episode10 交渉
10話まで送り届けることができました。
残り40話 全50話にむけてがんばります。
---from akaishi side---
「これは!」
我はしばし呆然とする。
絢爛
この言葉がふさわしいであろう。
何がと問われるならば、我がいるこの地底帝国のことである。
地底であるにも関わらず黄金色に輝く都市
白を基調とした西洋の神殿を彷彿させるような建物群
碁盤目状に整備された区画
それでいて小川や公園であろうと思われる自然との融合
我に語彙も審美眼もないが、見事であるということはわかる。
我は地底帝国にきている。
山吹もアオイも一緒である。
目的はりさ姉の手がかりと思われる「魅入られたもの」の情報を得る事
よければ協力を得る事
もっとも、これは我の目的である。
我らの司令官であった黒滝教授は入院した。
一命はとりとめたものの復帰は絶望的である。
代わりに何やら別の人間が3名同行している。
後藤、伊藤、白井というらしい。その3名の護衛に20名が随行している。
なにやら小難しい役職を名乗ったが、我には冗長過ぎて聞き取れなかった。
ただ、政府関係者ということだけはわかった。
リサ姉達を救うためにレスキューの有志を募った黒滝教授の本分は管理者でも司令官でもなく研究者である。
あくまでも臨時であり、有志のとりまとめ役。もっと言えば我や山吹、アオイのマネージャー、調整役といったかんじであったが、彼らは違うようだ、立場は分らぬが、立ち振る舞いは訓練を受けた者の振る舞いであった。
その後藤、伊藤、白井は別な目的があるであろう。
だが我には関係ない事である。
我の目的はただ一つ 姉を助ける。
これだけである。
我らはライオンマンの案内にて帝国に訪れた。
即ち
ライオンマンの上司にあうことになる。
ライオンマンの上司は、我を一度、倒した。かのタコ男である。
「ふぉふぉふぉ、久しぶりだな地上の勇者よ」
「うむ。」
タコ男・・・帝国最後の四天王デビルフィッシュが現れた。
かつての敗北の忸怩たる思いが蘇ってくる。
「ふぉふぉふぉ、本来なら敵同士。雌雄を決したいところではあるが・・・」
「おい。偉大なるデビルフィッシュ様であろうと俺が招待した客人と争うというのであれば怒るぞ。」
デビルフィッシュにライオンマンがくってかかる。
ふうむ。ライオンマンとやら全裸はともかく単純なYESマンではないようである。
「ライオンマンよ。そう急くな。お主の希望はわかる。ヘドリア殿も弔わねばなるまい。それに宰相がいうには帝国としても『魅入られたもの』の動向は気になる。情報がほしいとおっしゃられていた。であれば一時休戦となる。残念ながらではあるが・・・」
そういいつつデビルフィッシュは我を見てニヤリと笑う。
ふむ。一格闘家としてデビルフィッシュと再戦したいという希望は正直ある。
デビルフィッシュもどうやら同じ気持ちらしい。
しかし・・・しかしだ。
我にとってリサ姉の救出が最優先である。格闘家の矜持は姉に比べれば二の次である。
「くるがよい。宰相がお待ちだ。」
デビルフィッシュはそういって踵を返した。
---from yamabuki side---
「お初にお目にかかります。この帝国の宰相をやっております。ユミルと申します。以後、お見知りおきを。」
会見の場で冒頭そのように挨拶した宰相ユミルさんは白かった。
いや、本当にそうなんです。
髪は白髪 お肌は雪のように真っ白 ついでに目も白眼です。まとっている服も白で統一されてます。
せめて服ぐらいは色を付けたアクセントがあってもいいとはおもうんのですが・・・
それにしても地底帝国は多種多彩です
僕達のような人型が基本ですがデビルフィッシュさんやライオンマンさんのように顔がモンスターになっていたり、宰相ユミルさんのように全身白かったり・・・
これも帝国が様々な国々を侵略してまとめた結果でしょうか?
