89話 親子の戦い
丘の上に着いたリアたちはお昼ご飯などの荷物を木の影に置き、2対1で対峙した。
もちろん、リリスとアランが隣に立ち、それに向かい合う形でリアが立つ。
「それじゃ、あ母さんにもお父さんにも攻撃はしたくないから2人が限界になるまで私が攻撃を受けなかったら勝ちでいい?1ダメージでも与えられたら2人の勝ち。私のHPはスキル{鑑定}を応用して私の頭上に表示しとくから。」
「それだとお前が怪我をしないか?娘に怪我はさせたくないんだが。」
「私もお母さんも回復魔法が使えるし大丈夫でしょ。それに一撃も受ける気はないし。」
「言ってくれるな、リア。いいぜ、本気で行ってやるよ。リリス、サポートを頼む!」
「わかったわ。」
そう言ってリリスがアランに支援魔法をかけ、アランがスキル{超速剣}で切り掛かってくる。しかし、リアはそれを支援魔法もなしにかわす。
アランが的確に切り掛かってくるが、どれも当たる素振りを見せない。しかし、リアはおそらく新たなスキルを発動しようとしていることに気がついていた。
{鑑定}でアランを見たところスキル欄に{必中剣}というものがあった。
おそらく名前通りのスキルだろう。この世界のスキルはどんなに小さくとも声に出さないと発動できない。しかしアランの剣は素振りでもなる音がかなり大きいので小さな声で言われてはわからない。なのでかわしながらもアランの口元を観察する。
しばらくしてかすかにアランの口元が動いた。
その直後の一撃をリアはかわしながらも剣を抜いてそれで受けた。
すると確実にかわしたはずなのに剣に感触があった。そこでアランが驚いた表情を浮かべ、一旦下がった。
「よく見抜いたな。気づかれないようにスキルも使ったっていうのによ。」
「{必中剣}なんていうスキルがあったら警戒するに決まってんじゃん。私が{鑑定}スキル持ってるの忘れたの?」
「そういやそうだったな。じゃあ次のプランだ、リリス頼む」
アランがこちらに接近して近接戦をしている隙に魔法を叩き込むと言ったところだろう。しかも聞こえてくる詠唱からして自然系統上級魔法【マリオネットネイチャー】だろう。なかなかいいコンボだが、リアには効かない。
アランが切り掛かってくる直前、
「【マリオネットネイチャー】」
リリスがそう唱えると同時にリアを拘束しようと付近にあった蔦が伸びてくる。しかし、その蔦はギリギリリアに触れない位置で止まる。
そのままリアはアランの攻撃を剣で受ける。今回は確認していないが、万が一{必中剣}を使われていたらいけないからだ。
アランの背後から何かいうリリスの声が聞こえるが聞かなかったことにする。
RSTが高ければ高いほど魔法の効果は弱まる。今のリアは1万を悠に超えているので【地獄の業火】以外でダメージを与えるのはほぼ不可能だ。では、魔法で具現化したものではなく周囲のものを操る【マリオネットネイチャー】のような魔法はどうなるのか
それは一切の影響を及ぼせないのである。今回蔦がリアに触れられなかったのもこれが原因である。
そんなことを知らないリリスは魔法を使い、アランは切り掛かり、1時間ほどが経過した。アランの体力も限界を迎え、リリスの魔力も尽きてしまったのでリアの勝ちとなったのだった。




