episode15 青の国へ
---from Titan side---
「おい、ライト大丈夫か!」
俺はライトが入院した病室に駆け込む。
帝都辺境で異変があったため調査に行かせたライトが大怪我をして病室に運ばれてきたと聞いたからだ。
つったく、ライトの奴め。
前回と言い、今回と言い行くたびに大怪我をしてくるな。
なんか悪いものでも憑いてるんじゃねえのか?
帝国一の剣士の名が泣くぞ。
実力はあるんだがな。
それに見に行くだけって念押ししたはずだぜっ・・・ったく。
心配かけさせるんじゃねぇ。
「・・・申し訳ありませぬ。」
うおっ。
病室にはいると怪我人が土下座してらー。。
俺は何だ?
怪我人に土下座させるような外道か?
「おいライト。何してやがる?」
「・・・またもや地上の赤き勇者に敗れました。申し訳ありませぬ。」
「阿呆っ! 勝ち負けじゃねえだろうが。俺は見に行くだけって言ったぜ。謝るならそっちだろうがっ!」
「!・・・申し訳ありませぬ。」
「・・・ったく心配かけさせるんじゃねえ。テメェは大事な俺の家族だぜ。
そう言って乱暴にライトの頭をくしゃくしゃに撫でる。
男前の髪が乱れたが、俺を心配させた罰だ。このくらいはいいだろう。
「んで、帝国一の剣士がなんでこんなことになった。ブルーフェイスの奴らが足を引っ張ったか?」
俺はライトを病室にベッドに戻してから状況を尋ねる。
「・・・いえ、彼らは思いのほか優秀でした。・・・主に撤退で。」
「はっはっはっ。撤退戦で優秀ってか。アイツららしい。」
リアルに目に浮かぶぜ。
その逃げ足で青の国滅亡後、しぶとく生き残っているわけだな。
と、言っても言葉通りバカにはできねぇがな。
明らかに地力が上の相手から逃げれるってことは、それだけの知恵があるってことだからな。
「んで、地上の勇者・・レンジャーワンと遭遇したんだって?」
「・・・はい。どうやらあの辺境の異変はかれらの仕業のようです。」
「? 奴らが??」
俺は思案する。
帝国に所属していた時に得ていた情報と違う動きをしてるな。
奴らは地底にに落ちてきた仲間を探していると聞いている
だが、今回の動きはどうも違う。更に俺等と交戦したってことは攻めてきたってことかぁ。
それが本当なら叩き潰すだけだが・・・なんかしっくりきやがらねえぇ。
必要な情報のパーツが揃ってねぇ。そんなむず痒さを感じやがる。
くそっ、こういう時にアドバイスくれるような奴が側にいねぇ事が響く。
帝王には宰相ユミルがいる。
あいつが相談相手になってるから負担が減る。
俺はテメェで全部考えなきゃならねぇ。
プロネミンス・ライト・ファイア。
気のいい奴らだが、相談相手にゃ役者が不足してやがる。
ええい。自分に言い訳は意味がねぇ
考えろっ。
どういう質問がいい?
どういう質問が揃ってねぇパーツを引き寄せることができる?
「ライト、奴らはなぜ、攻めてこない? テメェを破ったならこちらに攻めてきてもおかしくねぇ。」
「・・・レンジャーワンの目的は我らではないようです。」
「あん? こちらに攻めてきてか?」
「・・・はい。その点、ご安心を」
ご安心を! じゃねぇだろうが。その報告のどこに安心できる要素があるってんだ。
ちゃんと安心できる根拠をもって報告しろよ。
ええいっ。
考えろ、考えるんだ。どういう質問がいいか? 考えるんだ。俺ならできる!
「それじゃあ安心できねぇな。目的が俺らじゃねぇって言ったな。じゃあ目的は何なんだ?」
「・・・青の国のようです。」
「青の国ィ?? あの汚れちまった国か?」
「・・・はい。」
「なぜ青の国へ? やつらの探し物がそこにあるってぇのかい? そもそも青の国にいくのになぜ帝都郊外にくる?」
いや、帝都郊外に来る理由はある程度推測できるか?
