表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/17

episode11 白い部屋の決裂と乱戦

---from Prime Minister Ymir side---


今、白い空間にきております。

いやあ、久しぶりですな。

この場所は。


「諸兄。お久しぶり。ようやく会えました。」

帝王様が目の前にいるお三方にあいさつをします。


そうこの場所には私と帝王様の他に3柱の御方がいます。


右側のお方は黄金色に輝いております。相変わらず主張が強いですな。

左側のお方は筋肉隆々赤い髪とマントは健在です。相変わらずマッチョですな。

中央のお方は青いフードを纏い中空に座りながら浮いております。相変わらず陰気ですな。


「やあ。本当にひさしぶりだね。まさか再び会えるとは思ってみなかったよ。」

金色のお方がフランクに応答します。


「ええ、探しました。何度も 何度も探しましたから。」

帝王様は本当に努力して探しました。この会合は決して偶然ではなく帝王様の決してあきらめなかった努力の結果なのです。


「レンジャーワン。彼らに力を貸していたのは諸兄ですね。そのレンジャーワンの力の源。ドラウプニル。その元となった魔石の中に諸兄が封じられていたとは私も思いませんでした。ここまで諸兄を運び、会うきっかけをくれたレンジャーワンには感謝しております。」


帝王様とお三方は頷きあいます。


「レンジャーワンをそのように評価してくれてうれしいよ。彼らのおかげで封印の身ながらも、ある程度、自由が利くようになったからね。自らかけた封印とはいえちょっと強力すぎてね。身動きがとれず困っていたところだったんだ。」


帝王様は頷き、言葉をつなぎます。


「それはさぞかしご不便でしたでしょう。更にレンジャーワンに感謝しなければなりませんね。さあ、諸兄。このような不自由な狭い場所から早く出ましょう。そして再び我らの時代を創ろうではありませんか。」


「そうか。私達を封印から完全に開放するために駆けつけてきてくれたんだね。」

金色のお方が優しい、ちょっと憂いを帯びた声をかけます。


「当然です。偉大なる諸兄がこのような狭い場所に閉じ込められてよい道理はありませぬ。さあ、この場所から脱出しましょう。僕達、四人が揃えばできないことはありません。」


お三方は顔を見合わせてます。

そして・・・

「残念だが、その要望は叶えられないんだよ。私たちはまだ、この場所からでる気はないんだ。」

金色のお方が言い聞かせるように。優しい声色で話されました。が、何という事でしょう。

その回答は予想外でした。

誰が好き好んで永遠とも思える刻を自ら幽閉されるとは考えもしないところです。

彼らと出会い、彼らを救うためだけに動かれてきた帝王様に対して、その言葉はあまりにも酷です。


「なぜです。偉大なる諸兄がこのような場所にいつまでもいてはいけない。」


「その理由は一番の知恵者である、そなたが理解できぬわけは無かろう。我々のような力をもった超越者が変質するわけにはいかぬ。どのような影響があるか計り知れぬ。」


中央の陰気なお方が帝王様の問いに答えました。が、それは・・・理由としては最も正しいかもしれませぬ。だからこそ酷です。それでは・・・今までの、今までの努力が否定されてしまいます。


「何をおっしゃるのですか。他は知らず、僕たちのようなすべてを超越したものが変質するわけないじゃないですか。」


「謀るのは相手をみてせよ。誤魔化しは無用ぞ。」

中央の陰気なお方が厳しくとがめます。


「うーん。魅入られた者となった者は、変質する。行動原理が変る。願いに囚われる。

それは原理だよ。例え神でも原理は変えられない。」

金色の方が優しい声色で話しかけてくれますが、その内容は帝王様の提案の否定でした。

うーむ。これは・・・


「帝王様、ここは一旦退きましょう。」

「なぜだい。やっと、やっと僕の願いが叶うんだ。宰相ユミル、僕の邪魔しないでおくれ。・・・・諸兄は勘違いしてるんですよ。ほら僕を見てください。諸兄と同じく願いにとらわれましたが、普通に世に出ています。確かに変質の影響をまったく受けてないとはいいません。しかしながら、諸兄に会いたい。諸兄を開放したいというのは、僕の『願い』です。その点に関して何も影響は受けていない。僕の意思だ。僕は僕としてここに来ています。このように我々の力をもってすれば原理さえも抑え込むことが可能です。そして僕と諸兄の力をあわせれば、原理に打ち勝ち逆に利用することも可能だと僕は考えています。」


