episode14 運命は偶然よりも悪縁である
---from Ms. Ito – Diplomat side---
「月並みな言葉だけど気を付けて。」
私の言葉に
「うむ。」
「ああ。」
「もちろんです!」
「おお、吾輩がいれば問題はない。」
「も、も、もちろんです。」
それぞれの言葉で応じレンジャーワンは空飛ぶ船スキーズに乗り込む。
これから彼らは作ったばかりの貫通トンネルを通過して帝国経由で青の国に向かう予定。
この貫通トンネルはスキーズがギリギリ通れる大きさで設計している。
そのためレッドドラゴンのような超大型モンスターは通れない。
ほぼ直角なので徒歩移動も無理。スキーズよりも小型の飛行型モンスターであれば通れるかもしれないけど、その時は隔壁で塞ぎ、前回の戦闘で大量に獲得した爆発するバイクの魔石でも投げ込んでやればいいよね。
唯一の心配はこの前のような魔法陣で移動してくる守護者とかいうわけわからん理不尽モンスターだけど、この守護者も分析済み。
分析の結果、遠距離の物理攻撃であれば対抗できるらしい。であれば重火器が通じるわ。
相性の問題ね。地底の人たちはいわゆる「剣と魔法」で戦うので相性最悪だけど、私たちは火器で戦う方法をとっている。
相性がいい。
もしかしたら・・・りさ教授がいた洞窟内研究所がモンスターに対抗できたのも、同じ理由かもしれないわね。
いずれにせよ。OK? OKだよね。
漏れはないよね?
私、安全だよね?
安全への確信と、それでもどこかに漏れがあるんじゃないかという不安の両方をもちながら私はレンジャーワンを見送った。
---from aoi side---
「うわー。これは、大層なお出迎えだねぇ。」
私は臨戦態勢にスイッチする。
ある程度、想定できたことだ。
この貫通トンネル。
ヴァン・アースの一撃でつくっている。
当然だけど、大きな音と振動が発生する。
ということは
当然だけど帝都も異変に気付く。
ということは
斥候。調査員を派遣するのはある意味当然だよねー。
そうだよねー。
ちょっと想定外だったのが斥候としてきたのがタイタンの部下の確か・・・ライトとかいう奴とアホ兄ということだ。
「はー。なんでここでアホ兄と会うかな?」
『お姫様。運命には逆らえぬものですわ。』
「カグヤ。アンタこの状況楽しんでるでしょ?」
『当然ですわ。』
「おや?」
「あ!」
ほらあ、カグヤ、アホ兄に見つかったじゃないか。
「おや、マイスイートシスター! こんなところで会うなんて。やはり僕達、兄妹は運命の糸で結ばれているようだね。」
「アホ兄。こんなところでお会いするなんてお暇なんですか?」
「ちょっ、血を分けた兄妹の再開なのに、それはひどくないかい。」
前回もアホ兄の周りにいた冒険者風四人組。
今回もいる。目付け役かなんかなのか? ワンセットだよね。彼ら。
そんで私達兄妹の会話に大爆笑してる。
あ? なんかアタシ面白いこと言ったか?
「と・に・か・く。暇人はどいてくれない? 邪魔なんだけど。」
「ええーっ、せっかく会えたのに、どこに行こうというの?」
どこにいこうって?
そんな質問がアンタの口からでるのか?
私の中で何かがキレた。
元はと言えば、祖国のことを一切考慮せずにタイタンの反乱に与したこのアホ兄が原因
で私はここにきている。
祖国、青の国はまだ帝国に支配されている。
そんな状態で、青の国の王子であるアホ兄が帝国に反旗を翻したタイタンに与したとなると青の国に残っている父王やママ、そんで青の国の人々が危い。
だから一刻も早く、青の国にたどり着いて帝国の支配から解放しなきゃいけない。
赤石や山吹といった本来無関係な仲間も一緒にだ。
赤石なんて、彼の本来の願いであるリサ教授の件を一時棚上げしてきてくれている。
このアホ兄は何にも考えないで反乱軍に与した。堂々と。
青の国にはまだ帝国軍がいる状態でだ。
つまりこいつは祖国を人質にとられていながら、人質のことはどうなってもいい。どころか何にも考えていないで反乱軍に与した。
その後、人質がどうなるか? 父王や母。一緒にくらした友達。アタシが小さいころ診察にしてくれた街の人たち・・・その人たちがどうなるかなんて何も考えずに!
「ふざけんなー!」
私はドラウプニルを起動し空間に出現したタッチパネルを操作する
「An armor changes Wodan」の機械音が鳴り響く。
私の体が青い全身スーツにつつまれる。そしてマントのような青藍のパーカーとフレアスカート。鍔の広いとんがり帽子を被り。杖を持った。魔法使い然とした姿と変わる。
「Completion! The magicians・blue」
変身完了の音声がなる。
変身完了と同時に私は魔法をアホ兄に向けて魔法を連打する。
「ぶ。えっ ちょ・・ちょとお・・落ちこうよ。っていうか落ち着け!」
アホ兄が焦ったことを上げる。
「ブルーフェイスの兄ちゃんよ。あんたも大概だが、あんたの妹も気ぃ短けぇなぁ。おい。」
今回もいたアホ兄の周りにいた冒険者風四人組。
そのうちの一人、マッチョな僧侶は前回と同じように土壁の魔法を展開して防ごうとする。
が、前回と全く同じように一緒に吹き飛ばされた。
こいつら学習しないのか?
