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episode12 緑の大空洞と思惑

明けましておめでとうございます

今年もレンジャーワン。

よろしくお願います。

---from Diplomat Goto side---


「なっ。何を言ってるんだ。」

私は白井に食って掛かる。


白井は私を無視して眼鏡をくぃっとあげながら目の前の地底帝国の帝王に訴える。

「帝国に仕えたいんだ。」


その言葉に答えたのは宰相ユミルとか言う白い奴だ。

「面白いことをおっしゃる。理由を聞いてもよろしいか?」


「単純に強さだ。魔法。竜と生身で戦える力。それを目の当たりした。その力を得たい!」


「ふぉふぉふぉ。強さとな。このように捕縛されながら、このような事を言ってのける胆力。いいではないか吾輩は気に入りましたぞ。」

デビルフィッシュとかいう蛸頭のお化けが肩をゆする。あれはなんだ? 笑ってんのか?


「面白い! 僕も気に入ったよ。宰相、デビルフィッシュ。・・・白井さんといったね。共に戦おうではないか。」

そういって地底帝国の帝王は白井を指さす。白井の体が白い光に包まれ、その光が白井の左腕に集まる。白色の魔石が埋め込まれた腕輪が装着された。


「白井さん。これで君も僕の力の一部を使う事ができる。君のいう強さを与えたことになるけどそれでいいかい?」


白井はしばらく与えられた腕輪を眺めていたが、ハッと呼びかけられたことに気づいたらしく居住まいを正し、眼鏡をくいっと上げた。

「これはレンジャーワンが使っていた腕輪ですね。たしかドラウプニルとかいう。ありがたい。改めてお願いする。このまま仕えてもよろしいか?」


「もちろんさ。」

地底帝国の帝王が軽く頷いた。


「貴様―つ。それは裏切りだぞ!」

私は伊藤に食って掛かる。

まさかこいつにそんな思惑があっただなんて!

「ふぉふぉふぉ。仮にも帝王の御前ですぞ。みっともなくわめきなさるな。」

デビルフィッシュとかいう蛸男の怪物の蛸足が鞭のように私を打ち据えた。


なんだ? 吹き飛ばされたのか? 不意のことで声も出せない

意識が混濁する。


「白井殿。この方を少し借りてもよろしいか?」

「ああ、好きにしたらいい。結局、せっかくの強さを手に入れる好機を昔のしがらみに囚われて逃す愚か者だ。」


な・・なんだ、私を借りるだと?・・・何をするつもりだ・・・

さ・・・白井・・・てめぇ・・・


ここで意識が消えた。



---from Titan side---


「「「タイタン様 おめでとうございます。」」」


「あいよ。」

おれは軽く片手をあげて答えた。


ったくレジスタンスの野郎ども、本当におめでたい頭してやがる。


こいつらレジスタンスは帝国が滅ぼした国家群の君主や主要な要職についていたやつらだ。

身も蓋も無い言い方をすると今の帝国に恨みがある奴らだ。


帝国に祖国が滅ぼされた後、レジスタンスとなって帝都で暗躍っぽいことをしていた奴ら。

帝都に集まっていたのは祖国を滅ばされた時に、反乱が起きないよう帝国がとっていた人質が帝都にいたからだ。好機が訪れたら人質を奪還できるようにするためらしいぜ。


健気だねぇ。

帝国に囚われている人質は「下手なことをすると国を攻撃する。」と脅されているから実際は難しいのにな。



暗躍っぽいことという言い方をしたのは奴らの活動とも言えない活動内容が秘密裏に集まって作戦会議という名の帝国の帝国批判会を行うだけで何も実行しなかったからだ。


俺の嫌いなタイプだ。


何も成さねぇ癖に、批難だけは一丁前に言いやがる。


俺はレンジャーワンと帝王との戦いの中に割って入って、帝都を陥落させた。

そしたら好機とみたんだろうな。

レジスタンスの奴らがゴキブリのようにわらわら出てきて、頼みもしねえのに「味方する。」だの勝手に祝いの言葉をぶっぱなしてきやがる。


おれがレンジャーワンとのどさくさで帝都を落としたから喜んでいるんだろうが、俺が代わりに帝王になる可能性とか考えないもんかね。


まあ、コマが足りねぇの事情もあるから放っておくがよ。

勝手に味方して、勝手に帝国の兵士でも追っ払てくれや。


それにしても、俺が帝都を落としたもんだから、帝国は消滅。そんで元のように自分の国に戻って元の生活ができると思ってやがる。


まだ、それぞれの国には帝国兵が残っているだろうに、そいつの駆除は自分たちでやってくれや。なんでも俺におんぶにだっこじゃキレるぞ。


ちなみに俺はあの後、自分の祖国。赤の国を取り戻した。

レッドドラゴン3頭の戦力だぜ。余裕だろ。

あとあと赤の国の元国王が偉そうに「大義である。」なんて言いやがったから蹴飛ばしてやった。別にテメエのためにやったわけじゃねぇ。

国も守れなかった奴なんざ。すっこんでろ。


そうそう、一応、今話にでた赤の国の元国王といった亡国の軟禁されていた要職者は解放した。といっても俺が直接やったわけじゃねぇ。レジスタンスが勝手にやってた。


その解放者の中に面白れぇやつがいた。


なんとあのアオイの兄だ。

こいつはある意味、有名な奴だ。


アオイの国である青の国。その滅亡のきっかけを作った奴だ。

アオイが帝国の人化魔法によるレッドドラゴン侵攻に苦慮しながら、なんとか応戦していた最中に裏切って、自国の城を落とし、背後からアオイ率いる魔法兵隊を襲い壊滅させた、とんでもねぇ奴だ。


そんで自分だけは生き残ろうと図ったらしいぜ。


帝王は実力をもっている奴は好むが、こういうやつは嫌う。

とっくに処刑されてたと思ったら、軟禁されていた。


その事実に興味をもってちょっくら合いに行ったら。面白れぇ。

清々しいほどおべっか使いやがる。

ここまでプライドも何もないおべっかだといっそ清々しさも覚える。


能力もないわけじゃない、裏切りという奇襲とはいえ、あのアオイを倒した実績もある。


そいつがおべっかついでにこんなことをぬかしやがった。


「タイタン様。私ごときが大変恐縮ですが、帝王を下したタイタン様はこれからこの地底国家群の覇王になる方。しかしながらまだ、帝王や地上戦力は残っており両面作戦を強いられるところです。そこで私が片方を抑えるのはいかがでしょう? そうするとタイタン様は片方にだけ集中することができます。覇権も近づくでしょう。」