帝王様の必死の言葉にお三方は顔を見合わせてます。


「だからこそ、ここを出ましょう。そして力を合わせて原理に打ち勝ち、変質してしまった者たちを救いましょう。青き魔力の神 赤き力の神 金色の栄光の神 そして白き英知の僕。その力があわさればどのような事柄にも対抗できます。その力が僕達にはある!」


「・・・傲慢だな。」

あああっ、中央の方が帝王様の必死の言葉を切って捨てました。


「え?」


「やはり、君は『変質』してしまっているよ。やはり神々でも原理には抗えられないということだね。君の姿を見たからこそ、ますます、ここから出るわけにはいかないよ。私達もどのように変質するかわからないからね。それこそ、私たちが私たちでいられる保証はないでしょう?」


「確かに影響を受けていないとはいいません。しかしながら僕は僕として、僕の意思で諸兄を開放したいと願い、ここにいます。それは変わらない。」


「・・・なぜ開放したい?」


「え?」


「なぜ開放したいか? その願いの根本を聞いてる」


「諸兄らほどの存在がこのような不自由な場所にいなければいけないというのはおかしいじゃないですかっ!」


「・・・それだけか?」


「先程、変質してしまったものを救いましょうと言っていたね。それもかい?」


中央の陰気な青いフードのお方と金色に輝くお方が重ねて問うてきます。

それは、まるで詰問の様です。


帝王様。退きましょう。今、願ってもそれは・・・届きませぬ。


「僕は『変質』のリスクを負って世に出ました。そこで見たものは『変質』を受けたもの達です。彼らは僕たちのような権能を持たない。抵抗もできない。どう願おうとも『変質』の原理はさからえない。僕でさえ影響を受けています。僕自身の『変質』からの解放もそうですが、そういった者たちを解放する必要があると感じました。それには僕だけでは権能が足りない。しかし、諸兄とお力を合わせることができたなら出来るかもしれない。いやできる!」


「・・・傲慢だな・・・。」


「君らしくない。希望的観測で話をするなんて・・・・もしかして、その開放したい人の中に君の思い人でもいるのかい。」


金色のお方の揶揄するような、それでいて本質をつくような鋭い指摘

それは帝王様もたじろぎます。


「話をそらさないでいただきたい。僕がここにきたのは諸兄を救うためです。」


「うーん。今言ったことの真偽はおいておいて、動機が何であれ、それは君の自由だから好きにしたらいいよ。しかしながら、それで原理と向き合うリスクを我々が負う理由にはならないかな。何度も言うけどね。僕たちのような超常の力を持つ者が己が『願い』に囚われ、己が『願い』を優先させたら大変なことになるよ。それは避けなければならない大事なことだよ。」


「・・・・。」

「・・・・。」

「・・・・。」


白い空間に沈黙と緊張が走ります。

ふと気になるのは赤い髪のお方です。彼は先程から一言も発せず彫像のように佇んでおられます。彼のお方はこの場にどのような思いでいらっしゃるのでしょうか?


「はっはっはっ。」

突如、帝王様の乾いた笑い声が白い空間に響き渡ります。


「つまり、諸兄。臆病数に吹かれたという事ですね。」


「なっ。帝王様、お気をお静めください。その言はさすがに・・・。」

慌てて帝王様を止めにはいります。


「いいんだよ。宰相。そういうことですよね。諸兄。」

帝王様は優しく言いつつも乾いた眼をお三方にむけます。


「うーん。そうだね。臆病という表現はどうかと思うけど、我々の影響力を考えると慎重にはなるよね。」

金色の方もまた言葉は優しいですが、棘のある返し方をしてきました。


腹をくくるべきでしょうか?


いくら、帝王様とはいえ1対1なら知らず、3対1では荷が重いと思われます。

いざ、交渉決裂で戦闘となったら、せめて盾となり帝王様を逃がさないといけません。


「はっはっは。なるほど諸兄はここから出る気はないと。わかりました。わかりましたとも、ではお力だけ借りることにしたいと思います。諸兄はドラウプニルを形成する魔石に封じられております。諸兄のお力を魔石という形でお借りすることにしましょう。」


「それは・・・彼らレンジャーワンから私達の魔石を奪うという事かい?」

金色のお方の声が鋭くなってきました。


「そうです。そして、そのお力と僕の力をあわせて原理を超え、うち破り原理の影響を受けない世界を作りましょう。そのような状況下になりましたら諸兄らも安心して外に出られるかと思います。」


「・・・・・。」

「・・・・・。」

「・・・・・。」


沈黙がながれます。

この沈黙は肯定でしょうか? 否定でしょうか?


