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教国共和国護衛依頼編⑥

 教国からの依頼が開始されて13日目の明け方。周りはまだ暗く、太陽がわずかに昇っている。薄みがかった暗闇が、未だに天の大半を覆っていた。昨日物資を回収し、今の状況で出来る限りの準備を終えた俺たちは、いよいよセバスというあの爺さんと対面すべく、共和国への最後の道となる一本道の直前まで移動していた。こちらは茂みの中に隠れて一本道の様子を窺うが、予想通り爺さんは一本道で腰を下ろし、静かに瞑想している。こちらを待ち構えているのだろう、その姿は地獄の門番を想像させた。


「…フィリア、覚悟はいいか? ここまで来たら、もう後戻りはできないぞ」

「大丈夫だよ、なんたってあなたがいるんだから。ユートの方こそ大丈夫? なんか、声震えてるけど」

「ほっとけ。いつもは震えが出ないよう隠してるが、内心ではこれが通常の状態だ」

「そう。なら、震えないようにおまじないをかけてあげる」


 そう言うとフィリアは、俺の頭を両手で抱えて静かに二人の額を合わせた。彼女の手や額の感触が、彼女から香ってくる甘い匂いが、鮮明と俺の脳裏を揺さぶる。急に彼女の顔が自分のすぐ側に来て、未だに鼓動の高鳴りを抑えることができない自分が、そろそろ本気で情けなくなってきた。彼女は目をつむっている。数秒、そうしてお互いじっとしていると、彼女の穏やかな鼓動が、こちらまで届いてくるかのようだ。高鳴っていた俺の鼓動も、段々と落ち着いてくる。


「孤児院のちびっ子たちが緊張してた時、よくこうしてたんだ。どう。落ち着いた?」

「ああ、効果てきめんだ。ありがとよ、フィリア」


 自然と、初めの震えは治まっていた。こんな感覚はいつぶりだろうか。怖いはずなのに、俺の心はどこか穏やかに凪いでいる。彼女の鼓動が伝わったおかげだろうか?


「行こう。泣いても笑っても、これが最後の戦闘だ」

「うん、絶対に二人で生き残ろう。約束、忘れないでね」


 そういって二人で立ち上がると、フィリアは軽く俺の背中を叩いた。彼女と出会ってからまだ数日しか経ってないが、その数日間で何度彼女の振る舞いに元気づけられたことだろう。活力のあふれる両足を踏みしめ、俺とフィリアは最後の門番がいる道へ足を踏み入れた。






「………来たか」

「待たせたな、爺さん。悪いが、そこを通してもらうぜ」

「フン、小童が。冒険者の中では少しはやるようだが、儂の前ではまだまだひよっこよ。実力の差が分からないような凡俗でもあるまい?」

「そんなことは分かってよ。その上で、俺とフィリアと通してもらうって言ってんだ」

「蛮勇だな。よかろう、身の程を分からせてやる」


 静かに、爺さんが立ち上がる。すぐに仕掛けてくる様子はないようだ。フィリアのことが気にかかるのだろう、俺に次いで、彼女のほうに視線を向けた。


「セバス…」

「こんなことになるとは思いもしませんでしたな、フィリアお嬢様。幼い時から聖女になる素質があったとはいえ、ここまで神器の適性が高まることがなければ、あなた様も儂もこんな騒動に巻き込まれることがなかったでしょうに」

「そうね。そうかもしれないわ」


 確かにフィリアの魔法適性の高さを見るに、彼女の神器の適性はすさまじいものだろう。他の聖女候補者達を差し置いて、孤児院から引き抜かれるのも納得できる。爺さんの言う通り、彼女の適性がここまで高くならなければ、彼女と爺さんは今でも孤児院で穏やかに過ごしていたのかもしれない。