奴らは帝都に来たことはあっても青の国に行ったことはねぇはずだ。
まず、行ったことのある場所に。という事ならぁ、辻褄が合うな。
なら、問題は青の国に何の用があるってぇことかぁ?
おっし、足りない情報が集まってきた。
それにしても青の国かぁ? ブルーフェイスがらみしか思い浮かばねぇが・・・
次はぁどんな質問をしたらいい?
「・・・レンジャーワンの青い魔法使い。彼女は元青い国王女にて元帝国四天王アオイ殿でした。それが関係するかと。」
「馬鹿野郎っ! なぜ、それを先に言わねえ!」
俺は思わず立ち上がった。
ライトがのけ反りしりもちをつく。
思わず感情出ちまって悪ぃな。
帝国一の剣士様に尻餅つかせちまった。
だがよ。ライトおめぇも悪いんだぜ。
なぜ、一番大事な情報をよこさねぇ。
だが、しかし、これで必要な情報は集まった。
なるほど、レンジャーワンは実は戦術家の姫、アオイの部隊だったわけか。
であれば今の状況に合点がいく。
要するに今までは地底帝国対四天王アオイという構図だったわけだ。
それで境遇を同じくするヘドリアもアオイに同調。
俺様も帝国に反旗を翻したとあっては帝国も負けらぁな。
それにしてもアオイも上手にやったもんだ。
正体を隠して地底帝国と争い、人質になっている祖国に影響がないように立ち回り。
結果的に地底帝国の勢力を弱めやがった。
となると次の一手は人質になっている祖国の開放か。
そんなら青の国へ向かうのも納得だ。
ふふふ、面白れぇ。
いままでは戦術家アオイの手のひらで踊ってたってわけかよ。
まあいい、今までは同じ四天王ということで戦う機会はなかったが、今度は戦えるってわけだ。どっちが上か勝負しようじゃねぇかよ。
「・・・このままでは終われませぬ。なにとぞ、追撃の許可を。」
は? ライトぉ。何言ってるんだぁ?
「戦術姫自ら、地底帝国の版図になっている青の国を削ってくれるってんだ。
それを守ってやったら、帝王が喜ぶだけだろうが。」
混沌とすればするほど勝機がくるのがわからねぇか?
それに帝王とレンジャーワン2面作戦取る気はねぇぞ。
「・・・では、このまま捨て置くとっ」
「応よ! 戦術姫が祖国を見たとき、どういう反応するか? 見ものだぜ。」
---from yamabuki side---
「いーい? 私の国は地底帝国一の美しい国なの!深淵な地底に広がる、まばゆい美しさを持つ青の国。その地下の領域はサファイアやターコイズに包まれたかのような輝きを放ってるの。
最初に目を引くのは、水晶のような透明度を持つ青い湖!
その水面は穏やかで、湖底からは神秘的な輝きが発せられてるの!
洞窟の壁には、青い鉱石や宝石が点在し、光が反射して幻想的な模様を描いてるの!
地底の天井は、青い光を放つキラキラとした鉱石が地上の星々のようにひかってるの!
決して、決してアホ兄のいうように汚い国じゃないからね!」
アオイちゃんがあのブルーフェイスとの戦いからずっと祖国賛美しています。
よっぽど祖国を「汚い」と表現したことが彼女の癇に障ったようです。
しかもなぜか強面の赤石クンにむかって強調してます。
意外と社交性のあるライオンマンさんや優しいメンドーサさんの方が話しかけやすそうですが・・・赤石クンにこだわっているのは何故でしょう?
赤石くんがアオイちゃんを持て余して困っています
「だって。ライオンマンとメンドーサは青の国のこと知ってんじゃん。」
アオイちゃん。地の文を読まないでください。
「うむ。アオイ殿の故郷は素晴らしいところなのだな。」
おお、当惑しながらも赤石クン答えているよ。ガンバレ!
