7話 ゴブリンキング
そんなわけで、朝からお弁当を作っていたリリスのおかげでお昼も家に戻らず一日中家族で出かけることになった。ルンルンと足を弾ませながら歩くリアと、それを優しく見守りながら後ろをついていく両親。ゴブリンのようなモンスターがいれば、格好の餌食だろうがそうはいかない。リアだけでなく、アランとリリスも元々は凄腕の冒険者なのだ。襲ったところで返り討ちにされてしまう。それにリアは昨晩、床に就いてから一つのオリジナル魔法を思いつきそれをあっさりと形にしてしまったのだ。その魔法は
「マテリアルサーチ」
物質の探索ができる魔法で、物質ごとに分けられており、モンスターを探索したい場合は魔力を保有する生物を探索すればよい。人間も魔力を保有しているが、人間は生物の枠から外されているので問題ない。モンスターはすべて、少なからず魔力を保有しているため、これでモンスターの接近にいち早く気づくことができる。しかも範囲は半径150メートル。リアの場合、魔力を一定値1時間ごとに消費することで常に発動させられる。
そのこともあり、リアは探索範囲ギリギリではあるが、多くのゴブリンが付近にいることが分かった。しかし、襲ってきたゴブリンは1体も居なかった。そのまま何事もなく、丘までたどり着いた。そして、木の陰に隠していたゴブリンの死体を両親に見せると、
「間違いなくゴブリンだな。」
「そうね、でもなんでこんなところにいるのかしら?」
ここにきてリアのマテリアルサーチに反応があった。自分たちから150メートル離れている全方向に100体以上のゴブリンがいて、完全に囲まれている。父と母に伝えようとしたが、オリジナル魔法については両親にも知られたくない。
仕方がないので放置する。どうせかなり迫ってきているのでばれずに処理できる数ではない。
あと50メートルのところまで近づいてきて、ようやく両親ともに気が付いたようだ。しかし、囲まれているとなるとさすがに二人とも厳しいと感じたのか、少し落ち着きがないように見える。
これ以上は危険だと思ったので私は大量の魔力を込めたファイヤーボールを連打し始めた。それを見て母も魔法の詠唱を始めた。現時点でリアが40体ほど倒している。アランは遠距離戦では何もできないので傍観、リリスはようやく詠唱を終えた。
「トルネード」
リリスが発動させたその魔法はゴブリンたちのいる軌道上に円を描き、ゴブリンたちを吹き飛ばした。
しかし、その攻撃を受けてなお、こちらに近づいてくるゴブリンがいる。
リアはそのゴブリンにスキル{鑑定}を使用した。
ゴブリンキング
Lv.35
保有スキル
{眷属召喚}
ステータスと年齢は見ても意味がないと判断し、種族、レベル、スキルだけ見たけどこいつが生きてる限りゴブリンが無限に出てくるのはヤバそう……
リリスは若干青ざめている。先ほどの魔法に相当な魔力を込め、ほとんど魔力が残っていないのだろう。
そんなの様子を見ながら、リアは何の魔法を使うか考えていた。あまり上位のものを使えるのを知られるのはまずい、しかし、低位の魔法で倒せる相手ではない。
そんなことを考えていると急にゴブリンキングが倒れた。そういえば存在を忘れていたがアランもいたのだった。アランが使ったのは、
スキル{超速剣}
半径20メートル以内の中にいる生物を対象にとりその対象に急速に近づき切り伏せるスキルだ。
リアは、ここまで目立っていなかったが、父親の凄さに改めて感動する。
これで、ゴブリンとの戦いは終わったのだった。