ギルドマスター
読みにくい所や誤字の報告などしてくれるとありがたいです。
感想または質問にはできる限りお答えするので書いてくれると嬉しいです。
「何の騒ぎだ」
その低く響く声は、ギルド全体の喧騒を一瞬で飲み込んだ。
まるで重たい鎖が空気を締めつけたように、場の空気がぴたりと静止する
声が発せられた場所は、先ほど俺が書類を書いていた受付のあたりだった
そちらへ視線を向けると、そこに一人の男性が立っていた
背丈は高く、肩幅も広い。年の頃は四十を少し過ぎたあたりだろうか
浅黒い肌には、日差しと戦場の風を受けたような強さが刻まれている。
その後ろには、セルナさんの姿もあった。
「マスター」
ジョンが恐る恐る言葉を発する。
「ジョン、お前が騒ぎの原因か」
低く響く声が、場の空気をさらに重くした。
「いや違くて、そいつが風魔法を使えるっていうから、確かめ――」
マスターと呼ばれた男の鋭い視線がジョンを射抜く。
その一瞬で、ジョンは言葉を飲み込んだ。
「……はい」
諦めたように呟く。
「はぁ……ジョン、後で俺の所に来い」
「そんなあ...」
ジョンがうなだれる。
その横でフィーネが「だから言ったのに」と、呆れたように肩をすくめた。
マスターは小さくため息をつき、それからゆっくりと俺の方へ顔を向ける。
「それで――」
彼は受付の場所から歩み出て、まっすぐこちらへ向かってくる。
そして俺の目の前で立ち止まった。
体格が大きく、自然と俺は顔を見上げる形になる。
「お前、ギルドに入りたいんだよな」
「ああ」
「なら、今から俺がお前に質問をする。答えろ」
「この質問は、お前が冒険者になれるかどうかに関わる。――嘘つくなよ」
「わかった」
「まずは、お前の名前から教えろ」
「ルーツ=オリジンだ」
俺の名前を口にした途端、
周囲の数人が、はっとしたようにこちらを凝視した。
空気が一瞬だけ変わる。
誰かが小さく息を呑む音が、やけに鮮明に耳に届いた。
(……何だ?)
何か引っかかるような視線が、背中に突き刺さる。
マスターの目も、わずかに細められていた。
「次だ。使える魔法の属性は?」
「...風だ」
俺が答えると、マスターはゆっくりと頷く。
だが、その瞳はまるで俺の奥底まで覗き込むように鋭かった。
「どこから来た?」
「癒しの真珠亭から」
「ずっとそこにいたわけじゃねえだろ。その前は?」
「森の――樹赦の森からだ」
「は?」
その名を出した瞬間、ざわめきが広がる
周囲の数人が思わず声を上げた。
「つまり、お前は聖都の外から来たってわけだな」
「ああ、そうだ」
マスターの眉がわずかに動く
ほんの少しの沈黙のあと、彼はゆっくりと口を開いた
その目の奥に浮かぶものは、単なる興味でも警戒でもなかった
もっと深い、何か確かめるような色――。
「……これが最後の質問だ」
低く、だがはっきりとした声で言い放つ
その声の響きに、ざわめいていたギルドの空気が再び張りつめた
マスターは俺をまっすぐ見据え、
そして、まるで心の奥を試すように言葉を放った。
「――ジーク=オリジンについて、知っているか」




