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episode16 多色の獣

---from ??? side---


「なんと、まあ、青の国のスライムが消えはった??」


あのスライムはアタクシが丹精込めて作った作品

あの泥んこのような着色をつくるのにどれだけの失敗と職人技を必要としたと思ってるのだろうか?


「せっかく阿呆のブルーフェイスが反旗を翻してくれはったおかげで、日の目を見られたいうのになぁ。」


あの美麗な青の国を文字通り食らいつくすにぴったりの合成獣であったのに。


あああああっ そのために作ったのにーっ


アタクシは目の前の人がすっぽり入る巨大ビーカーを蹴り上げる。


当然、巨大ビーカーは割れて、中の作りかけの合成獣は流れ出す。

どーせアタクシの作品だ。作るも壊すも創造主の自由だ


これはアタクシの作品への冒涜やねぇ。

「で、どなたですか~? そないなけったいなことしはるのわ?」


「地上の勇者レンジャーワン」


使者として現れた四天王デビルフィッシュの副官の一人

ミスクロウが端的に答えた。


「へぇ。そのお名前は宰相ユミルさんから聞いてますー。そらけったいな相手ですなぁ。かの四天王と互角以上の戦いをした相手ですか・・しかし・・・アタクシの作品の無理解は困りますなぁ。ちょいと、痛い目にあっていただきましょか。」


ミスクロウが頷いた。


---from aoi side---


「パパ ママ!」


「アオイ! よくぞ無事で」

「まあ、アオイちゃん会いたかったわ。」


父王と王妃であるママと再会を喜び合う。

月並みだけど会えてよかった。もう、会えないと思っていたから猶更・・・


うん、ここで当然の疑問が頭をよぎる。

「何で生きてるの?」


「ちょっ、その言い方はひどくね。」

「アオイちゃん、ママ泣いちゃうわ。」


え、あーっ。私は思った疑問を口に出しただけなんだが・・・

『アタシもひどいと思いますわ。』

うっさいカグヤ、ダマレ。


『このお姫様。最近ひどいですわ。何を言ってもダマレしか言わない。まるでDVの夫ですわ。』

ちょっと待て。いつからアンタと夫婦になった。


私が慌てていると

「相変わらずですな。お嬢。」

細面でおじゃもじゃ頭の騎士がパパのママ後ろから顕れた。


「げっ。」


「げっ! とは。やれやれ。アンタはお姫様ですぞ。」

「アンタって言われる筋合いねーわ。」


『はーっ アンタって、どこにいっても「アンタ、お姫様だよね?」ってツッコミいれられるのですわね。』

うっさい、カグヤ。ため息つくなや。


この細面のもじゃもじゃ頭の騎士はアタシの教育係であったカイ将軍。

なんでも昔は歴戦の戦士であったらしいし、その力は今も現役。

私と一緒に攻めてきた帝国の先兵レッドドラゴン相手に大立ち回りをしたのは記憶に新しい。


そん時に戦場に迷い込んだ野良犬をかばって、ドラゴンテールの一撃を受け、早々に戦線離脱しちゃったんだよね。


強いんだけど、優しいんだけど、運が無い人。


そういえば、一度「ほんとに運ないねー。実力あんのに」とからかった事がある。

そしたらアイツ「ちげーよ。悪運を跳ね返す力がないんだよ。まだ未熟ってだけだ。」と答えたのが印象にある。

私の教育係・・・いわば師匠にあたる人が未熟なんて思わないじゃん。

だから当時の私は反発に似た違和感を覚えた。


いまならわかる。

私は赤石を見る。

赤石はあらゆる理不尽を超えてリサ教授を探している。

そしてその過程で帝国の地上侵攻を防ぎ。私の青の国も開放した。


これがカイ将軍の言う「悪運を跳ね返す力」なんだろう。


それはともかく


『なんで、カイまで生きてんのさ。』


「「「言い方っ!」」」


なんか皆から総ツッコミ受けたよ。


「アオイよ。お前には兄がいる。」

「そうなのよ。かわいいアタシの息子なんだけど、ちょっと間違っちゃた困ったチャンがね。」


なんだ?

