93話 『魔王』キョウ
いつも通り転移したリアは、目の前にそびえる城を見上げる。一見すると一国の王城に見えるが、周囲には何もなく草原が広がっている。こここそが魔王城。
元勇者が住んでいるのもあり、清潔感のある内装だった。そしてリアは【マテリアルサーチ】で大きな反応を捉えている部屋があるのを感じていた。しかし、まっすぐそこに行くことはせず、いずれ自分が住むことになるかもしれない城の構造を把握することにした。
3階に分かれており、1階は通路と、厨房、個人用の部屋が200部屋ほどあった。
2階は、どんなモンスターでも入れそうなほど広い大浴場、幹部たちが使っていたと見られる、1階よりも豪華な個室。そして3階は階段を登った先に扉があり、そこからは強大な力を感じるつまりそこが魔王の部屋ということだろう。
城の中にはいくつか魔法陣も設置されており、それを起動させると、1箇所につき10万人ほど収容できそうな巨大なマンション?のようなものがあった。ここに下っ端たちが住んでいたのだろう。
そして3階の扉を少しだけ開けて中の様子を伺う。部屋の中央付近にここに立てと言わんばかりの魔法陣が設置されており、その奥では玉座に座った魔王が眠っている。おそらくあの魔法陣の上に立つか魔王を直接攻撃するもしくは起こさないようにすれば中に入ることもできそうである。とりあえず音を立てないように部屋の中に侵入し、魔王を{鑑定}する。
キョウ 魔族 121歳
スキル{眷属召喚}{魔王}{魔導王}
Lv.72
HP 1000
MP 5000
STR 0
VIT 1000
RST 3000
AGI 200
魔法:全魔法(禁呪含む)
称号:魔王、魔導王、魔神
魔王も神の力を帯びているようだ。しかし、レベルとステータスは人間では歯が立たないだろうが、リアの相手ができるほどではない。
スキルについても特殊なものではあるが、やはり圧倒的に勇者に弱いスキル構成になっているような気がする。対勇者ならばサリスたち幹部らの方が強いように見える。しかし、魔王のスキルは魔族に対して圧倒的な力を示すものであり、サリスでも勝つことはできないだろう。だから、魔を統べる王『魔王』なのだろう。
そしてリアが気になったのはそこではなく、その奥、魔王が座っている玉座の奥に微かに魔法陣のようなものが見えた気がした。おそらくあれが魔王になるための何かしらの鍵を握っているのだろう。少し{鑑定}したところ、魔王もしくは魔王を倒したものしか発動させることができないようになっているらしい。
つまり、リアはここで魔王を倒すことでこの魔法陣を発動することができる。
リアは覚悟を決めて部屋の中央にある魔法陣の上に立ったのだった。




