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いじめられっ子の悪役令嬢転生記 第2の人生も不幸だなんて冗談じゃないです!  作者: 弥生真由
第三章 主人公の定義

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Ep.83 うちの使い魔は猫でなし

 新たな巫女候補と特定の参加者だけが集められた式典は、14時から始まる。ゲームのシナリオ通りにいくなら、マリンちゃんが指輪に選ばれるのは15時くらいの筈だ。


「ミリアちゃん、また顔色悪くなってた……大丈夫かな」


 お祭りへのぼっち参戦は皆に止められてしまったこともあり、一時間のこの空き時間の隙にちょっとキール君とミリアちゃんに会ってきた。でも、正直部屋に入るなり驚いた。ミリアちゃんにまとわりつくあの黒いモヤモヤがさらに増えて、部屋中に充満していたのだ!でも、見えているのはどうやら私だけみたいで、ミリアちゃん本人も、付きっきりで彼女の隣にいるキール君もその事には全く気がついていないようだった。

 何でかわからないけど私が魔力で出したお水を飲むと少し楽になると言うからいっぱい出して置いてきたけど、あんなの気休めにしかならないだろう。


 教会の方に帰るための森にできた遊歩道を歩きながら考える。


「マリンちゃんにミリアちゃんの治療を交渉する材料と、万が一他の人が巫女様に選ばれた場合の対策も考えておいた方が良さそうね」


「それはいいんだけどさ、さっきからどこに向かってる訳?」


「え?どこってそりゃ、巫女様の式典をやってる教会に……あれ?」


 私の隣を飛びながらついてきてたブランにそう言われて、ようやく気づいた。行きに通った道とは景色が違うことに。


「しまった、道間違えちゃったかな……」


 でも変だな、一本道だったはずなのに。


「えーっ!勘弁してよもーっ!」


「ごめんってば!でもほら、あっちの方明るいよ!出口かも!」


「あっ!急に走ったら危ないよ!!」


「大丈夫大丈夫!あ……!」


 鬱蒼とした林を抜けて開けた先に現れたのは、天高くそびえる二本の塔。気球から見たあの儀式の塔だった。


「えっ、十六夜と月詠の塔!?どうして……!?ここへの道には結界が張られてて近づけないってフライが言ってたのに……!」


「フローラ、不味いよ。ここ立ち入り禁止なんでしょ?」


「う、うん、そうだね。すぐに引き返し……て……」


 ブランに言われてバッと踵を返して走り出したけど、昼間見たあの塔が火事になる白昼夢の件が気がかりで足が止まってしまった。


 くるりと向きを変えて、白い方の塔……“十六夜の塔”の扉に手をかける。鍵は、かかっていなかった。


「勝手に入ったら怒られるよ!何やってんの!?」


「わかってる。でも、どうしても気になることがあるの。それに、高いとこから下を見れば帰り道もわかるかもしれないし」


「そりゃそうかもしれないけど……!だいたい、気になることって何!?」


「さっき気球に乗ってたときにこの二つの塔が焼け落ちるビジョンを見たの」


 言いながら扉を開くと、現れたのは純白の塔の中をひたすら上に伸びていく螺旋階段。すごいや、高すぎて上の方が霞んで見える。ひたらすら上へと登りながら、話を続けた。


「たくさんの人が消そうと水をいくらかけても鎮火しない、生き物みたいにうねる炎だった。あんな大規模な火事が起きたらお祭りどころじゃなくなってしまうわ」


「そのビジョンって、ゲームの方の知識?」


「ううん、違うと思う。この塔のイラストは公式には出てきていなかったから」


「だったら調べるだけ無駄じゃん、帰ろうよ~、何がそんなに気がかりな訳?」


 何で見えたのか、あの火事が本当に起こる出来事なのか、それさえ不確かなのに、不思議とわかる。塔を焼き尽くしていたあの炎は、紛れもなく魔力で作られたものだって。


 大分上ってきて疲れたから、踊場にあった窓を開いて外の景色を見ながら一息つく。街の景色は、平和そのものだった。


 たったひとつの窓から外に目を向けた瞬間、教会から図ったようなタイミングでキィンっと煌めいて天に伸びていった金色の光は、多分儀式でマリンちゃんが巫女の資質を表した証明だろう。ゲーム通りなら、新たな巫女を見つけた指輪は、その証明として金色に光輝くから。