唐突に父母がブルーフェイスのことを話し始めた。

つーか。親からすれば裏切ったブルーフェイスも困ったチャン扱いか。

まあ、そうだよな。

どれだけワルガキでも、実の親は愛情を注ぐよな。

私はもう見切り付けたけどな。


『薄情ですわね。』

「カグヤ、アンタは理解してるんじゃないの? 懸命に国のためにレッドドラゴンと戦っていたら後ろからドズン。死にかけたわ。これで何を信じろと。」

『危ういですわね。』

「は? 何が?」

『今のアンタは「普段のあんぽんたんなお姫様失格のアンタ」と「怜悧な戦術家のアンタ」が同居していますわ。余計なおせっかいながら危ういように思えますわ。』

「そこまで深刻に考えなくてもよくないかい? 誰でもプライベートモードと仕事モードがある。それだけの話でわ?」

『その振れ幅が大きすぎると危ういですわよ。』

「へいへい、ご忠告ありがとう。」

『そんな茶化して・・・まったく、もう。』

「・・・どした?」

『何がですか?』

「柄にもない。私の心配なんかしてさ。」

『・・・あんたはアタシを倒したんですよ。そんなアンタが意味不明なメンタル不調で敗れるなんてあってはいけないことですわ。』

なるほど、そんな考えもあるのか。


「アオイよ。呆けてるようだが、話ししてもいいかね?」

「大丈夫? アオイちゃん 疲れていない?」


おっと、カグヤとの話に夢中になり過ぎた。

そうだ。


なぜだ。疑問がある。


アホ兄ぃのブルーフェイスが裏切った。

帝国は当然、人質である青の国を見せしめとする

具体的にはスライムを活用してヘドロの海にした。

そしてあれだけの質量のスライムに覆われていたという事は、その国民は生きていないと考えた。父王、ママも含めて

でも、生きてくれてた。

理由を知りたい。


「簡単なことだよ。」

「認めたくないんだけど困ったチャンがこうなるのはわかってたのよね。」

父王とママがため息をつきながら言った。


そりゃそうか。一度は国を裏切ったんだ。再度、裏切るのは誰でも予想できる。


「やれやれ、そんなこともわかんねぇ? お嬢。なまったか? 戦術姫の異名が泣くぞ。」

カイが肩をすくめる。

ムッとはしたが、ここで思案を巡らせる。


「なるほど、どこかでまた裏切るのはわかっているのだから準備をしておけばいい。そういうこと?」


「正解。」


カイが腕組みしながらウインクで答えた。


「さすがにあの大量・・・それも国家を覆う規模のスライムは想定外だった。せいぜい人化魔法での大型モンスターで攻めてくるくらいしか想定していなかったがね。まあ、それでも攻めてくるのがあらかじめわかっていているなら、逃げる先をあらかじめつくっておけばいい。」


「なるほど、逃げる先への移動は転移のスクロールで?」


「そう。いつ来るかはわからんからな。かといって前もって逃げる先に移動するわけにもいかん。帝国から派遣されているハリ将軍の兵たちが見張っているからな。」


「だから転移のスクロール。・・・遠距離なら少人数しか移動できない。でも短距離なら大人数でも可能。変換技術は必要だけど・・・。」


「やれやれ、その変換技術をつくりあげたのがアンタだろうに。」


「・・・そうね。」


「そこは誇っていいと思うぜ。戦術姫。その技術があった青の国・・・アンタの技術があった青の国だからこそ出来た裏技だ。アンタのおかげでこの国の人は救われたんだ。二度もな。」

「二度?」


「あん?それもわかんえぇのか? その脱出の時と今だよ。 アンタが研究した国民全員を転移させる術式開発のおかげで全員を避難させることができた。そんで巨大スライムとハリ将軍を追っ払ったのもアンタだ。2度、俺たちは救われたんだ。」


「へーっ。」

そうか。あの研究が役に立ったか。

お姫様修行が嫌で、好きな魔法研究に逃避行していた時にしていた研究だったけど。


その研究がねぇ。

面映ゆいが、みんなを救ったとなると素直にうれしい。


「あれ?ということは近場に潜んでたってこと?」


「おうよ。そうじゃないと全員を助けられんだろ。」


カイがにやにやしている。

これは、どこに転移して巨大なヘドロスライムの人的被害を防いだか当ててみろって顔だな。


この青の国から離れていなくて、

帝国から派遣されたハリ将軍に見つからず

巨大ヘドロスライムの被害を受けないところ


この条件に合致するところかぁ。


城の中は? 近いがハリ将軍に見つかる。収容人員も多くない。国民全体は無理でしょ。

青の国に多い水の底は? 近くて、将軍に見つからないがスライムの被害を受ける。

他の国は? 遠すぎるだろう? 集団転移の範囲外だ。

それに父王やママ。カイがスライムやハリ将軍敗北後にすぐに出てきたのが気になる。

どうやってわかった?


