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ウロボロク  作者: 黒黰黎
ファースト・ステップ

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6/11

聖都

読みにくい所や誤字の報告などしてくれるとありがたいです。



感想または質問にはできる限りお答えするので書いてくれると嬉しいです。


「冒険者ギルドって遠いのか?」


癒しの真珠亭を出て、行き交う人々の波を縫うようにして歩きながら、俺はカタリヤに尋ねた。


「遠いよ。ここから反対側の開発地区にあるから」


「開発地区?」


「あー、そっか。ルーツは外から来たんだもんね」

「えっとね、開発地区っていうのは聖都の北側にある物作りが盛んな場所なの。

聖都で使われてる道具のほとんどは、そこで作られたものなんだ」


彼女は指で方角を示しながら、軽い調子で説明を続ける。


「隣同士の西側と東側にも名前があってね。西が商業地区、東が生産地区で、私たちが今いる南側が住宅地区だよ」


「覚えるのが大変だな」


「はは、確かに。初めて聞いたらそう思うかも」

「ちなみに聖都って丸い形をしてて、高い壁で囲まれてるの。実際に丸いかどうかはわかんないけど」


「確かに、あの壁は見た。入る時に越えたからな」


「……ちょっと待って。どうやって中に入ったの?」


「普通に上から入ったけど?」


「上からって、あの壁を!?」


「魔法で空を飛べるから、それで入った」


「空を飛べるの!?」


カタリヤは目を輝かせて身を乗り出した。


「それって、昨日の魔法で?」


「ああ」


「へぇー、魔法ってそんなことまでできるんだ。いいなぁ」


「飛んでみたいのか?」


「そりゃあね。少し怖そうだけど、楽しそう!」


「なら、一緒に飛んでみるか」


「飛べるの?」


「ああ。一人くらいなら余裕だ」


「じゃあ、飛んでみたい。約束!」


カタリヤは左手の親指と薬指で輪っかを作り、俺に差し出した。


「オリュリパスか」


俺も同じように指で輪を作り、彼女の輪に重ねる。


「知ってるんだ?」


「じいちゃんに教わった。たまに二人でやってたから」


「そうなんだ。じゃあ一緒に言おう、せーの」


「『天と地が続く限り、あなたとの誓いを忘れない』」


二人で唱え、指の輪を崩す。


「約束だよ」


「ああ、絶対に守る」


そのとき、不意に視界が開けた。

今まで建物が並んでいた道が、広々とした空間に変わっていた。

木々と芝生が生い茂り、道の上には多くの人々が行き交っている。


そして、視線の先――白銀に輝く巨大な建物がそびえ立っていた。


「あ、いつの間にか教会まで来てたんだ。開発地区はこの教会の向こう側だから、このまま真っすぐ行こう」


「これが教会か……すごいな」


「聖都で一番大きい建物だからね。そういえば、教会も知ってたんだ?」


「うん。じいちゃんが言ってた。『一番目立つから、迷子にならないだろ』って」


「そっか……もしかして、ルーツのお爺さんって聖都の人?」


「多分そうだと思う。でも、自分のことはほとんど話さなかったから」


そのとき、教会の入口に人だかりができているのが見えた。

誰もが笑顔で、祝福の声をあげている。


「おっ、婚輪の儀かな」


「婚輪の儀?」


「夫婦になった人たちが“生まれ変わってもまた会えますように”って誓う式だよ」


「カタリヤはやったことがあるのか?」


「えっ、ないない。そもそも恋人だってできたことないもん」


「そうなのか」


「そうなの!」

「……さ、ここから先が開発地区だよ」


道を進むと、空気ががらりと変わった。

鉄や油の匂い、木槌や金属を打つ音――

住宅地区とはまるで違う、職人たちの息づかいを感じる場所だ。


「冒険者ギルドまで、あと少しだよ」


「すごい音だな」


「うん、色んなものを作ってるからね。慣れれば心地いいよ」

「流石に、地区全部がうるさいわけじゃないから安心してね」


カタリヤは歩きながら、ふと振り返った。


「そうだ、ギルドに着くまででいいから、森での話を聞かせてよ」


「森の話?」


「うんうん」


「そうだな。森では、じいちゃんと二人で生活してた」


「森って、“樹赦(じゅしゃ)の森”だよね。聖都の外の西側にある」


「そう。俺たちは面倒だから“森”って呼んでたけど」


「じゃあ、“災火(さいか)”と“氷陸(ひょうりく)”には行ったことある?」


「いや、じいちゃんから話は聞いてるけど、行ったことはない」


「そうなんだ」


「というより、俺はここに来るまで森の外に出たことすらなかった」

「じいちゃんが死んで、その遺言で俺は聖都まで来た」


「……お爺さん、死んじゃったんだ」


カタリヤが少し申し訳なさそうに顔を伏せる。


「カタリヤが気にすることじゃない」

「じいちゃんが死んだことを話したのは、俺の意思だ」

「それに……ちゃんと別れは済ませた。ここまで育ててもらった感謝も伝えられたし、悲しむ理由なんてもうない」

「それに、じいちゃんの遺言のひとつでもあるんだ。“オレの話をする時は楽しく話せ”って」


「..なんか、いいね。そういうの」


彼女は笑っていた。けれど、その笑顔はどこか少し寂しそうだった。


「私はね……ちゃんとお別れできなかったから」


そう呟いたあと、カタリヤは横の建物を指さした。


「さぁ、着いたよ。ここが――冒険者ギルドだよ」





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