「初めに言っておかねばならぬ。ことがあります。」
宰相ユミルさんが前置きする。
「それはなんでしょう?」
僕達についてきた後藤さんが代表して答えます。
黒滝教授の代わりに赴任してきた後藤さん、伊藤女史、白井さんがいわばレンジャーワンのまとめ役になります。
その彼が代表して質問することになります。
「今回は『魅入られたもの』に関することなので我が帝国も協力します。我が帝国もその情報は欲しいのです。その件に関して情報交換は歓迎しております。ただし・・・。」
「ただし?」
「それ以外は我々は敵同士ということです。つまり我が帝国は地上侵攻をあきらめたわけではない。」
その言葉に対して僕達は身構えます。
そのパターンも想定はしてました。
僕達を捕えて地上侵攻するパターンです。
だからこそ僕たちはすでに変身状態でこの場に挑んでいます。
いざとなったら戦って切り抜けるためにです。
「ああ・・・。そのように構えなくてもよろしい。今回は協力するとはお伝えしました。あなた方が地上にお戻りになるまでは事をおこすことはありませぬ。我が宰相の名において保証しましょう。」
「帝国は紳士であられる。」
後藤さんが賛辞とも皮肉ともとれる相槌をうちます。
後藤さん、けっこう好戦的ですね。
宰相ユミルさんが皮肉と受け取って怒ってきたらどうするつもりでしょう。
「紳士? そんなものではありませんな。我が帝国は多数の王国を併合してきました。今、その国々が大人しくしているのは我が帝国の武威も当然ですが、我が帝国が約束を守るという信頼関係もあるのですよ。ですから綺麗ごとも守らねばいかない。それだけのことですな。」
「なるほど、約束をまもらなければ離反する国があるという事情があると」
「ええ、都度、叩き潰すのは面倒ですので。」
おお、さらりと宰相ユミルさん恐ろしい事いいましたよ。
反乱をおこしても面倒なだけなんですね。そこまで困らないわけですね。
僕はちらりとアオイちゃんやメンドーサちゃんを見ます。
彼女たちの国もいわば帝国に叩き潰されました。
今の発言をどのような気持ちで聴いているのでしょうか?
「まあ、大国には大国として維持すべきことも考えなければいけないということですな。小国の間は権謀もよいですが、大国になりましたら信義も大事になります。それよりもあなた方は国興論を交わしにきたわけではありますまい。本題とまいりましょう。」
そのあと、宰相ユミルさんは僕達が守護者と交戦した状況。つまり黒滝教授やダルさんが意識に喰われた状況。大量の守護者が現れた状況。ダルさんとの戦闘を根掘り葉掘り聞いてきました。
しばらく情報交換した後・・・
「そろそろよいですか?あなた方の言う『魅入られたもの』とは何か教えていただきたい。」
ある程度、話が終わった後に後藤さんがきりだした.
「ふむ・・・我が帝国も残念ながら全てを把握しているわけではありませぬ。
・・・ありませぬが、知っていることは共有いたしましょう。
・・・とはいえ、どこから話たものか? これはご存じかな?」
そういって宰相ユミルさんは石をとりだしました。
「魔石ですな。」
「おお、知っているなら話が早い。この効能も存じているということで話を進めてもよろしいか?」
「一応は、我々で把握しているのはその石を使うと各種のエネルギーを発生させるということ。火の魔石なら火力を生み出し、雷の魔石なら電気を生み出し・・・変わったのでは土の魔石は土を変化させるエネルギーを生み出す。こんなところです。我々が把握しているのは。」
伊藤女史が宰相ユミルさんに僕たちが一般的に知っていることを伝えます。
余談ですが伊藤女史はスーツの似合う長身の女性です。いかにもデキル女という感じです。
「なるほど地上ではエネルギーと言う表現をするのですな、我々は「魔法を生み出す」と定義づけております。ところ変われば同じものを見ても表現がかわるものですな。これは面白い。」
「説明の続きをお願いしてもよろしいか?」
後藤さんが先を促します。
宰相ユミルさんのやりとりを聞いてると短文は後藤さん、長文はデキル女、伊藤女史が話してます。細マッチョの白井さんはメガネをクイっクイっと神経質そうにあげてるくらいで今のところ空気です。
「そうですな。この魔石・・・どのように作られるか・・・ご存じですかな?」
後藤さんは伊藤女史を振り返ります。
伊藤女史はかぶりを振りました。
「生憎、その研究をしていたものが洞窟内で遭難しまして、我々はその件に関して何も知らないのです。」