どこかすぐそこで見れる場所にいたんだ。

すぐに見れる場所は?


アタシは上を見る。

青の国特有の幻想的な青い光を放つ洞窟の天井が見える。


「天井?」


「正解。」

カイが片目を瞑った。

ギザな野郎だっ。


なるほど、これは帝国にしてみれば盲点だ。

青の国に限らず地底国家群は文字通り地底にある。

天もまた地中だ。


その地中に防空壕を作ってしまえばいい。

作ること自体は土魔法で可能だ。

文字通り、天から地上の騒ぎを見下ろしてたってわけだ。


それにしても・・・

「綱渡りなギャンブル。」


帝国、地底国家群を問わずあまり私達、地底の民が洞窟の天井や壁をいじらないのは下手に掘ると「守護者」が出てくる可能性があるからだ。


文字通り守護者や守護者の卵に喰われる可能性がある。

条件によっては自我を喰われた魅入られた者を出現するだろう。


端的に言えば危険なのだ。


それを察したのかカイは片目を閉じたまま。

「どうせ防空壕は必要だったんだ。掘らなきゃいかんだろ? それは地面か天井かの違いだけさ。 それに・・・」


「それに?」


「仮に守護者の卵を守護するといわれる守護者が顕れたとして、帝国軍とぶつける方法もなくもない。」


なんとまぁ・・・


「いきあたりばったり。」


「ちがいない。」

カイは苦笑する。


「アオイよ。カイをそう責めないでおくれ。」

「そうなのよ。私たちもそこまで追い詰められてはいたのよ。ブールフェイスちゃんが帝国を裏切り、私たちが危険な目に合うか? それともイチかバチか防空壕をつくるか?この選択肢しかなかったの。」


うーん。そう父母いわれると返す言葉が無い。

アタシはその場にいなかったわけだし。


-その時


「あ、あ、あのっ。」

メンドーサが遠慮がちに声をかけた。


その仕草でピンときた。

「わかった。」

アオイ個人から戦術姫へ意識を変える。


赤石、山吹、ライオンマンの顔を見る。

みんなメンドーサの態度で理解したようだ。

頷きあう。


この国の異変を感じて帝国が攻めてきたんだ。


---from yamabuki side---


帝国の将軍を倒した時点で

スライムを吹き飛ばした時点で

帝国は異変に気付くでしょう。


メンドーサさんの雷獣を使った情報伝達。

凄い能力で時間ロスがありません。


帝国も同じ技術をもっていると考えた方がよいです。


異変に気付いた帝国が何らかのアクションを起こしてくる可能性はありました。


何しろ相手は魔法を駆使する相手です。


僕達の知らない魔法技術で青の国が奪還されたということ。

何らかの異変を察知するすべはあるのではないか?

その仮定で進めたほうが良いのではないか?


という考えの元、索敵能力に優れたメンドーサさんの雷獣の力を借り、青の国へいずれくるであろう帝国軍を入り口で見張ってもらっていました。


楽なのは地底の場合、国家間の移動が洞窟の通路のみでの行き来であることです。

つまりダンジョンの出入り口さえ押さえてしまえば、侵入察知も防衛も容易です。


逆に言えば、そんな高いハードルがありながら青の国を含めた地底国家群を攻め切った帝国はやはりスゴイということなります。


どうしても洞窟という制約がある以上、物量で攻めることは難しいですから


そんな実力のある帝国です。


異変もすぐに察知すると考えたほうがいいでしょう。


その効果はすぐにあらわれました。

この国の入り口を警戒していたメンドーサさんの雷獣が異常を察知したようです。


僕達はお互いに頷きあい、すぐさまこの国の入り口にむかいます。


「うわ~。」

思わず声が漏れます


そこにいたのは巨大な気色悪い生物。


顔はライオン・蛇・人・鷲

体は巨大な球体

足は昆虫のような多足の足


「・・・合成獣キメラ。」

アオイちゃんがつぶやきます。


えー。あれがキメラですか。

もうちょっとこう、ゲームとかだと可愛いらしいデザインが多いのですが、あの造形は純粋に嫌悪感を抱きます。ちょっとこう背徳的というか、なんというか。


あれが帝国の新たな攻めてなのでしょうか?

見るとそのキメラの側に数人の帝国兵の姿が見えます。


「へえ。なるほどなぁ。あんたらが帝国の邪魔しよるレンジャーワンですかー。あれあれ見るとこの国のお姫様がいらっしゃいますなぁ。なるほど、なるほど地上の国と手を組んで自分の国を取り戻しに来たって筋書きでしょうかー。健気ですなぁー。それでいかがでしたん? アタクシの作品は?」


帝国兵にまじっている場違いな格好をした女性の方が話しかけてきました。

彼女がこの帝国兵の指揮官でしょうか?

