72話 ハデス王国
リーンとの話を終えたリアはすぐに出発の準備を済ませ、魔法で姿を透明にしてハデス王国まで転移した。
リーンに聞いた情報では、ハデス王国はクヌム王国の半分くらいの国土と国民しかいないかなりの小国らしい。クヌム王国も決して大国とは言えないのでそれを考えると、魔王軍の軍勢の襲撃に抵抗する手段なんてないに等しい。国王もどうすべきかを考えていたが、どうにもならないことを悟っていたため、自暴自棄になり、国民全員を徴兵して立ち向かうという決断をしたとのことだ。とりあえず国民を巻き込むわけにはいかないので王城に向かうことにした。
「止まれ!!!!」
王城の門の前までたどり着いたリアは兵士たちに囲まれていた。国際手配されている世界最強の存在が王の居城の前に姿を現したのだから当然の反応だろう。
「私を捕らえられると思わない方がいいですよ。まぁ、国王と話す気はないのでここで用件を伝えます。確実に伝達するように。この国ハデス王国に向かっている魔王の軍勢は私がすべて駆逐します。報酬や対価を頂く気はありませんが、一つだけ要求をさせていただきます。この国の国民たちを巻き込みたくないので現在敵軍の偵察に行っている人や軍勢の近くにいる人物がいたらすぐにこの町に戻らせてください。戻らなかった場合確実に死にますので気を付けてください。軍勢がここまでたどり着くのはおそらく明日の昼頃になると思われますが、こちらがそれを待つ必要もないので今夜には襲撃し、壊滅させてきます。残らず倒すつもりではいますが、もし後から残党が攻めてきたとしても問題ないくらいには減らしておくので安心してください。あと、後ろから攻撃しようとしてるのもバレバレなのでやめた方がいいですよ。私は人間を殺すことはしない主義ですが、立ち向かってくるなら痛めつけることはしますので。」
話しながら、兵士の一人が襲ってこようとしているのを看破し、それを軽くあしらう。
しかし、そいつは何も言わずにそのまま上段に構えた斧を振り下ろしてきた。少し嫌な予感がしたリアは物理攻撃をはじく障壁を生み出す魔法を創り発動させた。
それと同時に斧がはじかれる。
「マジかよ…………」
周りの兵士たちがそれを信じられない様子で見ている中リアはその場から去っていった。