伊藤女史の回答にありました遭難した研究者というのはリサ教授のことです。確かに最前線で研究していたのはリサ教授ですから。りさ教授が遭難した今、「地上」で詳しいものは確かにいません。僕も知ってなくもないですが助手程度の知識で出しゃばるのは気が引けます。
あるいはリサ教授の研究仲間でもあった黒滝教授が知っていたかもしれませんが、残念ながら彼は手足を失い帰還したときに精神にもダメージを受けたらしく、まともに話ができない状態だと聞いてます。であれば魔石については知らないという回答が偽りなく、無難なところでしょう。
それにしても伊藤女史も度胸あります。
リサ教授達研究員の救助が難航している原因の一つが目の前の帝国です。
その原因をつくった帝国の重鎮の目の前で何でもないかのようにその話をするなんて僕にはできません。
偉い人っていうのは空気を読まないスキルが必要みたいです。
「・・・この魔石は魔力や生物の命を喰った成れの果てなのです。」
宰相ユミルさんの言葉で手足を喰われた黒滝教授やダルさんのことを思いだしました。
あれは守護者の卵とかいう光る石でしたが、確かに人を喰ってました。
「喰うとは?」
そのシーンを知らない後藤さんが確認の言葉を発します。
「文字通りですな。この魔石。元々は守護者の卵という石でしてな。ダンジョンの隔壁や天井、床などあらゆるところにある危険な石ころです。」
「危険なというのは命を喰うからですか?」
「左様。石に命を吸われ魔石にされてしまいます。「ダンジョンの壁を壊すな。守護者が出るぞ。」という格言があるくらいですな。」
あれ、僕達結構まずいことしてました?
壁どころか天井や床を壊しまくっていたのですが・・・
「この守護者の卵。更に厄介なことがあります。自衛手段として「守護者」と呼ばれるモンスターを呼び寄せ守らせることがあるのです。そしてその「守護者」も卵と同じように魔力や生物の命を喰います。一説には体内に守護者の卵の能力を内包しているためそのような性質をもっているといわれております。」
いわれているといいますか・・・宰相ユミルさんの言う通りでした。
守護者を倒したら、その死体に守護者の卵がありましたから。
「その守護者とともに3名の人物があらわれた。彼らが何者かは知ってるか?また人が守護者とともに行動するということがありうるのか?」
ここで赤石クンが初めて口を開きました。
あのダルさんとの戦いで現れた守護者の大軍のことを言っているのでしょうか?
僕は余裕なかったのでわかりませんでしたが、守護者の大軍の中に人がいたのでしょうか?
「予測でしか伝える事はできぬが・・・おそらく『魅入られたもの』ではあるまいか?」
「その魅入られたもの者とは一体、何者なのだ。」
「ふむ。我が帝国も詳細まで把握しているわけではないが、知っている範囲の話でよろしいですかな?」
宰相ユミルさんの質問に赤石君が頷きます。
「まずは・・・守護者の卵に喰われた命が蘇るケースがあるようです。」
僕は興味深く宰相ユミルさんの話を聞きます。
赤石クンも頷いています。
「蘇った場合、以前の記憶があるのかないのか・・・見た目は変わらないのですが行動原理が変わるようですな。『守護者』と同じく守護者の卵を守る。洞窟を守る。など、一番の違いは己が「願い」を優先するように行動が変わるようですな。理性が利いていないと言い換えることが出来るかもしれませぬ。それこそ理性を喰われたかのように・・・まるで「願い」に魅入られたかのような行動をとるので我らは畏怖を込めて『魅入られたもの』と呼んでおります。」
「・・・喰われて蘇っただと。」
「ええ、彼の石はモンスターであろうと魔法であろうと人であろうと・・・そしてドラゴンや巨人、神々であろうとも喰うといわれております。そして、極まれではありますがいくつかは蘇っていることを確認しております。報告はうけておりましたが・・・ダルもそうではありませんでしたかな?」
たしかにダルさんは一度、喰われてから(偽)ダルさんとして復活しました。
ただ、あれは蘇ったと表現してよいのかどうかわかりません。
生前の記憶が無いように思えます。
ふと見ると赤石クンがものすごく考え込んでいます。あまり表情筋が動かない彼ですが、嘘つけないタイプなので態度に現われちゃってます。
「その魅入られたものとやらで蘇った場合。記憶はまったくないのかどうか? 寿命は? 普段はどこに住んでいるのか? 何を食べているのか? 守護者の卵を守るということだが魔石になったら、それも守るのかどうか? 何かわかる情報はありますか?」
伊藤女史がまくしたてる。
「はて・・・我々も『魅入られたもの』ではないので、そのあたりの話となるとわかりませぬな。そうですなぁ・・・ただ・・・。」