なんというか前衛的な十二単という表現があう格好をしています。


「はぁ? 作品?」

アオイちゃんが怪訝な顔をします。

僕らも同じ顔をしてると思います

言っている意味が分かりません。


「いややわぁ。そこのお姫様。しらばくれて、まぁ。元の謳われた美麗風靡な故郷を思ってこの国へ来はったんやありません? そしたら汚いヘドロの海になっていた。そのことに嘆くお姫様。ああ、なんと物悲しい物語。それこそアタクシの作品ですわ。どうでしたぁ?故郷がヘドロだらけになってたのは? すばらしい絶望の物語となったんちゃいます?」


アオイちゃんが眉を顰め、こめかみを人差し指でトントンと叩きます。

「アンタ、アホなの? 見て見なさいよ。今どこにアンタの言うヘドロがあるのよ? あんなのキレイさっぱり掃除でおわったわよ。絶望の物語?? そんなくだらない没作品は掃除ついでにゴミ箱にポイだね。」


さすがアオイちゃんと言ったところでしょうか?

挑発に乗らず、逆に挑発しかえしてます。


「うむ。あの悪趣味な趣向はそなたの仕業であったか。申し訳ないが薙ぎ払い没に成せてもらった。」


おっと、赤石クンも珍しく挑発してます。

それだけ赤石クンも国中をヘドロにしたことを怒っているということでしょう。


「なんやのっ! アタクシの力作をっ。ようわかった! アンタラが物語を解さない朴念仁ってこことかーっ。いややわぁ。作品を理解せん。理解せん。不幸と暴力とエロチズム

は蜜の味っちゅうの知らんか。」


前衛的な十二単の格好をした帝国の女性が髪をかきむしってます。

ちょっと怖いです。

狂っているようにも見えます。


その女性がくるりとこちらを向きました。


「まあ、ええわ。ほな、この新作の礎になってもらいましょか。」

そういって彼女は隣の四頭多足の丸い巨大な合成獣を見ました。


「それがアンタの作品? 気色悪っ。」

はい、僕もアオイちゃん言葉に激しく同意です。


特にあのわさわさした足がどうも好きになれません。


「気色悪いか! そうか。そうか。あんたらも食べられたら気色悪い合成獣の一部になるんやで。自らが生きたまま気色悪い生き物に取り込まれて一生を過ごす。 ええ絶望の物語になるやろなぁ。」



ちょ、ちょっと冗談じゃないですよ。

あのわさわさ足のモンスターに取り込まれるなんて想像しただけでも鳥肌モノです。


「おお。 一つ聞こう!」

ここでライオンマンさんが前に出ます。


ん? なんか怒ってますか?


「へえ? そういうあんさんはライオンマンやあらへんか。ミスクロウのお仲間がなんでそっちにいらっしゃるん?」


「ふむ。こちらの方が強敵と戦えるのでな。それよりもだ! そのモンスターの頭は何だ?」


「へえ。頭とは? 御覧の通り四つ頭がついてますー。どれのことやら。」

帝国の女性がとぼけるように頭をかいた。


「その勇敢なる獅子の頭のことだ。それはどうした。なぜ、そこについている。」


「先程のアタクシの説明を聞いてんのん? 喰われたら取り込まれますー。」


「負けたのか。」


「へえ。思い出しましたわ。 勇敢という触れ込みのワーライオンの一族も大したことおまへんでしたなぁ。ちょいと倒された振りしたら、簡単に信じてもうて。簡単に後ろからパクリといきましたわ。」


「おお、その化け物は倒されたと・・では勝負には勝ったのだな。」


「そこ大事ですかー? 勝っても食われたら意味あらへんで。」


「おお、確かにそれは一理ある。騙しあい結構! 騙された方が負けである。だがな・・・。」


「だが?」


「俺は我が一族をそのようにされて、はいそうですかと納得できるほど人ができておらんのだ。」


そう言うなりライオンマンさんはスクロールを取り出しました。

「Fimbul!Jǫtunn!Fimbul!draca!Fimbul!Óscópnir!sœkja! fé!」


人化魔法解除の呪文によりライオンマンさんが巨大化します。


「くらえぃ! サイクロンクロー!」

ライオンマンさんが風魔法で巨大な竜巻を発生させます。

その竜巻は気色悪い合成獣を吹き飛ばしました。


それを合図に帝国兵との一戦が開始されました。


僕達もドラウプニルで変身します。


「An armor changes Tor」の機械音が鳴り響きました。

赤石クンの体が真紅の西洋甲冑のようなものに覆われます。

腰回りは大きなスカート装甲。巨大な肩当に、膝から下もフレア装甲。右腕には二回りも大きな円筒形の腕あて。左手には腕には炎をデザインしたようなシールドが装着されました。