 すぐに消えていったその煌めきを眺めながら、話を続ける。今は巫女の話より、塔の火事についてが優先だ。


「ここはスプリングで、今この辺りで炎の魔力を持っている人なんて数えるくらいしか居ないじゃない?それなのに、魔力の炎が原因で大規模な火事なんて起きたら……、真っ先にライトが疑われるわ。彼が今この辺りの中で一番強い炎使いだもの」


「ーっ!じゃあ、ライトに疑いが向かないように塔のなかに火事の原因がないか見回りに来たんだね?」


 ブランの問いに頷いた。


「そう言うこと!リスクは先に対策を打つに越したことはないもんね!さぁ、さっさと登ろーっ!」


「でも、もし何も原因が見つからなかったら言い訳すら出来ないよ。どうするの?」


「そのときは、何もなくて良かったって喜びつつ教会の人に一緒に怒られよう!!」


「嫌だよ、フローラひとりで行ってね」


「そんな薄情な!!ブランの意地悪、人でなし!」


「いや、僕元々猫だから人じゃないし」


「あう……っ!じ、じゃあ猫でなし!!!」


「うん、ボク今使い魔だから猫じゃないし」


「もーっ、あー言えばこう言うんだから!屁理屈言う子は可愛くないぞ!そんな子は……全身モフモフの刑だ!」


「わーっ!こらっ、くすぐったいから止めてーっ!」


「じゃあ降参する?」


「するする、降参するから!!」


 ばっと後ろから飛び付いてモフモフとお腹、喉、尻尾の付け根と猫が弱い所を撫でまくられば、あっけなくブランは降参した。


「全く、お転婆なんだから……。それでどうするの?天辺まで着いちゃったけど何もないよ?」


「えっ、嘘っ!!?」


ふふん、私に勝とうなんて百年早いわ!と胸を張った私を見上げ、ぐったりしたブランがそう言った。

 慌てて辺りを見てみると、確かに無限に続くんじゃないかと思うくらいに長かった螺旋階段がここでぷっつりと途切れている。


「えぇーっ、本当にここでおしまい!?」


 さっき一回だけ見つけた窓を除いて、この塔にはびっくりするくらいになにもない。窓も、扉も、もちろん部屋もだ。あるのは本当に、私たちが今上りきった螺旋階段だけ。

 確かにブランが言う通り、今私たちが居る最後の踊り場の周りも、円柱状に真っ白い壁に囲まれているだけで他はなにもないようだった。

 なんだか拍子抜けした気持ちで、ぺたんと踊り場の真ん中に座り込むら、


「うぅ、なにもなくて良かったような気もするけど、でもせっかくここまで上ってきたのに無駄足だなんてーっ!」


「ちょっと、仮にもお姫様でしょ?お行儀悪いよ。まぁなんにせよ怪しいところはないってわかったんだし、帰ろうよ」


「いや、無理。もう歩けないーっ!ブラン、私のこと抱えてその翼で空飛んだりとか……」


「出来るけどそれすっっごく魔力使うし疲れるから今は嫌」


「わーんっ、猫でなしーっ!!」


「あーもうっ、子供みたいなこと言わないの!」


「だって疲れたんだもんーっ!……あれ?」


「……?何、どうかした?」


 プルプルと疲れのあまり仔ジカみたいに震える自分の足を擦りながら、壁や階段と同じく純白の踊り場の床に視線を落とした時だ。一見無地のその床に、うっすらと模様のようなものがあることに気がついた。

 角度で見え方が変わる模様なんだろう。首を傾げたら更にはっきりとその模様が見えるようになって、そこでようやく踊り場一面に広がるこの模様が魔方陣だと理解した。立ち上がってみると、丁度私が座り込んでたその位置に、何かをはめてくださいとばかりに三つの小さな穴が空いているのがわかる。