対するアオイちゃんはニッコリ満面の笑みを浮かべて
「そうよ。見たら驚くからね!」
と応じました。
---from aoi side---
「ちょっと! なによこれ!」
久しぶりの祖国についた私は思わず驚きの声をあげた。
『なるほど、さすがお姫様。サプライズがお上手ですね。』
「ちょっとカグヤうるさい。それにお姫様関係ない。アンタのイメージするお姫様はツッコミ役か!」
『それはさきておき、これが風流華麗を謳われた青の国の今、ですか・・・さすがにヒドイ。』
「・・・。」
あのカグヤですら「ヒドイ」と言った情景が目の前に広がっている。
地下水と青い地下鉱脈の祝福を受けた祖国が毒々しいヘドロに覆われた世界に変わっていた。
これはちょっと予想外だった。
青の国は帝国の進駐軍が占領している。
アホ兄が帝国に反旗を翻したタイタンに与したことを知った場合どのような動きをとるのか?
いろいろ考えてはいた。
心の準備も必要だからね。
想定されることと言えば・・・見せしめに国民を殺害。または、帝都がタイタンに占領されたことにより賊化。または武力制圧による独立。など、いずれにせよ武力による何らかの凶事は想定された。
だからこそ急いで、祖国にきたのだが、こんなヘドロの海に覆われるなんて誰が想定しただろう。
私はちらりの隣に立つ赤石を見る。
ここに来るまでに散々、祖国自慢をした後にこの光景。
彼は今、どのように思っているのだろうか?
「ぬう。この国は美しかったのだな。」
赤石がアタシの視線を感じたのか、口を開いた。
赤石のようなリサ教授と格闘技にしか興味が無い朴念仁がアタシを気遣うような言葉を発したことに驚いた。
意外だった。
慌てて私は何度も肯首する。
「この。ヘドロのようなものは元々無かったのだな。」
「は? 当り前じゃない。なんでこんなものがあるかわかんない。」
「ふむ。ならば無くなってもよいのだな。」
「え? アンタ、何考えてるの?」
赤石は無言でドラウプニルを起動する。
「An armor changes Tor」の機械音が鳴り響く。
赤石の体が真紅の西洋甲冑のようなものに覆われる。
腰回りは大きなスカート装甲。肩の倍はある巨大な肩当に、膝から下もフレア装甲。右腕には二回りも大きな円筒形の腕あて。左手には腕には炎をデザインしたようなシールドが装着される。
「Completion! The Fighter ・RED」
機械音と共に赤石は真紅の重装戦士に変身した。
「来るがよい。我が眷属 シアルフ!」
変身に続けて赤石が眷属を呼ぶ。
赤石の足元に巨大な魔法陣が展開される。
その魔法陣からせりあげるのは背にも2基の推進器。両肩には山羊頭を意匠した肩当をもった真紅のフルアーマーの巨人。
赤石がその巨人と同化する。
その巨人は同化が完了すると同時に捻転からの片手掌底突き繰り出した。
「吐-っ!」
『Mjollnir hamme』
赤石の裂帛の気合と機械音が青の国に響きわたる。
赤石が片手掌底突きは紫電を発し、ヘドロを蒸発させた。
もちろん国を覆うすべてのヘドロがその一撃で消えたわけではない。
だが、現実と方法 ともに一筋の道が道ができたことは間違いない。
「元々、無かったものなのであれば、すべて滅却するのみ。」
赤い巨人シアルフと同化した赤石はのこるヘドロを見据え誰ともなく言った。
「はははっ! いいですね。やりましょう。できるね。スキーズ。」
山吹が空飛ぶ船スキーズを呼び出します。
『イエス、マイマスター。お任せください。この国にはダメージを与えず、あのスライムだけを薙ぎ払うよう計算いたします。』
「ちょ、ちょっと待ってよ。あのヘドロってスライムなの?」
私は思わずスキーズに突っ込む。
スライムは不定形モンスターの総称だ。
ヘドリア軍が地上に攻めてきたときにもビックなスライムがあらわれたのは記憶に新しい。
あのスライムも大きかったが、国を覆うほどのスライムって存在するなんて誰が想像できる??
