87話 帰郷
国からの任務である各国の救援、すなわち世界を救う任務を終えたリアは、その任務の中で、自分を失ったと言ってもいい。そんな自分を少しでも取り戻すために両親の元へ帰ることにした。
転移魔法や、身体強化で爆速で帰る気分にもなれなかったので、歩いて帰郷することにした。
こうやってゆっくり歩いていると、キルスに来る時には気づけなかったことにいくつも気づく。
他の地域、ルートに比べてモンスターが少ないが、他の馬車などは通っていない。そしてモンスターに遭遇しても身を潜められるような茂みがたくさんある。
旅立つ自分に両親がどれだけ気を遣ってこのルートでキルスに行かせてくれたのかをここで初めて実感した。そして、世界中から指名手配されていることが申し訳なくなった。
娘が指名手配されているから態度を変えるなどといったことはしないような人達ではあるが、それでも申し訳なく思ってしまう。
3日ほどかけて、リアは生まれ故郷である、ニケ村へと帰ってきたのだった。
両親には何も伝えずに帰ってきたので、2人からすればかなりのサプライズだろう。
約2年ぶりに実家のドアの前に立つ。そしてドアをノックすると
「開いてるのでどうぞー」
と柔らかな母の声を聞いた。
そしてゆっくりとドアを開けると、リアは2年ぶりに母にこの言葉をいい、母からも2年ぶりに贈られる言葉があった。
「ただいま、お母さん」
「お帰りなさい。リア」
リアはまるで自分の帰りを知っていたかのような母の言動に少し戸惑いながらも母の元へ歩み寄った。
「やっと帰ってきたわね。リーンから一昨日!リアが帰ってくるっていうのを聞いていたのよ。しかも移動めっちゃ早いから1日で着くとか言ってたけど結局3日後だったじゃないあとで文句言っとかないと」
リリスのその言動でその場の空気全てがぶち壊れた。
「リーンさんと連絡取ってたの?」
「えぇ、でもほんとに帰ってきてくれるなんて嬉しいわ!」
「うん、本当はすぐに帰ってくることもできたんだけど、ここまでは自分の足で一歩ずつ踏み締めてきたかったから」
「そう、それはともかく。リアも成人したんだし、今日はパーティーよ!アランが帰ってきたらどんな反応をするか楽しみね!」
そう言ってリリスは楽しそうに料理の準備を始めた。幼い頃もこんな感じだったなとリアは昔を思い出していた。