「へえ。あんたが帝王倒してくれんのかい?」


「いや いや私ごときでは荷が重すぎます。ですから地上の方を抑えようかと。」


「へえ、あんたが地上を抑えてくれるんかい。」


「いやいや、私ひとりの力など、身の程知らずもいいところです。

ですが、ここにはレジスタンスがいる。その中には、各国の王族や貴族の方々も加わっている。――つまり、その母国の力を借りることができるのです。

これからはタイタン様を中心とした新しい体制が築かれるでしょう。タイタン様のために尽くしたという実績、すなわち“手柄”を求める者は少なくありません。

そうした人々を動かし、地上の抑えとして配置する。

そうすればタイタン様は、心おきなく帝王との決戦に専念できるでしょう。」


へえ。ゴマすり専門とか思ったが、面白れぇ。

なかなかどうして考えてやがる。


俺達四天王でも抜けなかったレンジャーワンを旧国家群の残党であるレジスタンスにどうにかできるとは思わないが、奴らの弱点は3人しかいないという事だ。数で抑えるという考え方もできる。それに奴らの目的は俺たちよりもあの地上から落ちてきた連中の救出らしい。まあ、無事とは思えねぇがな。


状況を考えると・・・抑えるだけなら可能かもしれねぇ。


こいつ頭いいな。

さすがにあのアオイを嵌めただけはある。


「テメェもその手柄が欲しいクチじゃねぇのか?」


「いや、いや、私ごときでは手柄を立てる前に死んじゃいますよ。ただ、彼らを上手に動かすことではお手伝いできるかと。」


ふーん。本音では何考えてるかすぐに読めねぇところが面白れぇな。

こいつは戦闘とは別なスリルだな。


「なら、任せたぜ。見事抑えてみせろや。」


「・・・お待ちください。この方はかのアオイを裏切った前科がある。」

「ええ。鵜呑みにするのは危険ではないでしょうか?」

俺のそばで控えて今の話を聞いていたライトとファイアが進み出た。


うざってぇな。そんな事ぁ。言われなくてもわかってんだよ。コイツが何か腹に抱えてやがるってことは。

だが、こいつは今、俺を裏切ることぁねぇ。何のメリットもねぇからな。

かえって利で動いている奴の方がわかりやすいんだよ。それに、こいつの言う通り両面作戦は避けてぇんだ。

それがライトやファイアにはわかんねぇかな。

俺はため息をつく。


俺の部下どもは真面目だし一本気で気持ちのいい奴ばかりだが知恵がねぇ

しゃーねー。一芝居打つか。


アオイの兄は頭は回るようだ。裏切りも能無しじゃできないってね。

芝居にゃ気づくだろ。


「おい。テメェがヘマして帝王と戦っている俺が挟み撃ちになったらどうなるかわかってるんだろなぁ。」


「いや、いや、もちろんわかっておりますとも。仮に・・・仮にですよ。それでタイタン様が破れ、帝王が勝ったとしましょう。そうなると私はどうなるか・・・私は間違いなく反乱に与したとして帝王に殺されてしまいます。もちろん、レジスタンスを構成する国家群首も同じです。殺されたくないですから懸命に抑えますよ。」


わざっとらしい演技だな。出てもいない額の汗を拭いてやがる。


「だとよ。」

俺はライトとファイアに水を向ける。


「・・・しかし。」

「ええ、万が一のことがあるかもしれませんよ。」

ライトとファイアが渋る。


「わーった。ならライト。テメェがこいつと一緒に地上を抑えろ。最強剣士の名を持つテメェの眼がひかっているなら俺も安心だ。それにテメェはあのレンジャーワンの赤い奴に返さなきゃならねぇ借りがあるだろ?」


「・・・了解。」

ライトの眼が光った。そうさ、テメェは借りを返さなきゃいけねぇよな。

ただなレッドドラゴンは置いて行ってくれよな。帝王相手だと戦力は多いほど良いんだ。

地上はとりあえず捨て駒でいいだろ。


さあてこれで帝王と戦う準備はできた。

ちょいとばかしスリルあるがな。


どういう賽の目がでるかな。

楽しみだ。


---from Ms. Ito – Diplomat side---  

「なんですって!」

私は思わず声を荒げた。


理由は簡単。

一つ対帝国の頼みの綱であるレンジャーワンが山吹さんを残して全員いなくなっていたから。


「何考えてんのよ。」


駄目だ感情がおさまらない。STOP STOP 冷静になれ。私はデキル子。感情的になっても何も生まれない。私OK? 冷静になれたかしら。


「何考えてるとと言われましても。僕たちは洞窟内で遭難した研究者をレスキューするのが仕事ですので。」

山吹はにっこり笑って答えた。


建前はそうよ。建前はね。でも帝国があんな感じになっちゃたんだから、いろいろ備えとかないといけないでしょ。その備えがレンジャーワンだというのに2人もいないってどういうことよ!


はぁはぁ・・・おちつけ私。冷静に慣れてるよね。今の心の声もれてないよね。

私OK。クールよ。クールになりなさい。私。


私はあの帝国からの大脱走のあと、黒滝教授に代わってレンジャーワンの担当に任命された。私が任命されたと同時にレンジャーワンは大学有志のレスキュー隊ではなく、国家直属の機関となった。国も対帝国を重視しているということ。私はそこのトップ。


同行したセクハラ後藤さんと細マッチョ眼鏡イケメン属性の白井さんは逃げ遅れた。

弁が立つだけのセクハラ後藤はいいとして白井さんと一緒に逃げれなかったのは悔やまれる。

私が助かったのは、レンジャーワンの特に山吹さんが駆けつけてくれたお陰ではあるけれど、その前に白井さんが私を先に逃がしたからでもある。


「いずれにせよ、私は助かった……運がよかった。だけど、肝心の対帝国戦力がいないって、どういうこと?私は、いったいどうすればいいのよ……。」


---from aoi side---


「むう。メンドーサ殿はすごいな。」

赤石が人を褒めた。

あの、「むう。」とか「うぬ。」とか2文字しか言わないと思ったらリサ教授のことしか考えてなくたまに長文を話ししたと思ったら「何と理不尽な事か!」としか言わない奴が人を褒めましたよ。


「えっ あっ あの! そ、そんなことないです。」

メンドーサがえへへと照れてる。


まあ、赤石の唐変木が褒めるのもわからなくはない。


私たちは帝国と地上を結ぶ洞窟の中にいる。

地上の人々が魔石の洞窟と呼んでいる洞穴だ。

メンバーは私に赤石。そして、この前の帝国からの大脱走で一緒に地上にきてくれたメンドーサにライオンマン。山吹は今回、留守番だ。その後の帝国の動きが読めないため、備えることにした。