「お嬢様、抵抗せずに神器をこちらへお渡しください。そうすれば、あなた様のお命までは奪いません。我が主はあなた様のお命も散らすようとのご命令ですが、何、神器が手に入れば些細な問題でしょう。儂が責任をもってあなた様のお命が保証されるよう嘆願いたします。儂とて、あなた様のお命まで奪いたくないのです」

「私も、できればあなたと闘いたくないわ。闘いを回避できるなら、あなたの提案に乗ることは合理的かもしれない」

「ならば、」

「でもね、セバス。あなたは、クリスを、冒険者たちを殺したわ。あの襲撃をする前であればもしかしたらその提案に乗ったのかもしれないけれど、あなたが一度私たちの大切な人たちを殺したのであれば、私はもうあなたの提案に乗ることはできない」


 そう、どんな理屈を並べ立てたところで、こいつはもう人をこちらの人材を殺してしまっているのである。クリスはフィリアにとって大切な護衛だっただろうし、俺と同じ依頼を受けた冒険者たちはあんなところで死ぬ理由があるような連中ではなかった。例え爺さんがこちらに譲歩してきたのだとしても、俺たちと爺さんの決別は避けられない。


「さようなら、セバス、今まで世話になったわ。あなたがずっと側にいてくれて、私幸せだった」

「そうですか…。決意は固そうですな、残念です」


 フィリアから、決定的な決別の言葉が告げられる。爺さんが観念するように首を振ると、今度は俺の方に視線を送ってきた。


「貴様はどうだ、小僧。それほどやれる実力があるのだ。ここで命を散らす必要はあるまい? 依頼など放棄して、お嬢様と神器を渡せ。そうすれば、貴様の命は見逃してやる」

「すまないな、爺さん。そこら辺の議題は、すでにフィリアと解決済みだ。俺は依頼なんて関係なくここにいるし、フィリアと同じ理由であんたの言うことを聞くことはできない。それに付け加えるなら、あんたはあの夜、フィリアを泣かせた」


 周囲の大切な人たちが次々と死に、一番彼女に信頼され側にいなければならなかった人間が、よりにもよって残りの数少ない護衛を殺しつつ裏切った。あの夜の涙を見てしまった人間として、彼女の悲哀を、あの絶望をもたらした張本人を、俺は許すことができない。


「命がかかっていようが、俺はあんたに立ち向かうよ。実力の差は歴然だとしても、少しでもあんたに罪の清算をしてもらう」

「…やはり説得は無駄か。いいだろう、先ほど言った通り、身の程を分からせてやる」


 爺さんが剣を抜く。それに応じて、俺もフィリアも臨戦態勢に入る。


「行くぜ、爺さん。ここらが年貢の納め時だ!」

「こけおどしが。来い小僧!」


 そうして、俺たちと爺さんの二度目の衝突が、この旅における最後の戦闘の幕が切って落とされた。






 爺さんが踏み込んでくる前にこちらから切りかかる。俺と爺さんの実力だ、後手に回ったら押され切ってしまうだろう。こちらの攻撃が対処されてしまうのだとしても、それでも攻撃の手を緩めてはならない。


「ほう、威勢がいいだけある。だが、儂を崩すには少しばかり手数が足らんな」


 ちぃ、爺さんの言う通りだ。俺の剣速では、爺さんを崩し切れていない。いくつのフェイントを混ぜてみているが、どうやらそれにもひっかかる素振りはないようだ。

 すると、今度はこちらの番だと言うように、俺の剣戟の間にカウンターじみた一撃を入れてくるようになってきた。まだまだこちらの攻め手ではあるが、それでも適切な呼吸から繰り出されるカウンターに少しずつこちらが傷ついていく。致命傷は避けるように対処しているが、細かいカウンターに対処するような余裕はない。そうしてしまえば、対処に追われこちらが後手に回ってしまうことは避けられないからだ。少しずつ、だが、着実に俺のダメージが蓄積していく。これではたまらないと思い、一度相手から距離を取った。