「ただ?」
「一度だけなら喰われても、まだ普通に生活できると聞いております。行動原理は「願いに魅入られたがごとく変わりますがな。ただ二度三度と喰われると理性を失ったがごとく守護者と同じようになるようです。 一度目は警告という意味もあるのではないかと考えております。あとは・・・そうですな。守護者が現れる場所と現れない場所があるということぐらいでしょうか? あなた方もそれは既に知っている情報では? 地上にちかいところで魔石を発掘していると報告にはありましたが、魅入られたものにも守護者にもお会いにはならなかったでしょう?」
「なるほど。今の話を踏まえて一つご提案があります。」
伊藤女史が話を続ける。
「なんでございましょう?」
「失礼ながら帝国も一緒に守護者や守護者の卵については研究が進んでいない様子。よろしければ私たちと一緒に共同研究しませんか?」
「共同研究ですか?」
宰相ユミルは顎に手を当てます。
「ええ、帝国も守護者という危険なモンスターが徘徊しているのは国民を守るという一事において大変かと思います。その生態を研究するのは帝国の防衛の一助となるでしょう。それに蘇るということは、死んだ人間も蘇る可能性があるのではないでしょうか?死んだ人間が蘇る可能性があるこれは研究に値することではないでしょうか? 幸いにして我々には途中まで魔石を研究していた成果物があります。違う視点での研究をすりあわせる。新たな発見が見つかるかもしれません。」
これが後藤さん、伊藤女史、白井さんの狙いなのですね。
合同研究している間は攻めてこないでしょう。
合同研究と言う名の停戦交渉ですね。
吉と出ればよいのですが、多少強引な気がしなくもないのです。
「(あさましい)。」
え?
柔和な親切おじさんという感じの宰相ユミルさんからボソッと小さな聞き取れるかどうかという声で、今までと全く違う雰囲気のつぶやきがもれたのが聞こえました。
「今のご提案は無用ですな。そもそも守護者も守護者の卵もダンジョンを普通に移動している分には滅多に出てこぬものです。それこそ洞窟を破壊するなど道に外れたことをせぬことには。」
宰相ユミルさんが今までと同じような柔和な親切おじさん口調で話しました。
それがかえって先程のつぶやきの違和感を増幅させます。
「それにですな。蘇りと申されたか?」
「あっ はい。」
伊藤女史が慌てて返事をする。
伊藤女史も先程の宰相ユミルさんのつぶやきを聞いていたのでしょう。
焦っているのが表情に出ています。
「自由の無い蘇りなど無意味で滑稽なものですぞ。」
嘲るような。憐れむような。そして憤怒にみちたような。なんとも言えない声で宰相ユミルさんは拒絶しました。
「・・・(知ってるな。)」
僕の隣で 僕にだけ聞こえる声で アオイちゃんが呟きました。
余談ですがアオイちゃんだけ変身してこの場に臨んでいます。身バレ防止のためです。
宰相ユミルさんの今までとは違う声色。アオイちゃんの反応と。いろいろ聞きたいことはありますが・・・聞く場面はここではないでしょう。
ここは後藤さん、伊藤女史、白井さんの停戦交渉の場であり-
そして、その交渉が破れた場でもあるのですから。
「他に聞きたいことはおありですかな? なければ-。」
と宰相ユミルさんが交渉の場を終焉にしようとしたときアオイちゃんが口を開きました。
「図書館はあるのかしら?」
---from aoi side---
「バッカじゃないの。直球すぎ。あの伊藤とかいう女。停戦したいならもっと方法あるでしょうに。
交渉するというところが頭から抜けてないから目的を達成出来ないのよ。」
私は帝国の図書館で山積みになった本をさらに積み上げながらぶちぶち文句いった。
私は一応、お姫様なんですわ。
国同士の外交も見てきたんですわ。
そんで、あの交渉はないわーと思ったんですわ。
交渉相手が蘇りに価値観をもっている前提で話してるのだ。
そのことに対してどんな価値観をもっているのか探りすらいれていない。
自分の価値観で交渉勧めたらあかんわ。
そんなん押し売りとかわらん。
押し売りは誰も買わないよなー。
しゃーないので助け船ではないけど、一つ提案してみた。
乱暴に言えば魅入られた者や守護者について調べたいから図書館に行かせろ。調べものする時間くれという内容だ。
結果、1週間の滞在と一般公開されていない帝国図書館の利用を認められた。
つまり私は短期ではあるけど1週間の停戦交渉に成功したわけだ。
声を出すことで私の正体ばれるかなというリスクはあったが賭けに勝ったようだ。
セーフ!