「Completion! The Fighter ・RED」

機械音と共に赤石クンは真紅の重装戦士に変身しました。


「An armor changes Wodan」の機械音が鳴り響く。

アオイちゃんの体が青い全身スーツに覆われます。

マントのような青藍のパーカーとフレアスカート。鍔の広いとんがり帽子。手には杖が装着されました。

「Completion! The magicians・blue」

機械音と共にアオイちゃんは青い魔法使いに変身しました。

僕は頭に流れてきたドラウプニル使用マニュアルに沿って空間に出現したタッチパネルを操作します。

同時に「An armor changes Frey」の機械音が鳴り響きます。


僕の体がド派手な黄色の全身スーツと軽鎧に覆われます。

フルマスクのようなヘルメットに頭部が全て隠されます。腰に大剣、背にはマントが装着されました。


「Completion! The Commander・yellow」

機械音と共に僕は黄色を基調とした神の戦士に変身しました。


「へえ。それが帝国を崩壊させた地上の勇者の権能というものですかー。なかなか興味深いですなー。その力見せてもらいましょ。」


この挑戦的な言葉を合図に帝国兵が僕達に襲い掛かってきます。

とはいえ、敵はゴブリンやオークが鎧をつけている程度です。

数も多くありません。洞窟の通路を抜けることができる最小の人数しか連れてきていないようです。

それであれば四天王とやりあってきた僕達の敵にはなりません。


僕が巨大スライムから奪った新スキル パラライズをお試しの意味で発動

敵の動きがとまりました。


このスキル。

第三者視点で見ると麻痺というよりは時間停止に近いかもしれません。


その止まっている隙に赤石クンの突きや蹴り、アオイちゃんの魔法連打で帝国兵は一掃されました。


「ほえー。こんな簡単に。兵が何の役にもたってないやんか。これはいよいようちの作品-合成獣に頑張っていただかんといけまへんなぁ。」


僕達はその合成獣と巨大化して戦っているライオンマンさんを見ます。


そこには血だらけのライオンマンさんがいました。


ちょ、ちょっと待ってください

ライオンマンさんは赤石クンと互角の戦いができる猛者です。


そのライオンマンさんが血だるまになるなんて。


それほど、この気色悪い合成獣は強いのでしょうか?


「ぬう。・・・来るがよい。我が眷属 シアルフ!」

ライオンマンさんのピンチを見て赤石クンは自身の眷属を呼び出しました。


彼の足元に巨大な魔法陣が展開されます。

その魔法陣からせりあげるのは30mもある巨大な真紅のフルアーマー

その巨大なフルアーマーと赤石クンは同化しました。


「ライオンマン。今、いくぞ!」

赤石クンと同化した巨大フルアーマーシアルフが始動します。


「おお、レッドか。気遣いはありがたいが助太刀は無用ぞ。」

意外にもライオンマンさんが片手で助太刀を拒否するジェスチャーをします。

「俺は蚊に刺された程度で騒ぎ立てるほどやわではないぞ。」

そう言ってライオンマンさんが得意の竜巻魔法を合成獣にむかって放ちます。


その血まみれの姿が蚊に刺された程度とは言い難いのですが・・・


それはともかくライオンマンさんの竜巻魔法が合成獣に直撃。

土煙が舞います。


その土煙が収まると無傷の合成獣が顕れました。

合成獣の周囲に幕のようなバリアが張り巡らされています。

あれが竜巻魔法を防いだのでしょうか?


「無駄ぁ。無駄や。そやつの体には自動的に魔法を霧散させるアンチマジックの魔法を自動的に発動させる装置しこんでますー。魔法の類は無駄やで。」


帝国の女性は誇るように胸を逸らした後、

「これもアオイはんのお陰や。」

とアオイちゃんを見ました。


「どいうこと?」

当然、アオイちゃんは聞き返します。


「この国はかの有名な帝国四天王アオイはんを輩出した国や。」


なるほど?