「貴様の考えた策とは、捨て身で儂を攻め手に回らせないというものか? そうであるなら無駄だ。例え攻め手に回ることができなくても、このように着実に削ることができる。段々と追いつめられるのは貴様だぞ」


 爺さんの言う通りだ。このまま闘っても、ジリ貧になるのはこちらの方である。しかし、俺は一人で戦っている訳ではない。


「む?」


 触れられた背中から魔力が流れ込んできて、みるみるうちに傷が治癒していくのが分かる。距離を取った先には、フィリアが待機していた。そう、ダメージが蓄積されていくのであれば、このようにその都度フィリアに回復してもらえば問題ないのだ。戦闘中に回復をしつつ継続的に戦闘を行うのは、高い等級の冒険者の間であれば常識である。本来であればこのように毎度フィリアの側に行って直接魔力を流し込んでもらう必要はないのだが、今回は爺さんの爆破魔法に対する対策のために遠隔で魔力を放射してもらうことは避けている。


「なるほど、お嬢様に毎度回復してもらえば、捨て身の攻撃によってついた傷も問題ではなくなると。しかし、それではこうすればよいのではないか?」


 そういうと、爺さんは勢いよくこちらに踏み込んできた。多分、先に回復係であるフィリアを殺しにきたのだろう。至極当然の対処だ。


「させっかよ!」


 傷が回復しきった俺は、すかさず爺さんに飛びついた。流石はフィリアの治癒魔法だ、この一瞬でほぼ全回復の状態である。先ほどの繰り返しになるかもしれないが、それでもこちらの手を緩めるはしてはいけない。綱渡りの状態ではあるが、俺はフィリアの治癒魔法の力を借りて、何とかこの化け物じみた爺さんと張り合えているのだった。


「ふむ、小僧が攻撃している間はお嬢様を襲う余裕はなく、さりとて治癒する瞬間は短すぎて狙えんと。小僧が後退する瞬間を狙いたいところだが、受け手に回ってはそれも厳しい。短い期間の間になかなかいい連携を組んできたな。だがその連携は、儂が受け手であることが前提になっているのではないか?」


 そう、この均衡状態は爺さんが受け手であることが前提となっている。爺さんが攻め手に回ってしまえば、俺は対応することができずに崩されてしまうだろう。よってここからは、爺さんとの主導権の争いになってくる。しかし、爺さんが攻め手を取れば勝ち、俺が攻め手を取れば引き分けという明らかに分が悪い争いである。前回の戦闘の時とは異なり一応勝負の舞台には上がっているのだが、それでも一歩間違えばすぐにでも敗北する状態であった。

 何度かこの膠着を繰り返し、再度フィリアに治癒してもらう。間髪入れずに爺さんが追撃してくるが、俺も負けじと応戦しようとする。しかしここで爺さんは初めてフェイントを使い、攻め手の主導権を取ろうとした俺の一撃をはじきつつ俺の頭を横薙ぎにしようとしてきた。何とか頭をひねると、額を軽く剣が掠めていく。


「ユート!!」

「ヌウン!」


 体勢が崩された俺の様子を見て、爺さんが攻め手を取りに来た。俺は隠していた炸裂弾を足元に投げつけ、周囲を爆破してこの窮地を脱した。


「存外にしぶといな。連携だけでなく、剣以外の道具もうまく使っておる。うまく攻め手がとれんわい。そのような手段を選ばない戦闘、流石は冒険者と言ったところか」

「お褒めに預かり光栄だな」

「しかし、先ほどから何度も魔力を付与しているのに、貴様に触れるたびに霧散しておる。おかげで魔力を貯めることができんわい。それに、お嬢様がわざわざ直接治癒魔法をかけているのも奇妙だ。貴様、何か仕込んでいるな?」