「では、行こう宰相。」

「え、ええ。」

何事もなかったことにほっとしながら帝王とともに踵を返します。

その我々の背中に声がかかります。


「それが『願いか』?」

その声は今まで沈黙していた赤髪のお方の声でした。

「『願い』? そうですね。諸兄の封印を解き放ち、再び我らの世に戻す。それこそが僕の『願い』です。」


「その『願い』は純粋なものなのだな?」


「ええ。どうしたそのようなことをお聞きするのです?」


「そなたがその『願い』のために我々の魔石を彼らから奪うというのであれば・・・」


「あれば?」


「『願い』がより純粋な方に原理の振り子は傾くであろう。」


まったく意味がわからない問答ですが、我が帝王様は理解されたようです。


「肝に銘じておきますよ。・・・・僕の『願い』は決して誰にも劣るものではない。」


---from yamabuki side---


なんなんですか。

昨日まで友好的でした帝国が襲ってきました。


帝国兵が襲ってきたのです。


この前のイエロードラゴン襲撃のようなアクシデントじゃありません。


明確な敵意をもって襲ってきてます。


宰相ユミルさんが言った口約束。「地上にお戻りになるまでは事をおこすことはありませぬ」という話しはどこに行ったのでしょう?

宰相ユミルさんをねちねち小一時間問い詰めたいです。


僕達レンジャーワンは図書館に一緒にいたのですが力をあわせて第一波を撃退しました。

アオイちゃんの「帝国にいる間は常に一緒にいたほうがよい。」という提案を受けての行動でしたが、それが功を奏したようです。

ついでに一緒にいたライオンマンさんやメンドーサさんも一緒に撃退してくれました。

彼らもまた、この急な襲撃や帝国の方向転換を知らなかったようです。


「おお。これはなんだ。偉大なる帝国ともあろうものが、このようなだまし討ちのような卑怯な手を使うとは!」

なんかライオンマンさんが憤っています。


「さ、さ、宰相様が嘘を言うわけありませんし。い、い、い一部の過激な方たちが暴走しちゃったのでしょうか?」

メンドーサさんが焦っています。


「この状況下で想像で動くのは危険。今把握している事実は帝国兵が襲ってきた。それだけ。」

というアオイちゃんの言葉に

「うむ。同意する。不要な詮索は判断を鈍らせる。」

赤石クンが同意しました。


戦術家と格闘家の違いはあれど戦いに身を置く人たちはこのような判断になるのですね。


「あら、さすがね。であればやるべきことはわかる?」

「無論。我々は急ぎ地上に戻る。おい、ライオンマンよ。」


「おお! どうした友よ。」


「加勢はありがたいが、もうよせ。お主の帝国の立場が危うくなる。今なら勘違いでまだどうにでもなる。」


「む。オレに友の窮地を見過ごせというのか。 オレが言うのもなんだが、数の力は甘くないぞ。」


「うむ。見過ごせと言っている。 お主だけではないメンドーサ譲のこともある。彼女は主のヘドリア殿不在の今、一人きりだ。義侠心を持つお主しか頼れるものがいない。」


「おお! 珍しく長い言葉を発したと思えば我らの心配か。そこまでやわだと思うか?」


「お主が言ったのだ。数の力は甘くないと。我らも後ろ髪をひかれるような状態であれば逃げるに逃げれぬ。」


普段、「ぬう。」とか、あるいは二語文しか言わない赤石クンが珍しく話をしています。


そこにツッコミたいところではありますが、今は逃げるのが先決。赤石クンの言うとおりなのです。


僕は赤石クンに同調するように新たに取得したスキル「錬金」を使いバイクを3台つくります。

いつも思うのですがなぜ、僕の錬金はバイクを生み出すのでしょう?

ダルさんのように剣のほうが格好いいですし、構造もシンプルだと思うのですが。


いずれにせよバイク3台です。

僕と赤石クンとアオイちゃんの分です。

ライオンマンさんとメンドーサさんの分はありません。


僕の考えを理解してくれたか赤石クンとアオイちゃんはすぐにバイクに乗り込みます。


「ライオンマン、メンドーサ譲。今まで助かった礼を言う。」

赤石クンがバイクを走らせます。

「今なら言いつくろう事は可能だよ。無益に祖国を離れる事態に陥る必要はないよ。」

アオイちゃんもそれに続きます。

「はい。その通りです。僕たちは地上に戻ります! ライオンマンさん達の居場所はそこではないはずです。今までありがとうございました!」

僕もその場を離れるべくバイクを始動させます。


「い、い、い居場所なんてないよ!」

背後から声が投げかけられました。


「祖国は帝国に征服されちゃったし、ヘドリア様は死んじゃったし、もう居場所なんてないよ。」

メンドーサちゃんが目に涙をためて訴えてました。


どうしましょう。


地上はライオンマンさんや彼女にとって異国です。

助けていただいてるのはすごくありがたいですが、それに甘えて僕たちの都合で故郷である帝国に敵対し、異国に追いやられるのは違う。ということでライオンマンさんやメンドーサちゃんに残ってもらおうと考えてましたが・・・違っていたようです。


