88話 家族
目の前でアランが号泣している。
昔とあまり変わらない母に対して、父はかなり涙脆くなったようだ。
「お父さん、せっかく帰ってきたんだから泣いてばっかじゃもったいないでしょ!せっかくだから私がいる間は昔みたいにみんなで楽しく過ごそう!」
娘にそう慰められるほどだった。
その夜は、みんなでリアの帰りを夜遅くまで祝った。そして翌朝、リアは早い時間から起きていた。リリスはそれよりも早く起きていたが、アランはまだだった。
「あら、リア早いのね。もうちょっとゆっくり休めばいいのに。」
「ちょっとお父さんに用事があって家を出る前に声をかけたかったから」
リアがそういうと、アランがタイミングよく起きてきた。
「おはよう。リアも早いんだな。どうした、2人揃って俺の顔を見て、なんかついてるのか?」
「いや、リアがちょうどあなたに話があるって言ってたから」
「おぉ、そうなのか。で、話ってのはなんだリア?」
「話っていうより、私がどれだけ強くなったかを見て欲しくて。お父さんとお母さん2人同時に相手したいんだけどいいかな?」
「おっと、思ってたよりもすごいこと言い出したな。あれから俺もお前に負けじとさらに腕を磨いたんだ。母さんと2人ならリアでも勝てないかもな」
そう言って高笑いしながら歩いていく。
「よしわかった。それじゃあ、昔ゴブリンキングと戦った丘でやろうか。リリス、お昼に弁当作って行ってみんなで食べよう。」
「はいはい。全くアランったら勝手なんだから。リア、あなたもアランに似てるところがあるから気をつけるのよ。」
そう言いながらも料理の手は休めない母に
「はーい。」
とリアは返事をした。
そして、家族そろって朝食をとり、数年ぶりに家族で過ごす時間を楽しむことができ、リアは、これまでの戦いで失っていた、自分という存在を少しずつ取り戻しているような気がした。
そして、2年くらい前まで、毎日通って魔法の練習をしていたあの丘にリリス、アランと共にリアは再び立つことができたのだった。