『現実にいましたわよ。目の前に』
うっさい。ダマレ。カグヤ。
『アオイ様。先程、お伝えした通り、目の前に広がっているのはスライムです。』
スキーズから返答が来たよ。律儀にアリガトウ。
でもなぜ?
『ふーっ。戦術家で現実家のアンタらしくないわねぇ。原因は大量発生によるスタンピードや人為的なものなどいくつも考えられますわ。でも、今やることは原因究明ではないですわよね?』
!
私は両頬を叩く。
気合は入ったか?
カグヤに言われて気づかされるのは癪だ。が、言うとおりだ。
祖国の状態を見てセンチメンタルになっている場合じゃないだろ。
戦術家の名が無く
そんな感傷は大事だが。今じゃない。
目の前にいるのがモンスターで 祖国がこの状態になっているのがモンスターなのであれば、答えはシンプルだ。
『マイマスター。演算修了。最大出力が必要なためマスターは変身をお願いします。。』
「はい。もちろんです!」
山吹がスキーズの求めに応じて元気に応じドラウプニルのタッチパネルを操作する。
同時に「An armor changes Frey」の機械音が鳴り響く。
山吹の体がド派手な黄色の全身スーツと軽鎧に覆われる。
フルマスクのようなヘルメット。腰に大剣、背にはマントを装備している。
「Completion! The Commander・yellow」
山吹が機械音と共に黄色を基調とした戦士に変身した。
「いきます!」
山吹の元気な声が響く。
同時にスキーズの砲台から魔法の砲撃が放たれる。
国を覆うスライムが薙ぎ払われる。
そうだ。そうだよ。感傷に浸って呆けるのは後だ!
今は目の前にあるやることに集中する。
私は空間に出現したタッチパネルを操作する。
私の体が青くが発光する。
同時に「An armor changes Wodan」の機械音が鳴り響く。
私の体が青い全身スーツに覆われる。
マントのような青藍のパーカーとフレアスカート。鍔の広いとんがり帽子。手には杖を
「Completion! The magicians・blue」
機械音と共に青を基調とした魔法使いに変身した。
「来い! スレイプ!」
私の求めに応じて巨大な機会仕掛けの騎馬が顕れる。
騎馬=スレイプは大きく嘶くと、スライムに突貫。
その突撃の質量でスライムを吹き飛ばした。
「なんだ! なんだぁ!」
私達がスライムを薙ぎ払った跡。
道のようになった跡を通って前方から兵隊たちがやってくる。
先程の声はその兵隊を率いている武将のようだ。
武将・・・そう兵隊たちの戦闘を進むその男は武将という名前がぴったりな鎧髭武者だった。
ふと、赤石はこういう手合いが好きそうだな。
と思った。
あの格闘バカはリサ教授のこと以外のことでは唯一優先するのが、強者との格闘戦だ。
「うぬは何者だ。」
案の定、赤石がやってきた鎧髭武者に問う。
もっとも今の赤石はシアルフに同化している。
傍目には赤い鎧の巨人が聞いているように見える。
「うおっ、なんだこのデカブツっ!」
案の定、敵の鎧髭武者は質問に答えるよりも警戒してしまった。
そりゃーねー。
目の前に巨人がいたら警戒するよね。
でも、そう警戒されても困る。
質問には答えてもらわないと。
「ちょっと、アンタは何者だって聞いてんだけど?」
私は威嚇の魔法弾をぶっぱなしながら、赤石がした質問をもう一度する。
「む。それがしは帝国よりこの青の国を任されしハリ将軍。そなたらこそ何者だ?」
「レンジャーワンって言ったらわかる?」
「む。偉大なる帝国に仇を成す地上の勇者か。この国に攻めてきたか!」
「攻めてきたのは間違いね。取り戻しに来たの。それよりもこの有様はなんなのっ。いたるところスライムだらけじゃない。」
「当然である!」
「? どういうこと」
私は尋ねる。
おそらく私は今、怒気をはらんだ表情をしているに違いない。
『美人が台無しですわよ。』
カグヤ、うっさい!