「ご名答だよ。あんたの爆破魔法は対策させてもらってる」


 そう、この戦闘に臨む前に、俺は一部の地域で生息している特殊な在来生物の皮を粉末状に加工したものを全身や武器に振りかけていた。この在来生物の皮は魔力を拡散させる性質を持っており、フィリアのように直接魔力を流し込む魔法や俺が体内で行使する魔法には効果が薄いが、爺さんの爆破魔法のような対象に付与してくる魔力や放射された魔力は拡散される。効力は半日程度であり、この戦闘の間であればずっとその効果を発揮してくれるだろう。これで爺さんの爆破魔法はある程度封じることができたはずだ。怖いのは至近距離からの爆破や直接魔力を流し込んでの爆破だが、至近距離からの爆破はリスクが高いだろうし、何より魔力をあまり貯めさせなければ俺に致命傷を与えることは難しいはずである。


「先ほどの炸裂弾と言い、随分と用意が周到だな。いいだろう、その消耗戦、付き合ってやる」


 爺さんは消耗戦に覚悟を決めたようだが、こちらとしてはそれは避けたい、先ほどのように攻め手を取られても負けてしまうし、仮にずっと攻め手を継続できたとしても、俺の魔力、集中力、用意している道具が尽きてしまえば、負けるのはこちらの方だ。そうなる前にこの膠着状態から何とか突破口を導き出さなければならない。

 しかし炸裂弾や爆破魔法への対策、さらに言えば前回の戦闘の煙幕弾など、俺が魔法や剣術だけでなく外部の道具を多く使い戦闘することは相手によく刷り込めたと思う。爺さんが消耗戦を覚悟し俺の魔法や剣術だけでなく予想外からの道具に対応すべく気を配っている今なら、勝負をしかけられるかもしれない。

 爺さんに気づかれないように、フィリアに事前に決めておいた合図を出す。そしてもう一度爺さんに仕掛けようとする。爺さんが構え、俺に対応しようとした、その刹那。

 フィリアが思い切り、神器の入っているケースを爺さんに投げつけた。流石フィリア、タイミングは完璧だ。爺さんがまさか俺以外からの攻撃、しかも渡してはいけないはずの神器のケースの投擲という予想外の事態に驚き、一瞬体が固まる。この好機を逃す手はない。俺はそのまま投げつけられ宙に浮いているケースの影に隠れ、爺さんがケースを避けようとした瞬間に、振りぬくように爺さんの太ももに一太刀を浴びせた。

 いい一撃が入ったのだろう、爺さんは足を庇うように少しよろめく。これで、爺さんが俺たちを追いかける場合に支障が出るだろう。勝利条件を忘れてはいけない。俺たちはこの爺さんを打ち負かす必要はなく、逃げ切れればそれで勝ちなのである(もちろん、爺さんに一泡吹かせてやろうとは思っているが)。神器のケースは爺さんの足元に転がっているが、最悪回収できなくても、それはそれで仕方ないだろう。もとよりそういう作戦である。


「きさ、まっ」


 畳みかけるなら今だ。俺は追い打ちをかけると見せかけ、はたまた爺さんが構えた瞬間に閃光弾を投げつける。一瞬、まばゆい光が薄暗い辺りを照らした。俺とフィリアは事前に打ち合わせているので目をつむり対処しているが、爺さんはそうもいかないだろう。


「舐めるな、小童がァ!」


 突然の光で未だに辺りが見えていないだろう爺さんが、気配と感覚だけで俺に切りかかってくる。見えてないのに俺の位置が分かるとか、この爺さん反則だろっ。しかし、爺さんはまだ気づいていない。そう、フィリアがいなくなっているのだ。爺さんの攻撃を何とか潜り抜け、一度距離を取って一呼吸を置いた。


「やるな、小僧。儂もそろそろ、余裕を見せている場合ではなくなったか」


 段々と視力が回復してきたのだろう、爺さんの気迫が一段階上がる。この爺さん、どうやらまだ本気を出していなかったようだ。爺さんの底のなさに思わず呆れてしまうが、しかし局面はどうやら詰めに近いようだ。


