64話 終戦
そして世界が動き出した。
敵対していたリアと、その前に伏しているブレイズの遺体があるので周囲の人物がパニックを起こし、大きな騒ぎになった。そこでリアが皇帝に向かって声をかけた。
「まだ戦争を続けますか?もうあなた方のところの戦力はすべて無力化させたと思いますが、もし続けるというならこの国ごと滅ぼすのでその覚悟を持って発言してください。降伏される場合でも今後のために、同盟の解消と条約を結ばせていただきます。今回の遠征について今回私はすべての権限を預けられており、あなた方は敗北者なので拒否権はありません。」
皇帝が声を震わせながらも威厳をもって答える。
「わかった。降伏し、貴国と条約を結ばせていただく。」
「では私と国王のみで話ができる場を作ってください。その他の人物の参加は認めません。」
国王の答えに対し、リアはそう要求する。しかし、彼女も彼女で精神的に限界が近かった。ブレイズの死により彼女の心に刻まれた傷はとても大きかった。
その後、用意された場で、事務的に物事を進め、条約を締結した。
その内容は大まかにこうだ。
クヌム王国とゼリア皇国間で結ばれていた同盟を解消する。
今後、ゼリア皇国がクヌム王国に大して軍事行動を起こした場合、ゼリア皇国は勇者リアによって滅ぼされる。
商人や冒険者の権利については以前締結していた同盟から変更しないものとする。
正確にはもっと格式高く書かれていたがそれはいいだろう。
ここからは特に語ることはない。すべての物事が事務的に進められ、夕方にはすべてが終わった。
「それでは私はこれで失礼いたします。私の力がいかに強大か忘れぬように。でないと今度こそ国を滅ぼしますので。それでは。」
そう宣言してリアはゼリア皇国をあとにした。皇帝を含む全員がリアの言葉に対して何も答えることができないほどに弱っていたのでしばらくは大丈夫だろう。あとは条約について記載された封書を国王に届けるだけである。
わざわざ歩いて帰るのも面倒なためリアは人目のないところまで来ると、透明化の魔法を使用し、念のため周囲に人がいないことを確認してからキルスの町に転移した。その時にはすでに空が暗くなり始めていた。
転移先は町中だったため、透明なまま一度町の外に出て人目のないところで魔法を解除した。そして何事もなかったかのように門をくぐって再度キルスの町へ入った。まだ時間的にも冒険者ギルドは開いているのでそのまま冒険者ギルドへ向かうことにした。