ちなみに私の正体はライオンマンとメンドーサには見せた。

成り行きとはいえ一緒に活動するとなったら隠し通せるもんじゃない

ライオンマンは「おお、偉大なる四天王であったか。その強さ頷ける。」と相変わらず「強さ」以外の価値観、評価で物差しをはかる程度の感想だった。

メンドーサは「よ、よ、よかった。心強いですー。」と言ってた。もしかしたら私に同じく四天王だったヘドリアを見ているのかもしれない。

青の国・地の国の違いはあれど、祖国のため帝国に従っていたというバックボーンも似てるしね。


ともかく、ライオンマン、メンドーサともに正体を見せても問題ないようで一安心。

カグヤが『詰まらないですわ』とか言ってたが無視だ無視。

アンタを楽しませるために生きているわけじゃない。


ともあれ、私たちが洞窟内部を進んでいる目的はもちろんリサ教授を含めた洞窟内研究所所員の救出。


そこでメンドーサは赤石が褒めるのも納得する活躍を見せていた。


メンドーサの雷獣を使役した電波による索敵は高性能。

洞窟内での不意のモンスター遭遇を避け、リサ教授の足跡を最短距離で辿ることができている。

かなり役立っている。


また、彼女自身 魔法のポーチを所有していた。これが役立っていた。

魔法ポーチの中は異空間になっており無限とまではいかなくても大量の荷物を入れることができる。


このためかつ丼やカレーといった地上の美味しい食べ物を持ち込むことができるようになった。


これは非常に重要。うん。重要。


地上までついてきてくてたメンドーサもライオンマンも地上の食べ物を食べて、そのカツ丼や天ぷら、ハンバーガーなどの美味しさに虜になっていた

いざ、洞窟探索となったときに真っ先に魔法のポーチでの食べ物の持ち込みを提案してきたのは、メンドーサだ。

よほどおいしかったんだろうな。うん。


もちろん、食べ物だけの話じゃない。


帝国が魔石の洞窟経由で地上へあがるようになったり交戦状態になったものだから、地上では魔石の発掘ができず、魔石不足に陥りかけていた。


そこで現在、唯一といっていい魔石の洞窟に入れる私たちが道中、魔石をとってくることが検討されていた。少しは市場の魔石不足が解消されるし、また供給不足により魔石価格が高騰していたからね。うちらレンジャーワンの運営費の足しにもなる。研究材料も手に入る。


これは前任の黒滝教授がいたころからディスカッションされていたが、実行されてなかった。


運搬方法という課題が解決されていないからだね。

洞窟にはいるとどうしても戦闘が多い。

帝国もそうだが、洞窟内の野良のモンスターもいる。


戦闘ごとに魔石を床においてなんて悠長なことはしてられない。


その課題をメンドーサの魔法のポーチが解決した。

とりあえず拾ってその魔法のポーチに入れると解決。

何て便利なんでしょう。


私がいた青の国ではなかった魔法技術だ。

聞けばメンドーサ自身の発明だという。

すんげーな。


赤石が珍しく褒めるのもうなづける。


さすがはかのヘドリアの部下の筆頭。

ヘドリアの部下にはタイギ。ダルといった戦闘力の高い部下がいたが、メンドーサが筆頭だった。


わかる、わかるよ。

ある程度、組織運営しなきゃいけない立場になると、武力の高い勇者よりも知恵が回る部下の方が正直助かる。そういやタイタンが「俺の部下は気のいいやつばかりなんだが、どうにも一本気すぎる。」と嘆いていた。

そうなんだよね。

そういうやつが隣にいないと全部自分で考えなきゃいけなくなる。


そういう意味ではアタシの兄は王である父からすると理想の腹心だったのだろう。

小知恵が回る。

ただ、小知恵が回りすぎて最後には裏切りやがったからなぁ。

まあ、帝王はああいうやつは嫌いだから、今は生きちゃいないと思うが、万が一生きていたら容赦しない。


・・・ダメダメ。思考が過去に寄ってる


話しを戻す。


メンドーサはあの朴念仁の赤石が珍しく・・・本当に珍しく褒めるほど役に立つ。

『あら、お姫様。嫉妬しているのですか?』

ウルサイ。カグヤ、ダマレ

『先頭で二人並んで歩いてると意外とお似合いですよね。』

ウルサイ。カグヤ、ダマレ

あれはメンドーサが探索のために先頭を歩き、そのメンドーサを守るために赤石が並んで歩いてるだけ。

それに似合わんし。どちらかと言えば対格差で父娘が並んでいるように見えなくもないし。


「あっ・・・。」

カグヤとだべってたら不意にメンドーサがとまる。


「ぬう。」

赤石も唸った。


「ここは・・・。」

私も絶句する。


この場所はダルが魅入られたものになって倒れた場所。

ヘドリアやタイギが倒れた場所。

そして多数の守護者が顕れた場所だ。


「おお、どうした? みな顔が青いぞ。」

事情を知らないライオンマンが能天気な声をあげる。


「・・・ここはヘドリアが倒された場所・・・。」

アタシは端的にライオンマンに事情を伝える。


「おお! 偉大なる帝国四天王のヘドリア殿がこの場所で・・・。ならばそのヘドリア殿を倒す強者がいるエリアということ! 楽しみなことよ。」

ライオンマンが場を読まない快活な声をあげる。


私は眉を顰めるが、特に何も言わない。ライオンマンが悪いわけではない。

ただメンドーサにとって尊敬するヘドリアがなくなった場所というのはあまり精神上よい場所とは思えない。


さっさと移動しよう。

しないといけない。


少なくとも、私たちは研究所からメンドーサの雷獣の探索機能をつかって、前回と同じ場所にたどり着いた。


ということここまでは正解のルートをたどってこれたということだ。

そしてここから先があるはずだ。あるよね。

なら、なおさらここにとどまる意味はない。


アタシはメンドーサに声をかける。

「進もう。どっちにいけばいい?」

なるべく、簡潔に先を促す。余計な感傷がはいってこないように


「そ、そ、そ、それが・・・・。ここで痕跡が消えているんです。」


痕跡が消えてる??

それはありえない。


日数的に何カ月も経過しているならともかく、数日しか経っていないはず。

なら、仮にここで最悪な事がおきたとして、何かの痕跡・・・例えば荷物や・・・赤石のことを思えば考えたくはないが何らかの残骸がなければおかしい。


その残骸は前回ここに来た時には無かった。

だからこそ、もっと先に行っていたと思っていたが??