「この穴の形って……」


 お母様がお守りに持たせてくれた三色の宝石を取り出して、その穴に当てて押してみる。はじめからそこに収まるべきだったかのように、三つの宝石はカチッと音を立てて穴にはまった。

 その途端に三つの宝石は強く輝きだして、石から光を流し込まれた魔方陣が淡く輝きだす。


「あっ……!」


「ーっ!フローラ、待って!!」


 何がなんだかわからないまま、飛んできたブランを抱きしめて、一瞬強く光った魔方陣に反射的に目を閉じて。

 ふわっと浮遊感を感じたあとそっと目を開くと、辺りの景色は一変していた。私とブランは、この魔方陣を通じて他の部屋に飛ばされたのだ。

 まっさらな白い壁に囲まれた殺風景な踊り場から一転、キラキラ輝く大きな水晶の柱が真ん中に鎮座した祭壇のような部屋を見回している間に、足元の魔方陣はふっと消えてしまった。


 水晶の向こう側にある大きな窓から外を見てみる。見える景色は高さがさっきより高いだけで、塔を登る途中で見た景色とほとんど変わらない。つまり、ここは私たちがついさっきまで居た“十六夜の塔”のてっぺんで間違いない。なら、何が起きたか予想するのは難しくない。


「なるほど、さっきの魔方陣は、この秘密の部屋に入るための“空間転移魔方陣”だったのね」


 空間転移魔方陣。初等科の頃結界について勉強したときの教本にちらっと載っていた、教会しか使い方を知らない古代魔法の一種だ。効果は名前の通り、魔方陣を通るとある場所からまた違う場所に一瞬で移動ができる。つまり、魔法の世界版のワープシステムだ。まさかこんな形で体験することになるなんて……。


 これだけでも驚きだけど、更にもっとびっくりなのは、天井まで届きそうな大きな水晶の中に閉じ込められた指輪だ。水晶越しでも肌がピリッとするくらいの強大な魔力を感じる。間違いない。これは聖霊の巫女様が使ってた指輪だ。


「あれ?でもこれって今は新しい巫女探しの儀式の為とか言って教会に持っていってるはずなんじゃないの?」


「ーっ!触っちゃ駄目!!」


 不思議そうに前足を水晶に伸ばしたブランを慌てて抱き寄せた。


「いきなり何するのさ!」


「この時間ならまだ教会にあるはずの指輪が何故ここにあるのかはわかんないけど、聖霊の巫女が使っていたこの“聖霊女王タイターニアの指輪”は、望まれない者が無闇に扱おうとすると拒絶反応を起こして魔力が暴走して大変なことになるみたいなの。さっき教会から金色の魔力が立ち上ってたし、指輪はもうマリンちゃんを新たな宿主に選んだ可能性も高い。だから、下手にさわらない方がいいわ」


 あくまでも、“ゲームの知識が一番正しいとするならば”の仮定の話だけど、リスクは避けるに越したことはないと思う。

 だから、腕の中で不満げにしているブランを撫でながら微笑んだ。


「色々不可思議な点は多いけど、結局この部屋も火事には関係無さそうだからもう帰りましょう?もう日も傾いて来た……し!?」


 そうブランに話しかけながら窓から外を見下ろした時だ。急に、街から少し離れた山中から黒煙が上がった。え、山火事!?


「ただの山火事じゃないかも、爆発の音がしたから」


 ピクッと耳を立てたブランが煙を見ながら言う。さっと血の気が引いた。


「大変!早く誰かに知らせなきゃ、戻ろう!……きゃっ!」


 踵を返して走り出したけど、その瞬間に地震(?)で塔がぐらっと揺れたせいで足が滑って転びそうになって、反射的に目の前にあった丁度いい場所に手をついてしまった。

 そう、よりにもよって、指輪を封じ込めた水晶に!!


「なっ……、何やってるんだよ馬鹿ぁぁぁぁっ!!」


 『やっちゃった!』なんて思う間すらなく、ブランの絶叫と共に、辺りは金色に包まれた。


     ~Ep.83 うちの使い魔は猫でなし~



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