73話 スケルトンの軍勢
王城から離れたリアは町の外を目指して歩いていた。町中の様子を見たかったので早く移動することはなく、ゆっくりと移動していた。町中には人は少なく、いたとしてもそのほとんどが絶望の表情を浮かべていた。
国民全員を徴兵するという横暴な政策に巻き込まれているので当然だろう。しかも相手はほぼ勝てないと分かり切っている相手だ。そんなものは絶望以外の何物でもないだろう。
あまりにもひどく、ここから得られるものは何もなさそうだったので町を離れた。
しばらくしてリアは上空から敵の軍勢を眺めていた。もちろん普通の人間は空を飛ぶことはできないが、リアの魔法創造はそれさえも可能にしたのだった。
おおよその見立てであるが敵軍の数は10万、敵将の種族はスケルトンキングのようだ。
スケルトンキングというのはスケルトンの中から稀に生まれる知能を持った上位の存在であるユニークスケルトン、その中で持ち出でた魔力と肉体能力を持って生まれ、魔法【死霊召喚】とスキル{死霊統率}を習得したモンスターである。このモンスターはスケルトンの中に100億分の1の確率で生まれると言われている超レアモンスターである。しかし、魔法の扱いにたけており、一部の魔法を無詠唱で操るほか、各属性の上位の魔法を操ることができる。リアからしたら弱いが、一般の冒険者ではAランクでも歯が立たない強敵である。
一応弱点もあり、それは神聖属性と火属性の魔法、そして殴打による攻撃である。
しかし、一部の上位個体に関してはこれらに対する耐性を獲得している者もいるので注意が必要である。
今回の軍勢はすべてスケルトンである。9万3千のスケルトンに4千のユニークスケルトンナイト、3千のユニークスケルトンメイジからなるかなりバランスの良い軍隊である。しかし、リアにとってこれは好都合である。神聖魔法を広範囲に一撃打ち込むだけでほぼすべてを消滅させられるだろう。広範囲魔法から守るための結界のようなものも準備していないようなので、あとは夜になるのを待つだけである。
そして日が傾き沈み始め、やがてあたりが暗闇に包まれた。敵軍は疲れを知らないアンデッドなので進軍を続けているがそれはリアには関係のないことなので魔法を発動する準備を始めた。
この時はまだリアは簡単に勝つことができると思っていたがそんなことはなかった。
詠唱を終えたリアは上空から軍全の中心へ向けて魔法を発動させる。
「【ホーリースパーク】」
それは天から降り注ぐ神聖な雷である。しかし、この魔法でスケルトンはいったいも消滅しなかった。魔法が軍勢の上空10メートルほどの位置に達したときに魔法が跳ね返されたのだった。
リアのスキルでは感知されなかったはずの結界が確かにそこにあったのだった。