彼女にとって帝国も異国。彼女はそう訴えているのです。


「だ、そうだぞ。正義の味方殿?」


ライオンマンさんがにやりと笑いながら、僕に選択肢を迫ってきました。


つまりー。


メンドーサさんを地上に連れていくかどうかという選択肢です。


「ちなみに俺も帝国出身ではない。遠慮は無用だ。」


つまりライオンマンさんにとっても帝国は古郷ではないので連れていけということらしいです。


・・・あまり考えている時間はなさそうです。


「錬金!」


僕はバイクを追加で2台用意しました。



---from aoi side---


私と赤石は山吹が錬金のスキルで作ったバイクという一人乗りの乗り物で移動している。

このバイクを作り出した本人である山吹はついてきていない。

「なにをモタモタしてるんだ。あいつは。」

おそらく助太刀してくれたライオンマンや置いていくことになるメンドーサに遠慮してるんだろう。

無意味なことをする。

戦いの場になったら一瞬、一瞬の判断が重要。

迷っていたら好機を逃す。後藤、伊藤女史、白井とかいった地上の要人も探さないといけないんだぞ。

このまま時間をロスしたら脱出できなくなる。


・・・・・。


「もう、ええいもう! あんのバカっ。」

バカでも仲間だ。

ここで何かあったら目覚めが悪い。


アタシはバイクのハンドルを反転させる。


「ぬう。どうした。」

赤石が何事かと問いただしてきた。


「いや、山吹のバカが来ないから・・・置いていくわけにもいかないでしょ?」


「むう・・・アオイは優しいな。」


「え?」


武骨な赤石から予想外のセリフが出来てきことでどぎまぎしてしまったじゃないか。

『あれ、これはもしかして恋の予感かしら。』

カグヤ黙れ。あんたが出てくると話がややこしくなる。


「いや。何。我はそのことに気づかなかった。逃げるに必死で。アオイはそのことに気づき山吹のことを気にして自らの危険を顧みず戻ろうとする。これは優しさであろう。」


どうした赤石。いつも二語文や「むう。」とか言わない奴が2行もセリフを言ってるぞ。

そういやコイツ。あの宰相との面談から行動がおかしいぞ。


「山吹も遅れているのは推測するにライオンマンやメンドーサ譲を気遣ってのことであろう。これも優しさである。」


「急にどした赤石。今は優しさを語る場面ではないよ。」


「いや、我には無いものだからな。羨ましく思った。」

「何言ってんの? アンタのリサ教授を思う気持ちも優しさでしょ?」


「優しさか・・・どうやら違ったらしい。これは・・・『願い』のようだ。」


「? それがどう違う?」


「それは・・・すまぬ。我も戦場でどうかしていた。こんなことで時間を費やすとは・・・追手がきたようである。」


「え?」


振り向くと、先日会った宰相ユミルがいる。そしてその後ろにいる子供は・・・・帝王!


まさか帝王自ら来るとは!


四天王時代でもあの似非笑顔は威圧感あったが、こうやって敵対してみると恐ろしいプレッシャーだな。


「随分ではないか? 我が記憶では『地上に戻るまで事を興す気はない』と聞いていたが?なんと理不尽な事か。」

赤石が警戒しながら問います。


『私もそれが気になりますの。

「カグヤ?」

『ああ。私の声はアンタにしか届かないから安心して、それよりも帝国は平気で裏切るという評価を征服した国々や国民から受けるリスクを負ってまで襲撃してきた。その理由が私も知りたいですわ。』

「・・・帝国を傾けてでも私達と戦いたい理由・・・。」

『そう、帝国は平気で裏切るという評判がたったら、裏切られる前にという離反する征服したはずの国が出てくるかも知れない。それでもレンジャーワンと戦いたい理由は何かしら?』