「この国は裏切り者のブルーフェイス皇子の国である。きやつは元々、この国を裏切って帝国についた裏切りの前科のある男。いつかは裏切るとは思っていたが、予想通り裏切り反逆者タイタンの元についた。であれば帝国を裏切った代償を払ってもらわねばなるまい。人質とはそういうものであろう? 帝国を裏切ったらどうなるか? これは他国への見せしめである!」
「青の国は帝国を裏切った代償としてスライムまみれにされたってこと?」
『裏切るとスライムまみれになるなって・・・なんか、地味に嫌ですね。それは。』
カグヤ、ダマレ。ここはシリアスシーンっ!
「その通りいいいっ! もはや二度と国として成り立たぬ。スライムの住処としてやったわ。みよ。かつて風光明媚を誇った青の国がただのヘドロの国となったわ。帝国に逆らうとこうなるのである。」
「国の人は? 国の人はどうなった?」
「さてな? スライムのエサにでもなったのであろう。」
その回答を聞いたとき、私の中でナニかが弾けた。
「gandir gandir gandir!」
マジックミサイルを連発する!
「ふははははっ! 怒った? 怒ったか! その程度の魔法弾でどうにかなるこのハリ将軍ではないぞ!」
ハリ将軍は円盾を器用に扱いアタシの魔法弾を防ぐ。
「その程度?」
「ふはははははっ? はは? え、あ? ちょ、ちょっと待て、ちょっと待て。」
徐々にあわてるハリ・ケン将軍
そりゃそうだ。
アタシの魔法弾が徐々に将軍と盾を文字通り削っている。
たかだか将軍クラスが四天王の攻撃を防げると思うなよ。
「その程度の盾捌きでどうにかなる魔法ではないわー。ほら?これは防げる?」
今度は魔法弾を曲げて側面から攻撃。
「あべえべっ!」
「これはどう?」
アタシはいつもは杖から発射している魔法弾をハリ・ケン将軍の後ろから出した。
別に杖から出した方が楽なだけで、ある程度の範囲の空間内なら、座標指定の時間さえもらえれば、どこからでも出せなくもない。威力は弱くなるけどね。
「どっひゃーっ。」
おー! 吹き飛んだなぁ。
『大人げないですわよ。四天王』
カグヤ、うっさい。アタシは元四天王だ。「その程度」って言ったから、あいつがどの程度かと思って試しただけさ。
試したんだけど・・・その程度かよ。
「おっ おのれ。おい、兵隊ども何をぼーっとしてるっ。さっさとかからんか!」
ハリ将軍が騒いでるが無理だと思うよ。
「おお、それは難しい相談だと思うぞ。」
「は、は、はい。兵隊さんたちは全員おねんねしちゃいました。」
そう、アタシがハリ将軍の相手をしている間にライオンマンとメンドーサが対応してたからね。
意外と噛み合うコンビだな。この二人。風と雷という相性もいい。
メンドーサが雷獣の電撃で動きを止め、ライオンマンが得意の風魔法で吹き飛ばすコンビネーション。
唯一の弱点は互いに攻撃範囲が広く、下手をすると味方を巻き込むことかな。
移動する暴風雷雨だねー。
おかげで山吹が戦闘に参加できず、手持ちぶたさになっている。
「おのれ、おのれ、おのれ! ならばこれだ! 」
ハリ将軍が巻物を広げる。あれは魔法の本。スクロールか!
私は素早く魔法弾を撃ち込む。
「はがーっ!」
ハリ将軍は無様に吹き飛んだ。が、遅かったらしい。
スクロールが発光した。効果を発揮したらしい。
どんな? 効果が??
