ!」

アオイちゃんが僕の窮地に気づいたか機械仕掛けの鳥にのりながら白い騎士に魔法弾を放ちます。


「フン! くだらん。 斬魔剣!」

対する白い騎士は再び厚い剣を大上段に大きく構え振り下ろします。

その一撃でアオイちゃんの放った魔法弾は霧散しました。

「うっそ!」

アオイちゃんはショックを隠し切れません。

それはそうでしょう。

アオイちゃんの攻撃手段は魔法です。

その魔法が通じないのですから。


「・・・戦術姫。隙あり。」

突然、アオイちゃんの背後に黒髪長髪。高下駄に錫杖。黒い羽毛のローブ。漆黒の翼をもつ空飛ぶ女性が現れました。

「え!」

「・・・シッ」

黒髪の女性は錫杖でアオイちゃんの喉笛をつきました。

えぐい攻撃です!

そのまま吹き飛ばされるアオイちゃんに追いつきました。どんな飛行スピードなのでしょう。まるで瞬間移動です。

追いついた黒髪の女性はアオイちゃんにシャープな蹴りを放ちます。

それが延髄にヒットしました。

徹底して首を狙ってます。


その一撃を受けてアオイちゃんは地上に落下します。

「・・・戦術姫。お命頂戴します。」


地上に転がるアオイちゃんを錫杖で串刺し狙いでしょうか。

黒髪の女性が錫杖を突きの構えのまま急降下します。


「ぬうん。」

シアルフと同化している赤石クンがその黒髪の女性を殴ります。

巨人の一撃で黒髪の女性は吹き飛びました。


「フン!」

白い騎士が乗騎を駆って洞窟の壁面を駆けあがります。

スゴイです。

重力を無視してます。

そのまま壁面に激突しかけた黒髪の女性をキャッチします。

しかし、衝撃は吸収しきれなかったようです。

何しろ巨人の一撃ですから。


白い騎士も黒髪の女性と一緒に壁に激突ダメージを受けたようです。

一定量のダメージを受け過ぎたためでしょうか?

白い騎士の変身が解除されます。


現れたのは・・・

「ぬう。」

「え!」

僕達は驚きの声をあげます。


白い騎士の正体は交渉役として後藤さんや今の僕達の指示役である伊藤女史とともに僕達とともに帝都に赴いたメガネで無口な細マッチョ。白井さんでした。


確かにあのタイタンの反乱時に後藤さんとともに行方不明になっていました。

まさか、こんな形で再開するとは思いもよらなかったです。


「なぜ、あなたが。」

僕は当然の疑問を口にします。


この白井さん。

タイタン達、地底帝国の侵攻に悩まされていた時、ヘドリアと黒滝教授がつくった和平交渉の使者として後藤さん、伊藤女史とともに帝国に護衛役の僕達と一緒に帝都に行ったメンバーの一人です。

その時にタイタンが帝国に反旗を翻し、その戦乱に巻き込まれ後藤さんとともに行方不明となっていたのですが、まさかこんな形で和平交渉の使者だった人と再会するなんて思いもよらなかったです。


「なぜだ。」

赤石クンも僕と同じ質問を白井さんに投げかけます。


なぜ、白井さんは白い騎士の姿をしているのか? 

なぜ、白井さんは僕達を攻撃してきたのか?