「普通に考えれば地上に出るために私達が邪魔ってことでしょうけど。ないかー。」

『既に征服した国々が離反してでも地上に出たいということですか? 私はそれが腑に落ちないのですよ。帝王が何を考えているのか・・・。』


カグヤの言う通りなんだ。宰相自身も言ってたじゃないか。大国になったら信義も大事だと。

今回の襲撃はその主張と正反対。

しかも帝王も宰相ユミルまできている。本気の本気だ。


「それについては申し訳ないと思います。」

宰相が赤石の問いに素直に頭を下げた。


「むう。ならばなぜ?」


「そうですな・・・。レンジャーワンの方々も理由を知らずに死ぬのは無念でしょう。全部は言えませぬが・・・優先順位ですかな。」


「優先順位?」


「はい。私と帝王様はある目的をもって活動しております。その目的は全ての優先順位に優先します。その優先順位に従ったまでです。」


「おしゃべりはここまでだよ宰相。いくら言っても彼らには言い訳にしか聞こえないし僕たちの恥をさらすだけだよ。約束を守らなかったってね。さあ、レンジャーワンの諸君。初めまして僕はこの国の帝王だ。約束を破った代わりではないけど僕自ら相手するよ。四天王を破ったその実力。僕に見せてよ。」


帝王は背中から白い翼を3対広げて上空へとびあがりました。

「heilagr vængr domr」


帝王が魔法を唱えると無数の羽が弾幕のように私達に降り注ぎます。

『! 元お姫様。あれは危険ですわ。』

「わかってる! あと、元は余計!」


私は即座に「胡蝶の夢」で迎撃。帝王の魔法を打ち消します。


「なるほど。魔法は通じないか。では格闘戦といこう。」

帝王はそのままロケット弾のように突っ込んできました。


「ぬん!」

赤石が受け止めて巻き込むように地面に叩きつける。

そのままマウントを取り。殴る。殴る。殴る。 


天の御使いのような姿の帝王をマウントで殴るという絵づらはどうかと思うが優位をとれている。


「ぬおおおおおッ。」

『Mjollnir hamme』

機械音と同時に赤石の右腕から放電。その放電と同時にマウントのまま拳を帝王に叩きつけた。


地面がひび割れ殴った赤石も吹き飛ぶ威力。

これはさすがの帝王でももたないのでは。


『お姫様。まだ蝶は出したままですわよ。』

「! 了解」


カグヤが警告を発している。

あの一撃でも帝王は倒されてないということなのだろうか?


「ぬう。なんと理不尽な事か!」

赤石が中空を見てぼやいている。

組み伏せていたはずの帝王もいなかった。

赤石が注視している空中を見ると魔法の蝶を展開している空間から離れたところの中空に、帝王が先程はなった無数の白い羽が終結。光を放ったかと思うと帝王が復活していた。


「ふー。危ない危ない。ここまで力を引き出しているとは思わなかったよ。」

帝王が先程のダメージを感じさせない佇まいで浮いていた。


「ROUND1は君たちの勝ちだ。さあ、ROUND2だ。」

帝王が再びロケット弾のように突っ込んできました。


「! 狙いは私かよ!」

『そうでしょうね。厄介な胡蝶の舞で帝王は全力出せません。そして同時にアンタも主力の魔法が使えない。』

「む。なめんなー! おいでゲーくん。フレキちゃん!」

アタシは機械仕掛けの狼を2体呼び出す。

ゲーくんが呼び出された直後、吠える。音波・振動攻撃で、帝王の突貫を乱す。

同時にフレキちゃんが無数の鎖を召喚する。

その鎖が帝王を拘束する。


「とどめ!!」


アタシが帝王にとどめの一撃を入れようとしたときに異変が起こった。


轟音とともに帝国の外壁を形成している洞窟の外壁が破壊され、その破壊された巨大な穴から巨大な炎の閃光が3筋。帝王を貫いた。


これはドラゴンのブレス! しかも3つ!?


そのブレスが放たれた巨大な穴を見るとレッドドラゴンが3匹出てきた。

よく見るとそのレッドドラゴンに騎乗している人物がいる。


「あれは・・・タイタンの部下。プロミネンス・ライト・ファイア・・・。」


まさか、タイタンが反乱。


「へえ。いずれ誰かが反乱を起こすかと思ったけど、想定よりも早いな。なんでだろうね?」


見るとドラゴンブレスに焼き尽くされたはずの帝王が宰相ユミルの側に立っていた。

「いつの間に?」

なんか帝王ズルくない?

さっきから2回ぐらい倒されてもおかしくない攻撃受けてるんだけど。

何でもないかのように復活してくるんだけど。

どういうこと?