交渉の冒頭「カグヤ何しているのだ?」と聞かれたけどね。
それも結果からするとノープロブレム。
どうやら帝国では私をカグヤだと誤解しているらしい。
誤解の原因はわかった。
私がカグヤの固有スキル『胡蝶の舞』をつかったからだ。
ここも赤の他人で押し切った。
スキル被りもよくあることだよね。という理由で。
帝国も私をカグヤと断じるには違和感があったらしい。
そりゃそうだ私はカグヤじゃない。
あんな女と一緒にしないでほしいわ。
その交渉の副産物として図書館にきている。
せっかくなので、ここで帝国の英知を可能な限り拝借するつもりだ。
ちなみに後藤、白井、伊藤女史はこちらにはきていない。別行動だ。
私が1週間の停戦交渉を成功させたのが面白くないらしい。
どこに行って何をしているかは知らん。
私が積み上げた本を読むのは赤石と山吹だ。
山吹はアタシが無理やり誘ったが、赤石が興味をもって図書館にきたことは意外だ。
どちらかというと格闘バカで、このような図書館とは縁遠いイメージがあったからね。
「いやー、そんなに積み上げないで下さいよ。調べるにも限度ありますよ。」
山吹がなんか寝言を言ってるが無視だ無視。
せっかく一般公開されていない帝国のナレッジの宝庫にきているのだ。
ナレッジは盗めるだけ盗んでいく。
そういう方針です。
「何を言う。敵を知ることこそ、百戦百勝の道だ。」
おお、なぜか赤石がやる気全開だ。
彼が積み上げた本を見ると「魅入られた者」関連が多い。
「あの3人の魅入られたものが気になる?」
私は赤石の興味をひいているものが気になって声をかけてみた。
赤石がリサ教授と格闘以外の事柄に興味があるのが意外過ぎて。
「うむ。」
いつもながらコイツは多くを語らない。
本人にその自覚はないのだろうが、常に一人で抱え込んで、一人で解決しようとする癖がある。
私はそれが気に喰わない。
戦場で真っ先に死ぬのはそういった好漢だ。
悪い言い方をするならホウレンソウの相談が出来ない奴だ。
「ねえ。」
「うむ?」
「何か隠してんだろ。お姫様に言ってみな。」
「うむ。」
赤石はしばらく黙考した後に、
「いつまで、その格好なのだ?」
と質問を投げかけた。
いや、うん。赤石の言いたいことはわかる。
アタシは帝国四天王のアオイとバレたくないからずっと変身している。
ずっと変身してわかったが30分以上変身していると非常に疲れる。
それでもこの変身を解くわけにはいかない。
気を抜くと変身が解除されそうなんだけど、根性で耐えている。
バレたらいろいろな意味でバッドエンドが待っているんだわ。
「いや、そういうことじゃなくて!」
と言ったときに落雷がおこった。
図書館中が稲妻の振動で揺れる。
「へえ。雨でも降るんですかね。」
山吹がのんびりしたことを言っているが、これはそんな事態じゃない。
「何言ってるの! ここは地上じゃない! 洞窟の中よ。洞窟の中で雷なんてありえない!」
「うむ。」
赤石が飛び出す。
こいつはいつも即行動だ。
そのかわり相談がゼロだ。
私も慌てて飛び出し、山吹が続いた。
図書館を出たアタシ達の目に飛び込んできたのは・・・
雷を纏うイエロードラゴンだった。
---from yamabuki side---
「うわ。帝国ってあんなの普通に出るんですか。ゲームのラストダンジョンって感じですね。」
「バカっ。そんなわけないじゃない。異常事態よ。異・常・事・態!」
アオイちゃんの言う通り異常事態なのでしょう。
帝国の人達が逃げ惑っています。
これが日常であれば、ここまで逃げ惑う事はないでしょう。
とりあえずイエロードラゴンの攻撃から逃げ惑う人たちを助けなければいけません。
このイエロードラゴンはどのくらいの強さなのでしょう?