「帝国四天王アオイはんは魔法が得意と聞いておりますー。となると、その国にお住まいになられてる国民も魔法に長けてる可能性は否定でけへんわけですなー。アタクシとしては対策考えなーいかんわけやなー。 それでや!」


帝国の女性はピッっとアオイちゃんを指さします。


「アオイはんの副官であり目付け役のカグヤはんに目ぇつけたんや。彼女は強力なアンチマジックの魔法をもってはるとか聞いてます。それで強力な魔法を持つアオイはんの目付け役の役割を果たしてるとか。であればこのアオイはんを輩出した国に行くには強力なアンチマジックがあればよいのではないかという結論になりましてなぁー。それで誕生したのがあれや。」


帝国の女性はピッっと合成獣を指さします。


「あの魔法防御。見事ですやろ。かの戦闘狂で有名なライオンマンの魔法も無傷や。ようカグヤはんのアンチマジックを再現でき取ると思いませんかー。」


「おお。見事なアンチマジックだ。―だが、それがどうした?」

と言ったのはライオンマンさんです。


先程の竜巻魔法とアンチマジックのバリアの衝突でできた砂埃を目隠しに一気に合成獣に接近していたようです。


がっちり合成獣をホールドし、後方にぶん投げます。いわゆる投げっぱなしフロントスープレックスです。


「キャーっ。」「GYAAAA!」「シャーっ!」「ピヨピヨっ!」

地面にたたきつけられた合成獣が四つの顔からそれぞれの悲鳴をあげます。


見るとライオンマンさんの体から新たな鮮血が噴き出ています。

投げるときに合成獣の四つの口で噛まれたのです。


ライオンマンさんが血だるまになってるのは、その噛みつき攻撃が原因だったのでしょう。

たしかに魔法と投げ技が主武器のライオンマンさんとしては魔法無効であれば投げるしかなく、そうなると噛みつかれるということでしょうか。


なかなか強敵です。


「むう。大丈夫か?」

赤石クンと同化したシアルフが心配してライオンマンさんの肩をつかみます。


「おお、心配してくれるのか。戦友よ。だが心配無用。蚊に刺されただけである。」

そういったライオンマンさんでしたが、「おお?」という声とともにバランスを崩し片膝をつきます。

「ははあ。あの噛みつき攻撃を甘く見ましたなぁ。ほれ、あのお顔の一つに蛇の顔がありますー。見えてはりますかー? あれ毒蛇や。毒が体にまわってきたんちゃいますー?」

帝国の女性がケラケラ笑ってます。


「おお、毒か。なるほど考えてる。」

当のライオンマンさんは慌てる風でもなく、冷静に感心してます。

それが癇に障ったのか帝国の女性がピクリと肩眉をあげ

「まったく、そんな卑怯なことを言うんちゃうかいな。」

と悪態をつきます。


「まさか。戦場で卑怯もなにもあるまい。喰らった方が間抜けなのだ。」

「ほう、よくわかってらっしゃいますなぁ。けど、それ自分自身のこと間抜け言うてるとのかわりませんかー。」

「おお、確かにそうであるな。・・・だが・・・。」

「だが?」

「この程度の毒で戦えぬ。我が一族ではない。なあ、同志よ。」

そういったライオンマンさんの視線の先には合成獣のライオンの顔がありました。



合成獣は文字通り多種の生物を合わせたモンスターです


もしかしたらあのライオンの顔はライオンマンさんの一族。それも知り合いなのかもしれません。


だからこそライオンマンさんは怒り。合成獣に立ち向かったのではないでしょうか?


ですが毒は利いてるようです、荒い息を吐いてます。


「なあ、同志よ。俺たちはそれぞれ修行にでて、どちらが強くなるか誓ったよな。お前の姿は変わってしまったが、今こそその誓いを果たそう。」

ライオンマンさんは合成獣のライオンの顔に向かって語ります。


すると変化が顕れました。


合成獣のライオンの顔が一筋の涙を流し、人吠えすると

「応。あの時の誓いを果たさん!」

とライオンマンさんの声に答えたのです。


「・・・うっそ。」

遠くで帝国の女性の方が驚いて呆けています。

この出来事は彼女にとっても想定外だったという事でしょうか?


「おお、さすがは同志! では行くぞ!。」


再びライオンマンさんは竜巻魔法を撃ちます。

もちろん、バリアではじかれます。

粉塵が舞い上がります。


その粉塵を隠れ蓑にライオンマンさんは飛び上がり合成獣の頭上にニードロップを落とします。

そのまま組み付き再びフロントスープレックスで合成獣を放り投げます。


合成獣の四頭からの悲鳴があがり、フロントスープレックスの時に組み付いたときにかみつき攻撃を受け、ライオンマンさんの体から鮮血が噴き出ます。


このままではどちらが倒れるかの消耗戦です。


そしてその消耗戦。


毒を受け出血しているライオンマンさんの方が分が悪いのではないでしょうか?