「無粋ですな。帝王様、ここは私にお任せを・・・Fimbul!Jǫtunn!Fimbul!draca!Fimbul!Óscópnir!sœkja!  fé!」

宰相ユミルが言い放った言葉は人化魔法。


普段、人サイズになっている巨大モンスターを本来の姿に戻す魔法


この人化魔法に応ずるかのように城から巨大な嘶きが聞こえる。

同時にその嘶きのあったほうから巨大な翼の生えた三つ首の白いドラゴンが向かってきた。


「お三方。不詳、この宰相ユミルがお相手しましょう。」

三つ首ドラゴンが3筋の白いブレスを放射。

3体のレッドドラゴンに応戦する。

レッドドラゴンが怯んだすきに宰相ユミルは三つ首ドラゴンに騎乗した。

「お三方。ドラゴンとともに戦うときはこのようにする方がよいらしいですぞ。」

というと同時に宰相ユミルと三つ首ドラゴンが同時に呪文を唱える。

「Níðhǫggr Níðhǫggr Níðhǫggr vinr boð n. Þrīfask Ísland Niflheimr」


なんだあれ? 

魔法兵団を率いるときに同時詠唱はやったことあるけど、それは人同士だからできた。

それを竜と一緒に同時詠唱なんてできるの?


呪文の終了とともに宰相ユミルとプロネミンス、ライト、ファイアのいる一帯の戦場の雰囲気が変わる。

そこだけ別な異空間にでもなったかのように。

その異空間は極寒の吹雪と地面に無数の巨大な黒蛇が蠢いているある意味、氷の地獄。


「うわああああっ。」

黒蛇が一斉に飛び跳ねるようにレッドドラゴンに襲い掛かる。

情けない悲鳴をあげたのはファイアか?


「・・・舐めないでいただきたい。」

「ええ、こちらもドラゴンです。」

プロネミンスとライトの乗るレッドドラゴンが炎のブレスで迎撃。多数の黒蛇を一撃で薙ぎ払う。それを宰相ユミルの乗る三つ首ドラゴンが攻撃をする。


「うーん。戦場が混沌としてきたなぁ。」

と戦場には似つかわしくない声をあげる帝王に爆炎が襲い掛かる。

これは・・・ドラゴンのブレスではなく爆炎魔法によるものだ。


「おっとぉ。そういえば彼らの大将がいたね・・・タイタン?」

帝王は爆炎魔法を軽く腕で薙ぎ払う。


先程から観察しているが帝王はいわゆる「魔法使い」タイプらしい。


魔法戦には強い。


「ヒャッハーっ! 帝王さんよお。一番首をもらいに来たぜぇ。」

プロネミンス、ライト、ファイアの上官である四天王タイタンが現れた。先程の爆炎魔法はタイタンによるものらしい。


「まさか四天王の君が真っ先に反乱するとはね。それにしても早すぎないかい?」

「それだけテメェが滅ぼした国々に恨まれてるってことらしいぜ。オレも驚いた。おひざ元の帝都に隙あらば帝都転覆を狙っているレジスタンスがうようよ居やがる。」

「なるほど、その手引きか。それにしても早い。」

「フン、あんたのミスだよ。帝国が“約束は守る”って信じてたから、帝都に潜伏していたレジスタンスも大人しくしてたんだ。それを今回、約束を破ってレンジャーワンを襲った。

