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いじめられっ子の悪役令嬢転生記 第2の人生も不幸だなんて冗談じゃないです!  作者: 弥生真由
第二章 回りだす歯車

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Ep.63. 5 宵闇の陰謀者

「くそっ!また逃げられた……っ!何故だ、僕では相手として不足だとでも!?」


 パーティー会場でフライにバイオリンの演奏勝負も断られ、挙げ句には魔力まで使って逃げられたキールは憤っていた。婚約者にだけは心配かけまいと無理に微笑んだまま彼女の部屋まで送ったが、我慢していた分帰りの足取りは荒い。

 この苛立つ姿を他人に見られてはまずいと突っ切ることを選んだ、寮に続く林は見通しが悪く、まるで自分の未来を見ているようだとキールは思った。


「早くあの男に勝たないともう時間が無いのに……!どうしたらあいつを本気にさせられるんだ!!」


 怒りに任せて魔力を放つと、立派な木が3本、すっぱりと切断され崩れ落ちた。能力には自信がある、今なら手加減など微塵もさせないほどに自分はなったはずだ。なのに、何故相手にされないのか。

 

「ふふ、悩んでるわね。手を貸してあげましょうか?」


「ーっ!?誰だ!!?」


 切り裂いた木々の向こうから響いた声音から、相手は女だとわかる。キールの前に現れたのは、ここ最近学院内で婚約者の有無さえ問わず男を堕としていると噂の特待生“マリン・クロスフィード”だった。


「……すまないが、婚約者が居る男にさえ手を出すような浅ましい女に助けられるほど落ちぶれてはいない。不愉快だ、失礼」


 そう言い切って追い抜いた……はずだった。


「あら、つれないのね。せっかく写真も持ってきたのに」


「……っ!?」


 追い抜いたはずのマリンが一瞬でまた目の前に現れ、ヒラヒラと二枚の写真を揺らす。顔をしかめるキールを他所に、マリンは悠々と語り出す。


「ようは貴方、本気になったフライ様と勝負したいんでしょ?なら簡単よ、方法教えてあげましょうか?」


「……っ!」


 そんな誘惑はね退けて、魔力で飛んで逃げればよかったのに、つい足が止まった。


「話を、聞こうか」


 短く答えたキールに、マリンがにやりと笑う。


「そうこなくっちゃ!簡単よ、本気にさせたいなら、相手を思い切り怒らせてやればいいの」


「……確かに、怒りは感情の中で特に暴走しやすいものだけど無理だ、そもそも怒らせる材料がない」


 期待外れだった。そう再び歩きだそうとしたキールに、マリンが笑う。


「あら、あるわよ?流石に悪役に騙された可哀想なゲームキャラでも、大事な人傷つけられたら怒るプログラムくらいあるでしょ、多分」


「……何を訳のわからないことを」


「こっちの話よ、まぁようは、流石にフライ様も大切な人を傷つけられたら怒るでしょっては・な・し!だから知りたくなあい?フライ様の弱点になる人間が誰なのか」


「ーっ!」


 その誘惑に思わずマリンが持つ写真にキールの手が延びる。マリンがそれを叩き落とした。


「誰がただって言ったの?世の中ギブアンドテイクよ、これが見たいなら、私の目的にも協力して頂戴」


「……目的とは?」


「大したことじゃないわ。ただ、ほしい花があるのよ」


「……その入手に尽力すればよいんだな」


「話が速くて助かるわ、契約書もあるから一度約束したら破れないけど、どうする?」


 マリンが指を鳴らすと、彼女の執事が魔力を込めた特殊な契約書と羽ペンが現れる。キールは躊躇わず、そこに自分の名を記した。


「契約完了ね。貴方の力が居るときがきたら た連絡するわ。それまでは好きになさい」


 マリンがバッと、目当ての写真を放り投げる。あわてて宙を舞う写真を回収してキールが振り向くと、マリンはもうそこには居なかった。


「不気味な少女だな……」


 『だが、良い情報をくれた』。怪しく光るメガネの先。キールの手に握りつぶされたそこには、フライに額に口づけを落とされたフローラの姿が写っていた。


    ~ Ep.63. 5 宵闇の陰謀者~


  『少女は一人夜を行く、己の欲がそのままに』




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