見るからにふらついています。


思わず赤石クンが同化しているシアルフが支えました。


「おお、すまぬ。すまぬ」

ライオンマンさんは素直に赤石クンに例を伝えました。


「・・・大丈夫か?」


「ふーむ。大丈夫と虚勢を張りたいところではあるが、心身ともに意外とダメージが大きいようだな。」



ライオンマンさんが「心身ともに」という表現を使ったという事は心にもダメージを受けているという事なのでしょう。


先程の会話を聞く限り合成獣のライオンはライオンマンさんの知り合い、同族のようです

知り合いがそのようになるというのはやはりショックなのでしょう。


「おい。そこの女!」

その様子を見ていたアオイちゃんが帝国の女性の方に言い放ちます。


「なんて礼の無ぉ言い方や。品のかけらもあらへん。ほんにお姫ぃさまかいな。」


「うっさい。アンタにいわれたくないわ。それよりもさっき、私に対抗するためにあの合成獣にバリア機能つけたっていってたな。」


「はあ、左様ですが何か? 実際に試してみますかー? さすがの帝国四天王と言えどベースが魔法使いのあんさんでは勝てまへんで。」


「試してやろうじゃない。あとさっきアンタが言ってたカグヤの能力。完全に勘違いしてる。その勘違い正してやるっ。」


「はあ。勘違い?」

アオイちゃんはその帝国の女性の質問に答えず、合成獣に向き合うと


「胡蝶の舞!」

魔法の蝶の大軍を出現させました。

その蝶の大軍はオーロラのような巨大なカーテンをつくり合成獣を取り囲みます。

その魔法の蝶のカーテンはそのまま合成獣を通過していきました。


「gandir Fimbul!」

間髪を入れずアオイちゃんが大きな溜めの後、魔法を放ちます。

今までのとは違うひときわ大きな魔法弾です。


反動でアオイちゃんが後方に吹き飛ばされました。


「なんやのそれ? だから魔法は通じんというてるー。」

帝国の女性がいいかけたその時、大きな衝突音とともに合成獣に巨大魔法弾がHIT

四つの面のうち人間の面を破壊しました。


「なっ! なんでや! アタクノのアンチマジックが! なっなんで? なんでや? なんで魔法が通じとるんや。」


「これがアンタが模倣しようとして、アタシが厄介に思っていたカグヤのアンチマジック。カグヤのアンチマジックでアンタのアンチマジックの魔法を打ち消した。つまりアンタはカグヤに負けた。」