しばらくの沈黙の後、赤石が

「あの守護者を覚えてるか? その後を追えるか?」

とメンドーサに聞いた。


・・・前にも赤石はあの守護者を気にしていた節がある。なぜ気にしているのだろうか?


リサ教授以外に興味がない彼が。


「は、は、はい。」

メンドーサは使役している雷獣を電波に変換した。

メンドーサの本領、電波を利用しての調査を開始したんろう

やがて周囲の調査が終わったのか「こっちです。」と一定の方向に先導する。


「これは!」

まるで隠し通路のような入り口

外壁と同化しているその入り口はメンドーサがいなければ決してたどり着かなかっただろう。

メンドーサが案内したその先に天井の見えないエメラルドグリーンに光る大空洞となっていた。


---from akaishi side---


「むう。」

メンドーサ殿は不思議な能力を持っている。

子ネズミ程度の雷を帯びた獣を使役し、探索・調査する能力である。


これで研究所からの足取りを追えないか頼んでみたところ、答えはYESとのこと。

うむ。頼もしい。


それでたどり着いたのが、かつて多数の守護者というモンスターがあらわれた場所であった。しかも、そこでリサ姉の痕跡は消えているという。

何と理不尽な事か。


ここで焦ってはならぬ。

我は自分を戒める。


我は少し思案し、守護者の後を追えないかメンドーサ殿に尋ねてみた。

答えはYESとのこと。

うむ。頼もしい。


メンドーサ殿はすぐさま探索を開始

「こっちです。」

と言った先は洞窟の壁であった。

メンドーサ殿はその壁が無かったかのように進む。


ぬう。隠し通路か!

なんと理不尽な事よ。


おそらく魔法か何かの仕掛けで壁のように見えているだけなのであろう。

あの帝国の大図書館で勉強させてもらったが、そのような魔術や幻術の類があるらしい。

これはメンドーサ殿がいなければ気づかぬ。


感謝せねばなるまい。


意外と守護者は近くにいたのだ。

そして守護者に紛れていたリサ姉や研究職員に似た人物も


忽然と顕れる守護者といい・・・このような仕掛けがこの魔石の洞窟のいたるところにあるのかもしれぬ。


隠し通路・・・というには短すぎるが・・・そこを抜けると緑一色に光る大空洞であった。


ぬう。ありえぬ。


我がまず思ったことはそこだ。


この大空洞。天井が見えぬくらい高いのだ。

これがありえぬ。


もし仮に本物だとしたら地上を突き抜けて空が見えていなければいけない。

そんな大きさである。


これも魔術か幻術の類なのであろうか?


「「「この場所にたどり着くとは。」」」

ぬう。声の方を振り向くと大量のモンスターがいた。たしか守護者とかいう奴だ。

さらにその奥には一人の人影がいる。


我は目を凝らす。


その人影は白い仮面をかぶっているため顔は分らぬが、その容姿から男性のようである。

(・・・リサ姉ではない。)

落胆したような、安堵したような、不思議な感覚が我の中に満ちる。

(いかん・・・ここは守護者が出現するエリア。余計なことを考える場所ではない。油断するとダルのようになる。)


気を引き締めるとしよう。

特に守護者は接近戦も魔法戦も挑んではならぬ。

魔法以外の遠距離攻撃で仕留める必要がある。


「「「UUUUUU・・・引き返せ。ここに居てはならぬ。」」」

白い仮面の男が警告する。


むう。確かにここが住処であれば、我らは招かざる訪問者である。

拒むのもわからぬではないが、ここでリサ姉の救出をあきらめるわけにはいかぬ。


「交戦の意思はない。人探しをしているだけである。」


「「「UUUUUU・・・引き返せ。ここに居てはならぬ。」」」


「リサ姉・・・いや、この洞窟で遭難した研究員を探している。知らぬか?」


「「「UUUUUU・・・引き返せ。ここに居てはならぬ。」」」


むう。会話が成立せぬ。


我が如何にすべきか思案していると背後がうるさくなってきた。



「ブルーフェイスの兄ちゃんよ。本当にこっちかい? 壁だぜ。」

「私の予知魔法を舐めないでいただきたい。当たるんですよ。」

「本当に? 本当に?」

「あっ! 壁だと思ったら壁がなっす。ここスカスカっす。」

「本当に? 本当に?・・・本当だ。」

「ここ通れますぜ? 隠し通路だ。」

「だから言ったでしょう。私の予知魔法を舐めないでいただきたいと。」


むう。何者かが我々が気づいた隠し通路を発見し、こちらに来ようとしているらしい。

我々が気づかなかった隠し通路をいとも簡単に探し当てるとは。何と理不尽な事か!


「「「UUUUU・・・。潮時か。引き返せ。これ以上深入りするな。」」」

守護者が消えていく。そして仮面の男も消えようとしている。


「その警告は聞けぬ。」

我はその消えゆく背中に言葉を投げかける。

聞けるわけがない、我はリサ姉を探さねばならぬ。


「「「UUUU・・・警告?? UUUU・・・これは『願い』」


「願い?」


「「「UUUUUU・・・『願い』に囚われるな。」」」」


そう言って仮面の男は守護者とともに消えた。


むう。願いに囚われるな? 会話が成立しているとは言い難いが、今の言葉は我の核心をついている。

少し、少し心が重くなる。言葉が突き刺さる。

囚われもしよう。リサ姉を助けるためなら。



---from aoi side---



なんですって?

今なんつった?


ブルーフェイス? ブルーフェイスって言った。


マジか!

あいつ生きてやがった。

ブルーフェイスは私の兄の名前だ。

そして青の国に帝国が侵攻してきたときに帝国へ寝返り、祖国を滅ぼした裏切り者の名前でもある。


なんであんにゃろ生きてんのさ。

帝王ってあんなの嫌いじゃなかったっけ。

だから敵でも私やタイタンみたいなのは最後まで抵抗した勇士だけ取り立ててるんじゃなかったの?