「アホ兄! 一つ聞く!」
「な、なに?」
「青の国は解放したんだろうな?」
「へ、なんであんな国、汚い国、開放しなくちゃいけないの?」
き、汚い??
言うに事欠いて、澄み渡った青い空、どこまでも広がる青い湖を持つ地底国家群の中でも見例で知られた祖国を汚いだと。
「汚いのはテメェのやりかただろうが!」
私は吹っ飛んで転んでいるアホ兄のところに突っ込んだ。
---from akaishi side---
「むう。」
我の前に一人の戦士が立っている。
見覚えがある。
確か、タイタンの部下の男だ。
アオイが単騎、敵陣に突っ込んだため。
我らも加勢しようと動いたが、その我の前に立ちはだかったのがこの戦士だ。
我はちらりと戦況を確認する。
アオイはブルーフェイスと筋肉隆々の僧侶風の男と交戦? いや、あれは追い回しているのか?
残る冒険者風の3名と敵兵も動いたが、山吹が変身し、ライオンマン、メンドーサがフォローにはいった。
戦況を見るにライオンマンの竜巻で敵兵が吹き飛ばされているので、問題はないようだ。
味方の状況を確認後、改めて対峙している戦士に向き合う。
「・・・赤い勇者よ。前回は不覚をとった。ここでリベンジをさせてもらう。」
むう・・・我は記憶をたどる。
確か、タイタンの将。
主であるタイタンを身を挺して庇った漢だ。
あの時、LEVEL UPしなかったので倒しきれてはなかったと思っていたが、ここで出会うとは。
「・・・あの時は動転して得意の剣を披露することができなかった。」
そう言って敵の将はスラリと剣を抜く、濡れるような漆黒の刀身が顕れる。
ぬう。厄介だな。
上段に振りかぶってくれるとよいのだが、中断の構えの変形。突き入れるかのように刀身を前にしている。
あれは剣で払うと同時に突き入れることを狙っているのであろう。
ここでこの場が洞窟内であるという事が改めて考えさせられる。
要するに左右上下に壁天井がある場での戦いなのだ。
振りかぶると切っ先が天井にぶつかる。
左右は洞窟の壁を盾にするとある程度、敵の行動を制御できる。
正面だけに注力する洞窟内戦闘ならではの構え。
「・・・どうした変身しないのか? なめるなよ。」
うむ。好漢である。であれば、その心意気に答えねばなるまい。
我はドラウプニルを起動する。
「An armor changes Tor」の機械音が鳴り響く。
我が体が真紅の西洋甲冑のようなものに覆われる。
腰回りは大きなスカート装甲。肩の倍はある巨大な肩当に、膝から下もフレア装甲。右腕には二回りも大きな円筒形の腕あて。左手には腕には炎をデザインしたようなシールドが装着される。
「Completion! The Fighter ・RED」
機械音と共に我は真紅の重装戦士に変身した。
変身したものの。
改めて厄介な構えである。
我は格闘戦が主力。まともに剣相手に飛び込むのはリーチで不利。
電撃による遠距離攻撃もできなくもないが、あれは捻転が必要であり。この敵はその隙を逃すようなことはないであろう。
「・・・ふん。こないのか? 俺の強さがわかるらしいな。・・・このまま対峙してもいいが・・・ここは戦場。どんな手を使っても勝たせてもらう。」
奴がそういうと、背後に四名の兵が顕れた。
弓? いや大型の弩砲のようなものを持っている。
「・・・撃て!」
敵の将の号令のもと、弩砲から槍のごとき大きな矢が我に向かって射出される。
ぬう。
まともには受けられぬ。
かといってこの動きの制限される洞窟内では躱すこともままならぬ。
敵は洞窟戦を熟知しておる。
我はシールドを利用し受け流しで四本の槍のような矢をやりすごす。
通常の肉体ではできぬ芸当だが、神の力を借りたこの変身後であればこのような捌き方もできなくもない。
それに敵は一つミスをした。
「ぬうん。」
我は落ちた槍のような矢を拾い槍投げのように投擲した。
いかに我の鍛えた肉体といえど、通常、槍投げは放物線を描くので洞窟内では向かない。
天井にあたる。
だが、変身後であれば放物線でなく、直線で投げることができる。
「・・・なに!」
敵の将は大きく目を見開き避ける。
「ぬうん。」
我は続けて矢を拾い投擲する。
運よく、いや逃げ場の少ない洞窟内である。
我の投擲した槍のような矢が、それこそ矢を放ってきた敵兵の一人を倒す。
『スキル:射出を獲得しました。』
うむ。レベルこそ上がらなかったが我の狙い通り敵のスキルを獲得することができた。
これが敵のミス。
我らが幾多の強敵と戦い生き残れたのは、この神の力の中でも「相性の良いモンスターを倒すとモンスターのスキルを一つだけ使用可能になる」という特性のおかげである。
敵はこれを知らないで我に不用意にスキルを献上したことになる。
『スキル:射出は雷神の加護により、レールガンへと進化しました。』
ぬ。進化だと?