アオイちゃんが腕組みして自慢してます。

変身してなければ満面のどや顔が見えたでしょう。


「おお。なあ同志よ。戦場では不足の事態はある。それを卑怯とは言うまい。」

今の様子をみていたライオンマンさんが合成獣に問いかけます。


「もちろんだ、同朋よ。毒も奇襲も、このように魔法のバリアが消滅することも戦いの中ではアルことだ。」


「うむ。ならば決着をつけよう。」

ライオンマンさんが得意の竜巻魔法を放ちます。

アンチマジックのバリアがない合成獣はまともに受けます。


「ぬうん。」

ライオンマンさんが何度も何度も竜巻魔法を放ちます。

遂に合成獣は複数の竜巻に挟まれてミキサーの様に体を切り刻まれ五体を四散させていきます。


「なあ。同朋よ。」

合成獣が四方を塞ぐ竜巻に切り刻まれ圧迫されながら、穏やかな声でライオンマンさんに問いかけます。

「おお、どうした?」

ライオンマンさんもそれに答えます。

「先程、姿が変わったといったな。」

「・・・ああ。」

「それはお前も同じではないか? 本質がかわってる。」

「気づいていたか。どうも『願い』を優先するようになるらしい。」

「そうか。」

「そうだ。」

「それに気づいているならよい。最後にいい勝負だった。同朋よ。」


そう言って合成獣は複数の竜巻に押しつぶされ倒されました。





・・・ついでに帝国の女性は気づいたらいなくなっていました。

早いです。

スタコラサッサという表現がぴったりです。



---from aoi side---


「ごめんね! 結果として割り込んじゃった。」

私はライオンマンに謝る。


あのライオンマンと合成獣との戦闘。

ライオンマンが苦戦している原因はあの魔法を防ぐバリアだった。

それが無くなれば一気に戦況はライオンマンに傾くのは分っていた。


それはカグヤのスキル「胡蝶の舞」で消滅させることができるのは分かってた。

カグヤの力を舐めんなよ。


そのスキルを発動させるにあたって、ちょっと困ったのはあの合成獣のライオン顔がライオンマンの知り合いっぽいことだ。


彼らの間に何があったかはわからない。


ただ、彼らの1対1の戦いに横やりを入れることは憚られる何かはあった。

だから、赤石も山吹も沈黙していた。


でもなー。

合理的な部分のアタシは思う。

勝てる要素があるのに手をこまねいているのは、なんか・・・そうむず痒い。

これが自分の国の命運がかかっているなら猶更。

だから一芝居打った。


あの帝国の女が私対策にあのアンチマジックのバリアを用意したといった。

私の副官であるカグヤを模倣したといった。

その挑発に乗る形で一芝居をうって、あのアンチマジックの魔法をカグヤのスキルで打ち消した。


バカだよなぁ。


カグヤの能力を模倣したっていってたけど、あんなちゃっちぃ訳ないじゃないか。


『あら嬉しいですわ。アタシのことを正当に評価していただけるなんて。』

カグヤがしゃしゃり出てきたよ。

「ふん。 それだけアンタが厄介だってことっ! いろんな意味でね。」

『ツンデレ姫。』

「うっせぇわ。」


私がカグヤとバトッっているとライオンマンがアタシの頭を撫でた。

なんで。


「おお、優しいな姫は。だが気遣い無料! 戦いは油断した方が負けなのだ。」

「そ」

アタシはそっけなく答えた。


なんとなく面映ゆい。


「それよりも・・・姫よ。帝国にあんな女いたか?」

ライオンマンが私に問う

「いんや。私は見なかった。メンドーサは?」

「え、え、いや。はい、い、い、いるのは知ってました。確か・・・宰相様お抱えの研究者だったかと思います。」


へえ、宰相ユミルの配下か・・・・


「カグヤ。アンタ知ってた? 」

私たち四天王は帝国の生え抜きではない。

目付け役の方がそういった辺の内情を知ってないかな?


『・・・そういうところは抜け目ないですね。その察しと洞察力と推理力はさすが戦術姫。 問われなければ知らんぷりしようと思いましたが』

と言ってカグヤはくすくす笑った。


「おい。」


私は咎める。

だってそうだろう。

あんな国を覆うスライムやライオンマンの知り合いを合成獣に変えるような変態が今後、帝国から離反した国々にちょっかいを出してくるというなら放置できない案件だ。


『確か専門分野の世界では高名な研究者ですわ。ホノカ様とおっしゃいましたでしょうか? ただしその研究が世のなかに出すと顰蹙を買う。それどころか・・・刑を科さなければいけないような危険な事ばかりしてました・・・その知恵を犯罪者にしたくない宰相が表に出さず匿う形で調整し、裏で細々と研究を続けられていたと存じておりましたが・・・。どうやら誰かさんのせいで表に出てきたようですね。』


「誰かさんて誰さ。」


『あら、ご存じでは?』


うん、知ってる。


私達のせいだ。


今の帝国には四天王がデビルフィッシュしか残っていない。

そのデビルフィッシュの副官の一人ライオンマンもいない。


その状態で帝都を失い。タイタンとアタシ達を同時に相手をし、なおかつ、タイタンの離反と同時に発生するであろうかつての征服国の離反を防がなければいけない。


となると手が圧倒的に足りない。


だから今まで戦力に数えられてなかった人員を引っ張り出してこなければいけなくなったということだろうとは想像がつく。


ただ厄介なのは、その引っ張り出してきた人員が、あのイカレタ女だってことだ。

「アイツは何をしてくるかわからない怖さがある。」


「うむ。メンドーサの国も心配だ。行こう。」

赤石が端的に懸念を伝えてくる。


そう、その通りだ。


この場にいる全員が頷く。



・・・・。


私はちょっとひっかかりを感じた。

なんだろう?


ああ、そうか。


赤石がメンドーサの国に行こうとしたことだ。

彼の目的は洞窟内で遭難したリサ教授の救出だ。


その赤石がリサ教授の救出を差し置いて別な行動をする?

その違和感が棘のように残った。



【次回予告】

キメラを退けたレンジャーワンは次の国へ向かう

その国でメンドーサの身に悲劇がおこる


次週、episode17 緑に覆われた川の国


毎週 日曜日 9時30分 更新


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