祖国滅亡後、帝国四天王になってから一回も会ったことなかったから、てっきり裏切った後、あんなのいらないって処刑されてたと思ってたよ。



「お! ブルーフェイスの兄ちゃんよ。本当に抜けたぜ。」

「心外だな。私の予知魔法を舐めないでいただきたい。当たるんですよ。」

「本当だ。本当だ。」

「スゲェ。なんだこりゃ。この部屋は緑一色ですぜ。」

「すごいっすー!」


なんか愉快な一団がやってきた。


5人組の冒険者風の一段の後に雑多な兵が続いている。

帝国兵ではない。雑多な傭兵団のように統一感のない兵たち。

その雑多な兵を率いているであろう5人組は・・・戦士、斥候、僧侶、魔法使いと冒険者としてはスタンダードな構成だが・・・見た目が・・・中々、個性的だ。


先頭を歩く僧侶?なんでしょうね。ちゃんと修道服を着てるし・・・着てるんだけどマッチョすぎてサイズがあっていない。筋肉ラインがバリバリ見えてもう張り裂けそうになってる。

修道服が張り裂けそうで胸元もお腹も見えちゃってます。ついでに脛も見えちゃって見た目がハーフパンツ。悪魔も筋肉で調伏されそうな感じ??


次は魔法使い? かな? 三角帽子に長ひげのお爺さん。ロープも着てます。これだけだと普通なんだけど。その着ている服の色が真っ赤です。これって魔法使いじゃなくてどう見ても、「地上」で見たサンタクロースです。使い魔っぽいのもいますが・・・トナカイならぬ鹿です。いいのか?これ?


その次が戦士?? つーか戦士は前歩けよ。なんで三番目なんだよ。僧侶と魔法使いを守るタンクの役割する気まったくないだろ。

着ている鎧もそう。なんでビキニアーマーなんだよ。リアルで初めて見たわ。

ビキニアーマーなんて露出高い鎧。どこも守る気ないだろ。逆に攻めてるよね。

そこまで装備は攻めてるのに、なんでメガネにおさげというファッションなの?


その次は斥候??だからなんで前にいなきゃいけない役割の人が後ろなの?

罠に気づいたら、もう先頭の人、罠にやられちゃうよね。

しかもなんでほっかむり被ってるの? 顔を隠しても意味ないよね? しかも唐草模様のその服格好。隠れる気ないよね。忍ぶ気ないよね。目立つ気満々だよね。そして、そのあんこ型の体形 アジリティ全然無いよね。


そして、最後の一人。ダンジョン内だというのに空気を読まず官僚着を着ている男。

アタシの兄。ブルーフェイス。

本当に生きてやがった。


「おや?」

「あ!」


やばい。目が合ってしまった。

やばい。動揺してた。変身もしてない。


今まで懸命に隠していたあたしの正体がこんなところでバレるなんて!


「おや、マイスイートシスター! こんなところで会うなんて。『地上』にむかった後、行方不明になったと聞いて心配したよ。」

「あら。あほ兄ぃ。こんなところでお会いするなんて。とっくに処刑されていると思ってましたから驚きました。ゴキブリ並みにしぶといですね。」


しばしの間の後・・・


「ちょっ、久しぶりの血を分けた兄妹の再開なのに、それはひどくないかい。」

なんか、その慌てている兄に対して、冒険者風4人組がこのやり取りを聞いて大爆笑してんのがムカつく。


「アホォ! 帝国との戦闘の時に裏切って背後から攻撃しやがった奴がそんな口ををきくんか! その方がひどくないか!」

「それは仕方のないことなんだよ。マイスイートシスター。」

「はぁ? 何がしかたないって?」

「国のためなんだよ。」


国のため? ちょっと待って。このアホがナニイッテルカワカンナイ。


「僕達は王家の人間だ。」


それはそうだ。だからこそ国のために、国民を守るためにあの時は戦った。


「国のために血を絶やすわけにいかない。」


ん? 


「あの時は帝国がレッドドラゴンを先鋒に攻めてきて、とても勝ち目はなかった。」


それは同意する。

地上に出てドラウプニルの力を得た今でも3人の力を合わせたヴァン・アース状態じゃないとレッドドラゴン撃破は成しがたい。当時はドラウプニルの力すら得ていなかった。勝ち目はない。


「そこで王家の血を絶やさぬよう。策を練る必要があった。城を枕に討ち死にしたら王家の血はそこで終わりだ。だから僕は血を絶やさぬために帝国についた。僕たち王家の人間こそ国だからね。僕達が生きていればいつでも青の国は再興できる。」


「それで青の国を裏切ったと。」


だんだん アタシの精神が冷えてくる。


「裏切ったんじゃないよ。あの状況下での青の国の生き残りのための策だよ。」


「そのために私の部下は犠牲になった。」


だんだん だんだん アタシの精神が冷えてくる。


「仕方のないことだよ。その代わり僕という王家の人間は生き残った。僕が生きていれば青目には再考できるよ。」

「王家は国じゃない。」


「は? 不思議なことを言うね。王家こそ国だよ。だから王家こそ生き残らなければいけない。」


「あの時、レッドドラゴンに国は蹂躙された。家を失い。家族を失ったものもいる。・・・守るべき国民を犠牲にしてでも?」


「は? 逆だろう。国民が王家を守もらなくてはいけない。そうしなければ王家は滅んで国も亡ぶ。それこそ本末転倒だよ。」


ああ、そうか。


アタシは冷えた精神で理解した。

こいつは真の意味で敵だと。


「不思議なことを聞くね。マイスイートシスター?」


「あん?」


「その言葉遣いは一国の姫としてどうかと思うが・・・それはともかく、敗れた後、帝国の参加に入り帝国四天王となったのも同じ理由ではないのかい。王家の血を残し、国を残すという大義の元、雌伏したのでは?」


「・・・雌伏はした。」


「では、僕の言う事は理解できるはずでは?」


「理由が違う。アタシはそんな崇高な人間じゃないんでね。雌伏はした。国を残すためにね。」


「・・・では、僕の言う事は理解できるはずでは? 先程からの不思議な質問が僕には理解できないよ。」


「文字通りの青の国を残すためさ。父や母を、一緒に育った友達を、そして育った街や村を残すため。生かすため。意地汚く生き残った。もちろん、エゴもある。アタシも死にたくはないからね。ただ・・・決して、くだらない王家の血を残すために雌伏したわけじゃねぇよ。」


「ちょっ・・・ちょっと待ってよ。王家の血がくだらないだって?」


「国はそこに生きる人だ。王家の血じゃない。」


「それは違うよ。国は王家の血こそだ。」


「なら・・・」


「なら?」


「バカ兄ぃ・・・あんたは私の真の敵だ。」


「なっ。ちょ、ちょっと待ってよ。」


「待たない。ただ二つだけ聞きたい。」


「二つ??」


「あんたは生きてる。そして兵を率いてる。今、何をしている?」


「え? ああ、何といったらいいかな? 僕は祖国滅亡後、帝国に滅ぼされた王族・貴族で作ったレジスタンスに所属してたんだ。そしてそのレジスタンスは帝都を奪取した新君主タイタン様を支援している。そのためタイタン様のため地上を攻めるところだったのさ。」