あのレッドドラゴンと同レベルなのであれば・・・それこそ僕たちの出番です!
「来てください! スキーズ あなたの出番です!」
帝国の上空に空飛ぶ船が出現
僕は急ぎスキーズに搭乗します。
見るとアオイちゃんも機械仕掛けの鳥にのってました。
考える事は同じの様です。
「スキーズ! 大砲の出番です!」
『イエス、マイマスター』
スキーズの主砲が火を噴きます。
「GAAAAAAA!」
イエロードラゴンの咆哮。ブレスで反撃してきました。
僕のスキーズの主砲とイエロードラゴンのブレス
勝ったのはイエロードラゴンのブレスです。
ちょ、まずいです!
「胡蝶の舞!」
アオイちゃんが魔法の蝶の群れのカーテンを展開します。
魔法の蝶の群れに当たったイエロードラゴンのブレスは霧散しました。
あのブレスは魔法の類の様です。
「助かりました!」
僕はアオイちゃんに例をいいます。
あのままブレスの直撃を受けていたらまたレッドドラゴン戦のように戦線離脱は避けられないでいたでしょう。
アオイちゃんも余裕がないのかサムズアップで答えただけで、すぐさま攻撃に移ります。
「来るがよい。我が眷属 シアルフ!」
赤石クンも自身の眷属を呼び出しました。
彼の足元に巨大な魔法陣が展開されます。
その魔法陣からせりあげるのは30mもある巨大な真紅のフルアーマー
その巨大なフルアーマーと赤石クンは同化しました。
背にあるスラスターを噴射し斜め上空に飛び上がりながら雷を纏いし金色の竜 イエロードラゴンにむかいます。
「おいでゲーくん。フレキちゃん。」
アオイちゃんが2体の巨大な機械仕掛けの狼を召喚しました。
一体が音波でイエロードラゴンを攻撃
怯んだすきにもう一体の機械仕掛けの狼が無数の鎖を召喚し、イエロードラゴンを捕獲。地に引きずり下ろします。
ナイスアシストです。
これで赤石クンの土俵である。接近戦ができる環境が整いました。
「GAAAAAAA!」
「ぬうん!」
イエロードラゴンの顎が赤石クンと一体化したシアルフを襲いますが、ミドルキック一閃。
イエロードラゴンの頭を横方向に吹き飛ばします。
その後、ヘッドロックを極め、そのまま地面に倒れ込みました。首締めの体制です。
世界広しと言えど、ドラゴンの首を極めた人間はなかなかいないのではないでしょうか?