初めての表示であるな?
それにレールガン?
浅学にしてわからぬ。
とりあえず射出から進化したのであれば、同様の効果であろう。
我は洞窟内に落ちている石を拾い、スキル:レールガンを使用した。
突如、右肩に銃身の長い砲が顕れる。
その砲身から先程ひろった石が射出された。
「ぬう。」
訂正しよう。
射出というレベルではない。
射出速度が異常なためなのか空気の壁を破る衝撃派を伴って射出されたその石ころは、レーザーのように発射され敵兵を貫通。衝撃波で残る敵兵と将を吹き飛ばした。
---from blueface side---
な、な、なんという事でしょう!
私たちは帝都郊外に発生した異常を確かめに行きました。
そこで愛しのマイシスターに会えたはいいのですが、めっちゃ怒ってます。
なぜでしょう。
どうやら青の国に行くようですが、いまさらあんな汚い国に行ってどうするのでしょうか?
妹の気持ちがわかりません。
そうこうしているうちに、同行していたタイタン様の腹心ライト様が敵の攻撃で倒れてしまいました。
「これはまずいですね。」
お救いしないと、タイタン様の心証が悪化します。
「ブルーフェイスの旦那! ここは引くぞ。」
僧侶のブルータスが土魔法で巨大な土人形をつくる。
私はその土人形に幻覚魔法を重ね掛けして、いかにも怖そうな化け物を創る。
この化け物が囮になっている間にライト様を救出し逃げなければなりません。
なかなかハードモードです。
ですが、この程度の困難など私の前では問題ではありません。
私を舐めないでいただきたい。
お、斥候のゴンザイエモンと戦士のパパイアがライト様を救出してサムズアップしてます。
これで安心です。
私もサムズアップで返します。
と思ったら、え、え、ちょ、ちょっと待って。
斥候のゴンザエモンが得意の収納魔法でライト様を収納しようとしています。
え? いいの? ライト様。人ですよ。モノではないですよ。
確かに鎧着て、重そうですが、モノ扱いはやめていただけませんか?
あとでタイタン様におこられます。
いや、マジで。
「逃がすか! スレイブ!」
マイスイートシスターが叫ぶと、私とブルータスの合作「見た目だけ強そうな逃げるための時間稼ぎ専用泥人形九十九式」に対抗するかのように機械仕掛けの巨大な騎馬が出現した。
あれは大変です。
すぐに逃げないと。
あわてて仲間の撤収状況を確認すると・・・
早えーっ
みんな逃げてるよ。
新規先鋭で売り出している両斧使いの赤き魔法使いマンタなんて一戦もせずに逃げてるんじゃないのか!
「ブルーフェイスの旦那! ほらっ。」
ブルータスは私の腕をとって転移のスクロールを使った。
直前、私とブルータスの合作「見た目だけ強そうな逃げるための時間稼ぎ専用泥人形九十九式」がマイスイートシスターの呼び出した機械仕掛けの巨大な騎馬の突撃で木っ端みじんにされるのが見えた。
「あ、あぶなかったー。」
それにしても、なぜマイスイートシスターはあそこまで怒り狂っているのでしょう?
理解できません。
---from yamabuki side---
「みなさん、ご無事ですか!」
僕は駆け寄ります。
「うむ。」
「おお、あの程度造作もない。」
「は、は、は、ハイ!」
あれ、アオイちゃんの声が聞こえません。
アオイちゃんの方をみると ふーっつ ふーっつと息をしています。
戦闘のダメージはないようですが、仇敵である兄を逃がしたのが悔しいのか、顔一面に悔しさと怒りが混じった表情をしています。
かわいい顔が台無しです
赤石クンがアオイちゃんの肩に手をかけました。
「我らの目的は青の国を救う事だ。」
「わかってんよ!」
赤石クンの言葉にアオイちゃんが応じます。
自身の目的であるリサ教授のことを一旦おいて、アオイちゃんの祖国のことを優先させた赤石クンの言葉にはアオイちゃんも応じないわけにはいかないでしょう。
それはともかく、タイタン達には僕たちがここに来ていることは分ったしまったと思っていいでしょう。
今まで以上に注意が必要になりました。
【次回予告】
ブルーフェイスとの邂逅というアクシデントがあったレンジャーワンはアオイの祖国、青の国の解放を目指す。その青の国は帝国によって異質な国へ変貌していた。
次週、episode15 青の国へ
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