地鳴りが起きる。
見ると国中に汚れのようにこびりついていたスライムが中空の一点に集まり、超巨大なスライムの玉を作り上げている。
本当にデカイ! 国中を汚染しているスライムを集めたのだから当然か。
やがて、集まり切った超巨大なスライムの球の中心に超巨大な目玉が出現した。
「afl-lauss」
その巨大スライムが呪文を唱えた。
「むうっ!」
「何っ!」
「何ですかこれは!」
「おお。なかなかやる。このような搦手を使うとは。」
「きっ、きっ、きゃーっ! う、うう、動かないっ!」
そう、メンドーサが言ったように、あのスライムが呪文を唱えたとたん体の自由が奪われた。
巨大スライムが勝利を確信したか巨大な目を細める。
あんにゃろ。
この程度で勝った気になりやがったな。
む・か・つ・く!
「レッドっ! ヴァン・アース収束だ。」
この麻痺した状態でも、あの化け物じみた力は使えるはずだ。
何しろ神の権能だからな。
そしてスライムが一か所にまとまっているなら逆にチャンスだ。
文字通り一撃で決着がつく。
「駄目ですっ!」
山吹が異を唱えた。
え? なんで?
「ヴァン・アースでも、もちろん倒すことはできます。」
「なら。それでいいじゃない?」
「僕たちの今までの目的はりさ教授たちの救出でした。」
私は頷く。
「この青の国に来て、やっと実感しました。僕はこれまで“リサ教授達を助ける”ために進んできたつもりでしたけど……。この国の状況を見て、それだけでは足りないと思いました。」
私は黙って山吹の次の言葉を待つ。
「帝国に征服された国も救わなければなりません。 この青の国のあとはメンドーサさんの祖国になるでしょう。」
私は大きく頷く。
私の国だけ救って、メンドーサの国を救わないという理由はない。
もしかしたら、その他の帝国に侵略された他の国を救う場面も出てくるだろう。
「そうなるともっと権能が必要です。もっと戦力が必要です。」
そうだろうなぁ。でも、それとヴァン・アースの権能を使わないこととどうつながるんだろう?
『あら、このお姫様はまだわからないんですの? アタシは分っちゃいましたわ。』
なに! カグヤ! アンタわかったっていうのか!
『お姫様・・・品が無いですわよ。そうですわね。逆に戦術姫のアンタにはわかりづらいかもしれませんわね。』
どういうことよ?
『目先の勝利を最短で目指すアンタとは真逆の発想だからですわ。』
???
「僕達の持つドラウプニルにはいろいろ機能がありますが、僕が今、注目したいのは相性の良いモンスターを倒すとモンスターのスキルを一つだけ使用可能になるという点です。つまり単純に敵を倒すと戦力が増強されます。」
私は頷く。
おかげ様でカグヤの固有スキル「胡蝶の夢」の行使ができる。
「戦力が増強されると単純に今よりも強くなります。他の国・・・具体的にはメンドーサさんの国をレスキューするときに今よりも有利になります。そして事情は分かりませんが、守護者に囚われている可能性のある教授を救うにも有利になります。」
そらそうだ。今より強くなってるなら、今より有利だわな。
「しかし、ヴァン・アースの状態で倒してもスキル獲得は無効にされます。」
! そうか。そうだった。
「そして、この僕達を麻痺させている敵の能力。これは今後役に立ちます。このスキル獲得を逃すべきではないと思います。」
なるほど、そうよね。
今の勝利も大事だけど、先の勝利のために戦力増強の好機があるなら、その好機を逃すなってことね。
『ええ、目先の勝利を目指す戦術姫には出ない発想ですわよね。』
うっせぇわ。カグヤ黙れ。
自覚はあるけどな。
そうと決まったら。
「レッド! やれる?」
「無論!」
「よし! 胡蝶の夢!」
アタシは魔法の蝶の群れを出現させる
アタシ達のマヒが解除される。
スライムのヤロー正直すぎるぜ。
