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95話 魔王戦

戦闘が開始して5分ほどが経過した。リアは魔王の出方をうかがいながら、まずは防御に専念していた。そして一つ違和感を覚えた。あまりにも魔王の攻撃が弱いのだ。あれだけの魔力があればもっと高威力な魔法を何度でも打つことができるのにそれらではなく、リアの知らない魔族っぽさあふれる魔法しか使っていない。その魔法がどんなものかまでは分からないが、リアにダメージが与えられないのは確かだ。魔力量的にはリアにダメージを与える魔法も使えるはずである。


「何でそんなに威力の弱い魔法しか使わないのですか?『魔導王』を名乗るには威力がお粗末ではありませんか?」


煽る意味も込めて魔王に尋ねるリア。しかし魔王は冷静に答える。


「魔王は使える魔法に制限があるのだから仕方あるまい。魔族になった途端、前世で使えていた魔法やスキルもすべて使用できなくなり、『勇者』の称号を持つ者にはほとんど効果をなさない魔法しか使用できなくなったのだから。これらの魔法は普通の人間や魔族なら簡単に殺すほどの威力があるが『勇者』にだけは効果がないのだよ。」


「では、このまま私が突っ込んで切り伏せればあなたは死ぬということですね?」


「聞き方がアレだが、まぁそうだな。」


魔王のその返答を聞いてリアは歩いて近づきだした。その間も魔王は話し続ける。


「最後に一つだけ教えておいてやろう。今の我の状態こそがこの世界の【創造神】から与えられし『魔王』の使命なのだ。先代の『魔王』を倒したものは次の『魔王』となり、さらに次の『魔王』にその役目を引き継ぐべく次の『勇者』と戦い戦死することがな。もし『魔王』になろうとしなかったりしようものならおそらく【創造神】に無理やり『魔王』にされるだろうな。お前さんは何年『魔王』として生き続けることになるのかね。」


「私は永劫の時を魔王として生き抜いて見せます。たとえそれが【創造神】の意に背くものだとしても。」


「そうか。それは見てみたいものだが我はここまでのようだな。この役目から解放される日を我は待っていたのだ。かといって何年たっても人間への憎しみは消えなかったが。人間の国をいくつも滅ぼした罪深い人間ではあるが、どうか一思いにやってくれ。そして死んでからでは言えないので先に言っておく。」


そういうと、魔王は一拍間を開けて


「ありがとう」


そういった。それと同時にリアが振り上げた剣が『魔王』キョウを切り裂いた。

その日、かつて『最優の勇者』とたたえられ、人間たちからも慕われていたが、魔王を倒したことで化け物のように扱われ、その身を魔に堕とした一人の元勇者の命が失われたのだった。


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