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いじめられっ子の悪役令嬢転生記 第2の人生も不幸だなんて冗談じゃないです!  作者: 弥生真由
第三章 主人公の定義

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Ep.81 周りの優しさ

「癒しの魔力、癒しの魔力……やっぱ図書館には無いかぁ」


 聖霊の巫女様のお祭りの為スプリングに向かう三日前、明日には私も、お祭りの参加者である皆も一度故郷に帰る。まぁ結局、私は巫女を選ぶ儀式の広間には立ち入り禁止になっちゃったけどね。

 その前にもう一度自分で聖霊や癒しの魔力について調べてみようと、私は今学院内にある一番大きな図書館に来ていた。マリンちゃんにこの間言われた、『誰かに頼らなきゃ何も出来ないんですね』と言う一言が、地味に心に突き刺さったまま尾を引いてるのだ。実際、ミリアちゃんの病気の件だってヒロインであるマリンちゃんに治して貰えないかお願いする気でいた私は、考えが甘かったんだと思う。


(あのマリンちゃんはどうにもゲームのヒロインちゃんとは性格が違うし、癒しの魔力に覚醒したとしても彼女がミリアちゃんを助けてくれる確率は低いような気がする。やっぱり人頼みにしないで、私に出来ることが無いか調べなきゃ……!)


 未だになおる目処は立たないミリアちゃんの病気、ゲームと大幅にずれたマリンちゃんの性格。それに何より、私は何もしていないのにシナリオ通りに起こった空中庭園荒し事件……。これが私をシナリオ通り悪役にするために起きたものなのか、それとも儀式の香水を狙った第三者によるものだったのか……ここ数日、私はそんなことをグルグル考えてしまってあまり眠れなくて、寝不足だった。これがよくなかった。

 

 次の本を取ろうと脚立から身を乗り出した瞬間に、めまいに襲われてくらっと体勢が崩れたのだ。


「しまっ……!」


 天井近くまである高い脚立から落ちるのと同時に、悲鳴にならない声が反射的に口から漏れる。


「きゃっ……!」


「危ねぇ!!」


 身構えて目を閉じたけど、私の身体は床に叩きつけられることはなく誰かによって抱き止められて……そのまま二人して図書館の床に尻餅をついた。そっと目を開いた私を見て、ライトが呆れたように息をつく。


「ったく、何してたんだよ馬鹿……、危ないだろ」


「ごめんなさい……、ありがとう」


 私を抱き抱えたままため息をついたライトの仕草に、また迷惑をかけた申し訳なさにうつ向く。下を向いた私の頬に、ライトの温かい手のひらが触れた。

 優しいその手は無理に私の顔を上げさせることはせずに、労るような眼差しでライトが私の瞳を覗き込む。その優しい深紅の瞳につい甘えそうになって、慌てて首を横に振った。


「顔色がよくないな、お前……やっぱりこの間あの女に何か言われたんじゃないのか?」


「……っ!な、何もないよ?元気だよ!お祭りが楽しみ過ぎてちょっと寝不足だっただけ!」


「本当かよ?とてもそうは見えな……」


「もーっ、本当に元気だったら!過保護だなぁお父さんは」


「って誰がお父さんだ!」


「あいたっ!」


 スパーンっとライトの平手に叩かれた額を擦りながら、まだちょっと震えてる足を叱咤して立ち上がる。


「じゃあ、明日の支度もあるし私行くね!助けてくれてありがとう!!」


 ニコッと笑ってそれだけ告げて、その場から走り去るフローラ。彼女に逃げられ空になった自分の腕を見下ろし、ライトはため息混じりに呟いた。


「無理して笑ってんのバレバレなんだよ、あの馬鹿……」









 ミストラルに帰ってきてからも聖霊について色々調べたけど、特にめぼしい情報は出てこなかった。そりゃそうか、市販本で調べてどうにかなることならわざわざ国家規模のお祭りにして次の巫女様を探したりしないし、キール君とミリアちゃんだってあんなに苦しんでないよね。でも、何もできない自分の無力さが歯がゆくて……夜になっても全然寝付けなくて。

 王宮の中庭でベンチに座っていたら、不意に後ろから優しく抱き締められた。


「ひゃっ……!お、お母様!?」


「あらごめんなさい、驚かせてしまったかしら?……眠れないのね」


 いたずらっぽく微笑んだあと、心配そうな顔になったお母様がぎゅうっと私を抱き締めたまま優しく頭を撫でてくれる。こんな甘やかされ方をされるのは初めてで、急にどうしたんだろうと戸惑いつつ、母からの愛情による安心感に力が抜けた。だからか、誰にも言えずにいた本音がこぼれ落ちる。


「はい……、なんだか、いつもいつもお友達の皆に助けてもらってばっかりの自分が、歯がゆくて。頑張ってもから回って結局無駄になっちゃってばっかだし。私にも、大切な人達を助けてあげられる力があればいいのにな……」


 そう呟いた私を見て、お母様は穏やかな微笑みを浮かべた。そして、私の掌にそっと、小さな袋を握らせる。

 

「お母様、これは?」


「私が母から昔貰った三つの宝石と、ご先祖様の写真よ。お守り代わりに持ってお行きなさいな。フローラ、お母様はね、貴女が皆からの優しさにあぐらをかかずに、自分も誰かのために頑張りたいって思えるような優しい子になってくれてとても嬉しいわ」


 そう笑ったお母様がくれた袋の中には、小さく畳まれた一枚の写真と、赤、緑、黄色の三色の宝石が一粒ずつ入っていた。


「誰かを思って起こした行動は、決して無駄にはならないわ。今は色々迷っていて苦しくても、貴女は貴女の大切な人達の為にどうしたいのか、どうなりたいのか、それさえ見失わなければ大丈夫よ」


「私が、みんなの為にどうしたいのか……」


 子守唄みたいな優しい声で紡がれるお母様のその言葉が、すとんと自分の中に収まった。少しだけ、進みたい道が見えてきた気がする。


「ありがとう、お母様。もう大丈夫です!」


「そう、良かったわ。じゃあ、おやすみなさい」


「はい!……でもお母様、私が悩んでるってよくわかりましたね」


 自分では、中々上手く元気なふりできてたと思ってたんだけどな。


「ふふ、母親の勘よ。……と言いたいところだけど、本当はね、ライト様からお手紙が来たのよ。フローラが今色々と不安がっているから、帰ってきたら思い切り甘やかしてあげてほしいって」


「ライトが!?」


「えぇ、一生懸命考えて書いてくれたのでしょう、何回も書き直したあとがあったわ。いいお友達を持ったわね。はい、こっちは貴女宛よ」


 そう言って笑ったお母様が差し出した封筒を開けたら、『お父さんの前で強がろうなんざ100年早い!』と書かれたメモが出てきた。


「ふふ、ライトらしいや」


 不器用なその優しさに、じんわりと心が温かくなる。お母様とライトのお陰で、久しぶりにぐっすり眠れそうな気がした。


   ~Ep.81 周りの優しさ~


   『それは決して当たり前じゃないからこそ、とても大切な宝物』

 


 


 




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