亡国の王族・貴族で構成されたレジスタンスか・・・。ろくでもなさそう。

かつての利権を、失った利権を追い求めているのが透けて見える。

それよりも・・・


「地上を攻めるって?」


「そうさ。タイタン様は火の国復活のため帝国に反旗を翻された。しかしながら帝国を完全に滅ぼしたわけではない、帝王も宰相も、そして最後の四天王デビルフィッシュも残っている。この状態で対地上作戦を行うわけにはいかない。両面作戦は愚の骨頂だろ? マルチタスクも、優先順位を決めてシングルタスク化して一つ一つ潰すのが賢いやり方だ。そのため僕達レジスタンスが「地上」を担当することになった。タイタン様が対帝王に専念できるようにね。僕達、レジスタンスも今後の地位獲得のため手柄が必要だしね。」


・・・最後のワンフレーズが本音か・・・

手柄のために「地上」を戦火に巻き込む気か?


私の精神が冷えてくる。


「最後の質問。」


「なっ、なんだい。さっきから怒っているようにみえるけど・・・せっかくの兄妹の再開シーンだよ。」


「タイタンについたのは理解した。青の国は当然、帝国から取り戻したんだよね?」


「え? なんでそんな無駄なことをする必要がある? そんなのタイタン様が帝王を倒したら自然と取り戻せるじゃないか? わざわざ戦力を多方面に分けるのは愚の骨頂だよ。」


「こんのースカタン!」


私が何のために雌伏してたと思ってるんだ!


死にたくはない。


というのは当然ある。


私はそんな御立派な人間じゃない。


だけど、父や母、友達や私がワルガキしてたころに匿ってくれた城下のお爺ちゃんや一緒に遊んでくれた友達。隠れて食べに行ったアイス屋さん・・・そういった人たち、それを守りたいと思った。


だから、本音を言えば怖かったけど、帝国との戦いのときは魔法兵隊蝶として帝国。そしてレッドドラゴンと戦った。


大切な人、大切は普通の日を守りたいと思ったからだ。


帝国四天王の一員になったのも同じ理由。

青の国を滅ぼしたあと帝国四天王として私を迎えたい帝王は条件を出した。

私が帝国に味方している限り、青の国には手を出さないと条件を出した。


まあ、人質だね。

私が裏切ったら青の国がどうなるかわからんぞ。という脅しだ。


私に選択肢はない。

私は敗将。

捕虜みたいなもんだ。


その捕虜を取り立てるといっているんだ。

破格の条件だろう。

首ちょんぱされてもおかしくないからね。


ただ・・・用意されたポスト。四天王は戦闘職。

死んだり行方不明になることがある。


私は死ぬのは怖かったけど、それ以上に私が死んだ後の青の国の人々がどうなるかが怖かった。


だから帝王に四天王になるにあたって条件を出した。

私が死んだり、行方不明になっても、青の国には手を出すなよと。


帝王はそれにも応じ誓約で答えた。

ただ、条件はついた“青の国の人が帝国を裏切らない限り”と。


妥当な落としどころだとう。


仮に青の国が反乱したとして、私と誓約があるから反乱放置するなんてことは国の運営上、拙いからね。


そして、その誓約を公布した。

つまり帝国の人間はこの誓約を全員知っている。


だから、怖かったけど、安心して帝国四天王の職務についたし、安心して「地上」にいったあと安心して行方不明となれた。


父や母。友達や親切にしてくれた人々に会えず、青の国のアイスがもう食べれないという

思いはあったが、無事であればそれでいい。「地上」のカツ丼もアイスに匹敵するほど美味しかったし。


ところがだ、このアホ兄は私のその願い、努力を全部無駄にしやがった。


帝国に反旗を翻した。


しょうがない事情もわかる。


アホ兄もアホ兄なりにレジスタンスとやらに参加し活動してたようだからね。

アホ兄が動かなくても、帝国の屋台骨がぐらついたと見るや、レジスタンスとやらは動いていただろう。


でも、それをやるのは青の国を帝国から取り戻してからだ。

青の国がまだ帝国の占領下にあるまま反旗を翻したらどうなるのさ?


自明の理じゃないか?

だから、アタシは行方不明を演じていたのに!


理解した。

冷え切った頭で理解した。


この血を分けた兄妹こそ、祖国を常に危機に晒す真のアタシの敵だと。


「消えろ! Gandir!」


「なっ! なんで??」

うろたえるアホ兄に魔法弾を浴びせる。


「うーん。ブルーフェイスの兄ちゃんよ。当然だと思うぜ。いくら言葉を飾っても国を裏切って親や友達を危険な目に合わせたら怒るだろ・・・。」


そう言ってアホ兄の仲間らしきマッチョの僧侶は土壁を展開した。

私の言葉に理解しつつもアホ兄を守るため、土魔法でアタシの魔法を防ぐアクションをおこした。

アホ兄ぃと違って常識人らしいが、アホ兄に味方するなら容赦しない。


っていうか、僧侶でしょ? 僧侶だよね? 土魔法じゃなくて、聖魔法の防御壁作ろうよ。

本当に僧侶?


まあいい。ヘドリアクラスの土魔法ならまだしも、そこらの有象無象で防げるほどアタシのマジックミサイルは甘くない。


「ふんぬ! うおおおおっ!」

アホ兄とマッチョ僧侶は粉砕された土壁と仲良く吹き飛んだ。

アタシのマジックミサイルを喰らってその程度で済んでいるという事はそれなりの実力者らしい。


アタシは警戒のレベルを一段上げる。


「まったく、ブルーフェイス!。天然で人を挑発するからこうなるッス。」

「本当よ。本当よ。」

と泥棒とビキニアーアーマーのメガネっ子が跳躍する。


泥棒から魔力の発動を感じる。

これは収納魔法?


収納魔法は文字通り様々なモノを異空間に収納できる魔法だ。

メンドーサが持っている魔法のかばんも収納魔法を所有者であればだれでも使えるようにしているもので、魔法と道具の違いはあれど同じものだ。


その収納魔法の出し入れ口を私の上部に開きやがった。

ちょ、ちょっと待って。

それだと異空間に収納している中身が私に落ちてくるじゃん。


私は慌てて転がりながらよける。

収納魔法から巨大なたらいが落ちてきた。

私は巨大なたらいを回避したらしい。


いや、お約束だけどさ。


収納魔法をこんな感じで使う人初めて見たわ。


「ブルー!油断するなっ。」

赤石の激がとぶ。


慌てて敵の方を見ると、ビキニアーマーのメガネっ娘が目から光線魔法を出してた。

いや、ちょっと待って戦士だよね? 剣で戦わないの? なんで目からビームなの?