レジスタンスにしてみりゃ、国も、国に残してる家族も、人質みてぇなもんだ。だから同じように、約束を破って人質に手ぇ出される前に動いたってわけだ。」

「なるほど。道理だね。」


帝王とタイタンは互いに攻撃魔法を繰り出しながら会話している。

どちらもまだ本気ではないということらしい。


「おい。」

赤石がアタシに近づく。なんだよオイ。顔近すぎるぞ。

「好機だ。帝王も宰相も動けない。」

「!」

私はバイクにまたがった。


背後では帝王とタイタンの魔法と口の応酬が続いている。

「それにしても、僕に勝てると思ったのかい?」

「ああっ? それも逆なんじゃねえかぁ?」

「逆? どういうことだい?」

「帝国の最大戦力は誰ってことだよ!」

「・・・四天王・・・」

「そういうことだ。帝国の最強は帝王。あんたじゃねぇ。この俺だ!」

「なるほど道理だね。 であるならまだ僕にも勝ち目はありそうだ。」

「ああん? なんだと?」

「そうだよね? デビルフィッシュ。」


「帝王! 吾輩にお任せあれ。 喰らえデモンスピア!」

帝王とタイタンの戦いに四天王デビルフィッシュが割り込む。

デビルフィッシュの蛸頭に付属する8本の蛸足が槍と化してタイタンを貫く。

「ぬおっつ! テメエ」

「神を目指す吾輩を差し置いて帝国最強など片腹いたいわタイタンよ。」

「うっせぇ。格闘バカのテメェなんざ。不得意な遠距離で焼き尽くしてやるよ。」

「ほう。吾輩をたこ焼きにできるならしてみるがよい。」

「テメエでたこ焼き言うな。」


タイタンのツッコミに著しく同感。

それはさておきマズイ。


宰相ユミルはレッドドラゴン。タイタンはデビルフィッシュ。

それぞれ相対している。

ということは帝王がフリーになる。

逃げ切れるか?


「もちろん。逃すわけないじゃない。」

「!」

帝王がいつの間にかバイクの進路にいる。

この帝王。

何か変だ。

レッドドラゴンのような圧倒的な強さというわけではない。

戦ってみてわかったが魔法使いタイプなので胡蝶の舞で魔法を使えなくしてしまえば、勝てない相手ではなさそうだ。


でも、倒しても。倒しきれない。

いつの間にか別のところにいる。

まるで虚像を相手にしているような感じだ。


赤石も同じことを感じているのか・・・明らかに迷いが感じられる。

ちっ。まずいなこの精神状態。

戦う前から戦いに集中できていない。この感じはまずい。

勝てるものも勝てなくなる。


既に意識が「逃げること」にスイッチしているのもまずい。

どうする。


「スキーズ! 大砲の出番です!」

「おお! くらえぃ! サイクロンクロー!」

上空から砲撃と竜巻が帝王に降り注ぐ。


上を見ると空飛ぶ船スキーズが飛んでいた。

そこに乗っているのは山吹・ライオンマン・メンドーサに伊藤。姿は見えないが後藤、白井も乗船しているのだろうか?


なるほど時間がかかっていたのは伊藤達を救出してたからか・・・同時にアタシは複雑な気持ちになる。


山吹はライオンマンやメンドーサの説得に失敗したらしい。

戻るところがあるなら戻ったほうがいいのに・・・


しかし、これは好機か?

アタシに赤石・山吹の3人が揃えばあるいは・・・


「おや。そういえばもう一人いたはずだと思っていましたが、この奇襲のためだったのですね。・・・しかしながら、この程度の魔法では・・・gandir!gandir!gandir!」

帝王がマジックミサイルを連発。スキーズの砲撃とライオンマンの竜巻を吹き飛ばす。


スキーズの砲撃も実は魔法の砲撃。ライオンマンの竜巻も風魔法


やはりこの帝王。魔法戦は強い。魔法戦ならあの倒しても別なところに現われる不思議な能力をつかうまでもないらしい。


「そうですね・・・。あちらを先に片づけたほうが良さそうですね。」

帝王が六枚の羽根を広げ飛び立とうとしている。


「ぬう。行かせはせぬ。」

赤石が帝王に迫る。


「胡蝶の舞!」

アタシが魔法を打ち消す蝶を再び展開する。


「魔法がダメなら。こちらです【錬金】!」

山吹が新スキル錬金を発動する。


なるほど、元々のこのスキルの所有者であるダルがやったように錬金自体は魔法でも錬金でいったん産み出されたものは魔法ではない。ダルのように剣を射出するのはいい考えね。

そう思ってた時がアタシにもありました。


山吹が射出したきたのはバイクです。

そのバイクが大量に振ってきました。

いや、どんな絵面よ。これ?


帝王はアタシの胡蝶の舞で魔法が封じられています。

まともに大量のバイクの下敷きに埋もれてしまいました。


いや、本当にどんな絵面よ。


「レッド。ブルー。今の内に脱出します! 最高の一撃を放った後、離脱します!」


赤石が今の言葉の意味を理解したのかすぐさま赤い巨人シアルフを呼ぶ。

アタシも機械仕掛けの鳥であるフギちゃん ムニちゃん 機械仕掛けのゲーくん フレキ くん。最後に機械仕掛けの騎馬スレイプを呼ぶ。

 