「フン。なぜ?だと赤石、貴様がそれを言うか。」

「ぬ。」

「答えはシンプルだよ。強さを求めて。これだけだ。」

「ぬ?」

「は?」

赤石クンと僕は疑問の声をあげます。


「フン、これだけシンプルな事がどういうことかわからんということか。これだから低能は。赤石、お前は体を鍛えてるであろう。オレも鍛えている。」


はい。そうですね。

白井さんは背広の上からでもわかる細マッチョです。


「鍛えるのは強くなる手段だ。別に強くなる手段があるのであれば、それを実行するだけだ。」

「それが理由ですか?」

「・・・ああ。実際にお前らの蹴散らすくらいには強くなっただろう。まあ、このデカブツには通用しなかったがな。オレもまだまだということだ。 ここは潔く撤退しよう。」

そう言って白井さんは負傷したミスクロウを抱きかかえて踵を返します。

「まっ・・・。」

「そうそう、伊藤はどうなった?」

「え、伊藤さんですか。伊藤さんは僕達が救出しました。今は黒滝教授に代わって僕達の指示役ですよ。」

「フン。お前たちも護衛という最低限の仕事はしたわけだ。」

そういうと白井さんは転移のスクロールでこの場から去っていきました。


---from shirai side---


「・・・申し訳ありません。」

ミスクロウがオレに頭を下げた。

「何のことだ。」

正直、先程の戦闘での打ち身で体が痛む。不要な会話は避けたかった。

「・・・・先程、私を助けたせいで負傷されてしまいました。それがなければ撤退せず戦い続けることもできました。私は白井様の足をひっぱりました。」

「フン。そんなことか。助けるのは当然のことだ。」

オレはそういって部屋を出る。

そんな不毛な会話をするくらいなら、早くケガの治療をしたかった。

顔には出さねぇが痛いんだよ。


それにしても・・・伊藤は無事だったか。

オレは安堵する。

あのタイタン反乱時の混乱の時、オレは素早く伊藤に脱出し護衛であるレンジャーワンと合流することを勧めた。

彼らは護衛として最低限の仕事はしたらしい。


反対に最低限の仕事すらできなかったのが後藤だ。

黒滝教授とヘドリアとかいう地底帝国の高官が折角使った和平の好機を活かせず。

内乱に巻き込まれる危機においても、だた狂乱するだけで、あのままでは伊藤女史すら救えぬ状況であった。

情けないことに自分の生命すら守れず、いまは実験材料としてビーカーに浮かんでる。


レンジャーワンや帝国には寝返った理由を「強くなるため」と答えた。

それは嘘ではない。

が、あの時、まあ、あの時の状況を考えれば、別の理由でもベストな選択であったとオレは思っている。

あの時、寝返らなければオレも後藤と同じ運命をたどっただろう。

伊藤を逃がしたあと、間抜けにも後藤と一緒に捕虜になったとき、相手を観察した。

観察対象はデビルフィッシュとかいう蛸頭の帝国高官だ。たしか四天王のはずだ。

奴の思考を観察し、分析し、生き延びるための「解」を導き出した。

その回答が「強くなるため」という言葉だ。


お陰で生きている。

さらにドラウプニルという力も手に入れた。


さっきの戦で分かった。

少なくとも山吹やアオイ二人には勝てる力だ。


鬱陶しくもオレを気遣うミスクロウに対し

「フン! ヒーローが助けるのは当たり前だ。」

と突き放す。


そうヒーローは「強くならなければならない。」のだ。


官僚のオレがヒーローにあこがれるのは滑稽であろうか?

しかし人を救うという崇高な職種はある意味、ヒーローではないだろうか。


さて、ケガを直したらどうする?

帝国には恩がある。生かしてもらったこととこの力をもらったこと。

さあ、真のヒーローはどう動く。

オレは残り少ない煙草に火をつけた



---from Lionman side---

「おお! 山吹殿の予感はあたったか。」

「は、は、は、はいっ!」


オレは今、地上との直通トンネルの下にいる。


このトンネル。

垂直に掘られているので垂直飛行のできる山吹殿の空飛ぶ船スキーズでなければ移動不可と安易に考えていた。

それでも万が一のことがあろうかとオレとメンドーサ嬢で入口を見張っていた。


無謀なチャレンジャーはいるらしい。


地上を守るべきレンジャーワンが石の国の手前まで移動しているのを知り、登って地上に出てみようと試みる輩がいた。


オレにとって物足りないのは敵が弱すぎるということであろうか。

我が竜巻魔法一つで消し飛び逃走するとは。


あれは確か、アオイ殿の兄 ブルーフェイスとともに行動している四人組の冒険者であったな。相変わらず逃げ足が速い。


ひと段落ついてから隣にいるメンドーサを見る。

樹木にされた後の傷が痛々しい。


「メンドーサ殿。お主はレンジャーワンと一緒に祖国に行かなくてもよかったのか?」

メンドーサは複雑な顔をした。

「は、は、はい。正直、わからないのです。」

「わからない?」

「そ、そ、そ祖国は気になります。父も母も。友達も。で、で、でも私とヘドリア様は祖国敗北後、帝国に仕えました。それを地の国の人がどう思ってるか・・・、そ、そ、それ、そのことを地の国が近くなるにつれて考えちゃって・・・。」

「ふーむ。」

オレは顎を撫ぜる。

なるほど、祖国が近くなったことで、そのことを考える様になった。それで一旦、心の整理のために距離を置いたか。

で、あれば本人が答えを出すまで余計なことはしないのが賢明であろうか?

「そ、そ、それにです。私がここにいればレンジャーワンの皆様にも地上の伊藤さんにも連絡できます。」

「うむ。」

戦場においてメンドーサの雷獣を使役した情報伝達能力は大いに役立っている。

「あ、あっ。 また敵がきました。え? ええっ? 敵は一人です。」

「む。」

オレはメンドーサが指さした方を見て構える。

敵は奇襲という言葉を知らぬようだ。

堂々と洞窟の闇から我々の方へ姿を現す。

「お久しぶりです。四天王デビルフィッシュ副官 ライオンマン殿」

顕れたのはタイタン配下のプロネミンスであった。


【次回予告】

プロミネンスと対峙するライオンマンに異変が

その異変の原因は?


次週、episode19 黄色い獅子と赤い魔法使い

毎週 日曜日 9時30分 更新

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