84話 罠
しかし、両親の元へ向かうとは言ってもすぐに行くことはできない。なぜならば、彼女は今この世界を救う依頼を受けているからだ。しかし、それも今救ったこの国の大臣と話をつけて、国王に報告すれば終わりである。
今回の戦いはこれまでとは比較にならないほど数が多く、苦戦こそしなかったものの、リアの魔力でも、ギリギリ足りた程度だった。魔力が回復するまでは転移魔法も使えないので今日はこの国に泊まることになるだろう。走って帰るという選択肢もないことはないのだが、この国は、クヌム王国から最も遠い場所にある国なので流石に明日まで待って転移したほうが早いだろう。
とりあえず、この戦いについてこの国の上層部に報告しなければならないので、大臣に終わったら来るよう指定されていた屋敷に向かうことにした。
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屋敷の前まで来たのだが、これはヤバい。見た目は綺麗だし、とても大きく立派な屋敷に見える。しかし、{マテリアルサーチ}で強力なモンスターの反応をいくつか感じる。
しばらく{マテリアルサーチ}を使用していなかったリアだが、スキル【創造神】の使用を控えているので他の魔法で全てを応用できるようにしているのである。ほとんどは魔力の前払いをして、常に発動させているので魔力切れを起こしても問題がない。
その{マテリアルサーチ}で確認できたのは、ゴブリンキング1体、オークキング1体、リッチー1体、オーガロード1体である。
オークキングはその名の通り、オークの上位存在で、配下のオーク達を召喚し、意のままに操ると言われている。
リッチーは、アンデッドの中でも魔法に特化した上位種族である。骨に腐肉が付着したような見た目をしていていて気持ち悪い上にニオイもキツい。
そして最後、オーガロードである。これまでの3体はリアも戦ったことがあり、余裕で勝てる相手ではあるが、こいつはなんなのかそもそもわからない。
オーガでさえ、魔王軍の指揮官を務めている個体がいたほどに強い種族だが、それの上位種族ということだろうか。そうなると、魔力切れのリアには少し厳しい相手かもしれない。
しかし、一つだけわかることがある。他の3種族、特にオークキングは、自分勝手な考え方をするものだ。それにも関わらず、暴れないということは、それだけオーガロードが強い、もしくは召喚主が絶対的な強さを持っているということである。
一度引いて、魔力が回復してから戻る手もなくはないのだが、背後に人の気配を感じる。おそらく、もう大臣たちには伝わっていることだろう。
なけなしの魔力で上級魔法一つくらいなら使うことはできそうだが、それで倒せないことくらいはわかっている。
この状況で最も効果的なのは、おそらくその魔法で残りの3体を全て倒してしまおうことだろう。
オーガロードはこちらに気が付いているのか、敵意を向けてきている。そして中に人はおらず、モンスターたちは野放しにされている。自身の暗殺を狙ったもので間違いないと確信したリアは屋敷の扉を開くことなく魔法を発動させる。




