62話 復讐の誓い
戦いが終わっておよそ5分後、リアは自分の体に力が戻ってくるのを感じた。リアを操っていた何者かがそれを解除したようだ。リアはすぐにブレイズの遺体に駆け寄っていった。ブレイズにはこの世界の法則が一切通用しないので、どんな手段を用いても蘇生が不可能なのはわかっていた。それでも、実は息があり、助かっているのではないか、自分の力ならなんとかできるのではないかという念に駆られてしまうのだ。
出会ってから30分もたっていないであろう男の死、普通ならばここまで悲しみを覚えることはないだろう。しかし、この男はこれまで数々の世界を救い、この世界も魔王の呪縛から救い出そうとしてくれていた。そしてリアのことをとても気にかけてくれていた、どこまでも自分ではなく他人のことを思いやることができる人物だったのだ。
最初にあった時は敵として出会ったため口調も荒く馬鹿にするような発言もあったが、本質的には善人以外の何物でもない、まさに勇者と呼ばれるべき人物。その男をリアは自身の意思に反するとはいえ手にかけてしまったのだ。そして、最後にブレイズが放った言葉はリアの心に大きく響いた。そして誓う。今この男を殺した人物、すなわち自分の体を操っていた存在を殺す、と。
しかし、今だけは…………そう思い、誰も見ることができず、呼吸の音すらしない世界の中でリアは涙を流したのだった。それはまるで親を失った年相応の子供のようだった。
一時間ほど泣き続け、悲しみの波も少しではあるが去っていった。しかし、しっかりしなければ、ここからが大変なのだ。最初はブレイズを倒してゼリア皇国との戦争を30分もせずに終結させる予定だったのだが、それ自体に変更はない。しかし、ブレイズを倒した自分が泣いていたら周りが何事かわからずに混乱してしまう。つまりここからリアに求められているのは演技力だ。
しかし、時間停止を解除する前にリアは今後の方針を考えることにした。もうすぐ12歳の誕生日を迎えるリアではあるが、まだ世間では未成年扱いだ。この世界の成人年齢は13歳である以上それも仕方がない。まぁ、それは置いておいて、今後何を目指すのかだ。リアの目的は自身の体を操りブレイズを殺した存在を見つけて殺すこと。ここで、リアはスキル{創造神}の効果にて、{次元断絶}とその結界について知ることとなる。得られる限りのすべての情報を得たリアは確信した。これから自分が狙う獲物は神、その中でも最上位に君臨するという【創造神】だ。
そうなると自分がスキル{創造神}を持っていることは枷となりうる。おそらく先ほどもこのスキルを介してリアの体に干渉したのだと思われる。すなわちこのスキルを所持している以上この世界の創造神に勝つことはできない。しかし、今のリアではこのスキルに干渉したり、破棄したり、ほかの魔法やスキルと統合したりといったことはできないのでいったん放置しておく。
しかし、このスキルに干渉できる可能性をリアは一つだけ思いついていた。




