後日談第四話 義兄夫婦を眺めながら 〜sideサラ〜
「いっときはジェシカ様の代わりに皇太子妃になる覚悟を決めなければならないかと思っていましたが、どうやらその心配はなさそうですね」
「一度素直になっただけであの変わりようなんだから、本当に驚くよ。兄上は少し、いや、かなり浮かれ過ぎだ」
部屋の中で静かにお茶をいただきながら、私はハミルトン様と窓から階下を見下ろしている。
視線の先には、王宮の庭園にて、お菓子を片手に何やら語らうジェシカ様と皇太子殿下の姿があった。
その仲良さげなことと言ったらない。お互いに菓子を食べさせ合い、皇太子殿下が恥ずかしそうに顔を赤くしていた。
平和過ぎるというか、呑気というか。その光景に私はそっと安堵する。
あの二人が一度離縁しかけたなど信じられないくらいだ。
さっさとくっついておけばここまで気を揉まさせられることもなかったのに、と少しは文句を言いたくもなるが……あまりに二人が微笑ましいので、その気も失せてしまうのだった。
皇太子夫妻は今日もお熱い。
――まあ、愛し合っている度合いで言えば、私とハミルトン様も負けている気はしないけれど。
「あの二人のことはもういい。サラ、わたしたちも」
「もちろんです」
カーテンを閉め、私はハミルトン様を振り返った。
美しさで言えば皇太子殿下の方が上。でも、私にとっては皇太子殿下よりも何倍も魅力的な顔がすぐそこにある。
ハミルトン様の両腕が伸びてくる。もちろん、私はそれを受け入れ、抱きしめられた。
「これからも公務にさして時間を奪われることなく、好きなだけサラと過ごせると思うと嬉しいな」
「ふふっ、そうですね。……でもいつまで二人きりでいられるかはわかりませんよ?」
ジェシカ様が皇太子殿下と閨を共にせずに白い結婚をしていた間、うっかり身籠っては面倒臭いことになると思ってハミルトン様と体を重ねることは控えていた。
でも今の皇太子夫妻なら心配はいらないと思ったので、最近になってようやく子作りに励めるようになったのだ。
身籠るのはジェシカ様が先か私が先か。もしかするともうジェシカ様はその身にお子を宿しているかも知れない。
どちらにしても、王家の……そして私たちの未来は明るい。
「サラは気が早いな。君の生む子は女でも男でも可愛いだろうね。見られる日が楽しみだ」
「きっとその日はそう遠くないですよ」
私とハミルトン様は唇を重ね合わせ、濃厚な口付けを交わす。
今は真昼だけれど関係ない。薄暗い一室で、思う存分愛し合った。













