74話 人間
リアの魔法が跳ね返され、それにより敵の存在に気付いたスケルトンキングはすぐさま配下たちに指示を出した。
「テキシュウダ。ジョウクウニイルアノニンゲンヲウチオトセ。」
骨の体だからなのかカタコトではあるが的確な指示を出す。
そしてユニークスケルトンメイジたちによる攻撃が行われ始めた。しかし、リアがすべての魔法を回避しているのを見るとすぐに数体のユニークスケルトンメイジが集まり儀式魔法の詠唱を始めた。
儀式魔法というのはその名のとおり複数人の力を合わせて発動させる魔法の事である。
そんな魔法の詠唱をしていることをリアは知らない。そもそもかなり離れているのですべての敵の姿が見えるわけでもなく、声も聞こえないのだ。それだけでなく、儀式魔法を行使していないユニークスケルトンメイジは継続して魔法を打っているのでリアからしたら何も状況は変わっていないのだ。
それに加えてまだリアは相手を甘く見ていた。何かの結界で魔法が偶然効かなかっただけだと考えていたからだ。ここしばらくの戦闘すべてで苦戦することがなかったことが祟ったのだった。
そして魔法が発動する。
「「「ギシキマホウ【マリョクボウガイ】」」」
ユニークスケルトンメイジがそう唱えると同時にリアは地面に向かって落下し始めた。唐突に魔法の効果が消滅し、飛ぶことができなくなったのだった。
もちろんリアはとても焦った。そもそもこの高さから落ちたら無事では済まないだろう。しかしもう魔法を発動させるほどの時間はない。ここは自分のフィジカルとVITを信じて少しでも受け身を取るしかないだろう。
リアは地面に落ちると同時に体を回転させ、少しでもダメージを軽減しようとする。しかし、いざ体が地面に触れると、受け身を取ることはできたが、大きな衝撃と全身に激痛が走る。それと同時にリアの意識が闇に染まりそうになる。
人間がかなりの高度から落ちたのだ。命があるだけでも儲けものと通常は考えるだろう。しかしここは戦場である。敵の前で気を失おうものなら確実に殺されてしまう。
そしてだんだん暗くなり視界が失われていく中、リアはユニークスケルトンナイトが近づいてくるのを見た。
そんな中、リアはひとつの当たり前のことに気が付いたのだった。
それはこれまで彼女が強すぎたうえに、彼女と対峙するものが強大であり、それを打ち倒すことができたせいで気が付くことができなかったこと、すべてを魔法で解決していたからこそ気づくことができなかったことに。
自分はどれだけ強くても人間である
ということに。
そしてリアの意識は闇に飲まれていく。