「雷獣!エレキシールドよ!」

メンドーサがアタシの目の前に雷属性を魔法の盾を展開して、目からビームを防いでくれた。助かったー。


「あ、あ、っあなた方は自分の国がど、ど、ど、どうなっても・・・し、親愛する人。な、仲間が傷ついても、し、し、死んでもなんとも思わないんですか!」

メンドーサがぎゅっと握りこぶしを握りしめながら、アホ兄ぃ一行に叫ぶ。

ああ、そうか。

メンドーサもアタシと立場は一緒だ。


生まれ育った土の国を帝国に滅ぼされ、親友のタイギ、戦友のダル、そして尊敬するヘドリアが倒され独りぼっち。


アホ兄ぃの詭弁はいくら飾った言葉でごまかしても、「自分が助かれば、国も国民も家族もどうなっても知らね。」ということだ。


それがメンドーサには許せなかったのか?

握った拳が震えている。


「俺たちにそんなことを聞いても意味ねえぇぜ。ブルーフェイスが言ったことは最低だろ? 自分がよければいいんだ。そんで、そんな奴だと知って何故、俺たちはついていってると思う? 俺たちも最低の下衆だからさ。違いは自分が下衆だと理解してるかどうかだけだぜ。」


そういって真っ赤な姿の魔法使いは両手に手斧を構えた。

もうツッコミません。あんた魔法使いだろとは決してツッコみません。


「下衆とは心外ですよ。僕は崇高な国を生き延びさせるための手段として・・・」

「はいはい。それよりもチャンスですぜ。あいつらがタイタンの言っていた地上の戦力。レンジャーワンってやつらでしょ? あいつらを倒せばタイタン様に対する俺たちの評価も高くなるってもんすよ。さあ、野郎どもあいつら総攻撃だ。」

真っ赤な魔法使いが配下の兵に総攻撃の号令をかける。


通常の洞窟では兵の総攻撃は難しいが、この広い空間ではできる。


「おお! やっと戦闘か。今かと待ちわびたわ。」

「むう。今までの会話でこのままではブルーの国が大変だという事は理解した。それに、先程までの自分が助かればよいという理屈を奇麗ごとで塗りたくっているのには正直、嫌悪しか抱かぬ。我が仲間を困らせるというなら、退いてもらおうか。」


私の前にライオンマンと赤石が立つ。

目の前にはブルーフェイスの兵


「おお! くらえぃ! サイクロンクロー!」

ライオンマンが腰をねじりながら腕を振りぬき、2mくらいの竜巻魔法を発生させる。

敵の兵が竜巻に巻き込まれ吹き飛び、風の刃で切り刻まれる。


「ぬおおおおおッ。」

赤石が。腰を捻転。腕を鞭のように広げ体に巻き付ける。

「吐ーッ!」

捻転を戻すと同時に高速で 掌底を敵兵にむかって突き入れた。

そこから速射で繰り出される赤石得意の片手突き。

『Mjollnir hamme』

機械音と同時に電撃が走る。


「おわわわわーつ!」

「やばいぜ。これってー!」

赤石の電撃砲で敵兵と一緒に真っ赤な魔法使い風の男とアホ兄ぃが吹き飛ぶ。


ちっ、直撃を免れたか。

吹き飛ばされるだけで終わったか。

悪運の強い。


「こ、こうなったら奥の手だ。 dökkálfr geisa seiðr!」

アホ兄ぃが魔法を唱えると巨大な魔獣が出現した。


---from akaishi side---


「ぬう。」

「おお。意外にやるではないか。」


今、我は相手が巨大な魔獣を呼び出したのに合わせて、我も赤い巨人「シアルフ」を呼びだす。

そしてシアルフと一体化し巨大な魔獣と相対する。


ライオンマンもまた、人化魔法により本来の巨大な姿になり、我と共闘するため巨大な魔獣と相対する。


ぬう。何であろう。

この違和感は?


正直、この魔獣

難敵とは思えぬ。


我とライオンマンの二対一という事もある。

かのレッドドラゴンのような圧倒的な威圧感も感じられぬ


であるにも関わらずだ。

我とライオンマン二人で仕留められずにいる。


かといって苦戦しているわけではない。

我の操るシアルフもライオンマンも大したダメージを受けているわけではない


しかし、倒せぬ。

何であろう。この違和感。


「はい、はい、茶番はここまで。『胡蝶の舞』」


アオイが魔法を放つ。

触れた魔法を消滅させる蝶の群れを展開する魔法である。


その蝶の群れに触れたとたん巨大な魔獣は消滅した。


「ぬう。」

「おお、これはいったい??」


戸惑う我とライオンマン。

あれだけ苦戦していた魔獣が一瞬で消えるとは?


「私も最初、騙されたけど。アイツの持っている魔法を思い出せば対策はすぐに思いつく。あの巨大な魔獣は『幻』。あんたたちは魔法で作られた幻と戦ってたんだ。」


「ぬう。」

「おお! なるほど、どうりで手ごたえが無いわけだ。それに気づくとはさすが偉大なる元帝国四天王アオイ殿よ。それはそれで合点がいくが、そもそも何のために?幻を出したのであろう?」


「逃げるためでしょ。ほら、あいつらもうどこにもいない。」


なんと!

では我々は間抜けにも居もしないモンスターと戦っていたという事か!


「ぬう。何と理不尽な事か!」


---from yamabuki side---


「大丈夫ですか!」

僕は帰還した赤石くん、アオイちゃんから事の経過をきいて声をあげた。


「大丈夫? 何に対して?」

アオイちゃんが確認する。


えーっと? 何に対してといわれても・・・

そうか、なるほど・・・、複数の問題がありますね。


「なるほど。そうですね。いくつも問題ありますね。よろしければ整理しませんか!」

僕は事務所のホワイトボードに今、複数発生している問題点を書き出す。


①りさ教授の救出

②魔石の発掘停滞

③帝国の動向

④タイタン達レジスタンスの動向

⑤ブルーフェイスの動向

⑥アオイちゃんの正体がブルーフェイスにばれたこと

⑦青の国の状態(帝国に反乱したとして攻められていないか?)