麻痺が解除されて見るからに慌ててるよ。
「ぬおおおおおッ。」
赤石と同化しているシアルフが腰を捻転。腕を鞭のように広げ体に巻き付ける。
赤石の得意技の準備動作だ。
「吐ーッ!」
赤石の気合前回のシャウトと一緒に 掌底をスライムにむかって突き入れる。
そこから速射で繰り出される大砲のような電撃をまとった一撃。
『Mjollnir hamme』
シアルフからも同時に機械音が流れる。
同時に渾身の電撃の一撃を受けた超超超巨大スライムは帯電の影響か太陽の様に発行した後、そのまま消滅した。
『LEVEL UP』
『スキル:パラライズを獲得しました。』
―ステータス―――
名前:赤石剛
年齢:16
職業:高校生
LV:42⇒44
スキル:筋力増強Lv2 脚力LV9 総合格闘LV7 幻獣の角
装備:ドラウプニル(赤)ミョルニルハンマー ヤールングレイプス メギンギョルズ
眷属:シアルフ
――――――――
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「うむ、アオイのふるさとは美しいのだな。」
「アリガト」
アタシは赤石の気遣いに感謝する。
幸か不幸か。
国中を覆っていたヘドロのようなスライムが自ら一か所に集まっていたために一掃することができた。
そういう意味ではスライムに集まれと指示を出したハリ将軍には感謝かな?
『思いっきり吹き飛ばしてますけどね。』
うっせぇわ。ダマレ、カグヤ。
おかげで赤石の言う通り美しい国が蘇った。
『一部、スライムの酸で腐食したり錆びたりしてますけどね』
うっせぇわ。ダマレ、カグヤ。
ちょっとした老朽化の範囲だよ。それわ。
ただ、足りないものがある。
今、城下町を歩いている。
昔、こっそり城を抜け出して買い食いしていた店があった。
その店はそのまま残っていた。
でも・・・
そこに人はいない。
『廃墟ですわね。』
そう。
アタシたちは城に入る。
やんちゃして怒られた王の間
剣の自習と称して踏み荒らして、よく怒られた手入れの行き届いた庭。
つまみ食いしてコック長によくおこなれた厨房
家庭教師に脱走するなと怒られた自室
誰もいない。
『アンタは怒られた記憶しないのですか。』
ハイ。ありませんが何か?
その怒られた記憶だけ残して、すべて消えてしまった国。
せっかく敵国の配下になってまで守ろうとした国
せっかく正体を隠して、二度と大切な家族に会えなくても、隠しきって守ろうとした国
その結果がこれ。
なんだろう。
「なんと、理不尽な事か。」
横を見ると赤石が、そうつぶやきこぶしを強く、強く握っていた。
ああ、そうだ。
あまりの理不尽に出会うと虚になってしまうらしいよ。
パパ ママ もう会えなくなっちゃったよ。
?
なんか 遠くからガヤガヤと声が聞こえる。
耳を澄ます。
「おおっ。何だこりゃ?」
「スライムがいなくなった。」
「大丈夫か、これ、帝国は?」
??
やがてある一団が遠くから見えてきた。
あれは・・・帝国兵じゃない。
あの鎧は青の国の鎧。
その青の国の鎧をきた騎士に囲まれて、二人の人物があらわれる。
「む、お、そこにいるのはもしかしてアオイか!」
「まあ、アオイちゃん!」
あ!
その人物はこの国の国王と王妃
つまりアタシのパパ ママだ。
ふたりは一国の主とは思えない軽快さで、アタシのところにダッシュして抱き着いてきた。
つーか、ダッシュするなや。
コケただろうが。
・・・・
赤石・・・
アタシは、パパ ママに会えたよ。
世のなか、理不尽な事だけじゃないらしいよ。
【次回予告】
青の国を奪還したレンジャーワンの目の前に現れた奇妙な化物
その正体とは?
次週、episode16 多色の獣
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