82話 世界を救う勇者
それからリアは世界中を救って回った。救うことができた国もあったが、2ヶ国だけ救援に行くのが遅く、すでに消滅してしまった国もあった。救援に行くのが遅かったというのは、他国との関わりが少なく、襲撃されているという情報が他国に知れ渡っていなかったのだ。これに関してはリアでも救えないので仕方がない。
しかし、リアには一つの疑問があった。
それは、これほどの軍勢をどこから集めているのかということだ。軍勢はすべて食事を必要としない種族で編成されていたので、資金的なものは納得できるが、どれだけ考えてもどこにそんなに大量の軍勢を隠しているのかがどうにも腑に落ちない。
召喚魔法では召喚主の付近でしか活動できないはずであるが、各国で同時に襲撃されていたりもするので、召喚されたというのは考えづらい。そのうえ、召喚できない上位種族などもいたので、それはあり得ないだろう。
そうなると、魔王が魔族を生み出しているのか、別の世界から呼び込んでいるかのどちらかになるわけだが、どちらも現実的ではない。魔王の特殊能力と言われてしまうとそこまでだが、そうだとしてもどうにも腑に落ちないのである。
仮に魔族を生み出しているとしたら、上位種族が多く存在していることに説明がつかない。そして、別の世界から呼び込んでいるというのは、そもそもほかの世界に干渉できるなど、それこそ【創造神】以外にできる所業とは思えない。それにそんな引き抜きのようなことをしてしまってはその世界の【創造神】と争いになってしまうだろう。
スケルトンキング以降、リアが苦戦するような敵が現れることはしばらくなかったが決してそのどれも弱いわけではなく、どの軍勢も世界を滅ぼしうる軍勢だった。そしてなぜ、魔王が今になってこのように襲撃を始めたのかさえいまだに判明していない。
とにかく2つの国がこの襲撃によって滅ぼされ、その他の国は勇者リアによって救われたという事実が残るのみだった。
その中の一部の国、主に勇者がこの活動を始めた初期のころに救った国の中には勇者リアを抹殺しようとする国もあったが、ことごとく失敗した。
そして、その中で1か国、無謀にも勇者リアに宣戦布告をした国があり、その国は勇者リアによって戦力の多くを奪われ、ついには降伏し、クヌム王国の傘下に入った。
その一件以降、勇者に敵対する国はなく、皆がその指示に従い、救われるという代り映えのない作業と化してしまったのでリアはそれぞれの国にかける時間を短くし、1日で3か国を救う日もあった。
この世界はとても広く、小国も含めると全部で203か国あり、それらすべてに魔王の軍勢がバラバラに押し寄せた。それらのすべてをいなし終わったころにはリアは13歳になろうとしていた。