⑧守護者の中にいる謎の人物(帝国の人が言う魅入られたもの??)


「そ、そ、そ、それ、それに土の国の動向も足してほしいです。」

メンドーサが言った。

なるほど、そうですね。


僕達はアオイちゃんを中心に考えがちでしたがメンドーサさんからするとタイタンの反乱後の土の国の動向は気になりますね!


では、⑨土の国の動向を追加ですね!


「よいか?」

どちらかと言えば寡黙な赤石クンが発言を求めました。

僕は頷きます。


「⑦を優先するべきではないか?」


なるほど、青の国に問題がなくなれば⑥も問題なくなりますし、③④⑤も対地上に専念できます。ついでに⑨の対応にもつながりそうです。


でも、ちょ、ちょっと待ってください。

りさ教授の救出を第一優先で考えている赤石クンが①を優先しないなんて!

どうしちゃったのでしょう?


「どうしたの? りさ教授を優先させなくていいの?」

アオイちゃんも同じ思いをしたようです。


アオイちゃんとしては赤石クンの提案は非常にありがたい提案のはずです。

にもかかわらず赤石クンを心配したのは彼がここにいるのはリサ教授のためということをわかっているからでしょうか?


「まさか、もうあきらめたんじゃないでしょうね? まだリサ教授と連絡取れなくなって1週間たってないんだよ。」


アオイちゃんの言う通りです。

最近濃密な日が多いので何日も経ったような錯覚を受けますが、遭難後も洞窟内研究所は無事でちょっと前まで黒滝教授も赤石クンもりさ教授とSNSでやりとりできていたのです。


諦めるには早すぎます。


「違う。」

赤石クンはいつも通りの声で、僕達の想像を否定しました。


「諦めてはいない。諦めるものか!」

「なら、なぜ? アタシへの同情?」

「違う」

「ならっ!」


「おお! 偉大なる四天王に名を連ねし者よ。らしくもない。落ち着かれるがよかろう。勇敢なる戦士であるレッドには考えがあるのであろう。そうであろう?」


ライオンマンさんが間に入ります。

この方、ちょっと付き合ってみて分かったのですが、裸を好む以外は意外と漢前なのです。


「うむ。」

赤石クンはライオンマンの言葉に応じ、スマホの写真を見せました。

そこには洞窟内で対峙した、多数の守護者とそれに囲まれている白い仮面の男を写していました。


「魅入られたものの一人じゃない?この男が何?」

アオイちゃんが首をひねっています。


「山吹。」

「はい!」

急に声をかけられて慌てて返事をする。

何でしょう? 何をいいたいのでしょうか?


「うぬは我らと違い研究所員である。この男に見覚えはないか?」


見覚えと言われましても・・・仮面被ってますし、顔では判別難しそうです。

しいて判別するなら仮面からからわずかに見えている、きれいに整えられたチンストラップの顎鬚と螺旋デザインのシルバーのイヤリング・・・・あ! このイアリング! もしかしてです!


僕は慌ててスマホの写真を検索します。

「ありました!」


僕のスマホをここにいる全員が見ます。


僕のスマホに映し出されているのは黒滝ゼミの研究者の集合写真。そこにりさ教授もいます。その横にオシャレ顎鬚で螺旋デザインのイヤリングをしたイケメンがいます。


「うむ。この研究所員はリサ姉と一緒に洞窟内の研究施設に配属になっていたのではないか?」


「ええっと。僕はりさ教授のチームとは別行動でしたので詳しく、配属までは分りませんが、もしかしたら可能性ありますね。」


「配属先はわかるわよ。」

黒滝教授に代わって、レンジャーワンを管轄することになった伊藤さんがファイルをもってきた。


「これによると赤石クンの推理はOK。当たっている可能性が高いわ。彼はりさ教授のグループで魔石洞窟内の研究所に配属されているわ。横山というらしいわね。」


「うむ。我もリサ姉に会いに行っているときにその横山何某を見たことがある。それでもしやと考えてはいた。」


「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。どういうことなんです? りさ教授の研究仲間が洞窟内で守護者を引き連れているということなんですか?」


「守護者云々はわからぬ。ただ、横山何某は洞窟内で生きていた。そして守護者に守られて洞窟内で生きる術をもっていた。ならばりさ姉も同様ではないか?」


「ええっ。つまりりさ教授も横山さんと同じ状態で生きてるということですか?」


「うむ。3人いたであろう。」


「ああ、あの時ね。大量の守護者がいたときね。その中にいたのね。」

アオイちゃんが思い出しながら話に入る。


アオイちゃんが言っている「あの時」というのはダルさんが『魅入られたもの』に変質したときのことですね。


「ということはりさ教授も『魅入られたものに』なって生きている? ということですか?」


「うむ。我はそう考えている。」


「で、で、でも、『魅入られたもの』として生きているということは・・・。」

メンドーサはそこで言葉をとめました。

おそらく・・・おそらくですが、ダルが『魅入られたもの』になって大きく性格も思考も変質したのを気にしているのだろう。

仮にりさ教授が『魅入られたもの』となって生きているのであれば変質しているのではないかと。


「ふむ。それについては実は前向きに考えている。」


「ま、ま、ま、前向きですか?」


「つまり洞窟内で生き延びる能力を手に入れたのではないか?」


「OK。赤石クンの言いたいことはわかったわ。洞窟での遭難後もりさ教授たちは対モンスター兵器を搭載した研究所があったために生き延びることができていた。今回も研究所と守護者とかいうモンスターの違いはあれど、モンスターや帝国、タイタン達から身を守り、生き延びる術があると考えたわけね。だから優先順位をつけるなら、アオイちゃんの国を先にした方がよいという事ね?」


伊藤さんが上手に整理してくれました。

赤石クンも我が意を得たりという顔をしています。


「OK。その赤石クンの考え方をすすめるにあたっての一つだけ確認が必要ね。ねえ、アオイさん。その青の国というのはどこにあるの? その移動距離が今後の行動の判断材料になるわ。」


僕達は一斉にアオイちゃんを見ます。


アオイちゃんは少しの間考えた後、口を開きました。

「アタシたち地底国家群は良くも悪くも帝国を中心としてた。だから帝国からの距離でしか答えることができない。そして帝国からは・・・・・割と近い。」


どうやら次の行動が決まったようです。


【次回予告】

青の国の解放を目指すレンジャーワン

そのためにクリアする必要のある課題があった。

その課題とは?

その課題をクリアすべく無茶な実験を敢行したが、その結果は?


次週、episode13 大実験

毎週 日曜日 9時30分 更新

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