『収束』

スキーズが機械音を発するとスキーズが発光。

アタシや赤石が呼び出したシアルフやフギちゃんたちが発光する。


発光した6体が我の体に文字通り収束。

シアルフを超える巨人が出現する。


『ヴァン・アース権能収束・発射準備

セイズ解放。 ガント充填、三神解除。標的帝王。

ガンド充填300% 対反動制御オールクリア。ヴァン・アース権能発射準備クリア』


スキーズの巨人を制御するアナウンスが流れる。


『Gungnir』

機械音と同時に巨人から繰り出される力の奔流。


帝王を中心とした一帯が力の奔流に飲み込まれた。



---from Prime Minister Ymir side---


「無茶はしないでください。大事なお体です。」

嘆息をつく。

今回のは本当に無茶だった。

帝都は脱出を試みたレンジャーワンと反乱をおこしたタイタンに見事焼き尽くされた。

「無茶はするよ。やっと。やっとなんだ。僕の望みが叶う。あと少しで。」

帝王はにっこり笑って言った。


再び嘆息をつく。これでは何を諫めても変わらないだろう。


「・・・探し物の場所は見つかりましたな。」


「そうさ。あとは得るだけだ。面倒な洞窟を探し回ることも、その延長で敵国を攻めるのも。さらに敵国を攻めるために煩わしい帝国を維持するのも、もうしなくてよいという事だよ。」


「目的を達成させるという意味ではそれでもよろしいですが、いささか勿体ないとはお考えにはなりませぬか?」


「はははは。そんないつでも得ることができるものに意味はないよ。それに・・・この地底にいる限り、どんな立場であろうが本質的に一緒だよね?」


「確かにそうですな。」


「と、いうのが僕らの本音なんだけどね。デビルフィッシュ・・・君はどうする? 正直、先程は助かった。君は命の恩人だからね。」

帝王様は先程から腕組みしながら側に控えるデビルフィッシュに声をかけられました。

確かにタイタンが帝王様に挑んだ時、デビルフィッシュの助太刀は助かりました。


「ふぉふぉふぉ。命の恩人などとお戯れを。吾輩がいてもいなくても変わらぬでしょうに。それにしても意地の悪い聞き方をなされる。どうする?と聞かれるとは・・・吾輩がタイタンのようにレジスタンスに寝返るとでも?」


「そうしないのかい? 帝国は地底国家群を併合した。つまり故郷の国を消滅させた。裏切られるだけのことをしている覚悟はあるつもりだけどね。」


「ふぉふぉふぉ。この地底の真実を知っていれば帝王の行動は理解できます。それに吾輩はタイタン、ヘドリア、アオイといった他の四天王と違い、別に亡国の要職についていたわけではありませんからな。国を復活させたいというノスタルジーもない。強いて言うなら帝王あなたと同じように吾輩も一つの目的にむかって行動しておりましてな。それ以外は正直、興味がない。」


「人を超越し、やがて神になる。でしたかな?」

デビルフィッシュの口癖を唱えてみます。彼は常にこれを口にしていたので、これが「行動原理なのでしょう。


「ふぉふぉふぉ。その通り。正義の心と悪魔の技。これをあわせ完璧な能力に近づきやがて神に至る。そして最強となる。これが吾輩が進む道。今回の件は吾輩の目的とあまり関係ありませんな。」


「神なんてつまらないと僕は思うけどね。まあいいさ。僕についてきておくれデビルフィッシュ。」


「もちろんですとも。そうすればタイタンやレンジャーワン。そしてヘドリアを破った『魅入られたもの』とも戦うことができましょう。すべて吾輩が神に至るための贄となっていただこう。・・・それはそれとして宰相ユミル殿」


「どうされましたかな。デビルフィッシュ殿」


「こういう面白いものを我が部下が捕まえたのだがいかがいたす?・・・ミスクロウ、連れてこい。」


デビルフィッシュは彼につけている副官の名前を呼んだ。

そういえば彼に付けている二人の副官の内、ライオンマンはなぜかレンジャーワンの空飛ぶ船に乗って帝王様に対し風魔法を放っていたが、あれの行動はどういう目的だったのでしょう?理解できませぬ。


やがて黒髪長髪。高下駄に錫杖。長い黒い羽毛のローブを纏い。背には漆黒の烏羽のような翼をもつ女性が現れた。

デビルフィッシュの副官 ミスクロウですね。


見ると二人の男性をロープで縛り、引きずってきてます。


「彼らは・・・。」

確か、地上の使者で後藤と白井とか名乗っていた者ですな。

うーむ。面白いと言えば面白いですが、荷厄介と言えば厄介ですな。


「さあ、どうするね?」

デビルフィッシュは我々を試すかのようにニヤリとわらいました。


【次回予告】

囚われた後藤と白井の運命は?

レンジャーワンは脱出できたのか?


次週、episode12 緑の大空洞と思惑 

毎週 日曜日 9時30分 更新 

ブックマークよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