59話 異世界の勇者
「まさかあいつを一撃で殺すなんて……貴様どんなトリックを使った!あいつは一切の魔法と物理攻撃を無効化できる能力を持っていたというのに」
「魔法無効化などの能力を貫通できる魔法を使っただけですよ。さて次は別の魔法を使ってあなたを倒すとしましょう。もし生きていたらまた会いましょう。」
「はぁ?何を言って……」
「禁呪【時間停止】」
リアがそう唱えると周囲のときすべてが止まった。そのはずだった。しかし、リアの耳に声が届いた。
「テメェいったい何がしたいんだ?周囲のやつらの動きが止まったみたいだが……」
リアは驚愕する。敵を前に表情に出すほど愚かではないが、それでもやはり驚きを隠せていない。
「なぜ、この空間内で動けるというのですか?」
「さぁな、俺って少し特別な存在でな。この世界のすべてのスキルや魔法の効果が適用されないんだよ。これで分かったろ、お前なんかじゃ俺には勝てないって。」
リアはスキル【創造神】で確認する。そんな存在があるのか。そうして一つの結論が導き出された。
「まさか……あなたはこの世界ではない違う世界の人間!だからこの世界にとらわれることがない。」
「おっと、まさか気づかれちまうとはな。そうだ。俺はこの世界ではなく違う世界で生まれた存在だ。その世界が滅ぶ寸前にほかの世界へ行くことに成功したのさ。それからは様々な世界を放浪している。時には勇者としてその世界を救ったりな。」
「どうしてそんなことを?」
「俺が生まれた世界は魔王によって滅ぼされたんだ。だからそうなる世界を一つでも少なくしたいんだよ。この世界では魔王を倒した勇者が魔王になっていく。しかし、この世界の理に縛られることの無い俺ならば魔王を倒してこの世界を救えるんじゃないかってな。」
それを聞いたリアは口を開こうとした。しかし、自分の体のはずなのに一切動かすことができない。
そして、自分の意思とは関係なく言葉が発せられるのだった。
「どんな事情があろうと関係ありません。この世界の理に背くものは創造神の名において排除します。」
 