「ッッ」


 爺さんがフィリアの不在に気づいたのだろう、驚き目を見開いた次の瞬間、排気音と共に、とんでもないスビードで何かの影が爺さんを轢いていった。吹き飛ばされ転がる爺さん。そして、今さっき爺さんを轢いていった影から声がかかる。


「乗って! ユート!!」






「わ、これが前に言ってたとっておき? すごいね、帝国産のバイクでしょ? よくこんなの隠しておいてたね。」


 あらかたの物資を回収し終え、俺たちは最後にとっておきであるブツを回収しに来た。


「知ってんのか? てっきり教国だと、こういうのは宗教上の観点から嫌われてるから、あまり使われてないと思ってたんだが」

「そんなのは一定以上の階級だけよ。私が孤児院にいた時は、町の人に隠れて乗り回したりしてたんだから」

「やんちゃ娘だなぁ…。じゃあ、こいつ運転できるのか?」

「たぶんできると思うよ。こんなに大きいのは乗ったことないけど」


 このバイクは、俺が冒険者稼業で稼いだ大半を使い、わざわざ帝国から買い付けた特注品である。前述した通り、共和国と教国の間の道は並大抵の車やバイクでは走破することができないのだか、こいつであれば可能なのは以前の経験から実証済みだ。


「フィリアが運転できるなら、作戦が色々柔軟に変えられそうだな」

「このバイクでセバスのこと思いっきり轢いちゃって、そのまま共和国に逃げちゃうってのは?」

「明け方とは言え、流石にバイクに轢かれるようなへまはしないだろあの爺さん。それに、万一バイクを壊されたら、大事な移動手段が消えるんだぜ?」

「そうよね…。流石にバイクで轢くってのは…」

「いや、最後に轢いてそのまま逃げるってのはいいと思うぞ。問題は、爺さんが轢かれてくれる状態を作り出すのが難しいってことだ。いや待てよ? 爺さんの隙を作れるように作戦を立てれば、あるいは…?」






 作戦はうまくいったようだ。爺さんが体勢を立て直せない内にすぐに逃げなければならないが、爺さんが吹き飛ばされ倒れているおかげで、幸運なことに何とか神器のケースも回収できそうである。剣を納めすぐさま数歩先の神器のケースを回収し、そのままフィリアが運転するバイクの後ろに乗ろうとすると―――。

 爺さんが何やら懐から短剣のようなものを取りだしている。まずい、狙われているのは彼女だ。そう思うと、俺はとっさにフィリアが爺さんに狙われないよう両手を広げ彼女の姿を隠そうと躍り出る。間に合うか。バイクで轢かれたダメージがまだ回復しきってないであろう爺さんは、それでも何とか上半身を起こし、手に持っていた短剣をフィリアへと投擲した。


グサァ


 短剣が俺の背中側の胸部に突き刺さる。よかった、彼女は庇えたようだ。しかし、致命傷は避けられたが、短剣が俺の体を貫通する勢いで深く刺さってしまった。上半身の力だけでこれほどの投擲を見せるとは、あの爺さん、最後の最後まで化け物である。


「ユートッ!!」

「出せっ、フィリア!! 今しかないっ!!!」


 爺さんはもう少しで回復し、こちらに襲い掛かってくるだろう。俺の傷を見ている暇はない。俺は崩れるようにバイクの後方に乗ると、なんとか神器のケースを抱えたまま彼女の背中に体重を預けた。


「ッッ」


 顔に戸惑いが出つつも、彼女がレバーとペダルを操作する。おびただしい排気音を吹かせながら、勢いよくバイクが発進していった。どんどん倒れている爺さんの姿が遠く見えなくなっていく。これで、なんとか逃げられそうだ。明けていく朝空を見て、俺はようやく安堵して目を閉じた。

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