プロローグ
読みにくい所や誤字の報告などしてくれるとありがたいです。
感想または質問にはできる限りお答えするので書いてくれると嬉しいです。
これは、私の物語ではない
これは、龍の物語ではない
これは、神の物語ではない
これは、人の物語ではない
これは、彼女たちの物語だ
そうこれはその最初の話
はじまりにして元凶とも言えるそんなお話
そんな私の話だ。
「カナリヤ、この料理を3番テーブルに持っていってくれ。あと7番テーブルの片づけを頼む」
「わかった。あと14番のお客さん、朝食2つ追加で」
そう言い残し、私は厨房から出た。
ここは聖都の南側にある、しがない宿屋だ。
しがないと言っても、それなりに評判がいい。実際、お客さんが途切れることはほとんどない。
そんな宿屋を、私の父と数人の従業員たちで切り盛りしている。
家族と、優しい従業員たちと一緒に働けるこの宿屋が、私は大好きだ。
「おはよう、カタリヤちゃん。今日もかわいいね」
声をかけてきたのは、この宿の常連客の一人だった。
「おはようございます。かわいいって言われるのは嬉しいですけど、あんまりそんなこと言ってると、彼女さんに怒られますよ」
「ハハハ、確かにそれは嫌だね。つい最近も彼女と喧嘩したばかりなんだ。でも、そんなこと言ってもカタリヤちゃんには関係ないか。朝食を一つお願いできるかな?」
「はい、わかりました」
今は、宿に泊まったお客さんの朝食と朝食だけを食べにやってくるお客さんの時間帯。
宿屋がもっとも忙しくなる時間のひとつだ。
「こちら、本日の朝食になります」
「すみません、注文いいですか?」
「はーい、今お伺いします!」
こうして、慌ただしい朝の時間が過ぎていく。
「ふぅー、やっとひと段落つけた。やっぱり朝はしんどいな」
「お疲れ、カタリヤ」
父が声をかけてきた。
「すまないが、少し休憩したら買い出しに行ってくれないか」
「これがリストだ」
一枚の紙を手渡される。
「わかったよ、お父さん。お店はいつものところでいいよね?」
「ああ、頼む」
頼まれた品を買うため、私は外へと足を運んだ。
「今日も暑いなぁ。たまには涼しくならないかな」
そう呟きながら、私は目的の店に向かった。
この聖都では、一年を通して暑い日が続く。雨はたまに降るが、それでも気温が下がることは少ない。
「こんにちは」
店の店主に声をかける
「おや、カタリヤちゃん。こんにちは。買い出しかい?」
店主は、にこりと笑う。
「はい、いつものお願いできますか?」
慣れた手つきで商品を用意していく主人。
「はい、どうぞ。今日もサービスしといたよ」
「いつもありがとうございます!」
商品を受け取り、次の店へと向かう。
「ふぅ、やっと全部買えた。今日はちょっと時間かかっちゃったな」
「よし、今日は裏道で帰ろう」
裏道は、宿屋までの近道だ。
ただ、人通りが少なく、細い道も多いので、普段はあまり使わない。
「よし、もう少しで着くぞ」
裏道を進み、宿屋まであと少しというところで、視界にそれが映った。
それは、私がこれから通ろうとしている道に横たわっている。
距離があるせいで、それが何かは分からない。ただ、布のようなものが見える。
「なんだろう」
私は少し怖がりながらも、ゆっくりとそれに近づいた。
「うそ…」
近づいてわかった。それは、黒髪の青年だった。