「おお! 中々、面白い事をしているではないか! 俺も加勢するぞ!」
見るとライオンマンも巨大化してました。
そのままジャンプ。宙に浮き、ギロチンドロップで首を追撃します。
世界広しと言えど、ドラゴンにギロチンドロップを決めた人はなかなかいないと思います。
「ぬうううううん!」
赤石クンのシアルフがそのギロチンドロップの勢いを利用してそのままフェイスロック気味に首を捻ります。あそこまで極まっていたらさすがのドラゴンも顎を開けることもできずブレスもその牙も用をなさないようです。
見事にドラゴンの武器を封じきってます。
イエロードラゴンもそのままではありません。
グラウンドの体勢から力だけで無理やり起き上がってきました。
「おお! さすがは巨人族と並んで神と同等の力を持つといわれる偉大なるドラゴンよ。だが、これで終わりだ。」
ライオンマンさんがイエロードラゴンにむかってダッシュします。
「GYAAAAAAA!」
イエロードラゴンがフェスロックを力で解除し、雄たけびをあげるとあたり一帯に雷の雨が降り注ぎました。
「嘘っそ! 雷の最上級魔法じゃん! 魔法も使うの!?」
アオイちゃんが驚きの声をあげてます。
体に衝撃が走ります。
どんな状況か雷の雨が眩しくて周囲の状況が見えません。
雷の雨が止むと、そこには被災した帝都とイエロードラゴンが逃げたであろう天井の大穴
そして黒焦げになった巨大化ライオンマンがいました。
「おお! さすがは偉大なるドラゴンよ。まだこの力があったか!」
巨大化ライオンマンさんがむくりと起きて腕を組み感心した声をあげました。
いや、あの雷を受けて生きていたって・・・あなたもすごいですね。
焦げてますけど。
---from Prime Minister Ymir side---
「ふむ。ちょっと困ったことになりましたなぁ。」
ため息が出ます。
タイミングよくレンジャーワンが帝国に来ているときに
タイミングよく人化魔法が解除される事故が発生し
タイミングよく人化魔法が解除されたイエロードラゴンとレンジャーワンの戦闘発生したのですが・・・
中々世の中はうまくいかないものです。
ベストな展開は・・・
地上侵攻のレンジャーワンが倒され
人化魔法の事故ということで処理され、帝国は約束を反故にはしないという帝国民への信頼を維持しつつ地上侵攻の足掛かりを再度掴むということだったのですが・・・
結果は・・・
レンジャーワンは生き残り
苦労して捕まえたイエロードラゴンには逃げられ
帝都の一部が被災しました。
「ふむ。最悪の結果ですなぁ。今回は賽の目が悪すぎました。」
「いや。そうでもないよ宰相。」
「おお、これは帝王様。」
「苦労をかけるね宰相」
「いえいえ、それにしても『そうでもない』とは?」
「僕の長年の探し物が見つかったよ。」
「なんと!」
「楽園『地上』に探し物はあったんだろうね。地底国家群を探し回っても見つからないわけだよ。」
「ふーむ。そうでしたか・・・・思えば長かったですなぁ」
年のせいでしょうか、目元が緩みます。
何度も 何度も 探して、探して、探して、探して幾星霜。
「ようやく、ようやく見つかりましたな。」
「そうだね。これで願いが叶う。」
「そうですな。それに比べたらイエロードラゴンや帝都の一部の消失。レンジャーワンは些事ですな。」
そう。この地底に覇を唱える帝国。これは帝王様と私にとって便利な手段と結果にすぎない。
『探し物』を探している途上、邪魔するものを排除していたら、結果として国ができました。
『探し物』を探すために他国を探すため邪魔な他国を攻めました。
『探し物』を探すため新たな通路が発見されると侵攻し、その先にあった他国を攻めました。
そうしてできたのが、この地底帝国。
この帝国は『探し物』を探すための手段に過ぎないのです。
「地上」も新たな通路が見つかったから『探し物』を探すため侵攻しただけ
見つかったのなら侵攻の必要はない。
リスクが高いレンジャーワンを相手にする必要もないのです。
「重畳・・・重畳ですぞ。」
「おちつくんだ。宰相。好事に魔が多いという。僕たちは今、気が高ぶっている。落ち着けてから次の行動に移るんだ。」
「はっ」
---from akaishi side---
「図書館は無事か。」
我は独り言ちた。
あそこには気になる書物があった。
その本にはこう書かれていた。
「守護者の卵は願いを叶えるため奇跡を発露する可能性を秘めている。」
願いを叶える??
魔石の原料ぐらいの認識であったが・・・あの生き物を喰らい、変質させるあの石が願いを叶える??
我にはその言葉が妙にひっかかっていた。
【次回予告】
イエロードラゴンの襲撃を退けたレンジャーワン。
そして探し物が見つかったと喜ぶ帝王と宰相ユミル
彼らに予想外のことが発生する。
次週、episode11 白い部屋の決裂と乱戦
毎週 日曜日 9時30分 更新 ブックマークよろしくお願いします。




